タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第55回テーマ 士業の仕事に「文学」は役立つのか?

田久巣 えー、ゴホン。まさかの3回連続ではありますが、今回もゲストの登場です。テーマは「文学」!


税 太 えっ、前々回の天野大輔さん、前回の天野隆さんに続いて、またもやゲストの登場ですか!文学がテーマというと、もしやノーベル文学賞にからんでいつも話題になる村上春樹さんとか?


襟 糸 (所長には聞こえないよう小声で:ふん、そんな著名作家がこんな零細事務所に来てくれるわけないだろう。きっと文学だけは誰より詳しいと自負している、売れない落ちぶれた作家希望の人だろ。)


監 子 (所長には聞こえないよう小声で:襟糸先輩、その発言、所長にも失礼よ。零細事務所の斜陽っぷりが好きで、判官贔屓的に肩入れする有名作家だっているかもしれないわ。)


田久巣 お、税太君、ノーベル文学賞に目をつけるとは、なかなかいいセンスだね。では発表します。今回の特別ゲストは、なんと2度目の登場、税理士法人レガシィ代表の天野大輔さんです!パチパチパチ!


天 野 前々回に続いてお招きいただき光栄です。本当にとてもいい事務所ですね。メンバーも素晴らしい人が本当に多い!(長には聞こえないよう襟糸に:ひとりを除いては…。申し訳ないけど、私は地獄耳なんですよ。)


襟 糸 (所長には聞こえないよう天野へ:た、大変失礼しました!なにとぞ所長にはご内密にぃ~!)


田久巣 はっくしょん!あれ、早くも花粉症かな?えー、天野さんは『相続と文学』というYouTubeチャンネルを運営していますよね。なぜこの活動をされているんですか?


天 野 実は私は、大学4年と大学院2年の計6年間、ずっと文学について学び研究していたんです。私の曾祖父である平林初之輔が、文芸評論や推理小説の執筆をする文学者だったこともあって、私自身も「そもそも文学とは何だろう」と興味を持ち、とことん研究したくて文学部に入った経緯があったんです。


田久巣 なるほど、純粋に文学を研究したくて文学部に入ったということは、きっと相当な探求心をお持ちなのですね。で、なぜ相続と関与させたチャンネルを?


天 野 SEとして社会人経験を積んだ後、両親が運営している相続専門の税理士法人レガシィを引き継ぐため、公認会計士・税理士になって相続実務もするようになったのですが、その中で、相続と文学はとても親和性があると気づいたんです。


田久巣 ほう、それは面白い。私も相続の実務をやっているが、あまり感じたことはなかった視点だ。たとえばどんなことでしょう?


天 野 シェイクスピアの四大悲劇の1つ『リア王』をご紹介しましょう。高齢になった国王が三人の娘に生前贈与で国の領土を分けようとしました。長女と二女は言葉巧みに心にもないお世辞を言って広大な国土を手にしますが、三女はうまいお世辞を言えずにお父さんを怒らせてしまう。ここから悲劇が始まるのです。また、非嫡出子が嫡出子と父に復讐するエピソードもあります。
これって、相続の実務を行う上でとても大事な「感情(カンジョウ)」を学べる素晴らしいツールだなと感じたんです。最後は国同士の戦争にまで発展するので、相続トラブルの例としては少し「過剰(カジョウ)」な内容ですが!


襟 糸 おぉ~っ!!いつもの連載と同様、しっかりダジャレを入れて落とすとは、さすが作者ですね、素晴らしいぃ~!


天 野 襟糸さん、わざとらしいお世辞を言うなんて、『リア王』の長女二女とレベルが一緒ですよ


【今回のポイント】

「文学」と聞くと、「少し浮世離れした人が気難しい顔をしながら読むもの」「難しい古典を読みきったという事実に酔いしれるためのもの」「自身の知性や知的レベルを高く見せるためのもの」といった負のイメージを持つ人もいるかもしれない。しかし、「文学」「古典」と呼ばれるものを丁寧に読み解いてみると、現代社会や人類全体にも通じる、実に様々な問題提起がなされていると気付くはずだ。「相続」も、人間の感情が多分に渦巻く出来事だからこそ、古今の小説や戯曲にも描かれやすい。「文学なんて所詮フィクション」などと侮らず、「現実を写す鏡」と思って読んでみると、とても勉強になるはずだ。


[『TACNEWS』 2023年3月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でSEとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人兼コンサルティング会社に入り、会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年に士業事務所間で仕事を授受するWebサービス「Mochi-ya」、2020年にシニア世代向けの専門家とやりとりするWebサービス「相続のせんせい」をリリース。主な著書『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版)、『「生前贈与」のやってはいけない』(2022年、青春出版)。

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