タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第43回テーマ 士業でもイノベーションって必要?

襟 糸 やあ、税太君。実は「今朝の新聞であるニュースが目に止まったんだ!」


税 太 襟糸先輩、おはようございます。あ、もしかして、『注目スタートアップ企業が千葉で合同合宿!』ってニュースですか?僕も見ました!


襟 糸 フフフ、「今日は映画を見たんだ。」


税 太 いや先輩、僕の話聞いています?僕はニュースの内容を聞いているんですけど…。


監 子 それ、ビートルズの『A Day In The Life』の歌詞でしょ? 確か、ジョンが作った序盤・終盤と、ポールが作った中盤をくっつけてひとつの曲にしたっていう…。って、なんか最近ビートルズネタ多すぎないかしら?


襟 糸 お、詳しいじゃないか、監子君。ではなぜこの曲を引用したのかわかるかい?


監 子 わかりませんし興味もありません。さーて、仕事仕事っと。


襟 糸 ちょ、ちょっと待った!これだって仕事の話なんだ。税太君、最近「イノベーション」について調べていなかったか?


税 太 はい。お客さんが事業承継をするので税制の優遇措置を受けるためのサポートを行っているんですが、代替わりを機に既存の経営資源を活かしながら新しい事業にもチャレンジしていきたいとうかがいまして…。


襟 糸 事業承継をイノベーションのきっかけにしようということだね。では税太君、イノベーションに必要なのは何だと思う?


税 太 確か、何かと何かを結び付ける「関連付ける力」がそのひとつだったかと。アメリカの実業家で経営学者のC.クリステンセンが著書『イノベーションのDNA』で書いていましたね。学問の世界で被引用数が論文の評価の指標になっていることに着想を得て、被リンク数の多さをWebサイトのランク付けの基礎としたGoogle社の事例が書かれていました。


襟 糸 さ、さすが税太君。き、君のほうがエリートだな…。


監 子 つまり襟糸先輩は、さっきのビートルズの曲も同じだって言いたいのね?ジョンの新聞記事や映画の記憶と、ポールの学生時代のやんちゃな思い出。一見脈略のないこれらのエピソードを巧みに組み合わせたら、イノベーションが起きて革新的な曲ができた。


襟 糸 そ、その通りだ。監子君にそこまで解説されてしまうと僕の出番がないな…。


田久巣 ただいま帰ったぞ。いやぁ、良い出張だった。はい、お土産。


監 子 落花生?ってことは今回の出張先は千葉ですか?あ、もしかして所長、今朝の新聞に載っていたスタートアップ企業の合同合宿に参加していました?


田久巣 フフフ、その通り。ナイス「関連付け」だよ、監子君。お互いの企業について質問し、事業計画を検証し、意見を戦わせるというなかなかハードな合宿でね。私はアドバイザーとして呼ばれたというわけだ。


税 太 その合宿、僕も気になっていたんですよね。「自分と相手の得意分野をいかに関連付けられるか」を常にみんなが考えている空間というのは、相乗効果も加わって生み出されるものも大きいでしょうね。


監 子 合宿によってイノベーションが起こり、新たな事業が生まれる突破口になるかもしれないですね。もしかして、襟糸先輩はこのニュースを知っていた上で、「あるニュースが目に留まった」っていう歌詞を関連付けて引用したんですか?


襟 糸 えっ、あ、いや…、まぁ。(まったく知らなかった。「井の中の蛙大海を知らず」とはこのこと。まだまだ見識が狭い「井のベーション」だったというわけか…。)


【今回のポイント】

士業の業界はイノベーションが生まれにくいと思われている節がある。法律や数字に基づき堅実に仕事をしている“守り”のイメージが強いからだろう。しかし顧客を守り、企業の継続的発展・成長をめざすなら“攻め”の姿勢を忘れてはいけない。この業界でも、時代や顧客のニーズの変化に対応するためにはイノベーションが必要なのだ。さて、「関連付ける力」を鍛えるには日々の頭のトレーニングが必要だ。例えば、ここしばらく作者はまったくつながりのない「会計」と「ビートルズ」を関連付けているようだが、うまく「イノベーション」できているだろうか?それともまだまだ見識が狭くて「井のベーション」だろうか?評価は読者諸君に任せたい。


[『TACNEWS』 2022年3月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員パートナー。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でシステムエンジニアとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人兼コンサルティング会社に入り、会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年7月には会計事務所向けWebサービス「Mochi-ya」をリリース。2020年8月にはシニア世代向けWebサービス「相続のせんせい」をリリース。
主な著書:『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版、共著)
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