タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第42回テーマ 会計事務所って出張は多いの?

襟 糸 税太君、今日は夢中になっているあの娘が遠くへ行ってしまう日だから、悲しい気持ちになっているんだ。


税 太 襟糸先輩!突然どうしたんですか?女性に夢中になっているなんてキャラに合わないですよ!


襟 糸 彼女は「乗車券を手に入れた」!私のことなんて何にも「気にしない」んだ。


税 太 え?乗車券?


監 子 ビートルズの『Ticket To Ride(涙の乗車券)』の歌詞の和訳でしょ?先月号で歌っていた『イエスタデイ』と同じ失恋ソングじゃない!


襟 糸 お見事だ。監子君。では正解のご褒美に乗車券をあげよう。


監 子 え?これって秋田までの切符じゃないですか?「出張に行ってこい」ってことですか?


襟 糸 フフフ、監子君、君も「乗車券を手に入れた」ね。理由は「気にしない」ことだよ。


監 子 いやいや、さすがに仕事だとしたら気にしなきゃダメでしょ!もしかして監査の案件ですか?


襟 糸 いや。田久巣所長からの指示なのだが、うちのクライアントが今度秋田の食品会社を買収して事業承継することになったんだ。そこで契約前に財務面の調査(デューディリジェンス)をしてきてほしい、と。


税 太 監子さん、うらやましいなぁ~。秋田で食品と言えばこの季節はきりたんぽ。お土産があるかもしれないですね。僕も行きたいなぁ。


襟 糸 と言うと思ったから、ほら、税太君にも乗車券を持ってきたぞ。


税 太 えーっと、あ、山梨県ですね?もしかしてブドウの試食の仕事ですか?


襟 糸 …んなわけないだろ!とそのボケに対してツッコミたいところだが、ボケでなくなる可能性も高い。2019年2月号で、うちのパートスタッフだった農美ちゃんがブドウ園をやっているご実家の相続について相談をしてくれたのを覚えているか?また相続が発生してしまったらしく、税太に農地の財産評価を手伝ってほしいんだと。お礼にあの美味しいブドウをいただけるかもしれないな。


税 太 またご不幸があったのですね…。でも、農美ちゃんと会うの、実家の仕事が忙しいからと一昨年に退職して山梨に戻ってしまって以来だから楽しみだなぁ。


田久巣 ただいま帰ったぞ。いやぁ、良い出張だった。はい、お土産。


監 子 あれ、所長、どこに行ってらしたんですか?予定表には行き先が書いてなかったですが。


田久巣 フフフ、急遽バンコクに呼ばれたのだ。うちのクライアントの重要子会社があるんだが、経理で問題が起きて調査が必要になったんだ。あと、それとは別件だが、今度バンコクにうちの海外事務所を作ろうと思っていてな。その視察もしてきたんだ。


税 太 え!?田久巣会計事務所、初の海外進出ってことですか!ワクワクしますね。お土産もありがとうございます!って、このお土産、乗車券じゃないですか?しかもたくさん!


田久巣 現地の社長が今回のお礼にって新しい仕事をくれたんだ。今度は事務所のメンバー全員で来て仕事をしてくれってね。トムヤムクンをご馳走してくださるそうだぞ。


税 太 うれし「涙の乗車券」ですね!


【今回のポイント】

会計事務所の仕事は多岐にわたる。全国に拠点がない事務所でも、遠隔地の仕事を頼まれることは往々にしてある。そうなると出張になるわけだ。子会社の往査やM&Aのデューディリジェンスを請け負う公認会計士は、出張も結構多い。税理士の場合は専門とする領域によってまちまちだが、相続の現地調査や、法人顧問として調査関連の依頼で出張となることは多々ある。時には海外まで出向くこともあるのだ。こういった出張では、観光や名物料理を楽しむのも一興。もちろん仕事に支障のない範囲でだが、息抜きの時間は楽しいものだ。まあ、「出張(しゅっちょう)」は多いのかという冒頭タイトルの質問に答えるなら、「しょっちゅう」ではないといったところだが。


[『TACNEWS』 2022年2月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員パートナー。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でシステムエンジニアとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人兼コンサルティング会社に入り、会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年7月には会計事務所向けWebサービス「Mochi-ya」をリリース。2020年8月にはシニア世代向けWebサービス「相続のせんせい」をリリース。
主な著書:『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版、共著)
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