司法書士試験 科目の難易度・内容・学習方法

科目の難易度・出題数

午前の部(多肢択一式35問)

憲法
 <難易度★★★>出題数3問
民法
 <難易度★★★★★>出題数20問
刑法
 <難易度★★★★>出題数3問
商法(会社法を含む)
 <難易度★★★★★>出題数9問 

午後の部(多肢択一式35問+記述式2問)

民事訴訟法・民事執行法・民事保全法
 <難易度★★★>出題数7問
司法書士法
 <難易度★★★>出題数1問
供託法
 <難易度★★★>出題数3問
不動産登記法(択一式)
 <難易度★★★★★>出題数16問
商業登記法(択一式)
 <難易度★★★★★>出題数8問
不動産登記法(記述式)
 <難易度★★★~★★★★★>出題数1問
商業登記法(記述式)
 <難易度★★★~★★★★★>出題数1問

上記は例年の出題数です。また、難易度は個人差(得意・不得意)があり、試験年度によっても異なります。

科目の内容・学習方法

憲法

1 憲法とは?
憲法とは、国の統治の基本原理、その組織と権限について定めた国の最高法規です。つまり憲法とは、国家のあり方を決めた法規のことをいいます。

2 憲法の性質
普通の法律、刑法や民法などが「国民を縛るもの」であるもの対して、主として国民の権利・自由を守るために「国家権力を縛るもの」が憲法であるといわれています。このように、法律と憲法は全く性格を異にする法規であるといえます。
憲法を基にすべての法律が作られており、憲法に違反する法律を作ることはできませんし、ある法律の規定が憲法に違反するものであるか否かは具体的事件における裁判を通じて判断されます(裁判所の違憲立法審査権)。
また、憲法は、小学校~高等学校、大学(一般教養を含む)で学習しますし、一票の格差をめぐる裁判等各種報道が多々なされており、我々にとって馴染みのある法規です。

3 憲法の構成
日本国憲法では、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を三大基本原則として定めると共に、統治機構に関する基本的規範、すなわち、国家を統治する仕組みやその制度についても定めています。
憲法においては、三大基本原理について述べている規定は意外に少なく、前文を除くと、国民主権について規定は第1条のみであり、平和主義についての規定は第9条のみに過ぎません。基本的人権についての規定も、第11条から第40条までの計30条にすぎず、103条中の残りの規定はすべて統治機構に関するものになっています。

(1)  国民主権
国民主権とは、国の意思を決定する権利(主権)が国民にあるという原則です(民主制)。国民主権のもとでは、国民は選挙を通じて選んだ議員(国会議員等)によって構成される議会(国会等、間接民主制)、もしくは最高裁判所裁判官国民審査などの国民投票(直接民主制)などを通じて主権を行使することになります。

(2)  基本的人権の尊重
基本的人権とは、人間が人間らしく生活するために、生まれながらに持っている各種の権利のことです。そして、この権利は、最大限に尊重される必要があり、何人も侵すことのできない永久の権利として、日本国憲法で保障されています(基本的人権の尊重)。
基本的人権は、平等権(男女の性別や、人種、国籍、家柄などで差別されない権利)、自由権(身体の自由、精神の自由、経済活動の自由などの自由に生きる権利)、社会権(生存権、教育を受ける権利、労働基本権など人間らしい生活を国が保障する権利)、参政権(選挙に立候補し、あるいは候補者に投票するという政治に参加する権利)および受益権・請求権(裁判を受ける権利、国家賠償等の基本的人権が守られるように国に要求する権利)から構成されます。

(3) 平和主義
日本国憲法では、侵略戦争を含めた一切の戦争と国際紛争の解決手段として武力の行使および武力による威嚇の放棄(戦争の放棄)、軍隊その他の戦力を持たないこと(戦力の不保持)および国家が戦争をする権利を認めないこと(交戦権の否定)とし、徹底的な平和主義を原則としています。

(4) 統治機構に関する基本的規範
統治機構とは、国民を支配する国家を統治する仕組みやその制度ですが、国民主権をその原則としている日本国憲法では、その「統治」の一極集中を防止する観点から、その権能を立法権・行政権・司法権の三つに分割して相互に監視しあう「三権分立」が定められています。さらに、立法権は国会が、司法権は裁判所が、それぞれ独占しているのに対して、行政権は、国家だけではなく、地方自治や独立行政法人の存在を予定する条文が存在するように分割されています。

4 試験における位置付け・学習方法
憲法の出題数は例年、午前の部の出題問題数35問中3問(配点1問3点×3=9点)であり、多肢択一式の問題で、刑法と同様の出題数となっている科目です。
内容は他の科目より、若干易しめですが、小学校~高等学校、大学(一般教養を含む。)での学習だけでは足りず、条文知識、判例知識、推論問題等が幅広く出題されています。まずは、主要な条文や判例を中心とした学習を行いつつ、過去に出題された問題(過去問)の学習を繰り返し行うことも重要です。

民法

1 民法とは?
民法とは、人間の社会活動において日常的に発生する他人に対して有する権利または他人に対して負う義務の内容および家族関係についての一定のルールを定めた法律です。日常生活の基本的なルールを定めた法律として、我々にとって最も身近な法律であるといえます。

2 民法の性質
民法は、法律関係の内容を定める法律であり、実体法と呼ばれます。これに対して、法律関係の内容の実現についての手続を定める手続法(不動産登記法など)があります。

3 民法の構成
民法は、大きくわけて、総則、物権・担保物権、債権、親族、相続から構成されています。このうち総則、物権・担保物権、債権は主として財産関係について規定しているため財産法と呼ばれ、親族、相続は家族間の関係について規定しているので家族法と呼ばれています。これらの内容は次のとおりです。

(1)  総則
総則では、民法全体にかかわる一般的規定をまとめています。もっとも、主として財産法に関する規定が多いため財産法に分類されています。民法では、通則、人、法人、物、法律行為、期間の計算、時効などについて規定しています。

(2)  物権と担保物権
物権とは所有権を代表とする物に対する直接的な排他的支配権のことをいい、物権ではこれらについて規定しています。民法では、占有権、所有権、地上権、永小作権、地役権、入会権、留置権、先取特権、質権、抵当権(根抵当権)についてその内容を定めています。地上権、永小作権、地役権、入会権は他人の物を使用・収益する物権ということから用益物権といい、留置権、先取特権、質権、抵当権(根抵当権)は債権(以下(3)参照)の担保を目的とする物権ということから担保物権といわれています。

(3) 債権
特定の人に対して一定の行為を請求することができる権利を債権といい、これを有する者を債権者といい、反対に、一定の行為を請求される義務を債務といい、債務を負う者を債務者といいます。物権は誰に対しても主張できるのに対し、債権は当事者間でしか主張できないのが原則です。
物権は法律に定められたものしか認められず、当事者同士の合意によって新たに創設したり内容を変更したりすることができないのに対し(物権法定主義)、債権は原則として契約により自由にその内容を決めることができることとされています(契約自由の原則)。
民法では、契約のうち特に典型的なものとして贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解の13種類を典型契約としてその内容について定めています。

(4) 親族
親族とは6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族のことをいいます。民法では、総則のほか、婚姻、親子、親権、後見、補佐および補助、扶養についてその内容について定めています。

(5) 相続
相続とは、人が死亡した時に、その人(被相続人)の権利義務関係が他の人(相続人)に包括的に引き継がれることをいいます。相続は権利だけでなく義務も引き継がれるため、債務(借金など)もその対象となります。民法では、総則のほか、相続人、相続の効力、相続の承認及び放棄、財産分離、相続人の不存在、遺言、遺留分についてその内容について定めています。

4 具体的事例
(1) 売買
例えば、AがBから本を買う場合、AはBに対し、本の引渡しを受ける権利を有することとなる一方で本の代金を支払う義務を負うことになります。また、BはAに対し、代金を受け取る権利を有することとなる一方で本の引渡しをする義務を負うこととなります。

(2) 結婚(婚姻)
男女が結婚(婚姻)した場合、その男女(夫婦)には、同居してお互いに協力し合わなければならないという同居・扶助義務、夫婦は保有する資産や収入等に応じて夫婦の生活費を負担するという婚姻費用分担義務、夫(妻)は妻(夫)以外と不貞行為をしてはいけないという貞操義務等の義務が生じる一方で、夫(妻)が死亡した場合には、生存している妻(夫)は、一定の割合で、死亡した夫(妻)の財産(遺産)を相続する権利(相続権)等の権利を有します。

5 試験における位置付け・学習方法
民法の出題数は例年、午前の部の出題問題数35問中20問(配点1問3点×20=60点)であり、多肢択一式の問題で、最も出題数が多い最重要科目です。「民法を制するものは司法書士試験を制す」と言っても過言ではありません。司法書士試験の学習の中で最も時間をかけて丁寧に学習すべき科目であるといえます。

刑法

1 刑法とは?
刑法とは、どのような行為が犯罪となるのか、その犯罪にはいかなる種類の刑罰が、どの程度科せられるかという犯罪と刑罰の具体的内容を規定する法律です。
刑法には、殺人罪、強盗罪、窃盗罪、放火罪、文書偽造罪などの典型的な犯罪とそれに対する刑罰がほぼ網羅的に規定されています。
また、広い意味の刑法には、刑法以外の法律であっても、その法律の規定に違反した場合に、科せられる刑罰が定められている法律のすべてを含みます。例えば、会社法であっても、総会屋に利益を供与した場合には、株主等の権利の行使に関する贈収賄罪として刑罰が課せられます(会社法968条)。

2 刑法の基本原則
刑法の基本原則には、「法律なければ犯罪なく、法律なければ刑罰なし」という罪刑法定主義があります。これは、どのような行為が犯罪になるのか、起こした犯罪にはどのような種類の刑罰がどの程度適用されるのかということを、あらかじめ法律の規定として明文化されていなければならないという考え方です。
また、「責任がないことについて処罰されることはない」という責任主義があります。刑罰を科しうるのは、判断力のある人の故意または過失による犯罪行為であって、本人の意思・主観に責任を問い得る場合に限定されるという考え方です。

3 刑法の性質
刑法は、犯罪と刑罰の内容を定め、国の刑罰権が発動される要件を明らかにするものとして、実体法に分類されます。これに対し、刑法に規定された犯罪が行われたときに、実際にどのように捜査や裁判を遂行すべきかを規定するのは、刑事訴訟法であり、刑事訴訟法は手続法に分類されます。司法書士試験では、刑事訴訟法は試験科目ではありません。

4 刑法の構成
刑法は、総論と各論から構成されています。
総論では、刑の種類と軽重、刑の執行猶予、正当防衛、正当行為、緊急避難、故意、責任能力、未遂、併合罪(牽連犯、観念的競合)、累犯、共犯、教唆、幇助等が定められています。
また、各論では、公務執行妨害罪、放火罪、住居侵入罪、文書偽造罪、賭博罪、殺人罪、傷害罪、窃盗および強盗罪、詐欺および恐喝罪、背任罪、横領罪などがそれぞれ定められています。

5 犯罪の成立要件
ある行為をした場合に、それが犯罪として処罰の対象(刑事責任を問われること)となるには、次の3つの要素を順番に具備しているか検討する必要があります。
 ①構成要件該当性
 ②違法性
 ③責任(有責性)
構成要件該当性とは、当該行為が刑法の条文で定められた要件に当てはまることをいいます。例えば、殺人罪(刑法199条)であれば、「人を殺した」という行為がなされているかということです。また、「人を殺した」という行為がなされた場合には、通常、違法性が推定されますが、その行為が正当防衛などにあたる場合には、違法性の要件を欠き処罰の対象とはなりません(これを「違法性阻却事由」といいます。)。また、「人を殺した」という行為が違法性を有する場合であっても、その行為が、心神喪失者、心神耗弱者、14歳未満の刑事未成年者の行為による場合には、責任能力がないものとして処罰の対象とはなりません。このようにある行為が、刑法の構成要件に該当し、違法でかつ有責性を有する場合に限り、刑事責任を問うことができるわけです。

6 試験における位置付け・学習方法
刑法の出題数は例年、午前の部の出題問題数35問中3問(配点1問3点×3=9点)であり、多肢択一式の問題で、憲法と同様の出題数となっています。
刑法は、学習範囲が広いにもかかわらず、3問しか出題されないため、どの程度学習すべきか非常に悩ましい科目であるといえます。難しい法律ですので、ある程度時間をかけて学習することは必要ですが、出題数を考慮すると、必要以上に多くの時間をかけるべき科目ではありません。また、出題数が少ないからといって、ほとんど学習しない(捨て問にする)という姿勢も賛成できません。
まずは、学習範囲を、過去に出題された問題(過去問)の条文や判例に絞り、これらの範囲の学習を繰り返し行って、過去問で出題されたところは、100%解答できるくらいまで、知識を研ぎ澄ましておくという学習方法が最も望ましいといえるでしょう。

商法・会社法

1 商法・会社法とは?
商法・会社法とは、営利を目的とする商人(個人商人・会社)の定義・取引活動・手続についての一定のルールを定めた法律です。ご自分で商売をなさっている方や会社の法務部・総務部などにお勤めの方にとっては身近な法律でしょうが、学生の方などそれ以外の方にとっては、とっつきにくい、イメージがわかない法律かもしれません。

2 商法・会社法の性質
商法・会社法とは、営利を目的とする商人(個人商人・会社)についての法律関係の内容を定める法律であり、民法と同じ実体法です。もっとも、会社の合併、会社分割などの会社の組織再編行為についての規定は手続法に近い性質をもっています。また、商法・会社法の規定は、民法の規定に優先します。一般法である民法に対し、商法・会社法は民法の特別法の関係にあるといえます。例えば、民法ではお金の貸し借りについては無利息が原則ですが、商法の商人間のお金の貸し借りは利息が発生することが原則であり、この規定が民法に優先して適用されます。

3 商法・会社法の構成
商法・会社法は、司法書士試験に出題される視点から大きく分けると、会社法、商法総則、商行為の3つの分野から構成されます。
これらの内容は次のとおりです。

(1) 会社法
総則、株式会社のほか、合名会社、合資会社および合同会社のような持分会社について規定する分野です。株式会社では、会社の設立、募集株式の発行などの株式、新株予約権、株主総会や取締役等の会社の機関、資本金の額の減少などの会社の計算、定款の変更、事業の譲渡等、解散・清算、社債のほか、組織変更・合併・会社分割・株式交換・株式移転といった組織再編などについて規定されています。また、持分会社では、設立、社員、管理、社員の加入および退社、計算等、定款の変更、解散、清算などについて規定されています。

(2) 総則
商法の全体の通則を規定する分野です。通則のほか、商人、商業登記、商号、商業使用人などについて規定されています。

(3) 商行為
商人の活動としての法律行為(商取引)について規定する分野です。絶対的商行為、営業的商行為、付属的商行為、商行為の代理、多数当事者間の債務の連帯、利息請求権、商事法定利率、商事消滅時効などについて規定されています。

4 商業登記法との関連
商法・会社法(特に「株式会社」。以下同じ。)と商業登記法は、民法と不動産登記法との関係のように、実体法と手続法の関係にありますが、民法と不動産登記法との関係以上に緊密な結びつきがあります。商業登記を制するには、商法・会社法の理解が不可欠です。

5 具体的事例
株式会社を設立するには、まず、発起人が定款を作成し、公証人の認証を受けなければなりません。定款には、商号(社名)、本店所在地、目的(事業目的)等を定めます。そして、公証人の定款認証後、発起人らが銀行に出資金を払込み、取締役等の役員を選任し、その本店所在地で設立の登記をすることによって、株式会社は成立します。
設立した株式会社は、目的として定められた事業を行い、事業によって得た利益を株主に分配したり、株主総会を開催して取締役等の役員を選任したり、募集株式を発行して資本金の額を増加させたり、反対に資本金の額を減少させたりもします。
また、必要に応じて、新株予約権を発行したり、他の会社と合併したり、解散して事業を終え、会社財産の清算を行うこともあります。

6 試験における位置付け・学習方法
商法・会社法の出題数は例年、午前の部の出題問題数35問中9問(配点1問3点×9=27点)であり、多肢択一式の問題で、民法の次に出題数が多い重要科目の1つです。また、商法・会社法(特に「株式会社」。以下同じ。)と商業登記法の結びつきが緊密ですので、商業登記法を別の科目と思わず、商法・会社法の学習の際には、常に商業登記法を意識しながら学習することが大切です。
さらに、商法・会社法はとっつきにくい、イメージがわかない法律ですので、普段から会社関係のニュースや新聞の経済欄に関心を持ち、なるべく具体的で身近な事例を基に学習するとわかりやすいです。

民事訴訟法・民事執行法・民事保全法

1 民事訴訟法とは?
民事訴訟法とは、私人間の権利・義務をめぐって紛争が生じた場合、権利を主張する者(原告)が義務を負う者(被告)に対し、裁判所に訴えを起こし、法廷におけるその権利の主張・立証を通じて被告と争い、裁判所にその権利の有無につき公的な判断を求めるための訴訟の手続を定めた手続法です(実体法は、民法など)。例えば、AがBに期限を定めて1000万円の金銭を貸し付けたにもかかわらず、期限になって、催促してもBが1000万円の金銭の返済をしない場合に、Aは原告となり、裁判所に対し、Bを被告として1000万円の金銭の返済を求める訴えを起こすことができます。この訴えを「貸金請求訴訟」といい、訴えを起こすことを「訴えの提起」といいます。このような私人間の訴訟の手続を定めている手続法が民事訴訟法です。

2 民事執行法とは?
民事執行法とは、裁判等で確定した権利(債務名義)につき、相手方が任意に義務の履行をしない場合に、裁判所(執行裁判所)の力を借りて、強制的にその権利の実現をはかるための強制執行等の手続を定めた手続法です。例えば、1の例で、Aが貸金請求訴訟で勝訴し、「被告Bは、原告Aに対し、○年○月○日までに金1000万円を支払え。」との判決(勝訴判決)を得たにもかかわらず、Bが任意に1000万円を支払わない場合に、Aは裁判所に強制執行の手続を申立て、裁判所の強制力をもって、Bから1000万円を取り立てることができます。このような強制執行等の手続を定めている手続法が民事執行法です。なお、法治国家である我が国においては、AはBに対し1000万円を貸しているからといって、A自らの力でBから直接1000万円を取り立てることはできません。これを「自力救済の禁止」といいます。

3 民事保全法とは?
民事保全法は、将来なされるべき強制執行における権利の実現をあらかじめ保全するために、さしあたり現状を維持し、これを確保することを目的とする予防的かつ暫定的な処置である相手方の財産に対する仮の差押え(これを「仮差押え」といいます。)、訴訟における争いの目的物(これを「係争物」といいます。)に関する仮の処分(これを「仮処分」といいます。)および仮の地位を定める仮処分の手続について定めた手続法です。例えば、1のように、私人間の権利・義務をめぐって紛争が生じた場合、Aは、最終的には、民事訴訟の手続によって権利の確定と実現を図らなければなりません(自力救済の禁止)。しかし、訴訟には多くの時間がかかる場合があります。その間にBが財産を隠匿し、あるいは、処分してしまうと、Aは、せっかく民事訴訟の手続を利用して、勝訴判決を得ても、強制執行の対象となるべき財産がBに残っておらず、権利の実現を得ることができない結果となり、訴訟手続きが無意味になってしまうおそれがあります。このような場合に、Aは、訴訟の提起前に、裁判所に対し仮差押えの申立てをし、裁判所の力をもってあらかじめBの所有する不動産を仮差押えすることができます。不動産に仮差押えがなされると、その不動産の登記簿に仮差押えの登記がなされます。そして、仮差押えの登記がなされたBの不動産は、その後所有権をCに移転させ、C名義に所有権移転登記をしても、CはAに対し対抗できませんので(これを「手続相対効」といいます。)、Aは安心して訴訟を提起することができるわけです。このように仮差押えは、訴訟の提起前にBの処分権を相対的に剥奪し、Aの権利を保全する効果があります。この仮差押え等の民事保全の手続を定めている手続法が民事保全法です。

4 試験における位置付け・学習方法
例年、民事訴訟法の出題数は、午後の部の出題問題数35問中5問(配点1問3点×5=15点)であり、民事執行法の出題数は、午後の部の出題問題数35問中1問(配点1問3点×1=3点)であり、民事保全法の出題数は、午後の部の出題問題数35問中1問(配点1問3点×1=3点)であり、出題数の合計は7問となっています。
民事訴訟法、民事執行法および民事保全法は、学習範囲が広く、かつ、手続が難解であるにもかかわらず、合計7問しか出題されないため、どの程度学習すべきか非常に悩ましい科目であるといえます(午前の部の刑法と同じようなものです。)。
難しい法律ですので、ある程度時間をかけて学習することは必要ですが、出題数を考慮すると、必要以上に多くの時間をかけることはできません。
しかし、これらの科目は、実体法である民法、会社法、手続法である不動産登記法、商業登記法、供託法などの他の司法書士試験の受験科目とも密接に関連する部分がありますので、これらの科目との関係で学習をおろそかにすることはできません。また、特に民事訴訟法は、司法書士の資格を習得した後に、簡裁訴訟代理等関係業務の資格を取るための特別研修や考査でもその知識や理解力が問われる科目であることも念頭に置いておく必要があります。
学習方法としては、まずは、各法律で定められた手続の全体像を大まかにとらえた上で、自分は今、手続のどの部分を学習しているか意識することが大切です。また、耳慣れない法律用語がたくさん出てきますので、その都度、法律用語の定義を確認するようにしましょう。それでも、学習方法に悩んだときは、テキストや基本書を繰り返し読むことによって、なるべく手続全体の流れをつかむように心がけてください。その上で、過去に出題された問題(過去問)の条文や判例の学習を繰り返し行って、少なくとも、過去問は100%解答できるくらいまで、知識を研ぎ澄ましておくという学習方法をおすすめします。

司法書士法

1 司法書士法とは?
司法書士法とは、いわゆる司法書士の業法、すなわち、主に司法書士の業務に関する規定を定めた法律をいいます。
第1章では、総則として、司法書士法の目的、司法書士の職責、司法書士の業務、司法書士の資格、司法書士の欠格事由などについて定めています。
また、第2章では司法書士試験、第3章では登録、第4章では司法書士の義務、第5章では司法書士法人、第6章では懲戒、第7章では司法書士会、第8章では日本司法書士会連合会、第9章では公共嘱託登記司法書士協会についてそれぞれ定めています。

2 司法書士の業務
司法書士の業務は、次のとおりです(司法書士法3条1項各号)。
(1) 登記または供託に関する手続について代理すること。
不動産登記や商業登記、最近では債権譲渡登記につき、申請人を代理して登記を申請する司法書士の中核となる業務です。登記申請書の作成のほか、添付書面(情報)の作成・収集、登記申請書の提出などを手がけます。また、供託書の作成、提出があります。
(2) 法務局または地方法務局に提出し、または提供する書類または電磁的記録を作成すること。
(3) 法務局または地方法務局の長に対する登記または供託に関する審査請求の手続について代理すること。
(4) 裁判所もしくは検察庁に提出する書類、または筆界特定の手続において法務局もしくは地方法務局に提出しもしくは提供する書類もしくは電磁的記録を作成すること。
裁判所に提出する訴状や答弁書、準備書面の作成のほか、家庭裁判所に提出する特別代理人の選任審判申立書、後見人選任申立書、不在者財産管理人の選任申立書の作成等があります。
(5) 上記(1)~(4)の事務について相談に応ずること。
(6) 簡裁訴訟代理等関係業務
ただし、この業務については、司法書士試験合格後、法務省令で定める法人が実施する研修であって法務大臣が指定するものの課程(特別研修)を修了し、考査(筆記試験)に合格しなければ、行うことができません(資格内資格)。具体的な業務としては、簡易裁判所で取り扱う訴額140万円以下の事件につき、本人の委任を受けて、代理人として和解交渉を行い、民事訴訟を提起し、支払督促等を行います。有名なところでは、過払い金返還請求(和解、訴訟)があります。

3 試験における位置付け・学習方法
司法書士法の出題数は、午後の部の出題問題数35問中1問(配点1問3点×1=3点)であり、多肢択一式の問題では、出題数が少ない、いわゆるマイナー科目です。
出題数からすると、捨て問にしたい科目かもしれません。しかし、難易度が低く、条文、判例と過去問の繰り返しの学習で確実に得点できること、筆記試験合格後の口述試験においては、相当高いレベルの知識まで問われること、そして、何よりも合格後開業するにあたって、そして、開業後も最低限知っておかなければならない「業法」であることを考え合わせますと、捨て問にすることはできません。
やはり、一定レベルの水準までの学習は必要です。学習方法は、供託法と同様、条文(先例)・過去問レベルの出題が続いていますので、条文(先例)・過去問を繰り返し学習すれば充分と考えられます。

供託法

1 供託法とは?
供託とは、債務者(供託者)が一定の財産(供託物)を国の機関である供託所に提出し、その管理に委ねると共に、供託所を通じてその財産を債権者(被供託者)に受領させることにより、一定の法律上の効果(例えば、弁済)を得ようとするものです。
供託の目的物である財産を「供託物」、供託所に供託物を提出する者を「供託者」、供託所を通じて供託物を受領する者を「被供託者」といいます。
供託の手続は、供託者による供託物の提出、供託所による供託物の管理、供託所から被供託者への供託物の交付(還付手続、あるいは、供託者による供託物の取戻手続、還付手続と取戻手続を併せて「払渡手続」という。)という三つの手続からなっており、これらの手続につき規定したのが、供託法(供託規則)等です。なお、供託をするには、必ず供託根拠法令等が必要であって、債務者はすべての物を無条件に供託所に供託することができるわけではありません。

2 具体的な供託事例
例えば、平成27年7月1日に、AはBから金100万円(弁済期:平成28年6月30日、利息年5%、損害金年10%)借りたとします。そして、平成28年6月30日、Aは約束どおり、Bの家に元金である金100万円と利息金5万円を持参して、返済しようとしました。しかし、どういうわけか、Bはそれらを受け取ろうとはしません。Aとしては、Bがこれらの金銭を受領してくれないと、自らの責任でないにもかかわらず、債務不履行となり、翌日から年10%の損害金を支払わなくてはなりません。そこで、供託法では、このように債権者Bが弁済(金105万円)の受領を拒んだ場合(これを「受領拒否」といいます。)には、債務者Aは、債権者Bのために供託所に金105万円を供託する手続をして、その債務を免れることができる仕組みになっています(受領拒否を原因とする弁済供託、民法494条前段)。そして、債権者Bは、後日Aからの供託を受諾するなどの一定の手続をし(これを「還付請求」といいます)、供託所から、金105万円の交付を受けることができます。このように、供託制度のおかげで、債務者は供託により債務を免れることができ、他方還付請求をすることにより債権者も債権の満足を図ることができます。

3 供託の種類
供託は、法令の規定に基づく場合についてのみ認められています。供託の原因により大別すると、現在、以下のような類型の供託が認められています。司法書士試験で特に重要なのは、(1)と(3)です。

(1)  弁済供託
債権者の受領拒否、債権者不確知等の理由により債務の履行ができないときに、債務の目的物を債務履行地の供託所に供託して、その債務を免れる供託。

(2)  担保(保証)供託
特定の相手方等が被る損害を担保するために、あらかじめ根拠法令に基づきなされる供託。
①営業保証供託
宅地建物取引業や旅行業など、営業者の取引が広範かつ継続的であるため、取引の相手方に対する損害や債務を担保するための供託。
②裁判上の担保供託
訴訟行為または裁判上の処分に関連して民事訴訟法、民事執行法及び民事保全法により、担保の提供が規定されている場合の供託。
③税法上の保証供託
相続税、贈与税等の国税の延納を許可しまたはその納税を猶予する場合、及び不動産取得税等の地方税の徴収を猶予する場合等に、その納付または徴収を確保するために、納税者に一定の担保を提供させるための供託。

(3) 執行供託
執行手続の過程において、執行機関(裁判所または執行官)または執行当事者が、供託所にその執行の目的物(金銭または金銭以外のものであるときは、その換価代金)の管理と執行当事者への交付(配当)を行わせるため、執行の目的物を供託所に供託すること。

(4) 保管供託
目的物の散逸を防止するために、供託物そのものの保管・保全を目的としてなされる供託。

(5) 没取供託
公職選挙の立候補者が立候補に際して行う供託。当該立候補者の得票数が一定数に達しない場合には立候補の権利濫用として、国または地方公共団体が没取することができます。

4 試験における位置付け・学習方法
供託法の出題数は例年、午後の部の出題問題数35問中3問(配点1問3点×3=9点)であり、多肢択一式の問題では、出題数が少ない、いわゆるマイナー科目です。
出題数からすると、あまり時間をかけたくない科目ではあります。しかし、供託法は、民法、不動産登記法、民事執行法および民事保全法とも密接に関連するため、これらの科目との関係でも、決しておろそかにすることができない科目といえます。もっとも、難易度的には、難問が出題される可能性は低く、条文(先例)・過去問レベルの出題が続いていますので、条文(先例)・過去問を繰り返し学習する方法で充分と考えられます。

不動産登記法(択一式)

1 不動産登記法とは?
不動産登記法は、民法等で生じた土地や建物(不動産)についての権利や法律関係を不動産登記簿に記録するための登記の手続について定められた手続法です。
物権は排他性を有するものですから、物権の移転や設定があった場合には、これらの事実や権利関係につき第三者が外部から容易に認識できる状態にしておかなければなりません。このように、一定の法律関係や事実関係の有無については、常に外部から認識することができるもの、たとえば登記や占有などを伴わなければならないという原則を「公示の原則」といいます。
動産(不動産以外の物)であれば、その動産を持っている者(動産の引渡を受けた者、占有)は、第三者に対し自らがその動産の所有者であるという権利を主張することができます。これを「対抗要件」といいます。
これに対して、不動産の場合、例えば、ある建物にAが住んでいるとします。しかし、Aは、自己の所有権に基づきその建物に住んでいるのかもしれませんし、その建物の所有者から借りて住んでいるだけかもしれません。また、この建物には、所有者が銀行からお金を借りて、抵当権が設定されているかもしれません。このように不動産については、その外形からは事実や権利関係が明らかであるとはいえません。このような状態では、不動産を売買しようとする場合、取引の安全が図れません。そこで、その不動産についての事実や権利関係を第三者が外部から容易に認識できる一定の外形を備えた不動産の登記簿を登記所(正式には、法務局といいます。)に備え置き、誰でも調べることができるようになっています。不動産を取引しようとする者は、登記所でその不動産の登記簿に記録されている事項を調べることによって、その不動産の所有者や抵当権の有無など権利関係を確認することができるわけです。このように、不動産についての権利関係を明らかにし、取引の安全を図るために設けられたのが不動産登記制度であり、その手続の詳細を定めたものが不動産登記法です。

2 不動産登記法の構成
司法書士試験でいう不動産登記法とは、法律である不動産登記法の他、政令である不動産登記令、法務省令である不動産登記規則も含みます。また、法務省がその下部組織である法務局に不動産登記事務の取扱いについて指示を出したもの(「通達」や「回答」といいます。)も「先例」として試験範囲に含まれます。その他、登記簿に一定の事項を記録してもらうために不動産登記を申請する者が国に納める税金についての法律(登録免許税法)なども試験範囲です(主として、税率と計算方法が問われます)。

3 司法書士と不動産登記法
不動産登記は、司法書士の業務として最も大きな割合を占めるものです。不動産登記の手続(不動産登記の申請手続)は、一般市民(本人)では難しいので、司法書士が本人を代理して手続をとることがほとんどです。
本人を代理して手続をとるとは、登記の申請書やその添付書面(登記原因証明情報)の作成や申請書の法務局への提出のほか、不動産手続全般の説明や必要書類(登記済証、登記識別情報通知、印鑑証明書、住所証明書など)の手配を依頼することなど多岐にわたります。

4 民法との関係
不動産登記法は、民法により生じた事実や権利関係を登記簿に記録するための手続法ですので、その手続を理解するためには、前提として実体法である民法の学習が不可欠です。民法を学習せずに、あるいは、学習が不十分である状態で、不動産登記法を学習しても、これを習得することはできません。特に、担保物権である抵当権や根抵当権については民法の条文の理解が極めて重要になります。

5 試験における位置付け・学習方法
不動産登記法の多肢択一式の出題数は例年、午後の部の出題問題数35問中16問(配点1問3点×16=48点)であり、多肢択一式の問題で、民法の次に出題数が多い最重要科目です。
また、不動産登記法は記述式問題もありますので、多肢択一式の学習で得た知識や理解を記述式の問題でも活かせるようにしておきましょう。
司法書士試験の午後の部の学習の中で最も時間をかけて丁寧に学習すべき科目であり、記述式の出題を意識しながらの学習が必要です。なお、他の科目と同様、まずは「条文」と「過去問」中心に学習することをおすすめします。

商業登記法(択一式)

1 商業登記とは?
「商業登記」とは、商法および会社法の規定により、商人(個人商人と会社、以下同じ。)に関する一定の事項(例えば、商号や本店、事業目的、資本金、役員の氏名など。以下同じ。)を公開(公示)するために、登記所に備える商業登記簿にこれらの事項を記録すること、または、記録そのものをいいます。商業登記簿に記録された事項は、一定の手数料を払うことにより、誰でもその内容を調べることができます。

2 商業登記制度の目的
商業登記制度は、商人に関する一定の事項を登記簿に記録し、これを公開(公示)することにより、その商人と取引関係に入ろうとする第三者等の利害関係人にその商人に関する一定の情報を提供し、商人に係る信用の維持を図ると共に、取引等の安全と円滑化に貢献することをその目的としています。

3 商業登記法とは?
商業登記法は、商法および会社法の規定により生じた商人に関する一定の事項を商業登記簿に記録するための登記の手続について定められた手続法です。

4 「商業登記」と「不動産登記」との違い
「不動産登記(権利の登記)」は、権利の客体(土地や建物)についての登記であるのに対し、「商業登記」は権利の主体(商人)についての登記です。そして、「不動産登記(権利の登記)」は、その登記をするかしないかは、当事者(登記権利者)の任意とされていますが(=自分の権利について対抗要件を具備するかどうかは当事者の自由ということです)、商業登記は、不動産登記と異なり、原則として、登記事項に変更等が生じた場合には、商人は一定期間内に変更の登記の申請をしなければなりません(会社法915条ほか)。これを「登記義務がある」といいます。商業登記では、このように変更登記の申請を義務付け、登記事項の変更を速やかに登記簿に反映させることによって、商業登記制度の目的を果たそうというわけです。

5 商業登記法の構成
司法書士試験でいう商業登記法とは、法律である商業登記法の他、法務省令である商業登記規則も含みます。また、法務省がその下部組織である法務局に商業登記事務の取扱いについて指示を出したもの(「通達」や「回答」といいます。)も「先例」として試験範囲に含まれます。さらに、古い通達等を条文化した商業登記等事務取扱手続準則(いわゆる準則)、その他、登記簿に一定の事項を記録してもらうために商業登記を申請する者が国に納める税金についての法律(登録免許税法)なども試験範囲です(主として、税率と計算方法が問われます)。

6 司法書士と商業登記法
商業登記は、司法書士の業務として不動産登記の次に大きな割合を占めるものです。商業登記の申請手続は、商人(本人)では難しいので、司法書士が本人を代理して手続をとることが多いです。
本人を代理して手続をとるとは、登記の申請書やその添付書面(株主総会議事録や取締役会議事録)の作成や申請書の法務局への提出のほか、会社法や商業手続全般の説明や必要書類(株主総会議事録、取締役会議事録、印鑑証明書、委任状など)の手配を依頼することなど多岐にわたります。

7 会社法との関係
商業登記法は、商法および会社法の規定により生じた商人に関する一定の事項を商業登記簿に記録するための登記の手続について定められた手続法ですので、その手続を理解するためには、前提として実体法である会社法の学習が不可欠です。会社法を学習せずに、あるいは、学習が不十分である状態で、いくら商業登記法を学習しても、これを習得することはできません。また、実体法との関係では、民法と不動産登記法以上に、会社法と商業登記法は密接に関連しています。商業登記法に強くなるには、会社法をどれだけ時間をかけて学習するかにかかっているといっても過言ではないでしょう。

8 試験における位置付け・学習方法
商業登記法の出題数は例年、午後の部の出題問題数35問中8問(配点1問3点×8=24点)であり、多肢択一式の問題で、民法、商法(会社法)、不動産登記法の次に出題数が多い重要科目です。
また、商業登記法は記述式問題もありますので、多肢択一式の学習で得た知識や理解を記述式の問題でも活かせるようにしておきましょう。これができていないと、多肢択一式で出題されれば正解できるのに、記述式で出題されるとミスをしてしまうといった現象が生じてしまいます。司法書士試験の午後の部の学習の中では、不動産登記法の次に時間をかけて丁寧に学習すべき科目であり、記述式の出題を意識しながらの学習が必要です。なお、他の科目と同様、まずは「条文」と「過去問」を中心に学習することをおすすめします。

不動産登記法(記述式)

1 不動産登記法の記述式試験とは?
不動産登記法の記述式試験とは、問題文に示された登記記録や事実関係、関係当事者から聴取した内容をもとに、登記申請情報(以下、「登記申請書」という。)に記載すべき事項を判断し、それを指定された答案用紙の所定の欄に自らの手で答えを書くという試験です。

2 不動産登記法の記述式試験で求められる能力
記述式試験は、5肢択一のマークシート方式である多肢択一式試験と異なり、答案用紙に、自分の手で答えを書くというものですから、次の能力が求められます。
(1)  問題文に示された登記記録や事実関係、関係当事者から聴取した内容からどのような事実が生じ、実体関係が形成されているかを読み取るための実体法の知識や理解
(2) (1)についてどのような登記を申請するか判断するための登記法等の手続法の知識や理解
(3) (1)(2)を踏まえて判断したことを、制限された時間内に、正確かつ迅速に、答案用紙(登記申請書)に記載するという答案作成上のテクニック

3 不動産登記法の記述式試験の例題
不動産登記法の記述式試験を最も簡単な事例で紹介すると、次のような例題になります。
<事実関係>
(1) 平成28年6月1日、AはBとの間で自己の所有する土地と建物をBに代金2、500万円で売り渡す旨の売買契約を締結した。なお、この売買契約には、BがAに対し売買代金の全額の支払いが完了した時に、土地と建物の所有権がBに移転する旨の特約がある。
(2) A所有の土地と建物には、債権額が1、000万円のX銀行の抵当権が設定されている。
(3) Bは、A所有の土地と建物の購入にあたり、Y銀行に融資の申込みをし、この金銭消費貸借契約上のY銀行の債権を担保するために、債権額2、000万円の抵当権を設定する旨の契約を締結した。
(4) 平成28年7月1日、Y銀行にて、司法書士Zの立会のもとで、Bは売買代金金2、000万円をAに支払った。そして、Aは受領した売買代金からX銀行に1、000万円を支払った。
<問い>関係当事者全員は、(1)から(4)までの事実に基づいて発生すべき登記の申請の代理を司法書士Zに依頼した。司法書士Zが申請すべき登記を申請の順番に従って答えよ。
<答え>
① 抵当権抹消登記(X銀行の抵当権を抹消するもの)
② 所有権移転登記(所有権がAからBに移転するもの)
③ 抵当権設定登記(Bの債務を担保するためのY銀行の抵当権を設定するもの)
※ 実際には、これらの各登記の申請書に記載すべき事項のうち、指定された事項、具体的には、登記の目的、登記原因およびその日付、申請人の氏名、添付情報(添付書面)、登録免許税などを答案用紙の該当部分に記載することになります。

4 試験における位置付け・学習方法
不動産登記法の記述式の出題数は例年、午後の部の2問中1問です。しかし、配点は、多肢択一式試験午前の部4科目35問(1問3点、3×35問=105点)、午後の部7科目35問(1問3点、3×35問=105点)、記述式試験2科目2問(1問35点、2×35=70点)の合計280点中35点であり、配点全体の12.5%を占めます。これを多肢択一式に換算しますと、11~12問に相当しますので、極めて重要な科目であるといえます。
不動産登記は司法書士の業務の中心を占めるものであり、不動産登記法の記述式を得意とする受験生が多く、競争が激しい科目です。つまり、不動産登記法の記述式試験での失敗は、不合格に直結するといっても過言ではないでしょう。
また、不動産登記法の記述式の解答をする、すなわち、登記申請書の記載事項を判断するには、実体法(主に民法)の知識や理解が不可欠であり、単に不動産登記法だけを学習しても、合格点を取ることはできません。
さらには、制限された時間内に、正確かつ迅速に、答案用紙(登記申請書)に記載する答案作成能力が求められます。
難易度は、出題年度によって、かなり開きがありますが、一定の得点を取得しなければ合格できません。
学習方法は、まずは、実体法である民法を固めた上で、手続法である不動産登記法、不動産登記令、不動産登記規則の条文、先例等(通達・回答)をしっかり学習することが必要です。次に、基本的な登記申請書の記載事項(書き方)を覚えること、登記記録例の研究、過去問の分析などの学習が必要です。そして、これらをマスターした後は、問題演習で実力に磨きをかけてください。特に、記述式試験は実際自分の手で答案を作成するものですから、常に自分なりの問題を解く時間(解答ペース)を意識しながら、短時間で正確に問題を解けるようになることが肝心です。

商業登記法(記述式)

1 商業登記法の記述式試験とは?
商業登記法の記述式試験とは、問題文、答案用紙の作成に当たって注意事項、登記記録や議事録の抜粋等の別紙、会社(ほとんどが株式会社)の代表者から聴取した内容をもとに、どのような登記を申請するかを判断し、申請すべき登記の申請書に記載すべき事項を指定された答案用紙の所定の欄に自らの手で書くという試験です。

2 商業登記法の記述式試験で求められる能力
記述式試験では、多肢択一試験と異なり、次の能力が求められます。
(1)  問題文、答案用紙の作成に当たって注意事項、登記記録や議事録の抜粋等の別紙、会社の代表者から聴取した内容からどのような事実が生じ、実体関係が形成されているかを読み取るための実体法の知識や理解
(2) (1)についてどのような登記を申請するか判断するための登記法等の手続法の知識や理解
(3) (1)(2)を踏まえてどのような登記を申請すべきか判断し、制限された時間内に、正確かつ迅速に、答案用紙(登記申請書)に記載するという答案作成上のテクニック

3 商業登記法の記述式試験の例題
商業登記法の記述式試験の最も簡単な例題を1つ紹介します。
<登記記録の抜粋>
商号 千代田商事株式会社
本店 東京都千代田区大手町一丁目2番3号
目的 1 不動産の売買及び賃貸の仲介
   2 前号に附帯する一切の業務
役員に関する事項
取締役A 平成27年6月22日重任
取締役B 平成27年6月22日重任
取締役C 平成27年6月22日重任
東京都中央区銀座二丁目3番4号
代表取締役A 平成27年6月22日重任
監査役D 平成27年6月22日重任
取締役会設置会社
監査役設置会社
<事実>
1 平成28年6月1日に取締役Bが辞任した。
2 平成28年6月22日に定時株主総会が開催され、次の議案が承認可決した。
(1) 取締役1人選任の件 取締役Eが選任された。
(2) 定款一部変更の件
① 商号変更 商号を東京商事株式会社に変更する。
② 目的変更 従来の目的に「不動産の管理」を追加する。
(3) Eは取締役への就任を承諾した。
<問い>東京商事株式会社の代表者は、(1)から(3)までの事実に基づく登記の申請の代理を司法書士Zに依頼した。司法書士Zが申請すべき登記を答えよ。
<答え>
(i) 取締役の変更登記(取締役Bの辞任と取締役Eの就任の登記)
(ii) 商号の変更登記(商号を東京商事株式会社に変更した旨の登記)
(iii) 目的の変更登記(従来の目的に「不動産の管理」を追加する旨の登記)
※ 実際には、登記の申請書に記載すべき事項のうち指定された事項、具体的には、登記の事由、登記すべき事項、添付情報(添付書面)、登録免許税など答案用紙の該当部分に記載することになります。

4 試験における位置付け・学習方法
商業登記法の記述式の出題数は例年、午後の部の2問中1問です。しかし、配点は、多肢択一式試験午前の部4科目35問(1問3点、3×35問=105点)、午後の部7科目35問(1問3点、3×35問=105点)、記述式試験2科目2問(1問35点、2×35=70点)の合計280点中35点であり、配点全体の12.5%を占めます。これを多肢択一式に換算しますと、11~12問に相当しますので、極めて重要な科目であるといえます。
商業登記は不動産登記に続き司法書士の業務の中心を占めるものですが、合格レベルにある受験生であっても商業登記法の記述式を苦手とする受験生が少なくありません。ですから、商業登記法の記述式を得意科目としてしまえば、他の合格レベルにある受験生と差をつけることができ、それだけ合格に近づくといっても過言ではないでしょう。
また、商業登記法の記述式の学習には、実体法(会社法)の知識や理解が不可欠であり、単に商業登記法だけを学習しても、合格点を取ることはできません。会社法は実体法でありながら、手続法に近い性質があり、会社法と商業登記法との関係は、民法と不動産登記法との関係以上に緊密です。それだけ、商業登記法の記述式においては、会社法のより深く正確な理解が求められるということです。
さらには、商業登記法の記述式は、制限された時間内に、正確かつ迅速に、答案用紙(登記申請書)を作成する答案作成能力も求められます。
難易度は、出題年度によって違いがありますが、総じて書く分量が多く、簡単に解答できるものではありません。
学習方法は、まずは、実体法である会社法を固めた上で、手続法である商業登記法、商業登記規則の条文、先例等(通達・回答)をしっかり学習することが必要です。次に、基本的な登記申請書の記載事項(書き方)を覚えること、登記記録例の研究、過去問の分析などの学習が必要です。そして、これらをマスターした後は、問題演習で実力に磨きをかけてください。特に、記述式試験は実際自分の手で答案を作成するものですから、常に自分なりの問題を解く時間(解答ペース)を意識しながら、多肢択一式や不動産登記法の記述式の解答にかかる時間を考え、時間内に一定レベルの答案を完成させるような能力を身につけておくことが肝要です。

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