LET'S GO TO THE NEXT STAGE 資格で開いた「未来への扉」 #04

  
Profile

藍澤 摩智子氏

藍澤行政書士事務所 代表
行政書士

大分県出身。大学卒業後、航空会社、司会業、企業の法務部を経て、2015年度行政書士試験に合格。2016年から藍澤行政書士事務所を開設。外国人の在留資格、弁護士と共同での交通事故関連業務、会社設立を中心に、行政書士に留まらない幅広い活動に取り組む。

【藍澤氏の経歴】

2003年 大学卒業後、航空会社に入社し、航空券発券業務などを担当。
2008年 航空会社を退職。
2010年 事務所所属の司会業に。結婚披露宴や企業主催のパーティーなどの司会を務める。
2015年 行政書士試験合格。同年4月から都内にある企業の法務部に勤務。
2016年 行政書士登録し、7月から行政書士補助者に。12月には独立開業し、藍澤行政書士事務所を開設。現在に至る。

幼いころから目指してきた「独立」
偶然出会った行政書士の存在が、資格取得による独立を方向づけた。

 「子どものころから独立が夢だった」と話す行政書士の藍澤摩智子さん。その経歴は航空会社、司会業、企業法務部と多彩ですが、あることがきっかけで出合った行政書士という資格に憧れを感じ、資格取得による独立をめざしてきました
 現在は独立開業し、日々地道に業務に取り組む藍澤さんに、資格取得、独立までのキャリアパス、資格の魅力をうかがいました。

自分で仕事を選べるのは価値のあること

 藍澤さんは大学在学中から航空業界を志望し、卒業後はその願いを叶え航空会社に勤務していたものの、「いずれは起業・独立したい」という思いをずっと抱き続けていました。
「仕事が楽しくなかったわけではありませんが、自分の意図しない仕事を割り振られることもあり、自分のキャリアは自分で作っていきたいという思いが強くなり、会社を辞めました。具体的なプランを考えていたわけではなく、周囲からは大丈夫なのかと心配されていたかもしれませんが、私自身に不安感はありませんでした。これからはいろんなことに自由に挑戦できるという期待感が大きく、楽しみで仕方なかったんです」
 その後、自らの仕事と選んだのは事務所に所属し、イベントなどに出向く司会業。このときも仕事は面白く楽しいと感じ、声が出る限りは司会を続けていこうと考えたこともありましたが、独立したいという自身の原点を振り返ると、司会業に不安や難しさを感じることもあったそうです。
 そんなとき思い浮かんだのが、資格取得による独立、それも行政書士でした。
 「きっかけは、身内を亡くしたことです。行政上の手続きは東京にいる私がひとりですることになり、初めて行政書士の方に会うことになりました。当時はあまり人と話をしたくない、聞かれたくないという気持ちでしたが、その人にはいろいろと話すことができたんです。お会いした方の人間性が魅力的だったのかもしれませんが、自分もこんな人になれたらと、行政書士に対する憧れのような感覚が生まれました」
 多忙な司会業の合間を縫って試験勉強を続け、無事合格。勉強中も行政書士の仕事について具体的なイメージは湧かなかったそうですが、合格後は独立をめざし企業の法務部や行政書士事務所での補助者(資格がなくてもできるサポート役)などで、経験を積み重ねました。
 そんなとき、事務所にトラブルが起こり、勤務を続けることが難しい状況になったことから、突然の独立を迎えます。どうすべきなのか悩みましたが、十分に経験を積んだという自負もあり、独立を決意しました。
「これまでずっと抱いてきた、独立して自分で仕事をしたい、という思いが実現したことが嬉しく、地道に営業活動に取り組みました。事務所運営のために経営について学び、実践するのも楽しかったですね。自分には難しい業務を他の行政書士を紹介することもでき、自分で仕事を選べることは素晴らしいことだと実感しています」
 まだ事務所をきちんと運営できているという実感はなく、勉強が必要だと考えていると話す藍澤さんですが、自らの営業で獲得した仕事がきちんとひとつの滞りもなく終わったときは、充実感とやりがいを覚えるといいます。
 「仕事や関わる人を自分で選べるというのは、とても価値のあることです。最初のうちはまず仕事を得る必要があるので、なかなか実感できないかもしれません。それでもある程度の経験を積み重ねることで、それができるようになったときの喜びは大きいと思いますよ」

行政書士であることに留まらず幅広いチャレンジを

 行政書士として業務を続けていく中で、藍澤さんが感じているのは、資格に基づく「士業」とはいえ、本質的にはサービス業であるということ。どんな仕事でも営業スキルや人間関係が重要になりますが、行政書士の仕事は単独で完結しないものが少なくありません。
 弁護士や司法書士、税理士など他士業との関係を構築し、業務である書類提出にあたって、何度も顔を合わせる官公庁の担当者とも円滑な関係を築く必要があります。当然、顧客との関係も大切でしょう。人との関係、サービスという視点が不可欠になります。
 「私自身は行政書士を、単なる法律に関わる資格だとは考えていません。行政書士として培った営業スキルや人間関係を駆使することで、書類を作るだけに留まらない幅広い可能性を作り出せる資格だと考えています」
業務を通じて知り合った様々な業種の人から、一緒に仕事をと誘われることもあり、資格を持っていることで、自分にできることが大きく広がっていると実感しているそうです。
今後行政書士として活動していくうえで、知識や実務経験だけに留まらない人間的な部分、つまり「この人だから頼みたい」と相手に感じてもらうことが必要になると藍澤さんは考えています。
「行政書士はお客様のニーズに的確に応えていくことが求められる世界です。これまでの経験を活かして地道に活動することで、必ず結果が得られる資格でもあります。なによりも、私は行政書士という仕事に思い入れがあります。あの時出会った行政書士の方のおかげで、今、資格を手にして独立でき、自分で仕事をする醍醐味を感じることができています」

[TACNEWS 2018年12月号|連載|資格で開いた「未来への扉」]