日本のプロフェッショナル 日本の社会保険労務士|2022年7月号

榊原 浩さん
Profile

榊原 浩氏

社会保険労務士法人ウィルワークス
代表社員 社会保険労務士

榊原 浩(さかきばら ひろ)
1977年、埼玉県川口市生まれ。2000年3月、明治大学理工学部卒業。同年4月、外資系通信機器メーカー入社。2005年、同社退社後、人材紹介会社で営業職に従事。その後、外資系採用コンサルティング会社に転職するも、育児休業中に起きたリーマン・ショックの影響を受け退職を余儀なくされる。2009年、都内の社会保険労務士法人に入社。2010年、社会保険労務士試験合格。2011年、社会保険労務士事務所ウィルワークスとして独立開業。2015年、現共同代表の畠中絵璃氏を迎え、社会保険労務士法人ウィルワークスに組織変更。

常にお客様のことを考えてきました。
そんな自然体な取り組み方で、今の成長があると思っています。

2020年から続くコロナ禍は、人々の生活や働き方などに大きな影響を与えている。人々の働き方が変わると、企業の制度やしくみも変化せざるを得なくなるため、「ヒト」に関するプロフェッショナルの社会保険労務士に、今大きな期待が寄せられている。今回は理系出身の女性社会保険労務士である榊原浩氏にスポットを当て、社労士をめざした動機から取り組んでいる業務、そして組織の成長の軌跡についてうかがった。

携帯電話ネットワークのエンジニア

 男性の育児休業取得が叫ばれるようになったのはつい最近のこと。「主として育児に携わるのは女性」という認識が根強かった時代では、今以上にライフステージの変化によって有能な女性人材が埋もれてしまうケースが多かった。
 現在、社会保険労務士(以下、社労士)として活躍中の榊原浩氏も、育児休業中にリストラに遭いキャリアを断たれたひとりだった。しかし榊原氏はこの逆境も持ち前のチャレンジ精神と行動力で乗り越えてきた。
「学生時代から少し人と違うことをやるのが好きでしたね。中学・高校と女子大学の付属校に通っていたので、周りはそのまま内部進学する子がほとんどでしたが、私は何かにチャレンジしたい気持ちもあったため外部の大学を受験することにしたのです」
 数学教師だった母の影響もあって、数学や物理が得意だった榊原氏は、明治大学理工学部電気通信工学科(現:電気電子生命学科)に進学。衛星通信、携帯電話や無線通信技術を研究する研究室に入った。
「ちょうど携帯電話が勢い良く進化・普及している時代でした。通信技術の進化する過程を最先端で見て、その技術を勉強するのが楽しくて。そんな風に難しいことを突き詰めていくプロセスが、とにかくおもしろかったですね」
 通信技術の研究に励む一方、自転車で全国を旅するサークルにも参加。あるときは北海道を3週間周遊し、あるときは四国や南紀地方の海へ行き、またあるときは信州の山奥を旅して回った。体力に自信があったわけではないが、何よりもサークル仲間と賑やかに旅をするのが楽しかった。
 卒業後は外資系通信機器メーカーにエンジニアとして就職した。スウェーデンやインドなど、海外の拠点で開発された携帯電話ネットワーク機器や関連製品を、日本の電話会社のネットワーク用にカスタマイズして導入し、その後のサポートなどを担当する仕事だった。5年間勤めるうちに、エンジニアからプロジェクトマネージャーまで多くの実務経験を積むことができたが、そこである壁にぶち当たった。
「世の中には、私よりもっとすごい人がいる。自分はエンジニアとして突き詰めようとしても周りには勝てないな、と感じるようになったんです。そこからキャリアについて迷うようになりました」
 榊原氏は将来の自分自身のキャリアで悩みながらも、その頃から周囲の相談に乗ったり、「エンジニアと営業の橋渡し」的な役割を担ったりするようになった。
「最初の3年間はエンジニアとして動いていたのですが、4年目からエンジニアと営業の橋渡し的な立場やプロジェクトマネージャーとして、お客様との窓口としてのやりとりをするようになりました。その辺りの時期から『人が組織の中で良い成果を出すこと』にとても興味が湧いてきたのです」
 組織に属する人が、高いモチベーションで良い仕事をして、高い成果を出し、チームでもより高い結果を出せるようにするにはどうすればいいのか。その思いが「人事管理に関わる仕事をしてみたい」という思いへとつながっていき、ついには転職に踏み切った。

育児休業中のリストラをきっかけに社労士へ転身

 「人材紹介会社の営業に転職しました。大胆なキャリアチェンジでしたが、最初の会社での経験や、大学時代の友人の話を聞く中で、エンジニアの働き方や『企業にとって、その人の技術がどのように有意義なものか』、『どのような分野で活躍できる人なのか』を見極める力がついていたんです。技術畑での経験はとても役に立ちました」
 学生時代から、技術そのものを極めていくことに興味はあった。しかし思い返してみるとそれ以上に、対人コミュニケーションの部分で力を発揮することが多く、例えば技術的能力は高いのに口下手でうまく説明できない学生の話を代弁して先輩や教授に伝えたり、専門的な言葉をまとめて相手に通訳したりすることが得意だった。社会人になってからも、クライアントとのコミュニケーションや営業活動など様々な場面でその能力を発揮していった。
 その後、榊原氏は人材紹介会社からアメリカの大手採用アウトソーシング、ヘッドハンティング会社の日本法人に転職し、さらに深く人事採用の領域に入っていった。採用部門のアウトソーシングで客先の採用部門に常駐し、採用窓口として業務に携わったのである。
 人事系の領域で専門性を身につけたいと考えるようになった榊原氏が、初めて社労士資格取得を意識したのもこの頃のことだ。「でも、仕事と受験の両立は難しいから」と二の足を踏んでいるうちに、時が経っていった。
 そんな榊原氏が「社労士をめざす!」と一大決心したのは、育児休業中のこと。2008年9月に起きたリーマン・ショックによる世界的な株価下落と金融不安により、会社が組織を縮小しリストラを行ったのだ。そして榊原氏もそのリストラの対象に含まれていた。
「まさか休業中の自分がリストラに遭うとは思ってもいませんでしたね。育児休業が終わっても戻る会社はありませんから、就職先を探さなければなりません。人事関連の仕事に興味はありましたが、その分野で経験があるのは人材紹介と採用の仕事だけです。そこで以前から気になっていた社労士資格取得への挑戦が現実味を帯びてきました。ここで勉強して、人事分野の専門知識を横に広げるために資格を取得すれば、道は拓けるかもしれない。何より『人も会社も成長させられるような、組織をサポートする仕事がしたい』とずっと考えていたので、それが実現できるかもしれない。そう考えて、社労士法人でアルバイトをしながら社労士試験の勉強を始めました」
 こうして2009年、社労士法人のアルバイトと子育てを両立しながらの榊原氏の受験生活がスタートした。
「受験に際しては、TACの通信講座を利用しました。子どもが起きる前の朝の時間、子どもが保育園に行っている間、子どもの世話をして寝かしつけたあと、アルバイト先との通勤時間など、とにかく隙間時間を見つけて勉強していました。時間の融通が利くので通信講座は自分のライフスタイルに合っていましたね」
 学生時代に学んだ通信技術から打って変わって法律の勉強へ。大きな方向転換だが、法律系は技術系と同様に理論が体系立っているので、頭に入れやすく、馴染めない感じはなかったという。
「最初に勉強した労働基準法では、これまで自分が働いてきた労働環境が、どのような法律に基づいて整えられたものだったのかを紐づけながら学ぶことができ、おもしろかったです。ただ、雇用保険や健康保険といった保険制度や年金制度の科目は、覚えることが多いので苦労しましたね」
 困難にぶつかったとき、榊原氏はいつも「数学教師として働く母の姿」を思い出していた。
「バリバリ働く母の姿を幼い頃から見ていたためか、仕事をしないという選択肢はありませんでした。今の自分は戻る会社を失って後がない状態。どんなに社労士の勉強が苦しくても、やり切るしかないという気持ちでした。また、『自分はこれができる』という専門性を自分の中に作りたいという思いも強かったです」
 2009年秋からTACの通信講座を受講し、2010年の試験で晴れて社労士試験合格を果たした榊原氏。ついに「人」のプロフェッショナルとしてのスタートラインに立ったのだ。

人も会社も成長する組織作りのサポート

 受験期間中にアルバイトとして勤務していた社労士法人では1号・2号業務、いわゆる社労士の「手続き業務」に携わってきた榊原氏。
「前職では、絶対的な正解がない中で何をするのがベストか模索しながら仕事をしていましたが、社労士の1号・2号業務はミスなく正確な手続きが求められるいわば『正解』があるタイプの仕事です。白黒はっきりしていて精神的な負荷が少ないため、大きなストレスなく受験勉強と両立ができました。
 従業員の方にお子さんが生まれたり、入社したり退職したりする際に、私の携わった手続きが、多少なりともその方の役に立っているんだと思うとうれしくて、これがやりがいだと感じました。でもやはり、アルバイト先の社労士の人たちを見て『私も資格を手にもっと自由に好きなことをやってみたいな』と。そんな思いも勉強へのモチベーションになっていましたね」
 合格後は、社労士として独立した大学時代の先輩の事務所に入所した。独立も視野に入れていた榊原氏はその事を先輩に話すと、その事務所でアルバイトをしながら自身の事務所をスタートさせることを快諾してくれた。
 こうして2011年8月、社会保険労務士事務所ウィルワークスが産声を上げた。開業当時のビジョンは、「人も会社も成長する組織作りのサポート」を行うこと。社労士事務所でのアルバイトを続けながら、開業登録、開業準備を同時に進めていき、レンタルオフィスに事務所を設置して、作業は自宅で行っていた。
「今思えばお客様もまったくいなかったのに、よく独立しましたよね(笑)。でも当時は勤務先の先輩社労士の方たちを見ていて、紹介をもらえれば仕事が増えていくし、顧問契約を地道に増やしていけば何とかなるかなと思って踏み切りました。ただ、本当にゼロスタートだったので、まずはとにかく紹介をもらわなければと、一生懸命いろいろな人に会って名刺を配りました」
 顧客のツテや人脈があったわけではなく、若さゆえのチャレンジ精神で「とりあえずやってみよう」というのが本当のところだったかもしれない。とにかく自分がどこまでできるのか試してみたかった。そんな榊原氏の初めての顧客は2012年3月、異業種交流会で知り合った中小企業経営者だった。
「開業から7ヵ月目にしてやっとお仕事をいただけました。スロースターターでしたが、お客様がなかなか見つからなくてもそんなに焦ってはいませんでしたね。夫が働いていて、私自身のアルバイトの収入もあったので、経済的な不安があまりなかったからだと思います。生活の不安がないという意味では恵まれた環境で開業できましたね。『そのうち何とかなるかな』と前向きでした」
 その顧客からは単発の手続き業務を依頼される予定だったが、結果的に顧問契約をすることになった。
「金額は小さかったですが、顧問契約をいただけたことがとてもうれしかったのを今でも覚えています。ゆっくりではありますが、そこから紹介が徐々に広がって、3年半が経つ頃には法人顧問先が約40件になりました。ありがたいことに次々と紹介をいただけている状況でしたので、もう自分ひとりでは限界だと思い、スタッフの採用を考え始めたのが2015年のことでした」
 最初はパートスタッフの採用から始めたが、社労士がもうひとりいなければ仕事が回りきらない状態になっていた。「誰か良い社労士はいないか」と探していたとき、受験生時代からの知り合いから勤務している事務所をやめようと考えていることを聞いて「一緒にやりませんか」と誘った。それが、社労士法人ウィルワークスの共同代表、パートナー社労士の畠中絵璃氏だ。
 畠中氏参画のタイミングで組織を法人化したウィルワークスは、さらにスタッフを採用して、2015年にオフィスを恵比寿に移転した。

人事労務サービスをフルラインナップで提供

 現在のウィルワークスの業務内容は、労働保険・社会保険手続き代行、給与計算のアウトソーシング、就業規則・社内規程・協定類の作成・整備、労務相談、人事制度に関するコンサルティング、労務監査と、社労士業務のほぼすべてをカバーしている。
 実は開業当初から、社労士のフルラインナップ、つまり労務顧問と手続き業務、給与計算をワンパッケージで提供してきた。それがウィルワークスの最大の売りであり強みにもなっている。
「関与先のほとんどがこれらをワンパッケージで提供する顧問契約になっているのが当事務所の大きな特徴と言えるでしょう。
 ただ業務的には、『助成金専門』などどこかに集中特化しているわけではないし、社労士業務の王道である労務相談と社会保険手続、給与計算を軸にやってきているので、目立ったところがないのですが、そのぶん、小さな会社から大きな会社まで対応していて、幅広い業種の会社が集まってくるので、そのノウハウが蓄積されているのは強みかもしれませんね」
 規模や業種は様々だという顧問先の中には、上場をめざしている企業もあるようだ。上場準備となれば、きちんとした法令遵守が求められる。労働法は幅も広く、詳細にわたっているため、対応する事項が多く難易度が上がる。
「上場に法令遵守は必須。でも最初からパーフェクトにできている会社は少なくて、どうやって整えていくのか模索段階の会社も多いです。とはいえ近年はコンプライアンスに対して意識の高い会社がとても多いので、私たちも襟を正す思いでやっています」
 上場をめざす顧問先はコンプライアンスの遵守、規程の整備など、やらなければならないことが山積みだという。そんな1社1社の相談に丁寧に向き合いながら、会社の成長に合わせて時間をかけながらじっくり対応していく。
「会社の未整備な部分については、法律や制度などのルールに従って、一つひとつ解決策を見つけていかなければなりません。私たちがすぐに解決策を導ける場合は、迅速にわかりやすく整理してご提案します。すぐに解を出せないような複雑な問題は、道筋が立てられるまで会社の方と一緒に寄り添って考えていきます。常にフレキシブルに、丁寧に、効率的に、時には愛を持った厳しさで(笑)。お客様に寄り添いサポートできるスペシャリストでありたいですね」
 顧問企業の課題については、労務監査の過程で指摘する点が出てくる場合もあれば、給与計算を顧問契約の一環で受けている中で問題が見えてくる場合もあるという。
「給与計算業務をやっていると、その会社の中がよく見えるんです。特に上場準備の審査の過程で指摘を受けるのが、残業代の未払いがないかといった問題ですが、毎月の給与計算業務によってその会社の残業代の支払い状況から、適切な労働時間管理ができているかといったことまでいろいろと見えてきます。月次の給与計算業務の中でこういった事項をしっかりチェックすることでトラブル予防ができることも顧問契約としてパッケージで受注している、私たちの強みですね」
 外れず、ブレず、社労士業務の王道を歩む。すべてをきちんとこなすからこそ、顧問先も社員も安心してついていくことができるのだろう。

求めるのはチームワークとリーダーシップ

 現在ウィルワークスには、パートナー社労士の榊原氏と畠中氏を含め、総勢15名、そのうち社労士が5名在籍している。顧問契約先は150社を数え、スポット契約も20~30件ある。これまでの成長には何かきっかけがあったのだろうか。
「特定のきっかけがあったわけではなく、良いお客様のご紹介を定期的に受けてこられたことが大きいと思います。社労士2人の共同代表という形で法人化もしたので、組織化が進み安心して働ける環境が次第に整えられて、スタッフも増やすことができました。それが安定したサービスの提供につながっているのだと思います。元々の顧問先から乗り換えて、うちの事務所にいらっしゃるお客様もかなりいます。私たちがめざしてきたのは、安定した質の高いサービスの提供なので、そこを評価して選んでいただけていると思うとうれしいですね」
 これまでスタッフは全員公募での採用。どんな人と働くのか、どんな組織を作っていくのか、常に社内でも検討し採用活動を行っているという。
「組織の形に合わせて求めるスキルは変わっていくこともありますが、変わらないのはやはり一緒に働いていて嫌な気分になるような人は、どんなにスキルが高くてもお断りしているという点だと思います。士業は職人的気質で、独立して自分ひとりでやろうと思えばできるわけです。でも私はチームとして、組織として成果を出したいと考えているので、チームワークがうまく取れる人や、協調性があって自分でリーダーシップも取れる人がやはり理想ですね。有資格者を採用する際も、チームを組んで一緒に働けるのか、きちんと仕事に向き合って、つらいときも一緒に乗り越えていける人なのかを重視しています」
 資格の有無や人柄も含め、スタッフがそれぞれの強みを活かして活躍しているというウィルワークス。特にスタッフのため働きやすい環境作りには気を配っている。増員にともなって「短時間正社員」という雇用形態を作り、そのときのスタッフのライフステージに合わせて働き方を選択できるようにしたのも、その取り組みのひとつだ。
「社員は基本的にフルタイム勤務ですが、家庭環境に合わせてフルタイムと短時間勤務を行ったり来たりする人もいます。せっかく一緒にがんばってきてくれた人が、家庭の事情などで働く時間が取れなくなってしまうのは悲しいですから、そこは柔軟に対応したいと思っています。信頼関係を築けた仲間とは、できるだけ長く一緒に働きたいですからね」
 スタッフの中には、社労士をめざして勉強している受験生も多い。繁忙期も何とか勉強時間を確保して仕事を両立しているようだ。
 ただ、人を増やしたいと言っても、将来的に事務所の規模をさらに大きくしたいという目標が具体的にあるわけではないという。
「正直、売上や人数など具体的な数字は追いかけていません。ただ、これからもいろいろな会社のサポートをしていきたいです。力になれる会社が増えるとうれしいし、私自身も勉強になりますから。事務所の規模感としては地道にコツコツ、少しずつ大きくなるくらいがちょうどいいですね」
 売上や規模を意識してきたわけではない。開業したときから少しずつ紹介のお客様が増え、スタッフを入れていかなければ回らない規模になり採用を強化したことで、自然に大きくなってきた。そんな「自然体」のスタンスが、今のウィルワークスを形成してきたといっていいだろう。

新たな働き方で広がる人事・労務の世界

 榊原氏にプライベートの過ごし方について聞いてみると、次のような答えが返ってきた。
「コロナ禍で在宅勤務が増えたので、家にいる時間も多くなりました。休みの日でも家で仕事してしまうこともありますが(笑)、きちんと休みは取るように意識していて、大好きな歌舞伎を観に行ったりしています。あとは家族や友人と美味しいものを食べて、飲んで、喋ってリフレッシュしていますね」
 リーマン・ショックでリストラに遭っていなかったら、社労士になっていなかったかもしれない。逆境を乗り越えた先にたどり着いた職業だが、「社労士になれて本当に良かった」と榊原氏は強調する。
「専門家として『私にはこれができる』と胸を張って言えるのが資格を持つことのメリットですし、資格は自分を信頼してもらえる材料になります。『資格はないけど人事コンサルタントやってます』と言ってもなかなか信用を得るのは難しいかもしれませんが、『社労士です』と言った途端、お客様が信頼してくれることもあります。やはり自分が何者であるかを証明できるものができたのは、仕事を続けていく中で強い武器になりました。
 社労士の仕事は地味なところもありますが、地味なことをコツコツきちんとやっていくことが大事な仕事です。また、いかに効率良くできるか、どうしたら社内の情報共有をスムーズにしていけるかといったことを考えたり、少し目線を変えたりすると、視野が広がって仕事がとてもおもしろくなります。改善したり、工夫したり、楽にできるようにしたり。いろいろな工夫と改善の提案をすることでお客様の役に立てるようになってくると、社労士としての仕事を楽しめるようになると思います」
 社労士資格取得後、ゼロから事務所をスタートした榊原氏は「ゼロから独立開業するのに社労士は向いている」と断言する。
「働き方改革が叫ばれる中、コロナ禍が追い討ちをかけてテレワークが一般的になりました。働き方やライフスタイルがガラっと変わって、国が副業やデジタル化を推進するように積極的に動いています。つまり今、古い働き方から新しい働き方へとどんどんシフトしているのです。その意味でも、人事労務の世界はとても注目度の高い分野だと思いますし、将来性がある仕事です。
 社労士にはいろいろな個性の活かし方があると思いますが、私はどちらかといえばコンサルティングや提案を中心にやってきました。法律一辺倒でなく、お客様のちょっとした悩みや課題に気がついて、会社や組織を良くしていくための提案をして、お客様に喜んでいただく。それが次の依頼へとつながっていくのが社労士の仕事の醍醐味だと思います」
 受験時代は必死の思いで勉強したという榊原氏。大量の知識を頭に詰め込むのにとても苦労しながら勉強していたことを今でも思い出すという。
「大変でしたが、あの時代があったからこそ、実務でもたくさんの引き出しを作ることができました。今こうして楽しく仕事できているのは、あのときの努力があったからだとつくづく思います。このおもしろさを皆さんにも体験していただきたい。ぜひ、合格に向けてがんばってください」


[『TACNEWS』日本の社会保険労務士|2022年7月号]

・事務所

東京都渋谷区恵比寿1-24-4 ASKビル4階

TEL : 03-6432-5711

URL: http://www.willworks.jp/