日常生活にも役立つ「数字力」を鍛える10分間トレーニング ティーチャー鈴木の数的センスアップ塾 Vol.12

Point-考え方-

この問題では具体的な人数が記されていないため、基準となる人数を文字で表すことにします。ここでは、「昨年度の男性社員数」をx人、「昨年度の女性社員数」をy人としましょう。


今回の問題では、「昨年度➡今年度」「今年度➡来年度」という“時間”の要素と、「男性社員数」「女性社員数」「全体社員数」という“性別”の要素の2つを考える必要があります。少しややこしいので、これらを図1のように一度整理して考えてみましょう。

このように問題の全体像をはじめにつかむことで、どのように問題を解き進めればいいかをイメージすることができます。今回の問題では、「来年度の全社員数は今年度より何%増加するか」を求めるので、図の(1)と(2)の数字がわかれば答えにたどり着けそうですね。解答への道筋がイメージできたところで、わかるところから表を埋めていくように、問題を進めていきましょう。

まず、今年度は昨年度に比べて男性が2%、女性が3%増えたので、今年度は男性社員数が1.02x人、女性社員数が1.03y人いることになります。ここから、今年度の全社員数は(1.02x+1.03y)人ということがわかります。

一方で、昨年度の全社員数は男性x人と女性y人を合わせた(x+y)人で、今年度は昨年度に比べて全体で2.4%増えたことから、今年度の全社員数は1.024(x+y)人とも表すことができます。

これで、1.024(x+y)=1.02x+1.03yという方程式を作れました。


これを解くと、x=1.5yとなります。これはすなわち、女性社員(y人)の1.5倍の男性社員(x人)がいる、ということを意味しています。これで図1の各値は、1つの文字で表せるようになりました。

2つ以上の文字が存在する場合は、このように2つの視点(今回の場合は「社員数」と「増加率」)から同じ数字を表すことで方程式を作り、文字を1つに絞ることができます。

ここまでが【ヒント】①の前半の部分です。まとめると、昨年度に比べて男性が2%、女性が3%それぞれ増えた結果、全体で2.4%の増加となったことから、昨年度の女性社員数をy人とした場合、昨年度の男性社員数は1.5y人となるということがわかりました。ここからは昨年度の女性社員数yを基準として、男性社員数、全社員数を考えていきましょう。
このとき「今年度の男性社員数」は昨年度より2%増加なので1.5y×1.02=1.53y人、「今年度の女性社員数」は昨年度より3%増加なので1.03y人であると表すことができますね。


では、【ヒント】①の後半に移っていきましょう。
「来年度は、今年度よりさらに男性社員が3%、女性社員が4%それぞれ増えると予想されている」ことから、来年度の男性社員数と女性社員数をそれぞれyで表すことができます。男性社員数は今年度が1.53y人でしたので、来年度の男性社員数は1.53y×1.03=1.5759y人となります。一方、女性社員数は今年度が1.03y人でしたので、来年度の女性社員数は1.03y×1.04=1.0712y人となります。


「来年度の全社員数が今年度より何%増加するか」を求めるために、今年度の全社員数と来年度の全社員数(図1の(1)と(2))を計算しましょう。
今年度の全社員数は、1.53y+1.03y=2.56y人となります。一方、来年度の全社員数は、1.5759y+1.0712y=2.6471y人とわかりました。(図2)

さあ、いよいよ仕上げです。
今年度から来年度への全社員の増加人数は、(来年度の全社員数)-(今年度の全社員数)=2.6471y−2.56y=0.0871y人です。よって、これを増加率で表すと、(今年度からの増加数)÷(今年度の全社員数)=0.0871y÷2.56y=0.03402…と計算できます。つまり、%に直すと0.03402…×100=3.402…%となり、答えは約3.4%ということがわかります。

Answer

【答え】約3.4%

 ビジネスの場面でも、割合を扱う機会が多くあると思います。単純な割合は理解できても、今回のケースのように複雑な状況になると、どうやって処理していいのかわからない!と混乱してしまうこともあるのではないでしょうか。今回のケースを題材に、あらためて割合の考え方について確認してもらえたらと思います。

隔月連載の「数的センスアップ塾」も今回が最終回となりました。
ぜひこれからも日々の生活の中で「数字」を意識し、「数的センス」を磨いていきましょう!
ありがとうございました。

[『TACNEWS』 2023年4月号|連載|ティーチャー鈴木の数的センスアップ塾]  


Profile

筆者 鈴木 伸介(すずき しんすけ)

TAC統計検定®/ビジネス数学・数学検定・算数検定・中小企業診断士講座講師
株式会社数学アカデミー代表取締役

小学生の算数から難関大学受験まであらゆる層の指導経験を有し、マンツーマン指導した生徒数は380名超、多数の医学部合格者を輩出した実績を持つ。現在は数学検定・統計検定等の対策講座講師、数学リテラシー向上のための企業研修、企業のデータ分析等に従事。数学の意義や価値を世間に伝えるため、精力的に活動している。

保有資格:中小企業診断士・統計調査士・ ビジネス数学検定1級AAA
著 書 : 『もう一度解いてみる入試数学』(すばる舎)