タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第34回テーマ 得意科目・得意業務があると有利?

監 子 ねえ税太君、前回マッチングアプリで出会った人とのオンラインデートは失敗だったから、今度はこの人でリベンジしようと思うの。どうかしら?


税 太 か、監子さん、そのあきらめない精神はとっても素晴らしいと思うのですが、焦らずに一旦期間を空けたほうがいいのでは?マッチングアプリに頼りすぎなくても…。


監 子 あら、そんなんじゃダメよ。試験だって点数が悪くて落ち込んでいる暇があったらすぐ次に向けて勉強を始めるでしょ?私はこの七転び八起き方式を貫くわ!


襟 糸 「私は不得手なことは一切やらず、得意なことだけをやるようにしている」by本田宗一郎。


監 子 く~、また乱入してきて人を怒らせるような偉人の名言を言って。不得手だなんて思ってないわ。運がないだけなの!じゃあ聞きますけど、襟糸先輩の得意なことは何なのよ?


襟 糸 フフフ、僕は税金の専門家だ。特に得意なのは相続だ。そして恋愛は不得手だから一切やらないことにしている。


監 子 あ、そう。じゃあ、この名言でも食らえ!「自分が得意だと思っていることに溺れるな。物事の『本質』を鋭く透察する心を持て」byピーター・ドラッカー。


税 太 おおっと、監子さんの名言意趣返しが炸裂しました!これは初めての展開だ!まさかの反撃に怯む襟糸、更なる攻撃のタマは持っているのだろうか??次回のタックスファンタスティックは「逆襲の監子」、お楽しみに!実況のジョン税太でした!


田久巣 おーい、Web打ち合わせの予約が3人で入っているから怪しいと思って来てみたら、何を遊んでるんだ?どうやら君たちの得意分野は仕事中に遊びをすることのようだな?


監 子 所長、スミマセン…。あ、そういえばうちのスタッフの簿記美ちゃん、今年税理士試験を受けるんですよね。どの科目を受けるんですか?


田久巣 相続税だそうだ。襟糸君のアシスタントをして相続のおもしろさに目覚めたようで、すでに勉強していた他の科目よりも得意になったらしい。


監 子 そうなんだ、襟糸先輩もいいとこあるわね。人を得意にさせるのが得意なのかな?


田久巣 そうかもな。得意なことがあるのは素晴らしいことだ。ただ、監子君が引用したドラッカーの名言にある通り、その「得意」が思い込みである可能性もある。試験の場合は点数ですぐに判断できるが、仕事はそうではないから気をつけなければならない。もし誰かからその分野が得意だと認められたら、その得意を磨いて誰にも負けない特技にするといいだろう。自分の強みになり、仕事ではそれが信頼の証になるだろうから。


税 太 周りの人からの声はたしかに参考になりますね。僕もシステムエンジニアをやっていた頃は、自分は論理的思考が得意だから、これが天職だと思っていました。でも妻に、「あなたは特別論理的という訳じゃないし、それより人に好かれる人当たりのよさがいいところなんだからそこで勝負すべき」と言われて、「確かにそうかも」って思ったんです。それで、個人のお客様を相手に親身に相談に乗って役に立てる仕事をしたいと考えるようになって、この業界に転職したんですよね。


監 子 「天職」だと思っていた職業からの「転職」ね。狙って言わないところを見ると、そのダジャレの才能も得意分野かもよ?

【今回のポイント】

今回のタイトルである「得意科目・得意業務があると有利?」という質問に答えるとすれば、有利であることは間違いない。試験でも自信と余裕が生まれて精神的にラクになるし、税理士試験は科目合格制度があるから得意な科目から順に合格をめざしていくというやり方もできる。また仕事においても得意分野を持つ人たちが、それらを活かして活躍している。お客様にも「餅は餅屋」の文化が根づいてきているため、例えば税理士なら自分の得意分野に合わせて、相続特化、医療分野特化、外資系企業特化など、さらに専門分野を絞ってターゲティングする時代になってきているのだ。ただ、その得意が思い込みだと足元をすくわれる。所長の私も相続が得意だと自負しているが、それは幻想で、今晩あたり妻にダジャレを交えながら「あなたは『相続』よりも『想像』することが得意ね」と言われるかもしれない。そしてこのコラムの筆者は、想像することが得意だと思っているようだが、単にダジャレが好きなだけなのかもしれない。得意の見極めは自己判断だけでなく、やはり人に評価してもらうことが大事だろう。


[『TACNEWS』 2021年6月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ副代表/代表社員パートナー。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でシステムエンジニアとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人兼コンサルティング会社に入り、会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ入社。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年7月には会計事務所向けWebサービス「Mochi-ya」をリリース。2020年8月にはシニア世代向けWebサービス「相続のせんせい」をリリース。主な著書『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版、共著)。