特集 「好き」を仕事にするための資格

小杉 薫氏
Profile

小杉 薫(こすぎ かおる)氏

行政書士 行政書士事務所「office援」代表
犬用オーダーメイドパターン専門店「Fit Wan」店主

都内及び横浜の法律事務所で法律事務職員として相続、離婚、損害賠償請求から刑事事件まで10年間500件超の案件に携わる。2019年、行政書士登録し、行政書士事務所「office援」を開設。動物法務を取り扱う他、資金調達や許認可申請等、事業者様に対する各種サポート業務を行う。また犬用オーダーメイドパターン専門店「Fit Wan」店主として、インターネット中心に販売を展開。動物飼養歴は23年、「動物と人との関わりを、より安心・安全・快適にするためのサポート」がライフワーク。
◆保有資格:行政書士、ファイナンシャル・プランニング技能士2級、愛玩動物飼養管理士2級、トリマー、ペット栄養管理士

 好きなことを仕事にしたい。そう考える人は少なくないが、「好き」を職業にして食べていくのは決して容易なことではない。法律事務職員歴10年超、現在は独立して行政書士として活動する一方で、犬用ウェアのオーダーメイドパターン専門店も営む小杉薫さんは、「どんな資格を持って、何をしたら、自分のやりたい仕事ができるのか」を考えて行動してきた人だ。「動物と人との関わり」をキーワードに、行政書士、ファイナンシャル・プランニング技能士2級、トリマー、ペット栄養管理士と多様な資格を有して活躍する小杉さんに、行政書士という仕事の可能性や、資格を持つメリットについてうかがった。

「未来」は自分で開拓したい

──行政書士として活躍しながら、犬用ウェアのパターン販売も行っている小杉さんですが、学生時代はどのようなキャリアプランをお持ちだったのでしょうか。

小杉 学生時代は、和光大学の人間関係学部(現在は現代人間学部へ改組)で、社会学や心理学などを幅広く学びました。
 卒業後は、自分にとってどのような仕事が向いているのか、また世の中にはどのような仕事があるのかといったことを知るため、とにかく幅広く経験したいと考え、環境関連のNPOに関わったり、派遣社員として様々な企業でお仕事をさせていただいたりしていました。最初は香料会社のシャンプーなどの香りを作るフレグランス事業部という部署で、調香師の方が作る処方箋に従って原料を調合してテスターを作る仕事などをしていました。仕事は大変楽しかったのですが、まったくパソコンを使わない仕事でしたので、オフィスワークのスキルアップのため、金融機関の営業本部での融資関係のサポート業務に移行し、Windowsに関するスキルアップに努めました。こちらでは、Word、Excelはもちろんのこと、Accessを使ってデータベースをイチから構築する機会をいただくこともできました。融資等に関する基礎知識を学ぶことができ、本当にたくさんの得難い経験をさせていただいてとても感謝しています。

──幅広くチャレンジされていたのですね。

小杉 何ごとも「一生懸命やってさえいれば、なんとかなるさ」という感じで、とにかくいろいろなことに取り組んできました。
 学生時代、めざすべき仕事を特定していたわけではありませんが、単にどこかに勤めるということではなく、自分ならではの仕事が何かあるのではないか、と考えていました。自分で開拓して仕事を作っていきたいという思いが強かったように思います。とはいえ、企業や法律事務所で勤務する経験をした今は、自分で仕事を開拓することも大事ですが、勤務するというのもすごく大事なことだと思っています。きちんと仕事を教えていただき、また、社会の流れやしくみを理解することができたことは、勤務させていたただかなければ得られなかった大きな財産です。

祖母の介護で知った法律の必要性

──幅広く職業経験を積む中で、行政書士の道を選んだ理由を教えてください。

小杉 自分自身が法律に詳しくないと生きづらい世の中になっていると感じることがあったからです。大学を卒業してしばらくした頃、祖母の介護が必要になりました。介護期間は5~6年位だったでしょうか。その間、病院や施設とのやり取りを通して、「法律に詳しいというのは強いな」と感じることが度々ありました。例えば施設と契約を交わすことになっても、内容が正確には理解できないために何も言えず、法律に詳しければ意見を主張したり疑問点を質問したりできるのに、と感じる場面が多々ありました。
 そうしたこともあり、法律に関わる仕事をしながら勉強を進めてみようと考え、法律事務所の仕事を探し始めました。なかなか思ったように見つけられずにいたのですが、そんな中、「法律扶助協会」という組織に欠員が出て、職員を募集することを知ったのです。
 2006年に、経済的な理由で弁護士など法律の専門家に相談ができない方のために依頼費用の立替などを行う「日本司法支援センター(通称:法テラス)」が国により設立されましたが、法律扶助協会はこの法テラスの前身で、ここで私は申請された案件に対して費用の立替が可能かどうかを審査する業務に携わらせていただきました。このとき得た知識や経験は今でも活きており、大変感謝しています。
 契約満了後はこの経験を足掛かりに都内の法律事務所に採用していただき、念願であった法律事務職員として約6年間お世話になりました。

──その法律事務所ではどのような実務をしたのですか。

小杉 離婚や相続などの民事案件が多かったですね。また、破産管財事件を取り扱う先生がいらっしゃったので、管財事件も取り扱いました。管財事件の場合は裁判所から管財人に任命されるので、書類を受け取りに行き債権者集会の準備をします。弁護士の指示に従い債権者に通知を出し、債権リストを作成したり、利息の引直し計算をしたり、不動産価格を調べるために路線価を出したりと、破産者の債権整理を行っていくのです。この法律事務所では、基本的な実務をひと通り教えていただきました。

大好きな動物と人に関わる仕事がしたい

──そうして6年間勤めた法律事務所をやめたのはなぜですか。

小杉 法律事務の仕事も好きでしたし事務所にも大変お世話になっていたのですが、結婚して、通勤時間も長くなり、勤務を続けることがなかなか難しくなってしまいました。また年齢的にも子どもを持ちたいと考えていたので、ここでいったん落ち着こうと思い、やめることにしたのです。退職後は自宅を拠点に、子育てしながらでも自分らしく仕事ができたらと考え、模索し始めました。

──それが犬に関わる仕事だったということですね。

小杉 そうですね。犬が好きでしたので、犬用品専門のオンラインショップを開店することにしました。オンラインショップであれば自宅でできますし、時間配分も比較的自由にできるため、子育てしながらでも続けられるのではないかと考えたのです。
 私が子どもの頃に人生で最初の家族として迎えたのは柴犬の女の子でしたが、ひとりっ子だった私にとって、彼女は姉のような、母のような、妹のような存在でした。私が泣きたいときはそばに寄り添ってくれましたね。残念ながらその子は十二指腸虫という寄生虫に侵されてしまい、8歳で亡くなりました。当時私は小学校6年生でしたが、どうすることもできずその後のペットロスがかなり長かったです。大人になってからはラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーを家族に迎えて、今現在は4頭目と暮らしています。
 こうした幼少期からの「動物が好き」という気持ちから、犬用品の販売をすることにしたのですが、お客様にサービスをご提供するのであれば、気持ちだけではなく、しっかりと専門知識を身につける必要があると考え、まずは短期集中で資格取得が可能な社会人のためのドッグスクールに通い、約10ヵ月でトリマーの資格を取得しました。

──その他に、愛玩動物飼養管理士やペット栄養管理士の資格もお持ちですね。

小杉 愛玩動物飼養管理士は通信教育とスクーリングで取れる資格です。トリミングのスクールに入るか入らないか位のタイミングで通信教育を始めて、認定試験を受けて資格を取得しました。もうひとつの資格であるペット栄養管理士を取ったのは、愛玩動物飼養管理士の資格取得後ですね。こちらは主に獣医の方が取得している資格なので、例えば腎臓病の犬にはどのような食事を用意すればよいかなど、結構医学的な内容を学びます。年に何回かセミナー形式の講義があり、規定の講義を修了したのち試験に合格すると取得できるという資格で、当時は妊娠中だったのですが、少しずつ講義を受けて取得しました。

──犬が好きで、何か犬に関わる仕事をしたいというところから、次々と資格を取得していったのですね。

小杉 何かの知識を体系的に得ようと思ったら、資格の取得にチャレンジするのが一番効率的だと私は思います。いくらたくさんの本を読んでも、そう簡単に知識が頭に入るものではありませんが、試験を受けるとなると目標ができます。スクールなどを利用すれば教材も揃っているのでしっかり学べますし、何より本番の試験問題によって、きちんと正しい知識が身についたかどうかを判定してくれるわけですから、知識をしっかり得たいと思ったのなら、資格にチャレンジするのは効率がいい手段だと思いました。
 こうして犬の勉強をしながら、オンラインショップを開設し、犬用品の仕入れ販売を行っていたのですが、仕入れ販売では在庫を抱えざるを得ず、また取扱種類が多く低価格を実現できる大手販売店とは勝負にならないことを痛感しました。
 個人が大手販売店との差別化を図るには、「模倣されないオリジナリティをもって仕入れ不要のサービスを提供すること」、これをめざしていくに尽きると考えました。当時、ラブラドール・レトリバーと暮らしていたのですが、なかなか身体にフィットする犬用ウェアがなくて、あってもかなり高価でした。それならそれぞれの犬の身体に合わせてオーダーメイドかつ低価格でウェアを提供できたら唯一無二のショップになれるのではないかと考え、まずは自分でパターン(型紙)を作ってみることにしました。
 パターンの勉強をすべくスクール等に入ることも検討したのですが、犬用のものがなく、結局は独自に試行錯誤を重ねました。この作業の過程でパターン作成の効率を上げる必要を感じ、CAD(コンピューター設計・製図ソフト)を導入して研究を進めました。

──CADのスキルをお持ちだったのですか。

小杉 独学で身につけました。仕事ではWindowsでしたが、自宅ではもともとMacを使っており、資料作りの際などにはイラストレーターソフトで図を描いていたので基本的な線画は作れました。ですから何とかなるだろうとトライしてみたのです。一緒に暮らしているラブラドールのサイズをあちこち測ってはパターンを起こすという試行錯誤を繰り返した結果、首回り、胸回り、腰回り、背線(首筋のつけ根から尻尾のつけ根までの長さ)の4ヵ所を測れば、どんな大きさ、体型のわんちゃんの身体にもフィットするパターンの構造を発見することができましたので、これを基にオーダーメイドによる犬用Tシャツの受注販売を行いました。
 受注販売にしたことで基本的な仕入れは素材のみとなり利益率は格段にアップしましたし、独自開発で他に類を見ない商品でしたのでオリジナリティという点でも目標を達成しました。しかしながら、ウェアの縫製は私ひとりで行っていたため生産を追いつかせるのが容易ではなく、かといって1点もののため製造を工場に委託することもできず、製造をどなたかに依頼できるほどの安定した売上もまだ確保できなかったため、悩みは尽きませんでした。

離婚でシングルマザーになり再び法律事務所へ

──そうした犬関係の仕事は、ご出産や子育てと同時期に始められたのですね。

小杉 はい。でも、犬関係のお仕事はその後まったくできなくなりました。私が離婚をしたからです。当時娘はまだ2歳だったので、ひとりで子どもを育てていくのに当時の売上では安定収入には程遠く、実家に戻って改めてどこかにフルタイムで勤務する必要に迫られました。子育てしながらのフルタイム勤務に不安があったため、まずは短期間の派遣社員として再スタートしてみようと考え、2ヵ月の契約で勤務させていただいたところ、なんとかやっていけそうでしたので、契約満了後には正社員として勤務開始できるよう派遣業務と並行して就職活動を行いました。

──その頃の娘さんのお世話などはお母様にお願いしていたのでしょうか。

小杉 よくそう聞かれるのですが、お願いしていたのは私が用意した食事を一緒に食べてもらうことぐらいで、基本的には私から娘の世話やその他の家事をお願いすることはありませんでしたね。
 経験もあり好きでもあった法律事務の仕事を改めて探してみようと思ったのですが、希望する条件の募集を見つけることは難しく、CADが使えたことから機械設計の会社に採用していただくことができましたが、この会社は製造なども行っていた関係で仕事が非常にハードで、朝8時に出社して帰るのは夜10時、残業代は出ないといった状況で、結局、娘の送迎は親にお願いするしかなくなってしまいました。これ以上この生活を続けるのは不可能だと考え、この仕事を続けながら改めて法律事務職員の仕事を探しました。とはいえやはり都心とは違い自宅から1時間以内で通勤できるエリアでは、パートの募集はある程度あるものの、正職員の募集がとても少ない状況でした。ですがある日、たまたま見た就職情報誌に、希望するエリアにある法律事務所の正社員募集が掲載されていたのです。締め切りぎりぎりでしたが、試しに履歴書と職務経歴書を送ってみたところ面接に来ないかと言っていただき、そのまま採用していただくことができました。あのとき諦めずに応募して本当によかったと思います。

──その法律事務所ではどのようなお仕事をされたのでしょうか。

小杉 最初に勤めた法律事務所と同じく、民事事件が多かったですね。離婚や相続、損害賠償請求など、刑事事件も何件か扱いました。それから事務所の先生が特殊で、マンション管理案件を熱心にやっていらっしゃったのです。女性の先生ですが、弁護士になって50年という凄いキャリアをお持ちで、マンション管理法務の先駆けのような立場の方でしたから、そうした案件もかなりありました。管理費の滞納問題や住民トラブルなどが多かったですね。この法律事務所には2015年1月から2019年10月までお世話になりました。

仕事と子育てと試験勉強

──行政書士試験の勉強を始めたのは2015年4月頃からでしたね。

小杉 法律事務所に勤務が決まったら行政書士の資格取得に向けて勉強すると決めていました。なぜ行政書士かというと、法律事務の経験を活かしつつ大好きな犬にも関わることができる仕事が見つけられないかを模索する中で、「動物法務」という分野があり、これに取り組む行政書士の方々がいらっしゃることを知ったためです。まさに「これだ!」と思いました。
 犬や猫などの動物は、飼い主にとっては大切な家族でも、民法上は「物」と捉えられているため、その動物たちの命を守るための法律が十分整備されてはいません。けれども例えば、飼い主さんが亡くなられたあと、遺された動物の暮らしを安心して引き継げるよう、動物を「信託財産」にするという方法があります。信託財産にすれば、例えば現金200万円を動物の飼養のために信託するという内容の信託契約書を作成しておくことで、その金額とその動物を相続財産から切り離しておくことができて、安心して別の方へ引き継いでもらうことができます。そうした書類の作成を行政書士の方がメインでやっていると知り、それならば行政書士をめざしてみようと思ったのです。

──働きながらの子育てと試験勉強の両立は、どのようなスケジュールでこなしていたのでしょうか。

小杉 本当に時間がなかったですね。当時は朝5時や、起きられる日は4時に起きて勉強しました。7時半前には家を出て娘を保育園へ送ってから出勤。お迎えの時間は夜7時がリミットでしたが、いつもぎりぎりでしたね。帰宅したら夕食の準備をして諸々の家事をやり、娘を寝かしつけてからまた勉強。あとは土曜日を使って勉強していました。本当は学校に通って勉強したかったのですがその時間はありませんでしたし、通信講座を受けるといっても、1コマ何十分もある講義を見るまとまった時間は取れないので、細切れの時間にテキストを読んで勉強する選択肢しかありませんでした。そこで、TAC出版の『合格革命』シリーズのテキストを全部PDFに変換してiPadに取り込むという方法を使いました。このテキストは『行政書士独学道場』というオンライン講座の教材にもなっていましたし、私にとってとてもわかりやすく、活用しやすいテキストでした。私は書き込みをしないと頭に入らないタイプなので、取り込んだPDFへの書き込みを可能にするノートアプリ「GoodNotes」を使い、テキストのキーワードに印をつけたり、気づいたことをメモしたりしました。この方法にしたことで、重いテキストを持ち歩かなくても、思い立ったときに必要な箇所をその場ですぐに確認して勉強することができて、本当に便利でしたね。

行政書士事務所とショップ経営を両輪としてスタート

──自分の置かれた環境に合わせて勉強方法を工夫するというのはとても大事なことですね。そうして2018年の試験で合格したのですね。

小杉 途中、家族の事情で1年だけ受験しなかった年があったので、3回目での合格です。合格したときは本当に安心しましたね。行政書士の試験は11月に実施されて1月まで合否がわかりませんから、合格発表までの時間を利用して、ファイナンシャル・プランニング技能士2級の資格も取りました。また2019年1月の合格発表後は、行政書士になれることは決まりましたが、行政書士登録ができるのが4月ですから、ここでも身体が空きます。そこで地元の商工会議所が実施している「創業塾」という創業支援のセミナーへ通い、独立開業のための事業計画を策定しました。

──法律事務所に在籍したまま行政書士として働くということは考えなかったのでしょうか。

小杉 勤務していた法律事務所の先生からは、将来独立開業するつもりがあるのなら最初から個人で登録したほうがいいとアドバイスをいただきました。その法律事務所に間借りする形で開業してはどうかともご提案いただいたのですが、行政書士登録には事務所の住所が必要で、もし間借りするなら転貸契約が必要になり手続きが煩雑になってしまうということで、登録は自宅の住所で行いました。4月の登録後もしばらくは法律事務職と行政書士のダブルワーク状態でしたが、本格的に行政書士としてやっていきたいということで10月に退所しました。先生には私の事情を常によく理解していただき、たくさんのご配慮をいただきました。本当にお世話になり、心から感謝しています。

──独立する際はどのような事業計画を考えていましたか。

小杉 現在は少し状況が変わっていますが、行政書士事務所を開くにあたっては動物法務を専門に扱いたいと考えていました。そして事務所経営もひとつの事業ですから、起業ノウハウを知っておきたいと考えて創業塾へ通ったのです。そこで事業計画を策定する中で、収益方法が1つだけでは何かあったときに収入が不安定になるだろうと思い、リスク管理として、2本立てでいこうと考えた結果、犬用ウェアのオーダーメイドパターン専門店「Fit Wan」を同時開業することにしました。以前はオーダーでドッグウェアを作っていましたが製造作業で大きな負荷を感じたことから、「Fit Wan」は製造品ではなくパターンそのものの販売に商材を切り替えました。
 また、商品を受け取ったらすぐに作れるよう、裁断済みの生地と糸をセットにしたキット販売も行っています。ドッグウェアそのものを販売するわけではありませんから在庫リスクも労力も少なく、行政書士の仕事との両立も可能です。何より動物と人との関わりをサポートするという目標を、法務以外でも叶えられる点がいいと思いました。

「好き」をライフワークに事業計画をブラッシュアップ

──行政書士事務所と「Fit Wan」の同時開業で、顧客開拓はどのように行っていきましたか。

小杉 まずは「Fit Wan」のオンラインショップを立ち上げて販売を始めました。当初まったく宣伝はしていなかったのですが、インターネット検索で見つけて注文してくださるお客様が結構いらっしゃるので、とてもありがたく思っています。パターンを販売するだけでなく、夏には場所をお借りして「わんちゃん用ラッシュガードの作り方教室」というイベントも開催しました。2回ほど実施して、お客様も結構来てくださいましたね。そこで今度は横浜の「鎌倉スワニー」という生地屋さんのフリースペースをお借りして教室を開く予定にしていたのですが、ちょうどそのタイミングでコロナ禍になってしまいましたので、しばらくは教室を休止して、代わりに今はホームページに作り方動画をアップしています。
 行政書士事務所のほうは、動物法務を専門にやろうと考えてからは積極的に動物関係の人脈を作るようにしました。創業塾に通っていたとき、広報用のウェブサイト作成をテーマにしたセミナーで、先生がご自分の作ったサイトの一例を紹介してくれたのですが、それがたまたま動物クリニックのサイトだったのです。私は犬と暮らしていますので獣医さんには個人的に教えていただきたいことがありましたし、ぜひお話をうかがいたいと思って直接ご連絡して会いに行きました。お会いしてみたら同世代の女性ということもあって仲よくさせていただくようになり、そこからネットワークが広がりましたね。それから、聴導犬の育成をしている団体の理事長をしている方ともお知り合いになりました。今うちの家族となっているビションフリーゼというわんちゃんは、聴導犬になる子犬のお母さんをしていたのです。7歳で繁殖を引退したので我が家へお迎えすることにしました。獣医さんやブリーダーの方、ペットサロンの事業者さん、聴導犬協会の方々などと一緒に、多角的に動物をサポートする活動を広げていけたらと話し合っているところです。

──お仕事は現在、どのような状況ですか。

小杉 コロナ禍で社会状況が大きく変わったこともあり、収入的には行政書士の仕事が95%を占めています。補助金に関する申請業務がかなり増えてきましたね。また、そうしたお仕事から派生して、許認可申請やその他諸々のお仕事をご要望いただけるようになりました。当初は動物法務のみを行政書士業務とすることをめざしていましたが、現在は事業者様のお手伝いに関する業務がメインとなりつつあります。
 動物法務の相談に関しては、今のところほぼボランティアベースになっています。ご事情柄なかなかご請求しにくいといった場合も多いので、この分野では、収益よりも動物と人との幸せな暮らしのために力を尽くしていくことを目標に、取り組んでいきたいと思っています。
 「Fit Wan」についてはまだまだ周知が足りておりませんが、少しずつご購入者様が増えてきているところです。コロナ禍が落ち着いたらどこかの会場で教室を再開したい気持ちもありますが、行政書士事務所「office援」と「Fit Wan」の両事業をどう進めていくべきなのか、改めて見直す段階に来ていると思っています。行政書士としてお客様の事業計画作成のお手伝いをしておりますが、自分自身の計画にはなかなか手が回らず模索中の状態で、そんな私がこれから資格取得を考えている方たちにメッセージをお送りするのはおこがましい気がしますね(笑)。
 とはいえ当面の目標でいうと、次の段階として、中小企業診断士の資格を取ろうと考えています。中小事業者様のお手伝いをさせていただくことが多いので、より深い知識をつけるためにも、必要な資格だと思っています。実はすでに受験もしていて、今は1次試験全7科目中、3科目まで合格しているところです。「好きなことを仕事にするのは難しい」などとよく言われますが、自分なりのやり方を模索して、自分の中で改善しながら進んでいけば、きっと光が見えてくると思います。みなさんもぜひがんばって下さい。

[『TACNEWS』 2021年4月号|特集]