LET'S GO TO THE NEXT STAGE 資格で開いた「未来」への扉 #14

Profile

日置 奨(ひおき すすむ)氏

focAs会計事務所&労務事務所 代表
社会保険労務士

1987年12月生まれ。東京都出身。東京都立城東高等学校卒業。明治大学政治経済学部経済学科卒業。銀行系証券会社、精密機器販売商社で営業に従事し、2015年夏頃から税理士の友人との共同事務所設立を目標に、社会保険労務士の資格取得の勉強に励む。2016年11月に合格。都内の社会保険労務士事務所での勤務を経て、2018年9月に「focAs会計事務所&労務事務所」を開業。TACの講師としても手腕を発揮する。

【日置氏の経歴】

2012年(24歳) 4月、銀行系証券会社に就職。リテール営業に従事して好成績をあげる。
2015年(27歳) 4月、精密機器販売商社に転職。営業マンとして活躍する。
                            夏頃、税理士の友人・坂根正哉氏との共同事務所設立を目標に、社会保険労務士の資格取得をめざして勉強に励む。
2016年(28歳) 11月、社会保険労務士試験に合格。都内の社会保険労務士事務所に入所後、給与計算や労務相談などの実務経験を積む。
2018年(30歳) 9月、念願の共同事務所「focAs会計事務所&労務事務所」を開業。信頼の厚い社労士をめざす。

友人と念願の共同事務所を設立して、独立へ。
社会保険労務士の資格は「勇気」を与えてくれた。

 税理士の友人と共同事務所を設立する――。社会保険労務士の日置奨さんは、そんな思いを胸に、働きながら資格取得に挑戦。有言実行で合格を手にし、現在はその友人と立ち上げた「focAs会計事務所&労務事務所」で顧客のサポートにあたります。「社会保険労務士の仕事は人に対する責任が重い」と語る日置さんに、資格取得のいきさつや、仕事への想いをうかがいました。

「年金」の勉強は、諦めずにまずは暗記を

 社会保険労務士(以下、社労士)として独立し、東京・代々木に共同事務所を構える日置さんは、もともとは営業マンでした。大学卒業後に入社したのは、銀行系証券会社。個人を対象とするリテール営業を担当しました。

 当時、営業成績でトップを取るなど活躍しましたが、働き方を見直して3年で退職を決意します。その後、転職して医療機器を扱う営業マンとなりますが、次第に前職とのギャップを感じるように。何か資格をとってみようか――。そう考え始めたきっかけは、大学以来の友人で、税理士の坂根正哉氏との酒席での会話でした。

 「会計事務所で働いていた坂根は、『いずれは独立したい』と語っていました。その場でなんとなく、『俺も何か資格を取ろうかな』と言ったことで話が広がりました。さらに踏み込んで、『税理士と一緒にやれる仕事や資格はないの?』と、共同事務所の設立を考えるようになりました。いろいろと調べるうちに着目したのが、社労士です。労働や社会保険に関わる分野には私自身、興味がありました」

 こうして、働きながら社労士の資格取得に向けた勉強が始まります。苦労したのは、仕事と勉強の両立です。「平日は、会社の最寄駅にある喫茶店に立ち寄り、出社前の2時間を勉強に充てていました。土日は受験指導校に通い、一日7、8時間くらい勉強しました」。社労士の試験は、労働科目と社会保険科目あわせて10科目におよびます。日置さんが手こずったのは、社会保険科目の中の年金分野でした。

 「資格の勉強は理解してから暗記するケースが多いと思いますが、こと年金の学習に関してはまず暗記が大切です。すると、あとから理解が追いついてくる。年金の制度は過去何度も変わっていて、理屈通りにいかないケースがよくあるからです。諦めずに暗記を繰り返した結果、最初は不得意でしたが、いつの間にか得意になりました」

 このような工夫や努力の末に、2016年11月、見事に一発合格を果たします。合格後は勤めていた会社を辞め、都内の社労士事務所で実務経験を積みました。そして2018年9月、2人で立ち上げた「focAs会計事務所&労務事務所」が、東京・代々木で開業したのです。

 事務所名は、英語の「focus」(視点、集中)に由来しますが、本来の綴りとは異なり、「u」を「A」に変えたのにはねらいがあります。顧客である「u」(you:小さなあなた)が大きく成長して「A」(エース、第一人者)となれるよう、よきパートナーとして支えたい、という願いを込めたのです。日置さんは「このビジョンの通り、私たちは、開業間もないスタートアップ企業のサポートには積極的に取り組んでいます」と話しています。

社労士業務の先にいる「人」を大切にしたい

 現在、20社ほどのクライアントを抱える日置さんは仕事において、依頼に対して迅速に動く姿勢を大切にしています。社労士の仕事は「人に対する責任が重い」という強い使命感があるからです。

 「私が受けている人事や労務の相談は、事業の相談に通じている、という意識で業務にあたっています。従業員の働きによってプロジェクトの成否を分ける可能性もあるし、働き方を改善すればもっと売上が上がるかもしれません。事業を見据えた視点を大切にしたいのはそのためです」

 社労士業務には給与計算や申請の手続きなどもあり、ともすればエクセルや書類にばかり向き合いがちです。しかし、本人は「私の業務の先にはお客様がいて、そしてお客様の抱える従業員がいる。いいかげんなことをしては、従業員の皆さんやその家族に迷惑をかけしまいます」と気を引き締めます。近年は、政府の掲げる「働き方改革」が進み、労働にまつわる問題に関心が集まります。社労士の果たす役割は今後、ますます高まっていくでしょう。

 「社労士を仕事に選ぶには、いい時期ではないでしょうか。労働に関わる制度は今後、国が企業に対して厳しくする方向に進むのではないか。それに伴い、企業が抱える悩みごとも増えてくるはずです。そうした課題を解決できる力を持つ社労士は、魅力のある職業だと思います」

 働きながら資格の勉強に取り組み、共同事務所設立の夢を叶えた日置さんにとって、資格はどんな存在でしたか――。

 「私にとって資格とは『勇気が出るもの』でした。資格がなければ独立はもちろん、自分で仕事を取ることも考えられませんでした。独立によって、すばらしい社長や経営者の皆さんとも出会えました。そうした方々から今後も、頼られる社労士でありたいと思います」

[TACNEWS 2019年10月号|連載|資格で開いた「未来への扉」]