LET'S GO TO THE NEXT STAGE 資格で開いた「未来」への扉 #09

  
Profile

藤川 新(ふじかわ あらた)氏

弁護士法人つかさ総合法律事務所
弁護士

1991年3月生まれ。東京都出身。本郷高等学校卒業。2014年、早稲田大学法学部卒業後、慶應義塾大学法科大学院に進学し、2016年、司法試験に合格。司法修習を経て弁護士資格を取得し、つかさ総合法律事務所に就職。入所2年目にして常時数十件の案件を担当する。依頼者に頼られる弁護士をめざし、日々研鑽を積む。

【藤川氏の経歴】

2012年 21歳 司法試験をめざし勉強を始める。
2014年 23歳 慶応義塾大学法科大学院に入学。
2016年 25歳 大学院卒業後、初挑戦の司法試験に合格。
2017年~2018年 26歳 弁護士登録の後、つかさ総合法律事務所に入所。入所後わずか半月でひとりで法廷に立つ。

「人の役に立ちたい」漠然と抱いていた夢を資格が形にしてくれた

 自分には、どんな仕事が向いているのか、将来どうなっていたいのか。多くの学生が、就職活動を目前にして戸惑っています。現在、若手弁護士として奮闘する藤川新さんも、学生時代はその一人でした。「面接で語れることが何もない」と悩んでいた藤川さんに、自分の中にある大きな可能性に気づかせてくれたのが、司法試験への挑戦でした。弁護士資格を取得するまでの道のりと、現在、今後の目標をうかがいました。

組織の一部ではなく、個人として自由に夢をかなえたい

小学生のころから漠然と「人の役に立つ仕事がしたい」という思いを抱いていた藤川さん。法学部に進学したものの、難しい講義に興味が持てず、1、2年生のころはサークル活動や塾講師のアルバイトに明け暮れていました。将来を思い描けず漫然と日々を送るうちに、気がつけば周囲は就職活動の準備を始めていました。「自分は勉強もしていなければ、アルバイトで得た経験をアピールする自信もない。皆と同じスタートラインに立てる気がしませんでした」。企業という組織の中で、夢を実現できるだろうかという懸念もありました。「個人で自由に夢をかなえられる職業は何か」と考え、弁護士という選択肢を思いつきました。
その後、TACで法科大学院の入試対策を始めます。講師の講義はわかりやすく、法律の面白さを知った藤川さんは、勉強に集中し、慶應義塾大学法科大学院に合格。入学後も司法試験合格をめざして勉強中心の生活が続きます。「合格できる保証もなく、不安との戦いだった」と言う藤川さんは、大学院の仲間と励まし合い、モチベーションを高めていきました。そして臨んだ初めての司法試験に合格。弁護士になるための第一関門を突破しました。

 合格後には、約1年間の研修(司法修習)が待っています。藤川さんは、埼玉県にある研修所で導入研修を受けた後、長野での実務修習に臨みました。初めて法廷の柵の内側に入った時は「とても緊張した」と言います。「勉強になった半面、1年後に自分があの場所に立ち、弁護できるだろうかという不安のほうが大きかったですね」

司法修習と並行して、就職活動も進めていました。「組織の一員になるより、個人の裁量で自由にやりたい」という思いが強かった藤川さん。TAC時代にお世話になった講師が開業している事務所を見学する機会があり、「ここだ」と思いました。小規模ながらあつかう案件数が多く、依頼される内容も多岐にわたります。幅広い経験を積み、成長できるのではないか。長野から戻り、修了試験を無事にパスして弁護士資格を取得した藤川さんは、現在の職場であるつかさ総合法律事務所への入所を決めました。

「誰かのためなら言える」新たな一面に気づいた

 最初は目の前の業務をこなすのに精いっぱいでしたが、先輩について仕事を覚え、ある程度ひとりでできるようになると、ややハードルの高い仕事も任されるようになりました。入所半年を過ぎたころから、主担当になる案件が増えると、「自分の判断ひとつで依頼者の人生が180度変わってしまうかもしれない」という重責で、精神的につらい時期も、先輩に支えられて乗り越えてきました。

 藤川さんは現在、60~70件の案件を担当しています。離婚に関する依頼が多く、浮気やDV、モラルハラスメント、価値観の違いなど理由は人それぞれ。感情的な対立が激しく、法律論だけではまとまらないことも多々あります。「弁護士というよりひとりの人間として話を聞き、依頼者の気持ちを汲んだうえで、法律に照らし、筋の通った主張ができるよう準備します」。一方で、依頼者の言い分を聞くばかりでは結果を出せず、クレームにつながるリスクもあります。「時には、その主張は通らないとはっきり伝えることも必要です。客観的に判断して、その方にとってプラスになる選択をすすめるよう心がけています」

 学生時代は人前で意見を言うのが苦手で、弁護士をめざすことに迷いもあったという藤川さん。いざ依頼者の代理人として調停や訴訟の現場に立つようになると、「自分のためなら絶対に言えないことも、誰かのためになら言える」と気づきました。自分の後ろには依頼者がいる。仕事を通して「人の役に立つ」という夢に近づいています。

 日々の業務は地味な作業の連続ですが、その積み重ねで依頼者にとってよりよい条件を引き出せたときや、最後に「今回は、ありがとうございました。とても助かりました」という言葉をかけられるとやりがいを感じます。「大げさに感謝されなくても、そのひと言、ふた言があるだけで、次もがんばろうという力になります」

藤川さんにとって資格とは、「“組織の中の自分”ではなく、“自分の中の自分”という枠組みを与えてくれたきっかけ」だと言います。司法試験をめざし、共に学んだ仲間や司法修習時代の同期との出会いも、かけがえのない宝物です。そして、「誰かのためなら主張できる」という自身の新たな一面に気づいたことで、将来の可能性が広がりました。「いつかは事務所を立ち上げ、私を頼ってきてくれる人々に利益をもたらせる弁護士になりたいです」

[TACNEWS 2019年5月号|連載|資格で開いた「未来への扉」]