人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第76回 エリアリンク株式会社

西澤 実(にしざわ みのる)氏
取締役執行役員 ストレージ本部長 兼 人事部部長
2001年、新卒入社。入社後、千葉オフィス、大阪オフィス、埼玉オフィスと一貫してセルフストレージ事業に従事。同時に人事を兼務、現在2度目の人事部長を務める。35歳で取締役就任。その後2022年、3回目の取締役に再任され現在に至る。
信賞必罰、徹底した実力主義。
やる気がある人がさらにやる気になる会社です。
レンタル収納スペース「ハローストレージ」で業界トップを走り続けるエリアリンクは、徹底的な実力主義を貫いている。型通りの集合研修はほぼ実施しない。正社員80名という少人数経営の中で、なりたい自分をめざし、自走できる力を培うのがエリアリンク流の人材育成だ。取締役執行役員・ストレージ本部長兼人事部部長の西澤実氏に、仕事の生産性を劇的にアップさせるエリアリンクの人材育成術についてうかがった。
トランクルーム市場でシェアNo.1
──最初にエリアリンクをご紹介いただけますか。
西澤 エリアリンクは、トランクルーム「ハローストレージ」を全国に展開している会社です。創業以来この商品を主力事業として、セルフストレージ業界で室数最大規模を誇っています。
トランクルームの室数を見ると、約50年の歴史を持つアメリカに1,350万室ある一方で、日本にはわずか60万室しかありません。単純計算をすると世帯数がアメリカの約半分、日本では今の10倍、600万室の市場があると考えられます。そして、日本の60万室のうち、約17%のシェアをエリアリンクが占めています。それだけ伸びる余地のある業界で、トップシェアを誇りながら、さらにそのシェアを高めている。それがエリアリンクの強みのひとつです。
ストック型ビジネスで経常利益40億円以上、正社員80人ですから従業員一人当たりの利益は5,000万円超。これだけの売上規模の企業で、生産性の高い働き方をしながら、さらに市場も伸びていて、シェアNo.1。「そんな会社に入らない理由はない」というのが、私たちの論理です。

新卒は初任給40万円、初年度年収480万円
──エリアリンクの採用方針について教えていただけますか。
西澤 新卒採用に関しては、毎年3〜5名を採用しています。中途採用は事業計画と必要性に応じたスポット採用です。特に今、責任者クラスの年齢層が高くなってきているので、世代交代も含め、中途採用ではスペシャリスト採用を強化しています。
──エリアリンクの求める人物像とはどのような人材ですか。
西澤 正社員は80名、業績、出店計画はともに右肩上がり。でも、基本的に人数は増やさない。人がやめたとしても、残った人員でやりきるのが当社の方針です。そこに求められるのは、一人ひとりの生産性の高い業務遂行能力。自発的に考え、自ら行動できる、能動的な働き方ができる方を求めています。
正社員80名ですから、一人ひとりにスタッフや非正規社員、協力会社をマネジメントできるマネジメント力、リーダーシップ力が必要です。このポテンシャルを持った人材がさらに努力を継続することで、さらに育成されて成長し、高い成果を出せるので必然的に給料も上がっていきます。実力をつけることで、自分の行動を場所や時間で制限されることのない働き方の実現が可能となります。
特に新卒は幹部候補生として、初任給40万円、初年度年収480万円で募集をかけています。実力主義の中で働きたいという向上心のある方をお待ちしています。
自走を促すエリアリンク流育成制度
──2025年4月の新卒入社は何名ですか。
西澤 2名です。2026年4月入社は4名を計画しています。
──2025年4月入社の内定者フォローはどのようにしていましたか。
西澤 会食形式で毎月接点を持ったり、社内イベントに招待して社員とふれあう機会を設けたりしています。また、当社が保有する熱海と軽井沢の研修所兼保養所で1泊2日で泊まり込み研修を行い、エリアリンクの歴史や大事にしている考え方を知ってもらいました。
──入社後の新入社員研修はどのように実施されますか。
西澤 当社では型通りの集合研修は実施しません。手取り足取り教えるのではなく、なりたい自分をめざして自分で走れるようにするのがエリアリンク流の研修・人事制度です。入社後は1週間、最低限のオリエンテーションとマナー研修を行ったあと、すぐに実務に入ります。
初めはコールセンターで、トランクルームを借りたいというお客様の対応をしてもらいます。そこで3ヵ月間、どのようなお問い合わせが多いのか、どういうニーズでトランクルームを借りるのか。まずはお客様を知ってもらいます。そこで1日4件の申し込みが取れたら、次はストレージ運用という商品改善をする部署に異動します。
当社トランクルームの稼働率は約85%ですが、仮に長期間空いたままの物件があれば埋まらない理由を調べ、それに対して対策を打ってもらいます。その後、個々の配属が決まります。そこからは完全に独り立ちして、プロジェクトのフロントなど、一人ひとりが重大な職務を担っていきます。
長期的フォローでミスマッチを防ぐ
──選考プロセスでミスマッチを防ぐために工夫していることはありますか。
西澤 学生は、ストレージ業界自体を知りません。ハローストレージも知らなければ、エリアリンクという会社のことはもっと知らないわけです。その状況で優秀な学生と積極的に接点を持ち、当社を知ってもらうために、最初の面接は練習台として「もっと自己分析したほうがいいよ」「もっとここをアピールしたほうがいいよ」とアドバイスします。その後、9月、10月にもう一度接点を持ち、当社に魅力を感じてくれた方と改めて面接をします。
最終面接は必ず社長が参加し、面接の前後に社長との食事会を設定します。六本木ヒルズの高級中華や銀座の高級イタリアンで、社長と社員2〜3名、学生2〜3名で食事をしながら、社長自ら確認して、最終内定を出しています。
食事会などの接点で長期的にフォローし、選考まで持っていく。これがミスマッチを防ぐ最大のポイントだと捉えています。
ただ本当のリーダーシップは、入社後実際に働いてみなければわかりません。過去の経験値を聞いても、仕事上でのリーダーシップとは違ったりします。育成しなくても自立できる素養の人材を採用していきたいとは思いますが、ある程度研修も必要だと感じています。
──今後は教育研修制度も実施する方向なのですね。
西澤 簿記は全員一律で教える必要性を感じています。さらに、今かなり業務自体が専業化し、ひとつの部署で深堀りしていますので、幅広く学べる機会がありません。定期的な部署異動はもちろんですが、こちらから研修を用意して育成しなければ、10年後に会社を背負って立つ人間が育っていかないのではと危惧しています。

新卒入社、35歳で社長に就任
──社内制度、人事制度でエリアリンクらしいものをご紹介ください。
西澤 学生が当社を選んだ理由の筆頭に挙げるのが、「ストック型ビジネス、事業の伸び代、ブルーオーシャン市場でトップシェア」。そして、断トツトップは「実力主義で公正な人事評価制度、信賞必罰でやる気がある人がさらにやる気になる人事評価制度」です。
当社は、半年に1回の人事評価会議で給与の見直しを行います。年功序列は一切ありません。先輩よりも大きな役割、責任を果たしていれば、先輩より月10万円高くなることもしばしばです。「やる気のある人のやる気をなくさせない人事評価制度」を役員全員で運営していくことは、20年間ずっと継続しています。
──信賞必罰、功績があれば必ず賞を与えるのですね。
西澤 その申し子が現社長の鈴木貴佳です。鈴木は私の10年後に新卒で入社し、5年で役員になりました。そのとき代わりに役員から降りたのが私です(笑)。5年で役員、36歳で社長になりました。
入社したときから林会長が、「あいつを社長にする」と断言していました。生意気ですが、どんどん実績を上げて昇格し、網羅的に会社の運営を俯瞰できていく姿は、やはりすごいなと思いました。最初は生意気だと思っていた先輩たちも、「これは仕方がないな」という雰囲気に変わっていったのです。
このように抜擢に継ぐ抜擢で、できる人間をどんどん引き上げていくのが当社の大きな魅力です。
──鈴木社長のように突出した逸材が出てくると、社内のチームワークは乱れませんか。
西澤 営業会社は殺伐としていて個人同士の戦いの様相だと聞きますが、当社はチームプレーで仕事をする会社です。個人の突出したリーダーシップ、チームを引っ張る力がある人材の評価が高くなるのは必然ですが、それを支えるメンバークラスが、みんなチームを大切にしていて和を乱す人はいません。
それに上層部が胡坐をかいてふんぞり返っていたらみんな納得できませんが、当社は上に行けば行くほど責任も重ければ仕事量も多いので、誰も文句は言わないんです。
──福利厚生面で何かユニークな制度はありますか。
西澤 上場企業として遜色ない制度はひと通り用意しています。特筆すべきなのは、熱海と軽井沢に研修所兼保養所を自社保有している点です。会長は「自分がいいと思ったものを正社員80人、非正規含め総勢200名全員に味わってもらいたい」という人です。土日や長期休暇は基本的に家族で利用できるので、源泉掛け流しの温泉が好評を得ています。
持株会は拠出金の15%が奨励金として上乗せされ、拠出金1万円なら1万1,500円の株を購入できます。そして正社員1万円、無期転換済の非正規社員1,000円を、毎月会社がかけてくれる企業型確定拠出年金制度も用意しています。これは退職金の代替制度としてスタートしました。
全社員必須の社内認定資格「エリアリンクマスター」
──エリアリンクには必須の資格はありますか。
西澤 当社には、創業者で会長の林が実践してきた仕事管理術を体系化した「エリアリンクマスター」という全社員必須の社内認定資格があります。少人数経営を支える根幹として、初級、2級、1級の3段階でステップアップします。
以前は労働集約型で、土・日・祝日24時間365日休みなしの会社でした。私の新人時代、問い合わせのフリーダイヤルは夜間、私の携帯電話に転送されて、問い合わせがあると夜中でも飛んでいきました。
その後リーマン・ショックを経て、林会長が労働集約型ではなく、頭を使って働く会社に方向転換しようと決めたのです。ここに穴を掘れと言われて自分で掘っていたら限界があります。いかに早く安く、精度を高くできるか。どこに発注したらそういうものができるのか。考えながら仕事しなければ、自分の身体はあかないという結論に至ったのです。
社員全員がそうなるためには、どうすべきか。会長は「それには僕みたいな働き方をしなければ」と言いました。それが会長のメモ術でした。このメモ術を、誰でもできるように体系化したものがエリアリンクマスターです。
──エリアリンクマスターはどのように習得するのですか。
西澤 エリアリンクマスターは予習・復習して学力をつける学習法のようなものです。例えば、1週間前の自分が「この日にこれをやる」とタスクを決め、未来の自分に対して指示を出します。自分の時間を自分で使って、自分でタスクをこなし、自分の成績を上げていく。その積み重ねの集合体がエリアリンクマスターです。
エリアリンクマスターは、全員の働き方の基本になっています。新卒、中途採用問わず入社後半年間で初級を取得しなければなりません。試験官を務める社員がOKを出さなければ、初級認定されません。
一人ひとりがやることを決めて会社にくるので、無駄のない勤務で1日を過ごせ、そこで新たに発生した課題はまた未来の自分にタスクを細分化して指示を出し、自分の指示で自分の行動管理をします。
これを実践することで正社員個人の生産性が上がるだけでなく、チームとしても生産性が限りなく上がります。正社員が少人数でも仕事をこなせるのは、この成果です。
結果のみにコミットした資格サポート
──エリアリンクではどのような公的資格が推奨されていますか。
西澤 トランクルームはサブリースがメインなので基本的に仲介業はあまりやっていないのですが、ベースの知識として宅地建物取引士を推奨しています。特に新卒には入社前の取得を奨励しています。建設関係部署には一級建築士が2名在籍し、施工管理技士も何名かいます。
──社員の方が自己啓発で何か資格を取得する場合、支援する制度はありますか。
西澤 宅地建物取引士に合格したら報償金が出ます。当社はあくまで結果主義なので、結果を出したときのみ支給しています。資格を取得し仕事が取れて成績が上がる。そうなれば役職も上がるし給与も上がる。その方向で報いようという考えです。
──新卒のエントリーシートに学生時代に取得した資格が書いてある際、どのように評価しますか。
西澤 例えば、日商簿記検定3級は入社後に取得してほしい資格なので、当然プラスになります。
──徹底した実力主義で、結果を人事評価にきちんと落とし込みリターンする。このエリアリンクの魅力に共感して、入社を志望する学生もかなりいるのではないでしょうか。
西澤 結果がすべてなので、逆に評価されないこともあります。そこを不安に思う方には、向いていない会社と言えるかもしれません。
──西澤さんは現社長が役員に昇格する際に降格になったとおっしゃいました。採用面接に来た学生にも、その話はされるのですか。
西澤 当然します。私は2回も役員を降りていますから(笑)。世間では一度役職がついてから降格になる会社はあまりないようですが、うちでは当たり前のことです。
──最後に資格取得やスキルアップをめざしている読者に向けてメッセージをお願いします。
西澤 資格を取得することは大事ですが、それ以上にその資格で何を成し遂げるかが大事です。取得の先にある充実感、ライフプランやキャリア形成、そのすべてを正当に評価しているのがエリアリンクです。取得資格を土台に私たちの領域でレベルアップさせたい方をお待ちしています。
[『TACNEWS』人事担当者に聞く「今、欲しい人財」|2025年5月 ]

会社概要
社名 エリアリンク株式会社
設立 1995年4月
代表者 代表取締役会長 林 尚道 代表取締役社長 鈴木 貴佳
本社所在地 東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDXビル北ウィング20階
事業内容
レンタル収納スペース「ハローストレージ」の運営・管理
従業員数
80名(役員、臨時従業員、派遣社員を除く)※2024年12月現在
URL