タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第35回テーマ スポーツ選手と税理士は似ている?

監 子 税太君、今度こそ大物を釣り上げたわ!


税 太 か、監子さん、今回から初めて読んだ方は釣りの連載と勘違いしちゃいますよ。えーっと、恋愛マッチングアプリでいいお相手を見つけたって話で合ってますか?


監 子 フフフ、その通りよ。5月号で「機会はどの場所にもある。釣針を垂れて常に用意せよ。釣れまいと思う所に常に魚あり」って名言を襟糸先輩から言われたでしょ?実はあのあと辛抱強くずっと釣り糸を垂らして待っていたら、Jリーガーらしきサッカー選手から連絡があったのよ。私、来週のオンラインデートのために大忙し!


襟 糸 「ライオンに襲われた野ウサギが逃げ出すときに肉離れしますか?」byイビチャ・オシム。


監 子 は?襟糸先輩、どうしたんですか?失礼ながら全く意味プーです。(# ゚Д゚)


税 太 監子さん、私が解説しましょう。オシム氏はサッカー日本代表の監督も務めたことのある方で、若いときは旧ユーゴスラビアのエースストライカーとして活躍、監督としても数々の伝説を持っています。その頭脳明晰さやユーモアセンスによって語られる数々の名言は「オシム語録」として話題になりました。先ほど襟糸先輩が言ったのは、20年ほど前、Jリーグのチームに監督として就任して1年目にチームに故障者が相次いでしまった現状について記者から質問されたときの発言です。野ウサギが、ライオンのような強敵に襲われても逃げ切れるよう、常に素早く逃げられる準備をしているように、試合で自らの能力を最大限発揮するためには、日頃から試合に向けていかに準備をしているかが大事だということです。


襟 糸 フフフ、その通りだ。監子君はさっきの「意味プー」みたいなヘンテコ発言で相手を引かせないようにな。恋愛も日頃から入念に準備しておかないと、いざというときに肉離れして失敗してしまうぞ。


監 子 まあ、えらそうに!襟糸先輩なんて女性への配慮が毎日肉離れじゃないの!


税 太 おふたりともやめましょうよ!「肉離れ」ってワードにこだわりすぎて、それこそ発言が「意味プー」になってますよ! ?


田久巣 おーい、先月号に続いてまた仕事中におしゃべりか?君たちは肉離れというより仕事離れしているようだな。


監 子 所長、スミマセン…。あ、そういえば今度新人が入るって聞きました。どんな方なんですか?


田久巣 元スポーツ選手だ。足の故障で若くして引退し、第二の人生で税理士をめざして見事合格したがんばり屋さんなんだ。とても期待しているよ。


監 子 あら、素敵!そういえば専門家に元スポーツ選手って多い気がするわ。私も同期の公認会計士に現役プロバスケットボール選手で日本代表の方がいて、補習所も一緒だったの。


田久巣 確かにそうかもな。試験に合格するには日々の勉強が欠かせないし、頼られる専門家になるには日々の情報収集や実務の経験を積んでいくことが大切だ。スポーツも毎日の練習を欠かさず努力することが成功のカギ。そういった点に共通点があるんだろう。


税 太 やっぱり日々の努力は大事ですよね。そういえば僕、簿記の計算問題を毎日解いていたとき、ふと指に魂が宿った感覚がありました。簿記は指で覚えるってたとえ話がありますが、「体で覚える」という点も似ている気がしますね。


田久巣 オシム氏の名言のライオンを税務署、野ウサギを税理士と置き換えることもできるが、税務署からの指摘に逃げ出す税理士はいないし、本当に実力をもった税理士は税務署からの指摘は怖くなく、逆に教えることもあるくらいだ。強い立場であるライオンこそ油断して「肉」離れしたりするから、皮「肉」なもんだ。


【今回のポイント】

税理士などの「士」がつく職業を「士(サムライ)業」、野球選手の日本代表を 「侍ジャパン」と呼ぶように、自分の知識や技術を駆使し身ひとつで勝負する士業やスポーツ選手の姿は、サムライをイメージさせるようだ。さて、日々の準備が大切な両者だが、もし準備を怠ったらどうなるだろう? スポーツ選手がトレーニングを怠ればケガのものになるし、税理士が自分の知識を磨くための勉強や情報収集を怠れば、税務署に限らず様々な「ライオン」に追われ、「肉離れ」を起こし食べられてしまう。私自身は日頃から専門雑誌に目を通し、調べ物ものの際は条文にあたり、様々な種類の専門書籍を熟読するなど、日々の準備を怠ることはないが、そのせいで運動不足になり、贅肉がついてきてしまった。こちらは早く「肉離れ」させてしまいたいところだ。


[『TACNEWS』 2021年7月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ副代表/代表社員パートナー。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でシステムエンジニアとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人兼コンサルティング会社に入り、会計監査、事業再生、M&A支援等を行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ入社。相続・事業承継対策の実務を経て、プラットフォームの構築を担当。2019年7月には会計事務所向けWebサービス「Mochi-ya」をリリース。2020年8月にはシニア世代向けWebサービス「相続のせんせい」をリリース。主な著書『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版、共著)。