タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第64回テーマ 歌人とは 士業と似てる 職業か?


税 太 困ったなぁ。何はともあれ、困ったなぁ。


監 子 どうしたの?いつもと違って、単純ね。


襟 糸 監子くん。税太はいつも、単純だ。


税 太 ひどいです。ほんとに困っているんです。今度の顧客、歌人なんです。


監 子 あら素敵。私大好き歌人さん。短歌も今は、ブームらしいし。


税 太 システムは、割と得意なんですが、短歌となると、こればっかりは。


襟 糸 フフフフフ、フフフフフフフ、フフフフフ。


税 太 あー、もう限界です!やめましょう、七五調でセリフを言うのは!


襟 糸 なんだなんだ、その軟弱ぶりは。シェイクスピアの戯曲のように、最後までずっと韻文でこのコラムを完結させるのが男というものだろう。


税 太 いやいや、襟糸先輩こそなんですか!「フフフフフ、フフフフフフフ、フフフフフ」って!ぜったい言葉が思いつかないパターンですよね?歌謡曲でいうハミングみたいな?


監 子 まあまあまあ、そんなにモメない!意味がない!困ったことを話してちょうだい!


税 太 なんで監子さんだけ、まだ七五調で粘ってるんです?


監 子 ごめんごめん!もうやめるけど、新しいお客様が歌人だなんて、最高じゃない!


税 太 それはそうなんですけど、仕事の共通点がないですし、うまくコミュニケーションができるか不安で。システム業界の話なら弾むんですけど…。あ、田久巣代表!今戻られたんですね。


田久巣 おー、ただいま。はい、これお土産。ありがたいことに、短歌の先生が短歌会で賞品として絵葉書をくれたんだ。「努力賞」だそうだ。


税 太 えー!今日は仕事ではなくて短歌会で遊んでたんですか?


田久巣 何を言うか、遊びではないぞ。でも確かに仕事なのかと言うと違うかもなぁ。言うなれば、生き方を学んでいたんだ。なんというか、歌人の方はとても士業と似ていたぞ。


監 子 どういうことですか?正反対のような気がしているんですけど?


田久巣 歌人の方は、短歌会の参加者が作ってきた短歌をとても一生懸命に読んでくれる。そして教養も専門性も人間性も素晴らしいので、「こう読めて面白い」「ここは秀逸な表現だ」などと言ってくれるんだ。私のような短歌の素人が浅はかな考えしかなく作った短歌だったとしても、先生の評マジックにかかれば、何だか名作に見えてくるんだ。


襟 糸 それがなぜ、我々士業と似ていると?


田久巣 我々も、お客様が必死で築いた財産や業績を一生懸命に観察するだろう?相続でも、税務顧問でも、だ。大局的に見たり細部を見たり様々だが、これこそ教養も専門性も人間性も必要とする。あと、経営や税務・法務も一種のアートだと言う先生もいるしな。


襟 糸 フフフフフ、フフフフフフフ、フフフフフ。


税 太 襟糸先輩、なんで今そのフフフを出したんです?しかも田久巣代表の前で失礼ですよ。そこは笑うところじゃないと思います!


襟 糸 いや笑うところだ、税太。今のは「あと」と「アート」のダジャレなんだ。短歌には言葉遊びの要素もある。田久巣代表は今、短歌に敬意を表して言葉で遊んでいるんだ!


田久巣 おー、気づいてくれたか!ちなみに絵葉書を頂いた理由は「努力賞」だと先ほど言ったが、本当はあまりにも変な短歌過ぎて「苦笑」モノだったからなのかも。あ、これも一応ダジャレだから「苦笑」してくれよな?


【今回のポイント】

歌人と士業、一見接点がないように見えるだろう。一方は芸術的で、もう一方はビジネス的な職業だ。しかしどちらもお互いにプロであり人間力を必要とする。お客様への目線もあたたかい。そんな共通点に親近感を覚えて、友人である弁護士兼歌人の竹内亮さんにお願いし、人生で初めて短歌会に参加してみたんだ。お題をもとに自分で短歌を作り、参加者が作った短歌を2首選んでコメントし、最後に作者を名乗り自作をコメントし、先生からも評を頂く。先生もお優しく、気さくにお話しして下さり、心温まる会であった。短歌会の名前は「さわらび短歌会」、先生は東直子さんと小島なおさん。短歌界のスーパースターだ。みなさんにもぜひおススメだ。


[『TACNEWS』 2023年12月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学・同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人等で会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後相続専門約60年の税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」をリリース。主な著書『相続でモメる人、モメない人』(2023年、講談社/日刊現代)。2023年、YouTubeチャンネル「相続と文学」配信開始。

▶YouTubeチャンネル「相続と文学」はこちら

X(Twitter)にてフォロー&ご感想をお待ちしております!