タックス ファンタスティック! 第89回テーマ デジタル遺言は日本人の死生観を変えるか?
Part.9 税理士サミット編

田久巣会計事務所の代表の田久巣だ。このコラムの作者天野大輔さんは先月開催された税理士の未来を考える税理士サミットでデジタル遺言アプリ「AIユイゴンWell-B」のプレゼン動画を投影し、気づきがあったようなので、今回もゲストにお招きした。
監 子 特別ゲストです。なんと3ヵ月連続、作者の天野大輔さんです!心の声ですがほんとに出たがりですね!
大 輔 心の声なら括弧でくくりなさいよ!完全に丸聞こえだし!
監 子 (スルーしつつ)あ、そういえば11月4、5日に東京プリンスホテルで開催された税理士サミット2025に登壇されたと聞きました。心の声ですが、運よく登壇のチャンスをもらえてうれしくて自慢したかった、ということでいいですか?
大 輔 だから心の声はショック受けるから要括弧!相続ビジネスを今後強めていきたい先生に向けて、すでに取り組まれている先生たちと座談形式でお話ししたんです。ありがたいことにデジタル遺言アプリ『AIユイゴンWell-B』も士業の先生に動画で見ていただきました。デジタル遺言への期待と不安、両方をいただいたように感じました。
襟 糸 フフフ、先月に続いて繰り返しですが、相も変わらず必死ですな。「宣伝」しすぎると売れま「センデ」。なぜそんなにデジタルやAIにこだわるのか?遺言は本と一緒で基本的に紙がいいはずでは?
大 輔 え~っと、襟糸君は発言すべてが心の声かい?確かに本や遺言も紙の良さがある。味わい深いし私も紙は大好きだ。しかし、デジタルは遺言作成者や家族だけでなく、士業や税理士にとってもかなりいい理由があるんだ。
税 太 僕は元SEでデジタル信者ですけど、それでも遺言は襟糸先輩の言う通り、紙のほうが残る気がします。手書きの字に思いがこもるし、モノとしてあると安心です。
大 輔 紙のぬくもりは確かにある。だがデジタルには「消えない記憶」の強さがあるんだ。
税 太 データだって消えるときは消えますけど、比較の問題ってことですか?
大 輔 そう。クラウドやブロックチェーンの技術を使えば、改ざんされにくく、半永久的に残すことができる。火事や紛失にもあわずに安全なんだ。
監 子 なるほど、物理的に燃えないのは強いですね。
大 輔 しかも、デジタルにすれば更新履歴も自動で残る。たとえば生前に内容を少しずつ書き換えても、どの時点で何を変更したか追うことができる。税理士としても、クライアントの最新の意向を常に確認できる。AIによる分析もしやすい。
税 太 つまり、紙の遺言だと作成者も支援者も一度作って終わりになりがち。でもデジタルなら毎日生前対策をAIができるわけですか?
大 輔 そのとおり。生前の想いをよりこまめに設計・更新できる時代になってきた。
税 太 でも、士業がデジタル遺言を扱うメリットって、ビジネス的にもあるんですか?
大 輔 大ありだよ。たとえばクライアントがアプリで遺言内容を更新したら、担当税理士に通知が飛ぶとする。そこで「贈与のタイミングを見直しましょう」「不動産評価を再確認しましょう」って、継続的な関与が生まれる。クライアントもAIのフォローができる士業により相談したくなる。
監 子 紙の遺言が「点の仕事」なら、デジタル遺言は「線の仕事」ね。
大 輔 まさにそれ。士業が一度きりじゃなく、人生の伴走者になれるしくみなんだ。
田久巣 ほう、遺言がデジタルになることで、士業も「関係を遺せる」わけだな。
大 輔 いいことおっしゃりますね、田久巣先生。デジタルは冷たいようでいて、実はつながりを残すあたたかい技術なんです。
税 太 なるほど。自分としてはデジタルのメリットに納得しました。ラブレターもデジタルで書くとします。
監 子 え、何それ?渡す相手って誰?
税 太 このTACNEWSの連載のことです。読者の皆様へのラブレターをデジタル形式で今後も残し続けます!
大 輔 おーい、それは私のセリフだぞ~!
【今回のポイント】
今回の税理士サミットは未来の税理士業界がテーマであり、AIや成長拡大がキーワードだった。デジタル遺言についても法制化が迫り、関心度が増しているようだが、もちろん他のデジタル化と同様「抵抗」はあるだろう。ただその「抵抗」を「テコ」に切り開くフロンティアスピリットが大事だ。ラブレターの情熱を見習って、デジタル遺言文化を広めていきたいものだ。
[『TACNEWS』タックス ファンタスティック!|2025年12月|連載 ]
筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)
1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学・大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人等で、会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後相続専門約60年の税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」、2024年に士業のためのSNS「サムシナ」、2025年8月にデジタル遺言アプリ『AIユイゴンWell-B』をリリース。主な著書『相続でモメる人、モメない人』(2023年、講談社/日刊現代)『100億円相続事典』(2024年、日経BP)。2025年より中央経済社『税務弘報』にて「文学で学ぶ相続の知恵」毎月連載中。YouTubeチャンネル「相続と文学」配信開始。

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