特集 2021年度国家総合職試験合格者にインタビュー

 

日本の明るい未来をデザインするために多岐にわたる分野で働きたい

 国家行政の中枢を担う幹部候補である国家総合職。政策の企画立案や法案の作成、国家予算編成など、ダイナミックで多岐にわたる活躍ができます。今回は、2021年度国家総合職試験に合格したTAC・Wセミナーの内定者3名に、官僚の道を志したきっかけやTAC・Wセミナーの活用方法、これからの職務で成し得たいことなどを語っていただきました。

※WセミナーはTACのブランドです。

左から

■吉本 匡伸(よしもと まさのぶ)さん
石川県出身
東京大学 教育学部(在学中合格)
受講コース:秋試験本科生
受験区分:教養
内定先:厚生労働省

■福田 美咲(ふくだ みさき)さん
東京都出身
早稲田大学 法学部(在学中合格)
受講コース:政治・国際本科生
受験区分:政治・国際
内定先:外務省

■宮坂 侑大(みやさか ゆうた)さん
東京都出身
慶應義塾大学 経済学部(在学中合格)
受講コース:経済本科生
受験区分:経済
内定先:農林水産省

国の未来を考え、公のために働ける仕事

── 国家総合職への内定、おめでとうございます。皆さんが国家総合職をめざした時期や理由について教えてください。

宮坂 小さい頃から経済産業省で働く国家公務員である父の仕事ぶりを見て育ったので、もともとあこがれを持っていました。また、私は食べることが好きで、大手スーパーの食品売り場でアルバイトをするなど「食」に強い関心を持っているのですが、そのアルバイト先で食品ロスや廃棄の現場を目の当たりにし、「食」に関する問題意識を抱くようになりました。国家公務員へのあこがれと食への興味が交わり、大学2年生の3月に参加した農林水産省のインターンが決め手となって、具体的に国家総合職をめざすようになりました。

吉本 私の両親は高校教諭と県庁職員でふたりとも地方公務員だったので、幼い頃から公務員という職業に興味がありました。大学入学後、将来の職業を真剣に考えたときに「社会における様々な課題を解決することを仕事にしたい」と願い、国家公務員を志すことにしました。

福田 私も母が地方公務員として看護師をしていたことから、公務員になりたいと思い続けてきました。そして大学1年生のとき外務省の説明会に参加した際、「公のために働けること」「歴史の担い手として仕事に携われること」に魅力を感じたため、当初は外務省専門職員をめざそうと考えました。けれどもワークショップへの参加を通して、国家総合職のほうが自分の関心や適性に合っていると思うようになりました。というのも、外務省専門職が高度な語学力をもとに関連する地域のエキスパートとして働くのに対して、国家総合職はより幅広く、様々な地域に多角的に携われるのではないかと感じたからです。

充実したカリキュラムと手厚いサポートがTAC・Wセミナーを選ぶ決め手に

──受験勉強を始めた時期と、TAC・Wセミナーを選んだ理由をお聞かせください。

宮坂 大学3年生の4月から勉強を始めました。独学ではなくTAC・Wセミナーを選んだ理由は2点あって、まず1点目は試験までの学習スケジュールを自分で考える必要がないことです。私が受験した経済区分は試験科目が多いので、「どの科目をいつまでにどれだけ勉強するか」を自分で一から考えるのは大変です。TAC・Wセミナーを利用すれば、予め用意されたカリキュラムに従って学んでいくだけで試験までに必要な勉強をバランスよく進めることができるのがよいと思いました。もう1点は、公務員試験に精通した講師に相談できることです。独学しながら受験指導校もしくはTAC・Wセミナーと同じレベルの学習ノウハウや受験情報を自身で集めるのは、かなり難しいのではないでしょうか。TAC・Wセミナーは、特に担任カウンセリング制度が他の受験指導校よりも充実していると感じます。

吉本 私は大学2年生の3月から学び始めたので、秋の教養試験までの勉強期間は約半年間でした。受験指導校を利用するメリットは、独学よりも効率よく勉強できることにあると思います。それまで学んだことのない分野こそ、人に教わることで短期間で確実に成果を出すことができるのではないでしょうか。TAC・Wセミナーを選んだのは、公務員試験に強い実績を持ち、試験だけではなく官庁訪問までのサポートが手厚いと感じたからです。

福田 私は大学で国際法模擬裁判と途上国住居建築ボランティアの2つのサークルに参加していました。サークル活動で海外へ行ったり、課題の多いゼミに所属したりと忙しくしていたので、受験対策を始めたのはTAC・Wセミナーに入会したあとからです。大学3年の2月頃、キャンパスの近くにあるTAC・Wセミナーの校舎に行って勉強期間について相談したところ、「1年ほど見込むべき」とアドバイスされ、その時点ですでにそれほど残り時間に余裕があるわけではないとわかったので、すぐに申し込みました。私が受験した政治・国際区分は市販テキストが少なく独学は難しいと感じたので、教材が充実しているTAC・Wセミナーを選ぶことに迷いはありませんでした。

専攻分野や関心と重なる受験区分をセレクト

──秋の教養区分では吉本さんが他の皆さんに先駆けて合格を果たし、春の試験では宮坂さんが経済区分で、福田さんが政治・国際区分で合格されました。皆さんが受験区分をどのように選んだか、ポイントを教えてください。

宮坂 私は大学では経済学部、サークルは国家公務員志望者の経済部門に所属していたので、迷いなく経済区分を選びました。ただ、少しでも合格のチャンスを増やすために、春の試験に先駆けて前年秋の教養区分試験も受験しました。

福田 私はもともと世界史や国際関係に関心があって、法学部でも国際法を学んでいたことから政治・国際区分で受験しました。また秋の教養区分試験も、苦手な数的処理の力試しをする意味で受験しました。

吉本 私の場合は、総合職事務系の試験区分と、大学で専攻していた教育学部とで分野が一致しないため、当初から教養区分一本に絞って対策しました。結果的に早い時期に合格を決めることができてよかったです。

──受験勉強を進める上で心がけていた点や工夫していたことなどがあれば教えてください。

宮坂 受講の際に意識したのは、わからない問題はそのままにせず講師に質問するということです。教室で受講したときは直接対面で、Webで受講したときはメールで、講義のあとに質問するようにしていました。私の場合、Webで受講するときに1.5倍速で視聴できる便利さが、逆に後々理解できていないという結果を招きがちだったので、できるだけ教室で講義を受けるようにしました。「今、この1回で理解しなければいけない」と思えて、集中できるからです。また、本試験を意識して勉強時間を割り振ることや、得点配分の大きい科目から学習を始めることも大事です。マークシートと論述形式、いずれも得点配分の高いものから解答するのが得策ですが、具体的にどの問題の得点比率が高いのかは担任カウンセリングで教えてもらえました。試験の得点配分は人事院から公開されてはいますが、独学していたら気づかなかった可能性もありますし、早期に教えてもらったことで十分な対策をとることができ、短期間で効率よく合格までたどり着けたと思います。

吉本 TAC・Wセミナーに入会したからには、使えるサービスや制度は徹底的に活用しようと考えました。Webで配信されている講義は何度も繰り返し聴き、講師にも積極的に質問していましたね。「この問題がわからない」という個別具体的な質問から、勉強の進め方のような全般的な質問まで、幅広く聞けたのは助かりました。また、教養区分の二次試験のために、自主ゼミを作ってグループディスカッションの練習などをして対策することも、独学では難しかったと思います。同じ国家総合職をめざしている様々な大学の学生たちとの新しい出会いは、モチベーションの維持にもつながりました。実際に勉強する上で大切にしていたのは、とにかく「繰り返すこと」。講義の内容を第三者に説明できるレベルで理解できるまで、何度も解きました。

福田 サークル活動やゼミで多忙だったため、受験勉強と両立できるのかという不安がありましたし、私がTAC・Wセミナーに入会したとき教室講義はすでに始まっていたため他の受講生に比べて進捗が遅いという焦りも感じていました。それらを払しょくするため、「2~3月の公開模試で6割正答する」という目標から逆算した週ごとの細かな勉強計画表を作成し、常に机に置いてチェックしていました。日々の目標達成を常に意識しながら勉強することで、モチベーションを保つことができていたと思います。講義は、理解済みの部分を高速で聴けるなど自分のペースで進められるWebでの受講をメインにして勉強の遅れを取り戻し、教室で行われる対面での講義は、官庁訪問対策や公開模試で思うような点数を取れなかったときの相談などに活用するといったように、使い分けていましたね。

コロナ禍でもへこたれない勉強と生活スタイル

──緊急事態宣言やステイホームなど、コロナ禍での学習となりましたが、よかった点や困った点はありましたか。

宮坂 遊ぶ時間が減り、勉強時間が増えた一方で、うまく息抜きできずにストレスで勉強が進まない時期もありました。所属していた空手サークルの練習が中止になり、身体を動かす機会が激減してしまったので、ランニングをしたり、妹とキャッチボールをしたりしてリフレッシュすることで、勉強への集中力を取り戻していました。大学3年生の12月までは1日3~4時間、年明けからは8~10時間は勉強しましたが、ずっと同じ場所で勉強すると飽きてしまうので、1ヵ月間家で勉強をしたら、翌月は近所の有料レンタル自習室で勉強する、というふうに、意識して環境を変えるようにしましたね。若干カリキュラムから遅れていたこともあり、月ごとにどの単元までやるのか大まかな計画を立て、寝る前には明日何をやるかを書き出してやる気を起こしました。

吉本 私も、緊急事態宣言で予定していたことがすべて中止になったので、結果的に学習に集中できた点はよかったですね。また世の中がオンライン活用に移行していったことで、勉強会や面接の練習を手軽にできるようになったこともプラスに働きました。一方で、リフレッシュしにくくなったのは難点です。遠出はできませんが、外食や近所の友人と会うなど、外の空気に当たることでリフレッシュしていました。大学の図書館が再開してからは毎日4~5時間勉強するようになり、集中力を上げることができました。

福田 私はコロナ禍でも特にデメリットは感じませんでした。というのも、大学の授業がオンライン実施になったことで往復2時間の通学時間を節約できましたし、もともと自宅学習が一番落ち着くタイプだからです。当初は1日4~5時間、ゼミが忙しいときなどは1時間も勉強できないこともありましたが、本格的に勉強を始めてからは10時間勉強に充てることもありました。自宅学習のコツは、スマートフォンの電源を切って自分のそばから離しておくことと、勉強計画をしっかり立てて実行することです。計画通りにやらないとあとで苦しくなるのは目に見えていますから、毎日小さな目標を立ててこなし、後にズレこまないようにしました。

── 勉強中、モチベーションをキープするためにどのようなことを心がけましたか。

宮坂 ひたすら勉強に明け暮れていると、「何のためにこんなに勉強ばかりしているのだろう」などと追い詰められてしまうこともあります。そこで、志望先の農林水産省や環境省の説明会に参加し、「この省庁で働きたい」という思いを新たにしていました。週1回を目標に、合計20回は参加したと思います。モチベーションの維持になったのはもちろん、その省庁に関する様々な知識や人脈を得ることができたのも大きな収穫でしたね。この経験が後々の官庁訪問の際に活きました。また、勉強に行き詰まったときには担任カウンセリングやLA(内定者アドバイザー)相談コーナーを利用して、再びモチベーションを上げるように心がけました。

吉本 私も、当時の志望先である国土交通省の説明会には15回ほど訪れました。そこで働く職員の姿を見て「自分も合格したらこんなふうに働けるんだ」とイメージが湧き、モチベーションを高められました。また、Webで講義を受けているとそのときの気分やコンディションで集中しきれないときがあるので、できるだけ教室の講義に出席し、志を同じくするクラスメイトと話して励みにしていました。

福田 私も外務省や防衛省、経済産業省、農林水産省の説明会やワークショップに参加しました。ワークショップでは課題を与えられグループワークを行いましたが、参加者は皆、各省庁で活躍することをめざして勉強に励んでいる人たちばかり。知識豊富でモチベーションの高い学生たちと触れ合うことで、「私もがんばらなくては」と意欲をかき立てられました。

信頼できる膨大な情報と充実のカウンセリングが大きな武器に

──TAC・Wセミナーを利用してよかった点や、講師とのやりとりで印象に残ったエピソードなどを教えてください。

宮坂 公務員試験に関する膨大な情報量や、カウンセリングの機会の多さが役立ちました。官庁訪問ではどんな質問を受けることが多いのか、誰と話をしておくとよいのかといったことが事前にわかったり、勉強スケジュールの立て方や勉強方法を相談できたりと、何度も助けられました。また11月に受けた溝江講師の担任カウンセリングでは、「教養区分で失敗しても春試験で挽回することができる」と励まされ、学習スケジュールの立て直しも相談に乗ってもらいました。

吉本 試験対策だけでなく、官庁訪問まで手厚くサポートしてもらえたのがよかったです。TAC・Wセミナーは、自分ひとりだけでの対策が難しい口述試験のフォローが他校に比べて充実していると感じました。また、大学の垣根を超えて志を同じくする仲間に出会い、大切な友達になれたこともとてもよかったです。

福田 本試験の直前に行われた公開模試でひどい点数を取って動揺していたところを、山下講師から「今自信を失うことは、過去の自分に対する冒涜だ」と励まされたのが大変印象に残っています。春試験への戦略や学習スケジュールなど細かく相談でき、それを意識したことが本番の出来につながりました。

官庁訪問と面接のカギを握るのは的を射た事前の準備

── 官庁訪問攻略のポイントはどのようなところにありますか。

宮坂 官庁訪問の前に、各回様々なテーマで行われる説明会に参加して、その会で紹介された政策について学び、省庁との縁を作っておくことです。それぞれの政策について自分なりの考えを持っておけば、面接で意見を求められた際にも自信を持って受け答えできます。説明会のテーマは事前に公開されるので、あらかじめリサーチして意見をまとめ、説明会で質問するように心がけていました。これが原課訪問(官庁訪問中に行われる、人事担当者以外の職員との面談)の質問で役立ちましたね。ちなみに内定後に聞いた話ですが、説明会に参加したからといって官庁訪問での評価が加点されるわけではないものの、やはり何度も参加したり積極的に質問したりしていた学生は名前を覚えてもらえますし、心象は良くなるものだそうです。
 また、私が志望した農林水産省では志望動機が非常に重視されるため、同じ農林水産省をめざすTAC・Wセミナーの受験仲間6人で模擬面接を行い、受け答えをブラッシュアップして臨みました。印象に残っているのは、課長補佐との原課訪問で「私が電話を1本入れるだけでフィリピンから日本へ大量にバナナが輸出されることもある」と聞いたことです。改めて、職務のスケールの大きさや責任の重さを感じました。

吉本 「他人との協力」こそが攻略ポイントだと思います。大学4年次の4月頃からTAC・Wセミナーで知り合った友人と定期的に勉強会を開き、政策に対する自分なりの考えを言語化することで、面接スキルを上げることができました。どの官庁から訪問するのがよいかなども話し合い、面接の練習を通じて信頼関係を築いたクラスメイトと話し合えた価値は計り知れませんし、最終的に官庁を選ぶ際も相談に乗ってもらったことは忘れられない思い出です。実際の面接はオンラインでの実施が多かったので、対面より感情が伝わりにくいのではと考え、ややオーバーアクションを意識してなごやかに話すように心がけました。

福田 外務省は人事課面接が1クールに1回だけなので、「自分の人間的魅力を短時間でアピールする」ことが重要です。実は第1クールでは、めざしていた評価よりも低評価を受けてしまったため、第2クールへのプレッシャーを感じていました。そこで、説明会で知り合った友人と20分間の面接練習を毎日行いました。その際は、TAC・Wセミナーで配付される『官庁訪問対策テキスト』や、省庁が発行する内定者ノートの「面接時に印象に残った質問」をできるだけ書き起こして利用しました。この対策が功を奏して、第2クールでは質問の半分は想定内の内容だったので、私にとってはとても効果的な練習法だったと言えます。面接というのは、面接官のタイプや自分との相性もあるので、たとえ1クール目でめざしていたような評価が貰えなかったとしても、次のクールでそれをひっくり返そうというメンタルの強さを持つことが大事です。緊張していた第2クールの人事課面接当日に、過去のインターンシップで担当してくださった職員の方に偶然再会できたことで気持ちがほぐれ、リラックスして面接に臨めたのがうれしかったですね。

──民間企業での就職活動や、他の公務員試験との併願はしましたか。

宮坂 民間企業の就職活動と公務員試験の対策を両立するのは難しいと感じたので、民間企業との併願はしていません。公務員試験では、保険の意味も込めて都庁と財務専門官を併願しました。しかし都庁の最終面接でエントリーシートに書くべき志望動機が浮かばなかったことで、やはりめざす本命は国家総合職だと再認識しました。

吉本 私は民間企業を数社受けましたが、あくまで官庁訪問に向けた練習と、社会経験を積むためのものという位置付けでした。

福田 エントリーした企業もありましたが、結局途中で選考をやめてしまいました。民間企業でのインターンシップでワークショップに参加したとき、収益性を意識する発表がうまくいかなかった経験もあり、やはり収益性よりも公益性を重視したい気持ちから、公務員をめざすしかないと思いました。

──国家公務員試験を受けるにあたり、経験しておいてよかったと思うことがあれば教えてください。

宮坂 受験勉強中も続けたアルバイトです。コロナ禍で減った、人とコミュニケーションをとる機会を補ってくれました。食品系のアルバイト経験は、面接での話題としても活躍しました。

吉本 ひとり親世帯の学習支援ボランティアを通じて、実際に現場を見られたことです。その体験が厚生労働省を志望することにつながったし、志望動機も熱意を込めて伝えることができました。また、塾講師のアルバイトを週1~2回続けたことで話す練習にもなりましたね。

福田 中学・高校時代にバドミントン部で部長をしていたことが面接官の興味を引いて、人事院の面接でも掘り下げた質問をされました。ただ、「何を経験したか」以上に、「そのとき、どのように考えて行動したか」を深く問われましたし、そういう視点で考えておくことが重要だと感じました。

食の充実、保育の改善、国際協力。日本を誇れる国にするための夢が広がる

── 今後、国家公務員として実現したい夢や目標を教えてください。

宮坂 最終的な目標は、「国民が食で困ることのない日本」を実現することです。そのために食料輸出や食の6次産業化など、農業の新しい可能性を広げたいと思っています。若い世代が農家をめざしたくなるよう、所得の向上ややりがいなどの改善も必要ですし、さらには食料の海外輸出の推進やAIを使った農業の効率化、ベンチャー企業との官民連携なども進めたいですね。

吉本 厚生労働省の所掌分野として、「保育」に関心があります。現状、待機児童数の削減など「量」に焦点が当たりがちですが、少子高齢化社会では「質」が重要だと考えています。また、私が地方出身者であるということもあり、地域医療や地方で働けるテレワーク社会の実現など、「地方」にも携われたらと願っています。

福田 研修言語はアラビア語に決まったので、まずは「日・中東地域の発展と国際協力」、加えて「人権」や「国際法」といった分野に携わりたいです。これまで日本が国際社会において確立してきた「信頼性」を維持・発展させていきたいと思っています。アラビア語圏は宗教観や文化が違う難しさはありますが、女性だからこそ活躍できる場もあり、外交官として成長できるよう、がんばりたいと思っています。

──これから身につけたいスキルはありますか。

宮坂 海外で活躍したいので、英語力を身につけたいです。人事院の留学制度を利用して海外で勉強し、働けたらうれしいですね。今は洋画を字幕なしで観たり、英語の雑誌を読んだりして日常生活の一部として英語に触れる機会を増やしているところです。

吉本 タイピングスキルなどの事務処理能力を高めたいです。また、社会人として生活を安定させ、仕事に邁進するためにも、家事などの生活力をアップさせたいと思っています。最近は、苦手な料理の練習をしています。

福田 なんといっても語学力です。まずは苦手な英語と、研修語であるアラビア語をがんばりたいです。アラビア語を学ぶのはまったくの初めてなので、文字から覚えなくてはいけないのですが、まだまだ女性外交官でアラビストは少ないので、キャリア形成の上でも重要だと考えています。そして、外交官であるからには日本の歴史や文化についての理解を深めて海外に発信できるよう、日本に関する教養を身につけたいです。

──最後に、公務員試験合格や資格取得をめざす方々に、メッセージをお願いいたします。

宮坂 国家公務員は国の未来をデザインできる、とても魅力的な職業です。私は日本人であることを誇れる国、自分の子どもが誇りを持って楽しく暮らせる国を思い描いています。合格までの道のりは長く険しいと思いますが、行き詰まりを感じたら「先」を考えるようにしてください。何のために勉強するのか、将来どうなりたいのかがしっかりしていれば「今」に集中できます。ここを深く考えることは、後々の官庁訪問にも役立ちます。完璧をめざす必要はありません。失敗してもいい、妥協してもいいからどんどんやってみる、ぜひそんなチャレンジ精神でがんばってください。

吉本 国家公務員の就職活動は、試験勉強に加えて面接対策や官庁訪問対策とすべきことが多く、長丁場になります。ですから、自分なりの息抜き方法を見つけたり、合格後の自分を想像したりするなど、楽しみを見つけることが大事です。つまらなく思える勉強も、見方を変えれば「事務処理能力をアップできるかも」などとプラスにとらえることができます。すぐ目の前にあることだけを見るのではなく、「1年後、5年後の自分」を想定し、「今の努力が未来の理想の姿を作る」と考えて励んでください。

福田 公のため、他の人のために働きたいと真剣に考えることはすばらしいことだと思います。国家公務員になるまでには試験や官庁訪問など数々のハードルがあり、自信をなくすときもあると思いますが、周りのサポート体制を活用して乗り切ってください。自分の選択に自信を持って、後悔のないようチャレンジしてほしいです。また近年、女性外交官が増えつつあることからも、性差なく対等にチャレンジできるのが公務員試験だと言えます。新しいロールモデルとして自ら道を開拓していく気持ちでがんばってください。この記事を読んだ皆さんと、将来同じ公務員として働けることを楽しみにしています。

──皆さんの幅広い分野でのご活躍をお祈りしています。本日はありがとうございました。

[『TACNEWS』 2022年2月号|特集]