元公務員のTAC講師によるコラム
元東京都職員(技術職)が語る!
理系(技術職)公務員の新人時代
◎講師紹介
矢島 講師
元東京都職員。Ⅰ類採用試験(技術職)にて入都。
技術職員として、事務所では主に設計業務、本庁では国や他自治体等との調整業務等を経験。
現在は、TAC理系(技術職)公務員講座にて、専門科目の講義、公務員試験の受験相談などを中心に講師として活躍中。
今回は、『若手技術職員の目から見た公務員の世界』をお伝え致します。
私も公務員になったばかりの頃、学生時代に思い描いていたイメージ通りだと感じるところ、そうでないところ、色々ありました…
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≪本庁と出先≫
1.勤務先は、あの大きな本庁舎じゃないの?!
公務員を志望されている方は、無事に公務員となる春を迎えた自分の姿を想像してみてください。
新しいスーツを着てカバンを持って、さあどこに向かってますか?
国家公務員志望の方なら霞が関、都道府県庁志望の方なら、各県庁所在地にあるあの大きな本庁舎を想像される方も多いのではと思います。
私も、そう想像しがちでした。公務員となる日を迎えたあの4月1日までは…
4月1日に新規採用職員が一堂に集められ式典(民間でいう入社式)が行われ、色々な書類が渡されました。
その中に、配属先の紙も1枚入っていたのです。『〇〇事務所』と書かれた辞令交付が。
「えっ、どこ…?」それが1番の感想でした。
同期となった周りの人たちも、それぞれ『△△事務所』と書かれた紙を手にし、同じような反応をしていました。
そう、国や都道府県の新規採用職員(経験者採用は除く)は、多くの場合、いきなり本庁勤務にはならず、まず2~3年間、出先で現場を経験するケースがとても多いのです。
2.出先事務所での生活
思い描いていた公務員生活のスタートとは異なる方もいらっしゃるかもしれませんが、出先での生活は決して悪いものではありません。(実際、本庁より出先事務所を好む職員も少なくありません)
出先事務所勤務の良いところ
★職場の雰囲気がとても温かい(課を超えた職員同士の交流があり、アットホーム)
★ベテラン職員さんが一から指導してくださる(『技術の継承』が常に行われている)
★とにかく現場を知ることができる(特に新規採用職員にとっては最大の学びの場)
★担当の現場に徹することができる(出先を好む職員は、やはりここに面白さを感じているのでは)
3.本庁での生活
国や都道府県庁の技術職員の場合、2~3年で本庁に上がるケースが多いと思います。
私も例に漏れず、3年目に本庁に異動となりました。
各事務所に離ればなれとなっていた同期達も同時期に一気に本庁に上がり、楽しくランチをする日も増え、急に環境が変わりました。もちろん業務内容もです。
本庁では、ミクロよりもマクロな視点を要する業務が多く、国や他県とのやりとりも増え、正直、ここでようやく『公務員っぽいシゴトしてるな~、自分!』という実感を得ました
(※何をもって『公務員っぽい』と思うかは人それぞれですが…)
ただ、やはり現場を知らずして、いきなり本庁勤務は知識・経験の面で非常にキツイ!と思います。
新人時代の最初の現場での経験が、その後の技術職員人生において本当に大事なのだと感じました。
≪新しく学ぶことばかり≫
1.専門知識は生かせないの?!
技術職で採用されたからといって、大学等で学んできた専門知識を毎日使う業務ばかりではありません。
この話をすると、『せっかくの専門知識があまり生かせないの⁈』とガッカリする方がいらっしゃる一方で、『専門にとらわれることなく色々な仕事ができるの⁈』と期待する方もいらっしゃると思います。
結論としては、専門知識を使う場面はゼロではないが、それ以上に、新しく学ぶことばかりだということです。
当たり前かもしれませんが、技術職公務員は、あくまでも『公務員』なのです。
他自治体や地域住民との調整事、予算関係もメインの仕事となることが多いのですが、さすがにこれらを大学等で学ぶ機会はほぼ無いですよね。
数式ばかりを追っていた理工系の学生さんにとっては、完全に慣れないことばかり…になってしまうのも無理ありません。
ただそこは、若手職員対象の研修で同期達と一から学ぶことが出来、配属先でも日々の業務の中で、先輩職員が手厚く指導してくれます。
2.研修
やはり研修が充実しているところもさすが公務員だなと思いました。
各職種ごとの研修も勿論ですが、新規採用職員には4月~5月にかけて、社会人としての基礎を一から学ぶ研修がしっかり用意されています。
ここで、電話の取り方、名刺の渡し方、タクシーの乗り方等など、本当に基本から学びます。
そして何といっても、この研修で職種を超えた同期と一気に交流が広まるので、このような新任時の研修は、その後の長い職員人生において支えとなる一生の仲間を作る場ともいえます。
≪横のつながり、縦のつながり≫
公務員はとにかく異動が多いです。もちろん技術職員も2~3年ごとに異動を繰り返します。
長い職員人生を考えると、相当な回数になりますね。
ここで求められるのが、やはりコミュニケーション能力ではないでしょうか。
前述したように、同期とは最初の研修等で職種を超えて仲良くなれます。
出身学部学科もそれぞれで、理系は、工学部や理工学部の土木工学科、建築学科、機械工学科、電気工学科などが多いですが、自治体によっては栄養士さん、薬剤師さん、獣医師さん等も採用しています。
そこに文系出身(法学部、政治経済学部、教育学部、外国語学部、文学部など本当に様々)の事務職さんが更に多くいるのですから、学生時代をほぼ理系の世界のみで過ごしてきた私にとって、彼らとの出会いはとても刺激的で一気に世界が広がった気がしました。
一方、配属先では、基本的に同じ職種の上司・先輩職員さんたちの下で毎日を過ごすことになります。
そのような中で、自分から信頼関係を築くことで、分からないことは分からないと言える人、自分の思いを聞いてくれる人、頼れる人に出会え、それが仕事のしやすさにも繋がっていく事と思います。
多岐に渡る事務職員の異動に比べると、技術職員は異動の範囲がある程度限られてはいるので、たとえ規模の大きい組織だとしても、年数が経つうちに、他の事務所の方とも段々顔見知りとなり、どこかの異動のタイミングでご一緒し…となり、最終的には、なんだか皆親戚のようなそんな感覚になるかもしれません。
だからこそ、日頃から周囲の職員とのコミュニケーションを大事にしている職員も多いのだと思います。
今回のまとめ
1
まずは2~3年 出先で現場を経験し、その後 本庁で勤務するケースが多い
2
職場の雰囲気が温かく、ベテラン職員が一から指導してくれる
3
新任時の研修は、職種を越えて一生の仲間を作る場ともいえる
4
日頃から周囲の職員とのコミュニケーションを大事にしている職員が多い