LET'S GO TO THE NEXT STAGE 資格で開いた「未来への扉」 #02

  
Profile

坂根 正哉氏

focAs会計事務所 代表
税理士

1988年2月生まれ。山口県周南市出身。山口県立徳山高等学校卒業。明治大学政治経済学部経済学科卒業。focAs会計事務所を開設後は、中小企業の良きパートナーとしてクライアントの財産を守るだけに留まらず、日本経済にも貢献する税理士になることを目指し、日々業務に取り組む。

【坂根氏の経歴】

2010年(22歳) 大学卒業。同年、TACの税理士講座の講師として働き始める。
2012年(24歳) 山田みゆき税理士事務所 入所。
2013年(25歳) 税理士試験に合格。
2014年(26歳) チェスナット税理士法人 入所。
2017年(29歳) 独立。坂根正哉税理士事務所を開業。
2018年(30歳) focAs会計事務所に屋号変更。

学生時代からめざした「独立」の道。
プロとして責任ある仕事を担うために、資格が不可欠だった。

組織に属することで得られる安定性ではなく、「独立」し自分の責任で仕事を切り開いていきたい――。そんなキャリアプランを思い描いている人も少なくないのではないでしょうか。
そのためには、一芸に秀でる、アイデアで勝負する、といった方法も考えられますが、税理士である坂根正哉さんは、「資格」が独立のためには必要不可欠だったと話します。そんな坂根さんに、資格の意味、独立への思いを語ってもらいました。

プロの証として自分に必要なのは、資格だった

 キャリアプランの考え方はひとそれぞれですが、坂根さんは学生時代から「独立」して働くことを志向してきました。
 「学生のころから、自分は人に言われて何かをするのは苦手だ、という思いがありました。このままでは仮に大企業に入っても、順調にキャリアアップしていけるかはわからない。それなら、自分ひとりでも仕事ができる職業に就き、独立するしかないと考えたのです」
 組織の枠にとらわれず、自分で仕事を作り出すという意味の「独立」であれば、スタートアップ企業やベンチャー企業を起業する、という方法もありますが、坂根さんは「資格こそが自分に必要なものだ」と考えたと言います。
そこには、ただ「手に職をつける」だけではなく、責任ある確かな仕事に携わりたいという思いがありました。
 「漠然とですが、なんらかのプロとして自分自身にプライドを持って仕事をしたいと考えていました。ただ、企業で専門職につくわけではなく、職人になるわけでもない。そんな自分がどうすればプロになれるのか。法的な力を手に入れる『資格』は私にとって、プロになるために不可欠な存在に思えたんです」
 経済学部に在籍していたこともあり、めざすべき資格は公認会計士と決め大学2年生から勉強を始めましたが、大学での必修授業などの忙しさから思うように進まず、挫折してしまいます。「親からの援助もあり、本気さが欠けていた」と坂根さんは振り返ります。
 危機感を抱き、心機一転を図るため目標を税理士へと切り替え、4年生から資格取得の勉強を再開。同じ失敗を繰り返さないよう、大手税理士法人に税理士として入所し、その後独立することを目標に掲げ、就職活動も行わず、自らを追い込みました。
 「もともと自分に会社勤めはできない、独立しかないと考えて始めた資格取得の勉強です。もう後がないという状況に身を置いて、必死に勉強しました。極端な言い方をすれば資格取得ができなければ、これから自分は生きていくこともできないという状態です。そうなると、勉強が大変だ、辛いと感じることもなかったですね」
 勉強を始めてから2年目、当時通っていたTACの講師から「講師にならないか」と誘われ、税理士をめざす傍ら教壇に立って自らが学んだことを人に教える立場になりました。人に教えることで自分の理解も進み、より勉強できるようになったという坂根さんですが、もうひとつ大きな心境の変化もありました。
「講師になってからは受講生の方々への思いが自分の勉強の原動力になりました。講師が先に進み夢や希望を提示できなければ、受講生の方々のモチベーションも上がりません。この時に感じた、自分のこれからのキャリアを見せることも大切な使命だという思いが、税理士としての今の私を作ってくれたとすら感じています」

堅実でありながら大きな変化ももたらすもの

 もう、自分のためだけの資格取得ではないという思いで勉強を続け、4年で税理士試験に合格。この間、講師の職と並行して2つの税理士事務所にも勤務しました。最初は規模の小さな個人事務所でしたが、次に勤務したのは都内にオフィスを構える中規模の事務所。若手の税理士として顧客を任され、「このまま事務所の中でキャリアを重ねていくのも悪くはない」と感じることもあったそうです。
 「そもそも私が資格取得をめざしたのは、独立して自分で仕事を取り、自分で責任を持ちたいと考えたからです。事務所に所属し、どれだけ顧客を任されても、どこか自分の仕事ではなく、他人の仕事をやらせてもらっているという感覚がありました」
 自分の原点に立ち返り、独立をすべきではないかという思いが募り、3年目を迎えるころ、ついに独立を果たしました。
 独立にこだわり続けた坂根氏が、次にめざしているのは、日本経済や社会に貢献できる税理士になること。税理士の主要な業務は税務会計ですが、顧客にとっては納税という義務を果たすために必要なだけです。
 「顧客のためには、法律に則って財産を守らなければ意味がありません。しかし、もし納税されなければ、国が立ち行かなくなってしまいます。さらに踏み込んで、財務の部分でも顧客を助け、顧客の利益を向上させ日本の経済に貢献する。『国家資格』である税理士には、プロとしてそこまでの仕事が求められているはずです」
 プロとして資格を手に独立することをめざし、今その資格の重みを訴える坂根さんにとって、資格とはどんな存在なのでしょうか。
 「資格とは取り組んだ分だけ、自分に何かが返ってくるものだと思います。資格のために勉強をすれば知識が得られ、独立し資格を元に仕事をすれば成果が上がる。そんなある種明快で、堅実なものでありながら、キャリアを大きく変える可能性もある。それが資格ではないでしょうか」

[TACNEWS 2018年10月号|連載|資格で開いた「未来への扉」]