読めばモチベーションUP?ビジネスや会計の気になる「あの本」を紹介 萌さんとカッキーの読書室 #3

仕事と資格マガジン『TACNEWS』から生まれた会計小説『女子大生会計士の事件簿』のメインキャラクター、公認会計士・藤原萌実(萌さん)と新人スタッフ・柿本一麻(カッキー)のふたりが、気になる本について激論を交わす…?!ゆったり、まったり、時に激しい、「楽しく、ためになる読書室」です。

『会計が動かす世界の歴史』



『会計が動かす世界の歴史』

 著者  :ルートポート
 出版社 :KADOKAWA
 初版  :2019年

カッキー やってきました。書評コーナー『萌さんとカッキーの読書室』です。

萌さん 今回は、待望の『会計の歴史』に関する本よ。

カッキー ちょっと待ってください。待望もなにも、前回も紹介しませんでしたか?似たようなタイトルの本を。

萌さん やったわよ。田中靖浩著『会計の世界史』を紹介したわね。

カッキー なにを平然と!

萌さん うるさいわね、いいじゃないのよ。いい本に出会ったときはいつだって、こんな本を待っていた!と思うものよ。だいたいさ、2015年のジェイコブ・ソール著『帳簿の世界史』のヒット以来、会計と歴史の組み合わせの本がたくさん出てきたのよ。ああ~、嬉しいわ。

カッキー そんなにたくさん出たんなら、今回の本も既出の内容が多いんじゃないですか?

萌さん いやいや、それがさ、よりマニアックというか、守備範囲が広い本なんだな~。たとえば、“明治日本に訪れたウサギ・バブル”って話が載ってるの。カッキー、知ってる?

カッキー なんですか、その可愛らしいバブルは。

萌さん “チューリップ・バブル”は聞いたことがあるわよね?

カッキー 昔のオランダでチューリップの球根が人気になってどんどん値上がりしたけど、ある日突然暴落して、みんな大損したという話ですよね。

萌さん そうよ。球根がまだ土に埋っている冬の時期に、みんなが投機目的で球根を買い漁ったの。それで球根1個で家1軒買える価格まで高騰したんだけど、春になったらみんな現実に引き戻されたのか熱が冷めて暴落した、という史実。世界で最初のバブルと呼ばれている事件よ。

カッキー “ウサギ・バブル”は、その日本版ということですか。

萌さん 昔の日本には野ウサギしかいなかったんだけど、鎖国が終わると西洋からアナウサギが入ってくるようになったの。アナウサギはいろんな模様をしているから当時の日本人にとっては珍しくて、飼う人が急激に増えたの。

カッキー ウサギは飼育もしやすいですしね。

萌さん 都市部ではウサギを売買する“兎市”があちこちにできて、毛並みの品評会も盛んに行われるようになったの。その飼育熱の反面、仕事をしない人が出てきたんだって。さらには、白いウサギを柿色に染める詐欺事件が起きたり、ウサギが急死したせいで喧嘩になって殺人事件が起きたりと、問題が多発したの。

カッキー いまでは考えられないカオスっぷりですね。

萌さん だから明治6年、東京府はウサギの飼育者を登録制にしたり、ウサギ1羽につき毎月税金をかけたりしたの。

カッキー そしたらどうなったんですか?

萌さん それがきっかけでバブル崩壊よ。一時は1羽40両の値段が5銭になったんだって。バブル崩壊後は、ウサギの毛皮を集めて帽子や襟巻きにされたり、ウサギ肉の鍋にされたりしたそうよ。

カッキー ひ、ひどいですよ……。

萌さん バブル崩壊って、いつの時代もこんな感じになるのよねぇ。

カッキー ―――あれっ!? この話、会計が関係なくないですか?

萌さん うーん、そうね。直接的には関係ないわね。こういう会計や簿記には直接関係ないけど、面白い話が多いのがこの本の特徴かも。

【第1章】 偉人とお金の意外な関係

 シャーロック・ホームズの“金銭感覚”
 投資家として大成功したダーウィンの“目利き”

【第2章】 なぜ「文字」よりも先に「簿記」が生まれたのか?

 「貸し借りを把握するため」に進化したヒトの脳
 最初の簿記はメソポタミアの「駒」
 ヨーロッパで起きた数字のイノベーション

【第3章】 一国の運命をも翻弄する会計の力

 球根1個で家が建つ!? オランダのチューリップ・バブル
 稀代の詐欺師だけが知る“マネーの本質”
 フランス革命の引き金となる1冊の暴露本『国王への会計報告』

【第4章】 産業革命。そして、簿記から会計へ

 産業革命は、なぜイギリスだったのか?
 すべてはペストから始まった
 鉄道が生んだ公認会計士

【第5章】 これからの「おカネ」の話をしよう

 財務省が消費税を上げたがるワケ
 ビットコインが問いかけるマネーの本質
 AIは私たちの仕事を奪うか?

(目次から主な小見出しを抜粋)

カッキー ちゃんと会計や簿記の話もありそうで、ホッとしました。

萌さん まあ、エッセイっぽいというか、ホモサピエンスの進化の話も強引に簿記の話に結びつけているからね。

カッキー かなりの腕力ですね。

萌さん あと、これまでの本にあまりなかった話を挙げると、“江戸時代の帳簿と西洋の帳簿の違い”“イギリス東インド会社(EIC)の設立とその顛末”“フランスの詐欺師ジョン・ローの奇策”“産業革命はなぜ、イギリスだったのか?”なんて話があるわ。会計に少しでも絡むなら、どんどん踏み込んでいく姿勢が良かったわね。

カッキー 会計の勉強にも、世界史の勉強にもなりそうですね。

萌さん 著者のルートポートさんは『女騎士、経理になる。』や以前紹介した『会計探偵リョウ・ホームズ』を書いた先生なんだけど、小説の時とはまた違って、博学な感じが行間から滲み出ているのよねえ。憧れるわぁ。

カッキー (萌さんはこういうタイプが好きなんだな。メモっておこう……)

[『TACNEWS』2019年6月号│連載│萌さんとカッキーの読書室]

著者プロフィール

山田真哉(やまだしんや)

公認会計士・税理士。TAC梅田校出身。中央青山監査法人(当時)を経て、現在、芸能文化税理士法人会長。株式会社ブシロード等の社外監査役。著書に『女子大生会計士の事件簿』シリーズ、『世界一やさしい会計の本です』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』等。

YouTubeはこちら
Twitterはこちら