特集 2025年度外務省専門職員採用試験合格者インタビュー

言語や言葉の力を大切に扱い、相手の心に届く外交を

 国を背負い、世界を舞台に活躍する「外務省専門職員」。地域・言語・専門分野のスペシャリストとして、外国との交渉や文化交流、情報分析や邦人保護活動を行います。今回は、TACで学び2025年度外務省専門職員採用試験に合格した3名に、外交官をめざしたきっかけや、入省後にやってみたいことなどを語っていただきました。

写真左から

■丸山 尚起(まるやま しょうき)さん
埼玉県出身
上智大学外国語学部(在学中合格)
受講コース:総合本科生 英語対策カットType(教室+Web講座・新宿校)
受験言語:ポルトガル語
外務省での研修語:ポルトガル語

■西島 優(にしじま ゆう)さん
東京都出身
東京大学大学院教育学研究科(在学中合格)
受講コース:セレクト経済本科生(Web通信講座)
受験言語:英語
外務省での研修語:スウェーデン語

■井上 翔太(いのうえ しょうた)さん
神奈川県出身
中央大学法学部卒業
受講コース:上級セレクト憲法本科生(教室+Web講座・新宿校)
受験言語:英語
外務省での研修語:中国語

日本と他国の間に立って仕事をすることに強いやりがいを感じた

──外務省専門職員をめざした理由を教えてください。

丸山 大学1年生の秋に大学で通訳の授業を受けたことが大きなきっかけです。英語での同時通訳を学び、その授業の中で紹介してもらったアルバイト先で、実際にプロの通訳を間近で見て「自分もポルトガル語を学んだら、大好きなJリーグのブラジル人選手の通訳ができるのではないか?」とワクワクしました。そして、通訳ができるようになるために言語と文化も学びたいと思い、大学3年次に交換留学でブラジルに10ヵ月間滞在しました。ポルトガル語の学習はもちろん、現地の学生たちとの寮生活、日系団体が主催するボランティア活動など多くのことを体験するなかで、日本に対する肯定的な感情が現地に根付いていることを実感し、日本人として誇らしく感じました。この経験から、日本が国際社会において好意と信頼を寄せられる存在であり続けてほしいと思うようになり、国民レベルでの日本に対する理解と信頼を醸成する基盤づくりに携わることができる外務省専門職を意識し始めました。さらに、当時、ブラジルに在外研修中だった大学の先輩のお話を伺ったことで、より強く意識するようになりました。

西島 私の大学入学直後はコロナ禍で、キャンパスに行けない時期が長くありました。そのような中、YouTubeでスウェーデンの生活を発信しているチャンネルを見て、雄大な自然や個人主義が貫かれる社会に憧れを抱くようになりました。そこで、丸山さんと同様に大学の交換留学制度を利用し、大学3年次に約1年間スウェーデンで過ごしました。実際に行ってみると、移民・難民の問題や社会不安など課題があることもわかりましたが、全部ひっくるめて興味の尽きない国だと感じました。そして、留学経験から日本を代表する一人として働きたいという使命感や、現地で顔を合わせて行う交流を通して、お互いが相互理解を深めていくことが可能になることを身に染みて感じたことから、大好きなスウェーデンと日本の間でそれが実現できるのは外務省専門職以外にないと思い、めざすことにしました。

井上 もともとのきっかけは、大学1年生のときに行ったモンゴル旅行で、駐モンゴル大使とお話できたことです。当時、同じ大学の卒業生だったその大使がおっしゃった「日本という国を背負って働くのはおもしろいよ」という言葉に心を動かされました。ところが、在学中に受けた外務省専門職員試験は、TACに通ってはいたものの第1次試験で不合格。そこで、同じ公務員で外国と関わる機会が多い自衛官として約4年勤務しました。再挑戦しようと思ったのは、アメリカへの長期出張で通訳の仕事をして、日本と他国との間に立って知恵を絞り、さまざまなアプローチをすることに強いやりがいを感じたからです。出張のときだけでなく、長期的にこの仕事がしたいと思いました。

──勉強を始めたタイミングや、TACを選んだ理由をお聞かせください。

丸山 ブラジル留学中に知り合った外交官の先輩が強く勧めてくださったので「受験指導校へ行くならTAC」と考えていました。2024年の1月に日本に帰国し、2月までは自分が将来何をしたいのかじっくり考えたのですが、外務省で働きたい気持ちが揺るがなかったのでTACに相談に行きました。事務局の方からの丁寧な説明や井能講師のガイダンスを受け「ここなら最後までがんばれそう」と思ったのが決め手となり、3月から勉強を始めました。

西島 インターネットで検索して上位に来たのがTACでした。サイトを開いてみると合格者占有率が高かったですし、説明会で話を聞いても様々な制度が整っていて安心して勉強できると感じました。他と比較検討はせず、大学院入学と同じタイミングの2024年の4月から入会しました。

井上 アメリカ出張中、帰国したらTACに入り直すつもりで外務専門職講座のサイトを確認していました。すると、自衛隊から2023年度の外務省専門職員採用試験に合格された先輩が、この「TACNEWS」のインタビューでお話しているのを発見して驚きました。そこで「自分もやるしかない」と覚悟を決め、2024年9月に再入会、3ヵ月間は仕事を続けていましたが、12月で退職して受験勉強に専念しました。当初は働きながら勉強するつもりだったので、時間の少なさを考えると独学は選択肢になく、効率重視でTACにしました。

何もわからないからこそゼロから学べる喜びがあった

──専門試験の選択科目はどのようにして選びましたか。

井上 大学時代は法学部で憲法を履修していたことと、算数や数学が苦手なので憲法を選択しました。

西島 私はどの教科も特に苦手意識はなく、数学も楽しく解けるタイプです。大学受験で数学を勉強した感覚がまだ残っていたのと、理系よりの経済学と文系よりの国際法とをセットで勉強すると頭の中でバランスがとれるかな、と思い経済学を選びました。

丸山 総合本科生だったので、3月の間は憲法・経済学どちらの講義にも参加していました。3回目か4回目の講義を受けたころ、自分にとっては経済学のほうが現実世界に落とし込んで考えやすいと感じたので経済学を選択することに決めました。最初は何もわからず、一つひとつの用語の意味から覚えていったのですが、ゼロから学んでいけることそのものがとても楽しくて、経済学を選んでよかったと思っています。

──受験勉強中はどのようにモチベーションを維持しましたか。

井上 前回の受験を振り返ると、効率が悪い上にスケジュール管理ができていませんでした。ノートを作ることにこだわり、アウトプット不足のまま本番を迎えてしまったのです。よって今回は、テキストを見ればわかることはノートに書きませんでした。「この内容をここまでやる」という長期的な目標を立てた上で、3ヵ月ごと、1ヵ月ごとにやるべきことを小分けにし、不測の事態で消化できなくても巻き返せるスケジュールにしました。やるべきことが明確だと、モチベーションは維持しやすかったですね。前職で通訳をした海外の方との記念写真を見返し「次は外交官として働くぞ!」と自分を鼓舞するのも効果的でした。

丸山 私もブラジル留学中に現地の友人と撮った写真を机の前に貼り、勉強に疲れたときに眺めては「よし、やろう!」と元気をもらっていました。ブラジルの人たちにとても親切にしてもらったので「外交官になって恩返ししたい」と強く思えました。

西島 スウェーデンの動画を見ることで「ここに戻りたい、ここにつながる仕事がしたい」と気持ちを高めていました。ただ、研修言語がスウェーデン語になることは他の言語と比べてもまれなため、希望が通らない可能性が高いこともわかっていました。そこで、現地を訪れたことがあり、文化にも惹かれるものがある中東についても調べ、アラビア語研修の場合も想像することはしていました。

日本と相手国との関係深化に貢献したい

──受験勉強を通して心がけてきたことや、おすすめの勉強法があれば教えてください

丸山 「がんばるけれど、がんばりすぎない」を心がけていました。外務省専門職試験は長期戦なので、学ぶことが苦痛になってしまうと元も子もありません。常に一定のペースで受験勉強を進めつつ、息抜きとして週に1回、友人とスカッシュをしたり、思い切って出かけたりしました。おすすめの勉強法は何周も何周も繰り返すこと。自分は記憶が定着しづらいタイプなので、すぐ暗記できなくても繰り返し練習し、問題文を見ると手が自然に動いて適切な表現を機械的に書けるようになるまで取り組みました。

井上 「オンとオフの切り替え」は常に意識していました。私はスマートフォンが手元にあればずっと見続けてしまう人間なので、勉強中に「スマホをチェックしたい」と思ったときは「今はオンの時間、オフのときにやろう」と自分に言い聞かせていました。また、前職では幹部自衛官として責任を持たせてもらっていたので、怠けそうになったときは「部下がこの姿を見ていたら?」とイメージすることで緊張感を保っていました。

西島 私の場合は、毎日の行動をルーティン化することで勉強時間の確保や健康を維持するようにしていました。特に直前期は運動不足になりがちなので、毎朝6時に起床し、ランニング。図書館が開く午前9時から勉強を開始し、閉館する午後6時に勉強を終了。図書館の行き帰りの30分も必ず歩いていました。図書館で勉強することで、経済学でわからないことがあっても本を探して読むことでその場で解決するようにしていました。

──校舎での学習(ライブ講義など)と在宅などでの学習(Web視聴など)をどう使い分けていましたか?

西島 当初は大学院での研究と受験勉強を並行して行っていたので、自宅で時間のあるときにWeb講義の視聴をして知識を蓄えていました。論文答練(答案練習)が始まってからは積極的に校舎を利用するようになりました。

井上 在職中の平日は仕事に集中し、休みの日のみWebで講義を視聴していました。退職してからはすべての講義や答練をTAC新宿校で受けました。

丸山 講義動画を溜めてしまうと、一切視聴する気が起きなくなるので、基本的に校舎で講義を受けていました。どうしても教室講義が受けられない日は、講義動画が配信されたその日に見るようにしていましたね。

──民間企業や他の試験種との併願状況について教えてください。

井上 併願はしませんでした。不合格だった場合は、外務省専門職員採用試験の受験資格の上限である29歳まで受け続けるつもりでした。

西島 防衛省専門職員採用試験の英語区分にも合格しました。説明会に何度も足を運んで防衛省専門職にもやりがいを感じていたので「外務省専門職員採用試験に落ちた場合はここで働こう」と決めていました。大学院やTACの費用は親に負担してもらっていたため、次の年度から就職をすることは確定事項でした。

丸山 ポルトガル語を使えて、海外に日本のファンを増やすことのできる仕事を軸に考えたところ、メーカーが合致したので、心から「ここで働きたい」と思えた民間企業3社にエントリーしました。内定をいただいたことで気持ちが安定し、外務省専門職員採用試験の勉強にさらにアクセルを踏んでいくことができました。

──入省後はどのように活躍したいですか。

井上 常に最前線に立ち、現場を大事にする外交官でありたいです。現場の声を拾い集め、課題を解決する方向につなげる仕事を常に意識していきたいと考えています。

西島 日本と欧州、特に北欧地域との関係深化に貢献したいです。他地域と比べて北欧地域は日本の中でメジャーではないものの、国民同士の関心は高く、技術やイノベーションの分野でも協力していく余地が多くあります。その中で「西島さんなら」と頼りにしていただけるような外交官になりたいです。言語や言葉の力を大切にし、交渉の際は相手の心に届く言動ができるよう自己研鑽していくつもりです。

丸山 語学力を磨き上げ、要人通訳を任せてもらえるくらいになりたいです。また、将来的にはブラジルに限らず、「ポルトガル語といえば丸山」と言ってもらえるような存在になりたいです。日本の文化や歴史などを関わる国々に広めていき、日本に対する好感を育てていけるといいなと思っています。

どのような経験でも「外務省で働きたい気持ち」につながれば大丈夫

──外務省専門職をめざすにあたり、経験していてよかったことや、経験すべきと思うことはありますか。

西島 スウェーデンへの交換留学と、現地での国際ボランティアを経験してよかったなと思っています。国際ボランティアでは2週間、アイスランドとフィンランドでローカルなコミュニティに入って農作業のお手伝いや共同生活を行いました。異なる文化背景を持つ人々とコミュニケーションを取っていくことが楽しく、自己効力感を得られることに気づけました。日本を客観的に見直すことができ「日本の国益になる仕事がしたい」とも感じました。

井上 大学時代はモンゴルと中国に留学したのですが、慣れない環境に身を置くことで、以前よりも自信が持て、視野を広げることができました。普段と違う経験は日本にいてもできることなので、やりたいことがあればぜひ挑戦してほしいです。また、外務省専門職は様々なバックグラウンドの人が採用されるので、社会人としての経験は格好のアピールポイントになると感じています。

丸山 たまたまこの3人は留学の経験がありますが、外務省専門職をめざすにあたって、海外経験は必須ではないと感じています。それよりも「日本のために働きたい」「外務省に入ってこんなことがしたい」という気持ちが大切です。思いにつながっていればどのような経験でも大丈夫なので、ご自身が外務省専門職をめざすきっかけとなった原体験を大切にしてほしいと思います。

──TACを利用する中で、印象に残っていることがあれば教えてください。

井上 1回目に受験したとき、合格アドバイザーの方から「不安を打ち消すには勉強しかない」と言われ、当時は素直に受け入れることができませんでした。5年越しに合格できた今、その言葉は真実だったと実感しています。担任講師とのカウンセリングで全体の進捗を調整し、勉強や面接の悩みは合格者アドバイザーと対策、丸山さんと西島さんのようないい仲間たちにも恵まれて、TACでの受験生活は孤独を感じることがありませんでした。

西島 すべてにおいて情報量が多く、安心して受験生活を送ることができました。講師陣や受験生仲間に会いたくて、直前期には気づけば週4回以上校舎に通っていましたね。仲間同士で「外交官になったら何をしたいか」と夢を語り合い、「絶対に一緒に受かりたい」という気持ちが高まったのが、つい昨日のことのようです。先日は、TACの内定者仲間10人で「夢の国」に行ってきました。一生続く絆ができたので、入省後も助け合っていきたいです。

丸山 経済学の対面講義は人数が少なかったため、講義のあとは毎回講師に質問に行きました。「需要曲線」など、経済学の基礎用語すらわかっていなかったのですが、福嶋講師が「みんなそんなものです」「大丈夫ですよ」と前向きに受け止めてくださり励みになりました。第2次試験対策では自主ゼミに大いに鍛えられました。受講生同士で面接カードの志望動機を添削し合ったりするのですが、のちに同期となる仲間と「なぜ外交官になりたいのか」を真剣に考え抜いた時間は、今でも大切な記憶として心に残っています。

──これから身につけたいスキルや知識について教えてください

井上 研修語である中国語のレベルアップを図ると同時に、中国の歴史や文化に関しても理解を深めていきたいです。手始めに、前から読んでみたかった『三国志』に挑戦したいです。また、日本の代表として表舞台に出ていくにあたって、常に身なりを整える、言葉遣いを丁寧にするなど、基本のマナーも再確認しておきたいと思っています。

丸山 英語と研修語のポルトガル語は徹底的に学び、ふたつの言語を不自由なく使いこなせるようになりたいです。加えて、井上さんと同様に、挨拶や周囲への気遣いなど、一人の大人として当たり前にすべきことはしていきたいです。そういったことができて初めて、語学力や専門性につながっていくと考えているからです。

西島 私もまずは研修語であるスウェーデン語をマスターしつつ、どのような人とも会話ができる教養を身につけていきたいです。そのために、歴史や政治、経済などをこれからも幅広く学んでいくつもりです。個人的には建築に興味があるので、北欧を始め世界の様々な建造物を鑑賞することを楽しみにしています。

──外務省専門職員をめざす方々へのメッセージをお願いします。

西島 合格までは想像以上に大変でしたが、受験生活を通して人間として大きく成長できたと感じています。時事論文試験に向けて日々ニュースを追う習慣がつき、国際情勢にアンテナが張れるようになり、専門科目の論述練習を重ねることで文章力も以前より向上しました外交官をめざすために重ねた努力は、確実に人生の糧となると思います。がんばってください。

井上 外務省専門職の受験期を「外交官0年目」と表現する先輩がいました。決して楽な道のりではありませんが、外交官になってからも勉強は続くと考えると、今学んでいることは確実に将来の仕事につながっていることがわかりますよね。勉強をしてできることが増えていくほど仕事は楽しくなっていくので、みなさんも今から「外交官になった」という心づもりでチャレンジしてみてください。応援しています!

丸山 受験勉強には不安や孤独がつきものです。それらを乗り越えるには、自分と対峙し、外務省専門職に就きたい理由を言語化し続け、努力を重ねていくほかはありません。最後まで自分の原点を忘れず、諦めなかった人によい結果が待っているはずです。このプロセスで迷ったり、分からないことがあったりしたら、ぜひTACの講師陣や私たち合格者アドバイザーを頼ってください。一緒に働くことができる日を楽しみにしています。

[『TACNEWS』 2026年2月|特集] 

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