プロが教える!第1回 第1回 不動産編|家を借りるときに注意すること

理想の家を借りることができる時代の到来

 アパートやマンション(賃貸住宅)を借りたいと思っている人たちにとっては大変良い時代になりました。なぜなら、東京の一部の地域を除く日本のほとんどの地域で、賃貸住宅の供給数が需要数(借り手の数)を圧倒的に上回っているからです。今後、日本の人口は減り続けますが、それに伴って賃貸住宅の供給も減少しているかというと、その気配は全くありません。相続税対策などで平成28年の新築賃貸住宅の着工戸数は約48万戸(前年比10.5%増)、なんと5年連続で増加しています。空き家率が過去最高になろうが、借り手不足だろうが、賃貸住宅は毎年建て続けられているのです。
 現在は、ほんの少しの努力を惜しまなければ、理想の賃貸物件に巡り会うチャンスが十分にある時代なのです!
 そこで、6月号と8月号の2回にわたって「賃貸住宅を扱う不動産会社」と「トクする賃貸住宅の借り方・返し方」についてお話をしていきたいと思います。

不動産会社の仕事はいろいろある

 賃貸住宅を扱っている不動産会社の仕事は、大きく「借主を募集する業務」と「賃貸住宅を管理する業務」の2つに分かれています。

  1. 借主の募集業務(賃貸仲介業務)
    賃貸住宅のオーナー(貸主)から依頼を受けて借り手(借主)を募集する仕事です。物件の情報をインターネットに掲載するなどして、アクセスしてきた希望者に物件を案内し、契約を成立させ、鍵を引き渡すことで終了する業務です。募集業務は「貸借の代理・媒介」に該当し、宅地建物取引業法(宅建業法)が適用されますので、宅建業法の免許がなければ行うことはできません。この業務で中心的な役割を担うのが国家資格である「宅地建物取引士」です。
  2. 賃貸住宅を管理する業務(管理業務)
    借主が物件に「入居」してから契約が終了して「明け渡し」を受けるまでの仕事です。業務内容はオーナーとの管理受託契約によって決まりますが、家賃の回収、滞納時の督促、更新時の手続、設備等の不具合や生活上のさまざまなクレームへの対応、契約終了時の敷金の精算などであることが一般的です。管理業務には宅建業法は適用されませんが、管理業務を行う者は「賃貸住宅管理業者登録制度」に基づき登録をすることができます。この業務で中心的な役割を担うのが「賃貸不動産経営管理士」です。  そして、賃貸を扱う不動産会社は、<1>募集業務だけを行っている不動産会社、<2>管理業務だけを行っている不動産会社、<3>募集業務と管理業務の両方を行っている不動産会社の3タイプに分かれています。賃貸住宅を借りたいと思っている方が最初に接するのは、<1>または<3>のタイプの不動産会社です。また、<3>のタイプの不動産会社であっても募集業務を行う部署と管理業務を行う部署は、ほとんどの不動産会社で別の部署になります。

「元付け業者」「客付け業者」って何?

 少しマニアックな話をすると、募集業務を行う不動産会社は、通常「元付(もどづ)け業者」と「客付(きゃくづ)け業者」に分かれています。「元付け」はオーナーから借主を探してほしいと直接依頼を受けている不動産会社、「客付け」は借主に物件を仲介する不動産会社です。「元付け」は自分でも借主を探しますが、物件情報を多くの不動産会社に流して借主を探してくれるように依頼します。物件の案内をしてくれた担当者が物件に詳しくなかったり、他の不動産会社から鍵を借りている場合には、「客付け業者」である可能性が高いです。

不動産会社の収入(仲介手数料等)のしくみ

 募集業務では、契約が成立した時だけ、不動産会社は貸主や借主から手数料を支払ってもらうことができます。したがって、借り手は何件物件を案内してもらっても、契約が成立しなかったら1円も手数料を払う必要はありません。また、契約が成立しても受け取れる手数料の上限額が決まっていて、それを超えて受け取ってしまうと宅建業法違反になってしまいます。賃貸住宅の場合は、貸主・借主から賃料の0. 5 ヵ月分ずつ、つまり、あわせて賃料の1ヵ月分が上限額となっています。例えば、賃料が月額10万円ならば、貸主から5万円、貸主から5万円ずつ支払ってもらうことができます。ただし、借主が了解していれば、借主から1ヵ月分の手数料を受け取ることも可能なので、実際には重要事項の説明時に、借主に対して「手数料は1ヵ月分です。」と説明し、これをもって了解を得たことにして、借主が1ヵ月分の手数料を負担している場合がほとんどです。そうすると、この場合、貸主からは手数料はもらえないハズなのですが、貸主からも、「広告費」あるいは「宣伝費」という名目で賃料1ヵ月分程度の金銭を受け取っていることが多くあります。つまり、「元付け業者」が客付けもすると、貸主からは「広告費」、借主からは「手数料」を受け取ることができ(実質2ヵ月分の手数料を受け取ることと同じ)、「客付け業者」が客付けをした場合には、「元付け業者」は貸主から1ヵ月分の「広告費」、「客付け業者」は借主から1ヵ月分の「手数料」を受け取ります。さらに最近は入居者の確保が難しくなってきていますので、「広告費」を2〜3ヵ月分を支払うことにして、「元付け業者」に優先的な借主の紹介を依頼するオーナーも多くなってきています。なお、管理業務については月々の賃料の合計額の何%かを管理受託料(報酬)として月々オーナーから支払ってもらうのが一般的です。

Profile

中西 伸太郎氏( なかにし しんたろう)

宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・マンション管理士・管理業務主任者。
大学卒業後11年勤めていた大手自動車メーカーを退職し、宅地建物取引士・マンション管理士等の資格を取得。宅地建物取引士として宅建業に従事する一方で、宅地建物取引士やマンション管理士等の資格試験対策講師・宅建登録講習や宅建登録実務講習講師として、講義・教材制作に携わる。また、2017年から新しく開講したTAC賃貸不動産経営管理士講座では、不動産実務にも試験対策にも精通したエキスパートとして、イチからカリキュラムや教材を制作し、中心的存在として活躍中。

  

賃貸不動産経営管理士とは?

賃貸不動産経営管理士は、高度な専門知識と倫理観を持って業務にあたる賃貸住宅の管理に関する専門家です。
不動産管理の重要性が高まってきている現代社会に、今後いっそう必要とされる注目資格です!