日本のプロフェッショナル 日本の社会保険労務士

松本 メル(まつもと める)氏
Profile

須田 修巳(すだ おさみ)氏

社会保険労務士法人sumac 代表社員

社会保険労務士

1982年生まれ、千葉県柏市出身。2006年3月、上智大学経済学部卒。同年4月、大手情報通信会社系ベンチャー企業入社。同年12月、退社。2007年、大手外資系生命保険会社に入社し、10年間総合職として勤務。2017年、同社退社。2018年、中規模社会保険労務士法人に入所。2019年、社会保険労務士試験合格。2020年、社会保険労務士登録。2022年、独立開業し、社会保険労務士法人sumacを設立。

独占業務の枠を超え、もっと大局的な視野で
DX、AI推進や介護業界サポートに関わっていきます。

 大手外資系生命保険会社の営業教育係、代理店営業部門として10年。そのキャリアを武器に、ずば抜けた営業力で売上を伸ばしているのが、社会保険労務士法人sumacの代表社員、社会保険労務士、須田修巳氏だ。開業4年目の2026年は、助成金申請でDX、AI推進や介護業界サポート領域を広げていくと豪語する。ずばり「儲かりそうだから社会保険労務士になった」と話す須田氏の生き様に迫ってみた。

外資系生命保険会社で10年間、総合職を経験

 千葉県柏市生まれの社会保険労務士(以下、社労士)の須田修巳氏は、小学校から高校までバスケットボール部に所属。中学・高校ではキャプテンを務め、部活に没頭する日々だった。

 活発でリーダー格だった須田氏は、上智大学経済学部に進学。広告マーケティングゼミだった大学4年生のときに、「学生広告論文電通賞」で全国2位の快挙を成し遂げた。

 「大学時代でひとつ言えるのは、きちんと勉強をしたということ。全国2位になった大学4年次は、相当勉強しました」

 卒業後は大手情報通信会社グループのベンチャー企業に入社。ベンチャースピリットに憧れて入社したが、わずか8ヵ月で夢敗れた。

 「ベンチャーといってもメガベンチャーのグループ会社。本当の意味でベンチャー企業ではありませんでした。入社してしばらくすると何年後にどうなるのか、先がすべて見えてしまいました。ベンチャーのわりに年功序列で、おもしろいと思えなくなったんです」

 退社後、第二新卒として大手外資系生命保険会社に転職。今度は、大手金融機関の総合職としてキャリアを積んでみようと考えた。

 「前半のキャリアは直販セールス部門の管理教育、後半は保険を販売する代理店に対する営業で売上拡大がメイン業務でした」

 このとき学んだ営業スキルと大手企業のガバナンスが、その後の大きな糧となるとは、当時の須田氏は考えもしなかった。

友人の勧めで社労士に

 須田氏が代理店営業でひたすら売上拡大に没頭しつつも、「このまま支店長、統括部長で永久に転勤族を続けるのかな」と考えていたとき、ある友人から「君は社労士に向いているのではないか」と言われた。

 「当時、会計事務所に勤めていた友人で、彼は『今きちんと中小企業経営者と向き合って話せる社労士が求められている』と言うのです」

 そして、生命保険会社時代、同僚の中で法人保険の取り扱いや社内規定の整備に精通していたのが、社労士資格を持っていた社員だった。そのとき「こういう仕事で、社会の役に立つ仕事があるんだ」と、改めて認識したことが、須田氏が社労士という資格を意識したきっかけだった。

 独学で社労士の受験勉強をスタートした須田氏は、地方転勤の異動辞令が出たのをきっかけに10年間勤めた外資系生命保険会社を退職。受験に専念した。

 まったくの独学、テキスト1冊で受けた1回目の本試験は、1点不足で不合格。翌年は受験指導校に通ってみたが、これもあえなく不合格となった。

 「受験に1年間専念していたにもかかわらず不合格。これはかなりショックでした」

 1年目は独学、2年目は受験指導校に通い、下地ができた状態で3年目に挑戦した須田氏は、独学でTACを含む模試(模擬試験)を受けたり、過去問題集や問題集をひたすら解いた。そして2019年、3回目の本試験で晴れて社会保険労務士試験に合格したのである。

 「最後の年は模試や過去問題集、問題集しかやっていません。それだけをやると穴が見つかるので、徹底的にその穴をつぶすことができました。合格までに3回受験しましたが、1回で合格できなくてよかったと思います。3年間の勉強で、社労士の理解が深まりましたから」

 2018年には実務経験を積むために中規模社労士法人に入所。30名規模の事務所でNo.2、No.3に入る実力を発揮し、東京事務所の統括責任者にもなった。講演依頼も来るようになり、士業専門誌の最優秀社労士賞も受賞。須田氏の社労士としての第一歩は、華々しいキャリアとなった。

切り札は勤務時代に培った営業スキル

 須田氏が社労士法人勤務時代に優秀な成績を残せたのは、ずば抜けた営業力に起因する。本人いわく「おどろくほどお客様を取ってくる社労士」だったという。

 「周囲が引くぐらい、お客様を獲得しました。何の苦労もなく、普通にやっていただけです。社労士業界では営業やコミュニケーション能力に自信がない人が多いため、大手生命保険会社時代に培われた営業力が、それだけでかなり他の人との差別化になりました」

 保険会社の代理店営業は、非常に厳しいノルマを達成しなければならない。それゆえ、保険業界内でももっともシビアな仕事と言われる。その営業職で培ったスキルが、社労士業界では離れわざとなったのである。

 社労士法人で4年目を迎えた須田氏は、そろそろ修業を終えようと考え始める。

 「十分というわけではないけれど、社労士として食べていける自信が持てたタイミングで、独立開業に踏み切りました」

 大手生命保険会社時代に培ったノウハウを生かして保険代理店として独立する選択肢もあったが、社労士としての独立開業を考えた理由を須田氏は次のように話す。

 「勤務時代から明確にあったのは、サラリーマンではない道で身を立てたいということ。そして、社労士ならやろうと思えば保険代理店もできます。逆に、保険代理店は社労士業務ができません。保険代理店をやるかどうかは別として、社労士なら両方できるメリットがある。そこで、幅広い選択肢が取れる社労士として独立開業しました」

 2022年、須田氏は40歳で独立開業し社労士法人を立ち上げた。

「儲かる」ための戦略は「差別化」

 開業に際して、須田氏は事務所を従業員の自己実現の場にしたいと考えていた。

 「会社というのは自己実現の場。それを私が提供しているだけで、事務所の社員が仕事を通じてなりたい自分をめざすための舞台、それが会社だと捉えています。だから、社員は自由です。なりたい自分とやりたいことをやってほしい。それを経営理念として掲げています」

 事務所を始めるにあたって、もうひとつ考えたこと。それは、なぜ社労士になろうと思ったかに起因している。

 「それは、儲かりそうだからです。稼げそうだから社労士になりましたという人に会ったことがありませんが、社労士はもっと稼げる仕事だという視点を持ったほうがよいと思います」

 それを裏付けるように、須田氏は一度もお金で苦労したことがないという。理由は単純。仕事が取れるからだ。

 「当然、そこには差別化があります。うちの場合、私自身が差別化になっています。それは外資系生命保険会社に勤務していると、営業の厳しさだけでなく、非常に厳しい内部統制、ガバナンス、コンプライアンスが自然に身につくからです。
 上場をめざす中小企業は、上場に耐え得るコンプライアンス体制、内部統制、個人情報保護、情報セキュリティの整備は当然のこと、様々なルール、マニュアルを整えていかなければなりません。大手企業がどのようなことをやっているかを、身をもって体験しました。そこを私が提案できる点は、大きな差別化になっています。
 加えて、共同代表の保坂も社労士としてかなり稀有な存在です。彼は東京大学、メガバンクを経て社労士になったという珍しいキャリアの持ち主です。彼も金融機関にいたので、大手企業のガバナンスについて、今後スケールしていく会社に提案できます。また、メガバンクの本社業務で培われた業務遂行能力、スピード、適切なレスポンスをお客様から非常に高く評価されています。紹介だけでどんどん仕事を増やしていける逸材なのです」

 須田氏、保坂氏の2人が仕事を増やし、売上を上げる、「儲かるしくみ」そのものだということだ。

▲共同代表の保坂雄樹氏と

助成金申請サービスで日本一へ

 もうひとつ、須田氏が儲かるためにやっているしくみづくりがある。

 「社労士として一番儲かる仕事。それは助成金です。助成金はなぜ儲かるのか。そこが非常に重要で、私が私腹を肥やしたいわけではありません。お金をもらえるということは、世の中に対する価値提供に対しての評価になるからです。
 通常、社労士はサービスの対価としてお金を受け取る側です。でも、助成金はお客様にお金をもたらす。それは誰だって喜びます。
 一方で社労士業界に対し助成金ニーズは高いのに、申請が難しいという理由でやりたがらない社労士が多いと言われています。それなら難しい助成金をやれば、当然価値提供が大きく評価される。それをやっていったら、うちは儲かるようになりました」

 とはいえ、助成金は労力のいるサービス。研究やスキーム作り、人材にもかなりの時間と投資が必要だ。須田氏が助成金に本格的に着手できたのは2025年初頭だ。

 差別化を図るために、今後、助成金は事務所の柱に据えていくと須田氏は意気込む。

 「勤怠管理、入退社手続き、給与計算は、作業としては非常に重要です。ただ正直に言えば、どこの事務所がやっても成果物は変わりません。変わるとしたら、スピードや正確性、あとは窓口のコミュニケーション能力。いわば差別化が難しい業務です。
 一方、助成金申請は、難しいぶん、やればやるほど差別化が図れる業務です」

 2026年には独立系事務所として助成金申請数は日本のトップクラス、日本一をめざしている。

2026年はDXと並行して人材採用

 「顧客からの紹介、会計事務所や銀行からの紹介、コンサル会社からの紹介、生命保険会社時代の知り合いや友人からの紹介…と、あらゆる人脈から多くの紹介をいただきました」

 開業から紹介のみで顧客拡大してきた須田氏は、特別な営業をしたわけではない。ただ自分の職業をはっきり伝える。そして、何をやっているか、どのような仕事をしているか、そして「自分は将来的にこうなりたい」とはっきりと伝えているだけだという。

 社労士の独占業務である書類の作成・提出代行(1号業務)と帳簿書類の作成(2号業務)は、現在、約100社と顧問契約を結んでいる。須田氏とスタッフ1名で担う助成金申請は2025年で400社に上った。

 「今のペースでいくと、2026年の助成金申請は1,000社を超えるのではないか」という予測も立つほど、助成金申請は爆発的に伸びている。

 スタッフは須田氏と共同代表の保坂氏、他に2名(社労士1名含む)の合計4名。約100社の手続き業務と約400社の助成金申請業務をこなすには、やはり人手が足りないという。

 「さらに売上を上げていくとすれば、今のメンバーだけではパンクしてしまうので、徐々に人は増やしていきます。ただ、人を1人採用するには福利厚生、場所の問題含め年間約500万円は必要です。AIによる自動化システムで、生産性を高めることに投資することも並行して考えていきます」

 2026年にはDXを進めながら、少なくとも1人は採用したいと意欲を見せる。

 須田氏が崇拝するトヨタ自動車株式会社の豊田章男会長の言葉に、次のようなものがある。

 「皆さんは、自分のために、自分を磨き続けてください。トヨタの看板がなくても、外で勝負できるプロをめざしてください。私たちマネージメントは、プロになり、どこでも闘える実力をつけた皆さんが、それでもトヨタで働きたいと、心から思ってもらえる環境を作りあげていくために、努力してまいります」
(引用:トヨタイムズ 「INSIDE TOYOTA #1 豊田章男からのメッセージ ~”自分”のためにプロになれ!~」)

 須田氏は、「私がいなくても、会社がなくても、1人でも生きていける市場価値がある人になってほしい」と、スタッフに話す。「勉強して、資格を取得して、一人前になって、自分で飯が食えるようになりたい。そんな思いの人を応援したい」と考えている。

DX・AI分野の助成金をさらに広めていきたい

 「儲かるという視点で始めた法人は、着実に伸びています。もちろん機運もありますが、市場が広がっていることも追い風になっています。昨今、労働者と経営者の関係性が非常に難しくなっており、トラブルが多すぎてプロのアドバイザーをつけなければ対応しきれない状況です。今後、社労士市場はもっと広がるでしょう。
 その背景には、インターネットの存在があります。従業員はすぐにインターネットで検索し、いろいろ調べては『本来ならこうではありませんか』と言ってきます。
 そこにAIが追い打ちをかけています。これまでインターネット検索した結果は『難しくて何かよくわからなかった』が、AIは『中学生でもわかるように説明して』と言えば、わかりやすく説明してくれます。しかも『会社を訴えたらいくら取れるか』まで過去の判例から検索して、『いくらからいくらまで』と具体的に金額まで教えてくれますから、経営者はたじたじです。
 それが私たちの市場を広げている要因でもあります」

 加えて助成金市場では、特にDXやAIに関する助成金がかなりの勢いで広がっている。

 「うちはDX関連の助成金を非常に多く申請しているので、内閣府の外郭団体と協力していくことになりました。AIとDXの分野で日本全国の生産性を高めるために、助成金を上手に活用していく。そこに社労士がアドバイザーとして関われる。これは新たな一歩です」

 もうひとつ、2026年に事務所の柱にしていきたいと須田氏が考えているのが、介護業界のサポートだ。

 「介護事業所の倒産が過去最多ペースだそうです。政府は診療報酬改定の時期を待たずに、補助金等で対応していく方針を示しています。私はこの介護業界のサポートも、積極的にやっていきたいと考えています」

 須田氏のもとには、「社労士として役立つ情報を提供してください」という依頼が多く寄せられてくる。取材当日も、午後から経営者団体の勉強会で講師を務めることになっていた。

 「1号業務と2号業務、社労士の手続き業務だけを考えても、市場は広がっていくでしょう。でも、それだけではあまりおもしろくありません。 なぜなら、この資格を使えば、もっと大局的な視野でDX、AIを推進したり、介護業界のサポートになるサービスを提供したり、いろいろなことができるからです。これは、社労士資格と実績があるからこそできることです」

 最後に社労士受験生にアドバイスをいただいた。

 「社労士をめざす方に伝えたいのは、残念ながら資格がなければ見向きもされないという現実です。だからこそ、まずは資格を取得すること。ただし、そこがゴールではなく、最低限のスタートラインです。社労士になって、そこから何がやりたいのかをしっかりと考えてください」


[『TACNEWS』日本のプロフェッショナル|2026年2月 ]

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