特集 「得意」を強みに、中小企業診断士としてはたらく

  
島谷  健太郎氏
Profile

島谷 健太郎氏

リンクウィルコンサルティング
中小企業診断士

島谷 健太郎(しまや けんたろう)
1980年(昭和55年)生まれ、神奈川県出身。東京都立大学大学院理学研究科修了後、医薬系企業に就職し、2008年からは大手建材・工業製品メーカーの知財室に勤務。国内外の特許や商標調査など製品開発支援・権利獲得に関するスキルを磨く。勤務のかたわら中小企業診断士の試験勉強を始め、2014年1次試験合格。養成課程を経て中小企業診断士に登録。2015年にリンクウィルコンサルティングを開業。現在は中小企業基盤整備機構などからの行政の業務を中心に活動。

 大手メーカーの知的財産担当部署で働きながら試験勉強に励み、中小企業診断士の1次試験に合格した島谷さん。当時すでに家庭のあった島谷さんだが、会社を辞めて独立する道を選ぶ。共働きの奥様に一時は家計を支えてもらいつつ開業、現在は行政の仕事を中心に経営コンサルタントとして活躍する。「企業の永続は経営者だけでなく、従業員とその家族にまで関わる問題。コンサルティングはやりがいのある仕事です」と言う島谷さんに、中小企業診断士の魅力をお聞きした。

知的財産に関する興味から、経営、そして中小企業診断士の道へ

──島谷先生は大学院理学研究科を修了されていますが、どのような経緯で中小企業診断士をめざすことになったのでしょうか。

島谷 もともと、独立志向が強いというか、実家が会社を経営していることもあって、企業経営に対する興味はありましたね。また、現在中小企業診断士の業務の中で得意としている知的財産関係の分野は、学生時代から興味を持っていました。実は初めは弁理士になりたいと思っていて、最初に就職した治験などをする医薬品受託会社で、社員として働きながら弁理士試験の合格をめざしました。受験指導校の講座を受けて勉強し、その会社に勤めている間に短答式試験に合格しました。知財に関する基礎知識が身についたので、2008年、若手の理系出身者を募集していた大手建材・工業製品メーカーの知財室へ入ることになりましたが、入社後は実務を覚えるので精いっぱいでしたし、資格を推奨するような会社ではなかったので、弁理士試験の勉強は2年目くらいで辞めてしまいました。

──知的財産担当の部署では、どのようなお仕事をしていたのでしょう。

島谷 知財室では、国内外の特許や商標の調査、権利取得のための業務などを担当しました。また、特許データベースの管理もしていましたが、これは画面設計やデータベースを用いたワークフローなどを作るところも手掛けています。そこでの仕事が専門的な内容だったことや、当時の会社では知財が経営に役立っているという実感がなかなか得られず満たされない気持ちがあったこともあり、次第に「もっと広い視点から会社運営を捉えてみたい」という思いが生まれ、働きながら中小企業診断士の試験勉強を始めることにしました。2013年の夏に1次試験7科目のうち「経営法務」と「経営情報システム」に合格し、その後、他科目の勉強をして、翌2014年に残りの5科目に合格しています。

──フルタイム勤務をしながら中小企業診断士の資格試験をするのは大変だと思うのですが、どのように勉強時間を確保していたのでしょう。

島谷 内勤で残業の少ない部署なのは幸いだったと思いますが、それでも楽ではなかったですね。会社では、同じ部署の仲間で昼食に行く人が多いのですが、私だけファミリーレストランやファストフード店に行って、食事しながら勉強する時間を作ったりしました。夕方も、残業がなく切り上げられる時はすぐに帰って勉強です。1日4~5時間は試験勉強に充てるようにしました。
 もともと理系出身でしたから、文系的というか、経営や財務などに関する知識が無かったのでその点はかなり苦労しました。勉強はとにかく反復学習です。何回も同じ講義を見て過去問題を解く。ひたすらインプットとアウトプットを繰り返して知識を定着させました。特に経済の勉強に関して言えば、TACのWeb通信講座はとても分かりやすくて、理解するのに役立ちました。

35歳で会社を辞め、独立開業をめざす

──1次試験に合格した時点で、入社6~7年の中堅社員ですね。大手メーカーを辞めて独立開業する道をめざしたのはなぜですか。

島谷 初めから、資格を取ったら転職するか独立するかのどちらかにしようと考えていました。もともと独立志向は強かったですが、当時は自分の中で、特に勤めていた会社における知財というものに疑問をもってしまった時期でもありますし、会社の人間関係に悩んだ時期でもあります。もともとの自分の独立志向に加えて、独立のほうがより広く様々に人とのつながりや視点をもつことができるかもしれないという気持ちになっていました。

──メーカー勤務の期間にご結婚されていらっしゃいます。会社を辞めると言った時、奥様は反対されなかったのでしょうか。

島谷 共働きで当時はまだ子どもも生まれていなかったので、わがままを聞いてもらった感じです。資格を取ることは理解してくれていましたし、自分は思ったことには突き進んでしまうタイプなので、「言ってもどうせ聞かないのだから好きにしたら」という感じでした(笑)。2015年の春に退社し、半年間の養成課程を修了して中小企業診断士の資格を取得、10月には中小企業診断士登録をしました。11~12月頃には、独立開業するなら中小企業診断協会に入ったほうが良いと思い、東京・千葉・神奈川と3つの協会の説明会に参加しました。その中で、地理的にも雰囲気的にも神奈川が一番合っていると感じたので、神奈川の中小企業診断協会に入会しました。開業は2016年4月で、それまでの間にもらっていなかった失業保険をもらって開業の準備をしていましたが、やはり妻に家計を支えてもらっていた時期でもあります。ここは感謝しないといけないですね。

──中小企業診断士は有資格者同士のつながりが強いと聞きますが、いかがでしょう。

島谷 中小企業診断士には独占業務というものがありません。でも、お客様となる中小企業が抱えている経営問題は本当に広範囲にわたりますから、ひとりで全ての問題に対処することは難しい。そこで、もし他の診断士の方に知的財産関係の案件が来れば私を知財もわかる経営の専門家として呼んでもらったり、逆にこちらの案件で物流に詳しい人が必要となれば物流の専門家を連れてきたり、といったつながりが必要になるのです。法務、財務、人事、情報システムなど、さまざまなバックグラウンドから中小企業診断士になる人がいるので、個人個人が専門分野を強みとしてコンサルタント案件に応じて、必要なときは他分野を専門とする仲間と組んで仕事をするといった感じです。ですから自分の専門性はとても大切になってきますね。

──中小企業診断士の方は、バックグラウンドが多彩で専門分野化しているのですね。

島谷 中小企業診断士は、前身の中小企業診断員を含めて60年以上の歴史のある資格であり、かつては役所関係の方が資格を取ることが多かったようです。今は本当にいろいろなバックグラウンドの方が診断士の資格を取っています。
 実は独立する方は2~3割程度と少なく、資格を取った方の7~8割は企業内に在職しています。中小企業診断士試験とMBA(経営学修士)の学習内容はかなり重複する部分があるので、中には中小企業診断士の資格を取ることが管理職になるための要件の1つになっている企業もあります。企業内にいて中小企業診断士を取る方は、1次試験・2次試験に合格後、実務従事・実務補習を経て中小企業診断士登録をする方がほとんどです。勉強仲間には、聞いてびっくりするような世界的大企業に勤めている方もいましたよ。
 独立開業する方は割合としては少ないですが、前職での専門分野を活かして活動する方が多いですね。私も、前職までのキャリアや弁理士試験の学習や知財実務で身につけた知識を、今の専門分野として活かせていると思います。
 また、専門分野という意味では、ダブルライセンスを持っている方も少なくありません。比較的企業とつながりの強い士業である、社会保険労務士や行政書士などの方が中小企業診断士を取得するというパターンの他にも、弁護士で中小企業診断士の資格をお持ちの方もいますし、昨年は弁理士で中小企業診断士の資格を持っているという方にもお会いしました。
 独占業務がないことで外の専門の人とつながりやすいという点はこの仕事のメリットなので、自分にしっかりした専門性を持って、お客様を始め周りの人たちに「自分は何ができるのか」をアピールできると良いと思います。

行政の経営支援機構などで、コンサルティングのキャリアを積む

──2016年に独立された島谷先生。開業後はどのようにして仕事を広げていかれたのでしょうか。

島谷 中小企業診断士の仕事を大きく分けると、行政から依頼される仕事と、自ら営業活動をして取ってくる民間企業のコンサルティングの仕事という2種類があります。私は行政からの仕事を中心に活動しています。具体的にどんなことかというと、行政が中小企業へ専門家を派遣するような活動をしているので、専門家としてそこで仕事をしています。
 「神奈川県よろず支援拠点」という、公益財団法人 神奈川産業振興センターが受託・運営している国の事業があります。「よろず支援拠点」は、国が設置した中小企業・小規模事業者のための無料経営相談所で、全国47都道府県それぞれにあるのですが、その神奈川県の拠点で週2~3回経営相談を受け持っています。製造業から小売業、サービス業など、多くの中小企業の相談を受けていますね。

──中小企業診断士の資格を取れば、誰でも行政の仕事ができるのですか。

島谷 独立している診断士は少ないですし、行政からの需要は常にありますので、きちんとした仕事をしていれば依頼が来るようになります。ですから独立を考える人に言いたいのは、中小企業診断士は独立して食べて行ける資格だということです。先に言ったように、中小企業診断士の有資格者は、7~8割が企業に勤めているいわゆる企業内診断士で、独立開業している診断士の数は少ない。他士業の方にお会いすると「独立している中小企業診断士の人には初めて会いました」と言われることもあるほど企業内診断士率は高いのです。特に地方では診断士自体の数が少ないという話はよく聞きます。
 また行政から中小企業診断士協会へ来る仕事もあって、そういった仕事もやっています。神奈川県の中小企業診断協会は「金融機関連携支援プロジェクト」を行っているのですが、経営者の方が金融機関から事業資金を調達する際のサポートをしている行政の金融機関(信用保証協会)などから、「この会社の経営を改善するための計画策定をしてほしい」という風に依頼が来るのです。そうした依頼を受けて、専門家として事業計画の策定やアドバイスをしています。
 他に、民間資格である「食の6次産業化プロデューサー」関連の仕事にも関わっています。「食の6次産業化」とは、生産(1次産業)、加工(2次産業)、流通・販売・サービス(3次産業)の一体化や連携により、食分野で新たなビジネスを創出することですが、その活動を神奈川の協会が専門家としてサポートしたり、セミナーを開いたりしています。こうした活動に取り組む姿勢を診断協会の方に認めていただいて、仕事が回ってくるという感じです。

──行政の無料経営相談というと、それこそさまざまなレベルの経営者が相談に来ると思いますが、知的財産関係の専門知識が活かせた例などはありますか。

島谷 担当した中小企業には、あまり知的財産権に関係ない会社が多かったですね。経営相談の仕事を2017年から始めて、今まで130社ほど対応してきましたが、知財関係の相談は1~2件あったかという程度です。創業して間もないこれからという会社がいきなり特許を取りたいと相談に来ることは稀ですね。まずは「いかに経営を軌道に乗せるか」というご相談が多いですし、実際には、専門知識よりもっと初歩的な知識がアドバイスとして有効なことも少なくありません。ちょっと失礼な言い方になるかもしれませんが、中小企業の経営者の中には経営面の知識を持たずに事業を始められる方もいらっしゃいます。そうした方々へ、考えられている事業の中で売上が上げられるポイントやタイミングなどの経営的なアドバイスを少しお伝えするだけでも、状況がグンと改善されることがあります。実際に事業をなさっていて現場感覚をお持ちのところに、後から土台となる知識が加わると強いのでしょうね。
 また、経営がうまく回らずに銀行から百万円単位でお金を借りている方が相談に来ることもあります。その場合は資金繰りをどうすればいいかというお話から始めて、どのように販路を広げられそうかなどの営業的な提案まですることもあります。大企業なら普通にやっていることができていなかったりするので、そうした部分を指摘したりします。また、利用できる行政の補助金制度や制度融資にはどのようなものがあるかなども含めて、多角的にアドバイスします。アドバイスをして変えた結果「ここがこう上手くいきました」と言われるのは嬉しいですね。

──民間の経営コンサルタントに頼んだらかなりの料金を請求されそうな内容を無料で相談に乗っているのですね。

島谷 創業したばかりの事業者や小規模事業者、中小企業でも本当の中小企業のための「支援」としてやっていることですから。「よろず支援拠点」もそうですが、官公庁は中小企業のためにさまざまな支援策を用意しています。産業振興センターが、仕事を発注したい企業と請け負いたい企業のマッチング商談会を開くなどもそうですね。行政の仕事をしていると、国を含めた行政側の制度に詳しくなるので、その中から相談に来られた企業に役立ちそうな情報をできるだけ紹介するようにしています。融資もそうですし、補助金もそうです。もっと活用できるのにという方々へ、情報を届けるようにしています。

──せっかく国や行政が中小企業を支援する施策を用意しているのに、中小企業が知らないのはもったいないですね。

島谷 経済産業省がやっている「ものづくり補助金」などは、利用できれば企業にとってはかなり大きな補助になります。事業規模によって上限が分かれていますが、3分の2や2分の1といった補助が出ますから。業種も工業、商業、サービス業などが広く対象になります。ただ採択率が低くて、いちばん低い時では申請件数に対して30%程しか採択されません。普通に事業者さんが書いた事業計画書では通りにくいのが現状です。そこを専門家としてアドバイスして、申請が通るよう一緒に事業計画書を作り上げていきます。「金属加工設備を新しくしたいけど2千万円かかる」と悩んでいた企業に「3分の2まで補助が出ますよ」ということで「ものづくり補助金」の申請をして、1,000~1,500万円の補助が出たケースもありました。申請の採択が難しい中で通ったのですから、それは感謝されます。
 会社経営は、経営者だけでなく社員やその家族の生活にも関わってくることですから、経営コンサルタントの負うものは大きいのです。自分のアドバイスで事業が安定した、好転した、ということがあると、大きなやりがいを感じます。

──島谷先生のアドバイスで事業計画書を作って、補助金申請したという会社は何社くらいあるのですか。

島谷 20社くらいあるのではないでしょうか。仲間うちで仕事としてやっているものもあるので、これを含めると件数はもう少しあるかもしれません。
 「ものづくり補助金」には税金が使われるので、補助金を出して終わりではありません。補助金は清算払いですが、補助金の対象事業は「補助事業」と呼ばれ、補助金の入金後も、実際に事業化されたのかということも見ていき、検証して助言するのです。「ものづくり補助金」は各都道府県に1つずつ事務局があって、そこで補助事業がしっかりと遂行されるための検証と助言をしています。私は申請の支援を行政や個人の仕事として行う以外にも、事務局から検査員として企業へ訪問するという事務局の仕事も行っています。

──補助金申請支援に関しては、まさに専門家というわけですね。

島谷 中小企業診断士として仕事をする中で、スキルアップしてきた感じですね。企業の相談に乗っていて感じたのですが、中小企業診断士に求められることは、経営面を含めての「業務改善」であることが多いです。どのように業務を改善していくかはケースバイケースですが、資金的状況を改善するためには補助金申請も有効な手段だと思います。

仕事を通して広がった視野が、将来のビジョンを変えていく

──島谷先生は36歳で独立開業されていますが、経営コンサルタントとしては若いほうですか。

島谷 神奈川県でも30代で独立している方は少ないと思います。だからこそ人間関係の構築が重要です。中小企業経営者の多くは年長者ですから、いきなり行ってもまず相手にされないでしょうね。「よろず支援拠点」のような、行政が行う経営相談や経営支援セミナーなどに専門家・講師として行く場合は、そこに来る方は実際に問題を抱えていらっしゃる方が大半ですから、支援するという話になりやすいです。
 また、行政の仕事を中心にはしていますが、民間で顧問契約をしている会社も多少なりともあります。大抵「ものづくり補助金」の申請支援からのお付き合いなのですが、私は「ものすごく丁寧な仕事をする」と評価していただいています。
 補助金申請で事業計画書を作る場合、規則的には2期分の決算書をもらって判断するのですが、私は3~5期分もらって分析します。採択の可能性を高めるためにということでもありますが、コストなどを積み上げで見ることで、できる限りその後も事業に使えそうな計画を作るように心掛けています。
 経営コンサルタントはサービス業なので、“提供するもの”が見えない仕事です。同じサービス業でも、例えば美容師さんであれば、髪型がどうとかカットが上手いとか目に見えて判断できる部分がありますが、コンサルティングは簡単に結果も出ませんし、仕事の期間は長期にわたります。結局どこを見てもらえるかというと、仕事に対する姿勢も大きく関わるのです。

──着実に実績を積んで来られて、今後はどのようなビジョンや方向性をお持ちなのでしょうか。

島谷 中小企業診断士として数多くの会社を見てきて、事業を永続させていくということがいかに大事かを考えるようになりました。とりわけ、「事業承継」の重要性を感じています。中小企業診断士が関わる事業領域としては、創業に関する部分、改善あるいは再生しなければならない部分、そして事業承継の3つがありますが、高齢化が進む中、事業承継の問題は今後ますます大きくなっていくと思われます。それから個人的にも、実家の事業承継のことが気になるようになりました。

──ご実家は、会社経営をなさっているのでしたね。

島谷 神奈川県内で介護・福祉用品などの卸売・小売等の会社をやっています。来年で設立40周年になるのですが、当初から介護用品販売で事業を始めていますので介護用品の分野ではかなりの古参です。今は弟が会社に入っていますが、親も高齢になって先が気になっている状況です。事業継承ができなくて廃業に追い込まれる企業も増えている中、実家の会社の今後をなんとかしなくてはという気持ちになってきました。以前は正直「親の会社なんて…」と思っていた時期もあるのですが、中小企業診断士の視点で物を見るようになって、事業経営というものに対する考え方が変わりました。
 先日、すでに会社にいる弟と今後について話をしました。弟も「2人でやっていきたい」と言ってくれたので会社に入ることも考えなくては、と思っています。実家の会社で自分がどういう立場になるかはさて置いて、「事業承継」という問題に当事者として経験を積めることに意義を感じています。実際に事業承継したという経験を、いち中小企業診断士として活かしていけるのであれば、事業承継を考える他の企業のお手伝いもしたいと思っています。

──ご実家の事業を引き継いで企業内診断士をしながら、外の仕事もするということになるのでしょうか。

島谷 実際、企業に勤務しながらダブルワークで中小企業診断士の仕事をしている人はいます。働き方が多様化した今、ダブルワークを認める企業もありますし、国としても企業内診断士が多いという現状を踏まえて、これを活用しようという動きになってきています。中小企業の多くは個人の集まりを社長がまとめているという感じなので、きちんとした組織活動の中で仕事をしてきた企業内診断士が「組織の運営とはこう考える」と伝えるだけでも、業務の生産性が改善していきます。ですから自分が事業承継した経験から、役に立てるアドバイスができると思います。

──ご自身の体験を踏まえ、中小企業診断士の資格取得を考えている方や中小企業診断士の資格を仕事に活かしたいと考えている人にメッセージをお願いします。

島谷 中小企業診断士というのは、多彩なバックグラウンドを持った人がチャレンジしている資格です。受験する方のプロフィールも、高卒で商売をしている人から博士号を持っている人まで、本当にいろいろです。多様な専門家と知り合えるのが、この資格の楽しさのひとつ。そうした方々と一緒に仕事することで、世界観が変わるというと言い過ぎかもしれませんが、本当に視野が大きく広がる資格だと思います。企業内診断士として組織の中で活躍することもできますし、専門性を活かして独立開業し経営コンサルタントにキャリアチェンジすることもできます。コンサルティングの中では、単に利益を追求したアドバイスではなく、経営者として叶えたい夢や想いに寄り添うことが必要な場面も出てきます。事業承継では、次期後継者との関係構築や教育的な役割も求められてきます。独立開業するのか、企業内診断士になるのかに関わらず、中小企業診断士は周りから必要とされ、自分自身も成長できる、価値のある資格だと思います。

[TACNEWS 2019年1月号|特集]