人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第77回 株式会社ブレインパッド

紺谷 幸弘(こんや ゆきひろ)氏(写真右)
執行役員
人事ユニット統括ディレクター
エグセクティブデータサイエンティスト
鈴木 由美子(すずき ゆみこ)氏(写真左)
人事ユニット 人事部長
ブレインパッドは、
日本一の人材開発・輩出企業をめざして
人材開発と人材輩出に挑んでいます
2004年の創業以来、ブレインパッドは1400社超の企業に対してデータ活用をサポートしてきた。社内のデータサイエンティスト数は現在200名以上。エンジニアやコンサルタントも多く在籍。IT系資格をはじめ多くの資格保持者が活躍するブレインパッドでは、どのような人材観や人材戦略で人材育成を行っているのだろうか。執行役員・人事ユニット統括ディレクターの紺谷幸弘氏と、人事ユニット・人事部長の鈴木由美子氏にお話をうかがった。
データ活用のフロンティアを走り続ける
──最初にブレインパッドについて教えていただけますか。
紺谷 ブレインパッドは、2004年に日本で初めて「対象業界を問わない総合データ分析サービス企業」として生まれました。「データなんてビジネスにはならない」と言われていた当時、データ活用こそ経営の鍵となると確信して創業したのです。
私が新卒で入社した2010年になっても、データ分析を手がけるベンチャーは当社しかありませんでした。当時は、「データサイエンティスト」という言葉すらなく、「分析官」という肩書きだったと記憶しています。そのような中で、データを分析するだけではなく、ビジネスの現場に持ち込んで課題解決する存在として、現在もなおフロンティアを走り続ける。いわばデータ活用を推進するパイオニアです。
事業内容の特徴は、企業の経営課題に対してコンサルティングを行うプロフェッショナルサービスとデータ活用・データ分析を行うためのツールを提供するプロダクトサービスの両輪を生業としている点にあります。データ分析を中核としてビジネス展開をする他企業との一番大きな違いは、データビジネスの現場で価値を出すことにフォーカスしている点です。テクニック的に高度なアルゴリズムを採り入れたプロダクトを作ることより、実際のビジネスの現場でどう価値を出すのか。そこにフォーカスしている点が、私たちの強みです。

紺谷 幸弘氏
大阪大学人間科学研究科博士前期課程修了。2010年、新卒でブレインパッド入社。ブレインパッドとヤフー株式会社(現:LINEヤフー株式会社)の合弁会社でYahoo! JAPANの大量データを使い、広告主を中心に価値を提供。2018年7月以降、部長として120名以上のデータサイエンティストのマネジメントに従事。2023年7月より執行役員就任。2024年7月より現職。
日本一の人材開発・輩出企業をめざす
──ブレインパッドの人材観を教えていただけますか。
紺谷 ブレインパッドは、「日本一の人材開発・輩出企業になる」を人事戦略の軸に据えています。これを実現するために「データ分析力」「哲学的思考力」「実践力」の3つを掛け合わせた人材の育成と輩出をめざしています。この人事戦略は、「共生型キャリア開発」「理系思考をベースとする経営人材の養成」「柔軟な人材配置とチーム組成」「理念浸透」「共感的コミュニケーションの実現」という5つの柱で構成されており、その頭文字を取って「Synapse」と呼んでいます。


提供:株式会社ブレインパッド
「日本一の人材開発・輩出企業をめざす」にあたり、特に強化したいのは「哲学的思考力」です。以前に比べて意思決定が難しく、スピードも求められる時代です。そのような状況が加速する中で、自身の判断・意思決定の判断軸を持つために「哲学的思考力」は強い武器になります。これに紐づいて、当社では「創発教室」と銘打ち、哲学やリベラルアーツなど、様々な分野の講師をお呼びしてデータ活用や周辺知識だけに閉じないよう、あらゆる分野に触れられる機会を設けています。
──新卒採用、中途採用において、ブレインパッドの「求める人物像」とはどのような人材ですか。
紺谷 ブレインパッドには「本質に向き合う」「行動を起こす」「敬意を払う」「未来をつくる」という4つのバリューがあります。まず、そこにしっかりと共感し、前向きに実践いただける方を求めています。
なかでも重要なのは「本質に向き合う」です。例えば、コストパフォーマンス、タイムパフォーマンスのような短期的な経済合理性を追求することが合理的な選択になりますが、長期的・俯瞰的に考えると必ずしもよい結果を生むとは限りません。本質を追求しようとすると、どこかで短期的な経済合理性と対峙せざるを得なくなりますから、短絡的なアプローチではこれらの両立は難しくなります。もちろん、短期的な経済合理性を完全に捨て去ってしまっては、実行可能性を失い、実効性を失ってしまいますから、それらをバランスできるような解を探索せねばなりません。目に見えることだけ、いま得することだけではなく、やらなければならないという倫理観、本質に向き合う意思や覚悟を持っている方に、入ってきていただきたいと考えています。
ブレインパッドは、考え抜くことを大切にしている会社です。正解を出すことが難しい事象に対して、自分なりの仮説を立てて周囲を巻き込みながら考え抜こうとされる方に、ぜひ来ていただきたいと思います。
新卒を毎年40〜50名、中途は年間約70名を採用
──ブレインパッドの新卒採用、中途採用方針についてお聞かせください。
鈴木 採用は新卒、中途の両輪で実施しています。毎月採用しているので人数規模的には中途採用が多くなりますが、新卒も毎年まとまった人数を採用しています。
中途採用は期初の計画では、年間70名超を予定しています。ただし、事業のてこ入れなど期中の追加もあるので、基本的に枠が埋まらない限り採用は続けます。
新卒採用では2025年4月に約40名が入社しました。2026年4月は同等かそれ以上の採用を計画しています。弊社では新卒からコース別採用をしており、データサイエンティストとビジネスプロデューサー (コンサルタント) の2職種は人数が多めです。その他にも、プロダクト開発エンジニアやカスタマーサクセス、セールス&ビジネスデベロップメントなどの職種を採用しています。
──新卒の選考フローでミスマッチを防ぐために配慮していることはありますか。
鈴木 コミュニケーションを大切にしています。特に新卒の選考フローでは、面接のあとに人事のフォロー面談を入れています。たとえ面談ができなくても、メールや電話で面接中に言えなかったことや聞けなかったことをお聞きするようにしています。
──新卒に対してどのような内定者フォローを行っていますか。
鈴木 内定者向けの懇親会や内定者研修を用意しています。また、入社前にITパスポートなどの推奨資格取得のために支援をしたり、書籍の推奨をしたりしています。ITパスポートをすでに取得している方には、基本情報技術者や応用情報技術者などの資格取得をめざす学習をおすすめしています。
──新入社員研修はどのぐらいの期間を設けていますか。
鈴木 約3ヵ月です。内容としては、一般的なビジネスマナーから、データサイエンスなど技術寄りの研修まで幅広く盛り込んでいます。職種問わず共通で行う内容もあれば、特定の職種に限定した研修も実施し、7月から本配属になります。
学びに対して大変積極的な会社なので、新卒に限らず手挙げ式の研修はたくさん用意しています。

鈴木 由美子氏
人材紹介・派遣会社の営業、コンサルティングファームのバックオフィス、人事コンサルティングなどで人材・組織関連の業務に携わる。2023年8月、ブレインパッド入社。人事部長として、採用、育成、評価・報酬制度など人事部全体を束ねている。
自主的勉強会は年間300回以上
──哲学的学びから専門研修まで、幅広い分野を学習できることがブレインパッドの最大の魅力だと思います。後押しする制度にはどのようなものがありますか。
紺谷 私たちの文化をもっとも象徴しているのが、学びの制度のひとつ「SKILL UP-AID」です。個人のスキルアップのために一人年間12万円まで活用できる制度で、業務に関するセミナー参加、資格取得の費用と自由に使えて、個人の学びを応援する制度です。
他にも「BOOK-AID」といって、業務に必要な書籍であれば会社が全額サポートする制度もあります。書籍は基本的に会社の資産になるので、読み終わったら会社の本棚に戻してもらい、みんなで共有できるようにしています。
b2b(BrainPad to BrainPad)という社内の自主的勉強会は、年間300回以上開かれています。誰かが毎日、自由にテーマを設定して勉強会を開く、とてもユニークなしくみです。学びに積極的な人が集まる、会社の文化を象徴する取り組みのひとつですね。
勉強会がb2bの形式になったのは約8年前ですが、以前から勉強会の文化がある組織でした。理系出身者が多いことも手伝い、以前はよく研究室や大学のゼミで行われるような輪読会形式の勉強会が多かったですね。例えば、データ分析の著名な書籍、これを1人で読むのは骨が折れるものではあるのですが、メンバー4人で輪読する様子をよく目にしていましたし、新卒対象に創業者・高橋が輪読会を主催していた時期もありました。
──入社後は自然に学べる環境が用意されているのですね。
紺谷 理系研究室の卒業生などデータ分析に触れたことがある人材が多いので、大学の研究室やゼミの雰囲気は残っていますね。ですが今では職種を問わず組織横断的なb2b、勉強会で相互に教え合う文化が広まっています。
──特に力を入れているのはどのような学びですか。
紺谷 直近で特に力を入れているのは、「理念浸透」の部分です。ここ2年間、会社の理念を自分なりに理解し、日常的な業務にもつながる文脈を各人がしっかりと作ることを目的とした理念浸透ワークショップを実施しています。
──どのような経緯で理念浸透ワークショップを始めたのですか。
紺谷 私が入社した当時は60名ほどの規模で、先進性のある社員の集合体という部分がありました。その後、上場するようになると、良くも悪くも角が取れて丸くなってきています。そうなったときに私たちがなぜ一緒にいなければならないのか。この課題意識が高まったからだと考えています。
部署横断的に経験できるしくみを多数用意
──人事制度や福利厚生で、ブレインパッドならではの制度があればご紹介ください。
鈴木 人事制度では、社内公募をはじめ、社内の別の部署を経験できる、さまざまなしくみや制度を用意しています。募集ポジションの社内説明会は年に2回行われ、社内留学や社内副業が可能です。社内留学では、期間限定で留学先の部署の業務を主業務とすることができます。社内副業では、主業務を持ったまま、業務時間の一部を社内の別部署の業務に充てることができます。いずれのしくみも、新たな視座や価値観に触れることで、成長できることを期待しています。
福利厚生では、「肉会」というシャッフルランチがあります。毎月2回、ランダムに組み合わせて社員を選出し、うち3名が「参加希望」となったら会社が食事代を補助します。
資格取得を支援する「SKILL UP-AID」
──新卒には入社前のITパスポート取得を推奨していますが、その他にも推奨する資格はありますか。
鈴木 資格を持っている社員は大勢います。その中でもっともベーシックな資格がITパスポートで、基本情報技術者や応用情報技術者などの資格は、部署や職種によって推奨されています。部署によっては、データサイエンティスト検定や統計検定、E資格(エンジニア資格)、G検定(ジェネラリスト検定)、機械学習、深層学習系資格を推奨しているところもあります。
当社の資格取得に対する位置づけとしては、業務上のパフォーマンスを上げるための一連のスキルセットとして取得するイメージです。つまり、取得よりも、取得に向けて自分自身で勉強していくプロセスが重要だと捉えています。
──一連の推奨資格を取得する際に会社からのサポートはありますか。
紺谷 おそらく半数以上の社員がITパスポートや基本情報技術者以上の資格を持っていると思いますが、社員は先ほどお話しさせていただいた「SKILL UP-AID」を活用して多くの資格を取得しています。技術系の職種が多いので、「SKILL UP-AID」にたくさんの関連資格の申請が上がってきています。
──会社全体でIT系資格を取得している方が多ければ、全社的なIT知識レベルの底上げになりますね。
鈴木 そもそも知識がないと仕事に支障が出るといった必要性に迫られて取得するケースもありますし、修士・博士を持つ社員も多く、学びに対する素地があり、自然な学びの一環として取得するケースの両方があるのではと思います。
──新卒の応募書類やエントリーシートにITパスポートなどの取得資格が記載されていた場合、どのように評価されますか。
紺谷 この業界で仕事をしたいという意気込みを判断する材料のひとつになります。資格だけでなくオープンソースのコンペティションに参加した経験なども見ていることが多いですね。
世界を広げ、可能性を広げよう
──最後に資格取得やキャリアアップをめざしている読者に向けて、メッセージをお願いします。
紺谷 生成AIが出現したように、何が起こるかわからない世の中です。お金を稼ぐための手段が、いつ置き換わるかわかりません。もはや自分の得意分野だけでは生きていけない時代とも言えるでしょう。そこで、自分の可能性をどれだけ広げていけるかが、非常に重要になってくると思います。その意味で、資格取得という行為そのものが非常に尊いものだと捉えています。キャリアを作るという直線的な観点だけでなく、可能性を広げるために、いろいろなことに対して学びの指向性を持っていただきたいと願っています。
ブレインパッドが大切にしている哲学的思考力やリベラルアーツは、まさに世界を広げ、可能性を広げることをめざした人事戦略です。ブレインパッドが、人を中核とした「強くて善い会社」であることを知っていただければ幸いです。
鈴木 会社の求める人物像を設定しても正解がないような、多様なキャリアが描ける時代です。だからこそ学び続けることはとても大切です。資格を取得することは、自信につながるだけでなく体系的に学んだ証明にもなります。学ぶプロセスを大切にしつつ、その先のキャリアの可能性を広げることも視野に、励んでいただけたらと思います。
[『TACNEWS』人事担当者に聞く「今、欲しい人財」|2025年6月 ]
会社概要
社名 株式会社ブレインパッド
設立 2004年3月18日
代表者 代表取締役社長 CEO 関口 朋宏
本社所在地 東京都港区六本木三丁目1番1号 六本木ティーキューブ
事業内容
データ活用を通じて企業の経営改善を支援するプロフェッショナル
従業員数
545名(連結、2024年6月30日現在)
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