タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第25回テーマ 税理士は顧客から恋愛相談されたらどうするか?

監 子 もしもし、税太君、今からWEB会議いいかしら?招待するわね。

 

税 太 あ、いいですよ。あ、URL来ました。ポチ。あ、監子さん、背景の絵変えましたね?もしかしてディズニーランドですか?


監 子 そう、コロナの影響で行けないからせめて気分だけでもと思って。あと誰か一緒に行ってくれるすてきな男性がいないか募集中って意味も込めて。あ、襟糸先輩が乱入してきたわ。


襟 糸 おい、乱入とはなんだ。しかも、ここまでのやりとり先月号と一緒じゃないか!作者め、テレワーク中だからなのかわからんが手を抜きやがって。それにしても監子君、その背景の絵で男をゲットしようだなんてお気楽な考えは捨てたまえ。世の中はそんな甘くはないものだ。


監 子 大きなお世話ね。女性の恋愛相談にそんな態度をしたら嫌われますよーだ。


襟 糸 税理士は幸い恋愛相談を受けることはないからそんな心配不要ですよーだ。


税 太 二人とも何ですか、その語尾は。まるで恋人同士みたいですね。あ、そういえば僕はこの間お客様から恋愛相談を受けました。


監 子 えっ、それは聞き捨てならないわ!どんな相談?


税 太 お客様は業界では有名な教授の方だったんですが、奥様とは別の人を好きになってしまい、その人に財産を一部贈与したいという相談でした。


監 子 それは全然恋愛相談じゃないわよ。年間110万円までは非課税で贈与できる暦年贈与の話、いざ相続をするとなったときの遺留分の話をしたわけでしょ?それは税務の専門分野の対応よ。恋愛相談っていうのは例えば、「この女性は自分とは相性が合いそうだと思うのだが、どうだろうか?」みたいな相談のことよ。


襟 糸 このケースだと、お金が欲しいニーズとお金をあげたいニーズ、うまくマッチしているから相性がいいと思います、というアドバイスが正解では?


税 太 襟糸先輩も大人げないですよ。そんなに監子さんにかまっていたら好きだってアピールしているようなもんですよ。監子さんが言いたいのは専門外の質問をされたときの対処法ですよ。


襟 糸 そんなもの簡単だ。たとえ専門外でも、相談されたらまずは自分で調べるのだ。条文や書籍やインターネットで調べきる。それが専門家たるものだ。相談対応を断ってはいけない。


税 太 でもさすがに恋愛の相性まで相談されたら断りますよね?または他の専門家を紹介しますよね。僕も相性まで相談されたら、まずは監子先輩にヘルプをお願いします。WEB会議の招待を速攻でします。


監 子 さすが税太君、前職が一般事業会社だからかわからないけど、困ったら他の人に対応してもらう、いい発想ね。一方、襟糸先輩は本当に職人ね。その姿勢は立派だし、お断りして邪険にするのは今後のおつき合いがなくなるから嫌だけど、専門外だと質も落ちるし、時間もかかって逆にお客様に迷惑よね。今回は税太君に軍配が上がったわね。


襟 糸 フン、今回のような『恋愛』相談がくるっていうのは『レア』ケースだ。


監 子 そのダジャレも専門外なんだから、得意な人に任せてみたら?(笑)


【今回のポイント】

 専門家は孤独だ。特にコロナの影響によりテレワークで実務をしているとさらに孤独だ。理由は、専門家である以上、自分で判断しないといけないからだ。もし専門分野ではなく、専門から少し外れたり全く違う分野の相談だったらどうするか。

  ①「専門外なので私では相談に乗れません」と言う。
  ②とりあえず引き受けて調べながら対応する。
  ③「その分野の専門家をご紹介します」と言う。

 さてあなたならどれを選ぶか。①だとその相談者とはそれっきりだ。②だと時間がかかるし品質も良くなく相談者に迷惑がかかる。③だと人脈がないと難しい。ただ③の場合は、相談を受けた時点で取りつぎ先に適した人脈がなかったとしても、依頼を受けてから人脈を作ることだってできるだろう。
 畑違いの恋愛相談は確かにレアケースに近いが、微妙な領域の相談は結構あるので、今回のような対処法は覚えておいて損はないだろう。


[TACNEWS 2020年9月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員パートナー、株式会社レガシィ常務取締役。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でシステムエンジニアとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人に入り、会計監査・内部統制監査・IPO準備監査に従事。また事業再生、M&A支援等のコンサルティング業務も行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ。現在は相続・事業承継対策コンサルティングを担当。また情報戦略本部長としてプラットフォームの構築も担当し、2019年7月「Mochi-ya」をリリース。 https://www.mochi-ya.ne.jp
主な著書:『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版、共著)