人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第63回 都築電気株式会社

Profile

大塚 貴教(おおつか たかのり)氏(写真左)

人事部企画課 課長
キャリアコンサルタント・GCDF-Japanキャリアカウンセラー

藤森 美奈(ふじもり みな)氏(写真右)

人事部企画課


都築電気は、お客様企業の課題を情報通信技術で解決するICT企業。1932年の創業以来、時代ごとの先進技術を採り入れ成長してきた。2032年の100周年に向けて、都築電気は今、「Growth Navigator」への変革を長期ビジョンに定め活動している。多様な人材が自ら挑戦・活躍できる環境づくりをめざし、都築電気ではどのような人材採用、人材教育を実践しているのだろうか。人事部企画課 課長 大塚貴教氏と人事部企画課 藤森美奈氏にお話をうかがった。

100周年に向け長期ビジョンを掲げる総合ICT企業

──最初に都築電気についてご紹介をお願いします。

大塚 都築電気は「情報(システム)」と「通信(ネットワーク)」の両技術に強みを持つICT企業です。特徴としては、90年以上の歴史を持つ企業でありながら、時代の変化にしっかりと対応し続けてきたICT企業であること。そして技術の幅が広く、企業経営に必要なすべてのICTサービスをワンストップで提供できる企業である点です。当社は創業時から全業種の名だたる企業に対し、BtoBでネットワークからアプリケーションまで一貫したサービスを提供してきました。昨今はAIやデータサイエンスを絡めたDXビジネスにも広く事業展開しています。システムを構築する会社でもありますが、当社はただ構築するだけでなく、お客様の課題にともに向き合い、最適なサービスを提供する企業です。
 現在、100周年に向けて長期ビジョン「Growth Navigator」を掲げています。お客様の成長を先導する意味合いを込めて、かつ時代を先導する企業をめざしています。

──都築電気の経営理念について教えていただけますか。

大塚 私たちは社会への価値創出を行う共通言語として、パーパス(私たちの価値とあり方)とバリューズ(大切にすべき価値観、行動指針)を制定しています。
 パーパスとして「人と知と技術で、可能性に満ちた”余白”を、ともに。」を置いています。余白にはいろいろな可能性が秘められています。ICTの力でお客様の可能性を作り出し、それをさらなる成長価値につなげていく。新しい価値をどんどん生み出していくための余白を作ることが、私たちが大切にしている価値観です。
 バリューズは「7Actions」と呼ばれており、「向き合う」「築く」「つなぐ」「挑む」「楽しむ」「支援する」「やり抜く」という、都築電気として大切にすべき7つの行動が定められています。

採用テーマは「相思相愛」

──都築電気の採用方針についてお聞かせください。

藤森 新卒採用、キャリア採用ともに実施しています。これまでは新卒採用がメインでしたが、ここ数年はキャリア採用の需要が非常に高まっています。採用人数は2024年4月入社の新卒は30名、2025年4月入社も同程度と、毎年30名前後を目標に活動しています。キャリア採用については、毎年5~10名が入社しています。

──新卒とキャリア採用で、求める人物像は違いますか。

大塚 新卒に求めるのは「都築電気の7Actionsの要素を体現できる人」というどちらかというと概念的な人物像で、ポテンシャルを見ています。一方キャリア採用は「この業務ができる」というスキル寄りの観点なので、人間性も重要ですが「何ができるか」の比重が高く、考え方が新卒採用とは違います。
 新卒採用では、長期ビジョン「Growth Navigator」に則り、会社を成長させていける原動力になる方、能動的に動いて変化を起こしていく気概のある方、変化を楽しめる方を求めています。
 キャリア採用では、業界や技術に特化したスキルを持っているスペシャリスト、言い換えれば当社事業へダイレクトに貢献できる方や、持っているスキルで当社に変化を起こせる方を求めています。

──新卒の採用選考フローをお教えください。

藤森 最初に当社の説明会動画を見ていただき、エントリーシートと自己PR動画の内容で書類選考となります。通過後はSPI受験を経て、3回の面接で内定に至ります。1次面接は営業系・技術系ともに部長クラス、2次面接は役員・統括部長クラスが面接官を務めます。その後の最終面接は人事担当者が対応します。

大塚 貴教氏
2011年、新卒で都築電気に入社。人事部の配属となり給与・労務関連業務から人事キャリアをスタート。新卒採用、人事制度改定プロジェクト等々、多面的に活躍し、2022年に人事部企画課長に就任。現在は新卒採用に加え、キャリア採用、障害者採用、労働契約、組織人事、人事規程管理と全社的な人事企画業務を担当

──選考の際はどのようなことを重視していますか。

大塚 当社では1次・2次面接までは現場の人間が能力、人間性、将来性を見極めて判断し、最終面接で人事が当社に入る意思の確認と最終的な選考を行います。入社が近づかなければ、学生のその会社に対する思いは固まらないと考えています。当社の志望度はどの程度か、当社に入社して何を実現したいのか、これを最後にすり合わせることに大きな意味があると考えています。「第1志望です」と本気で言ってくれる学生もいれば、正直に「第3志望です」という学生もいて、様々です。学生と会社側も両者納得した状態で内定を出したいので、できるだけ当社の魅力も提示しますし、できるだけ本音を引き出すように面接をしています。学生にも真剣に検討・納得して入ってほしい。そのような想いで最後に人事担当者が出てくるフローになっています。

──採用に関して工夫されていることはありますか。

大塚 当社の新卒採用における特徴の1つにインターンシップがあります。5月から11月まで実施しているインターンシップは、1回参加したらまた参加したくなるような複数のコンテンツを準備しています。すべて参加すると都築電気のこともよくわかるし、インターンシップで培った知識が他社でも活かせて就職活動スキルが上がる、学生のニーズを捉えるようなコンテンツ設計をしています。
 インターンシップを経て当社の選考や説明会に来た学生とは、関係がかなり長くなる方もいるので、ある程度人間性や能力も理解した上で選考に入れます。
 当社の採用テーマは「相思相愛」。一人ひとりに対してしっかりと向き合い、当社を理解してもらうことで「私たちはあなたでなければいけない」、「あなたも都築電気でなければいけない」という関係を長期間かけて築いていく。それが都築電気の採用コンセプトです。

──キャリア採用の選考フローはどのような流れになっていますか。

藤森 現在30名ほどの求人を公開しており、現場からの需要が非常に高い状況です。  選考フローとしては書類選考の後、求人部門の課長・部長・人事による1次面接、部門の担当執行役員と統括部長による2次面接で内定に至ります。

──求人は技術部門が中心ですか。

藤森 技術職は多いですが、営業職も少なくありません。管理部門の求人は若干名となっています。 大塚 キャリア採用は、経験やキャリアを求めているのであって、人員補充ではありません。キャリア採用で入った方には今までのスペシャリティをきちんと発揮して、都築電気を変えるくらいの勢いで、良い刺激を与えてほしいと思っています。

藤森 美奈氏
派遣社員、嘱託社員を経て、2022年に総合職として入社。派遣時代から人事部に在籍し、資格取得支援、研修等の教育関連、新卒採用、キャリア採用を担当

入社3年間をキャリア研修初段階に設定

──新卒の内定者フォローや入社前研修はどのように実施されていますか。

大塚 会社の理解と内定者同士の関係性を深めるために、内定者ガイダンスとして定期的にオンラインと対面で各種フォローをしています。例えば、会社をより知ってもらうために最近のプレスリリースや当社のトピックニュースを伝えたり、内定者同士のコミュニケーションを促進するためにグループワークを実施したりします。グループワークでは当社の根幹となるパーパスについて理解を深めるため、経営企画室メンバーに参加してもらい会社の理解浸透を促しています。
 その他、なぜ都築電気に入ろうと思ったのかと自己紹介文をパワーポイントで作成してもらい全員に提出してもらいます。資格については、基本情報処理技術者を新入社員研修中に取得しましょうと推奨しており、8割はその期間に取得しています。

──2024年度の入社式と新入社員研修について教えてください。

大塚 入社式は対面で実施する予定です。当社では「1年間新入社員研修期間」となっており、最初の2ヵ月間は集合研修を実施します。集合研修では主にプレゼンテーションや報連相など社会基礎力やマインド、キャリア意識を学ぶほか、CISCO認定資格であるCCNAなどネットワーク系資格を全員取得するための講習を実施し、インプットとアウトプットの研修を総合的に実施します。
 残り10ヵ月間は基本的に全員を技術部門に配属します。1年目の10ヵ月間を、技術を知る仮配属期間に当て、2年目に営業職/技術職/業務職に正式配属します。1年間の新入社員研修の中で、一人ひとりの適性を見極めながら、一番活躍できる配属を決定していきます。

──入社後1年間は仮配属ですが、全員が一堂に会して実施する研修は期間中あるいは1年目以降にもありますか。

大塚 ICTスキル研修などは現場にいながら集合研修を挟み、幅広いスキルを身につけることをめざしています。
 また、キャリア研修の一環として3年目までは集合で毎年フォロー研修を行います。当社では30歳、40歳、50歳と10歳刻みでキャリア研修を実施しており、その導入として初めの3年間は毎年実施しています。一番成長を感じられる3年目までは、同期で話し合い、刺激し合い、切磋琢磨して、キャリア観を作っていってほしいという思いで、若手フォローとキャリア研修的側面の2つで運営しています。
 並行してリーダー研修、管理職候補者研修、役員候補者研修等といった階層別研修も設定し、戦略基礎や会計基礎といった一般的な研修は手上げ式で実施しています。今、指名で受ける研修をどんどん減らしていて、手上げ式で自律性を促す社風にしていこうと動いています。

──自律性を促すために独自に実施している研修があればご紹介いただけますか。

大塚 2023年度から「越境プログラム」を導入しています。長期ビジョンに掲げている「社会課題起点の新ビジネスを本気で創出するための人材を育成する」といった自律型人材育成のための社外交流プログラムとして導入しました。「越境プログラム」は様々ありますが、代表的なもので言うと「社会課題起点」でのビジネス創出をめざすプログラムに参加するものがあります。当社の社会課題起点のビジネス創出に必要な基礎的なマインド・スキルを他企業、学生と交流しながら実践型で習得していくもので、地域に根差した具体的課題を起点に、社会人・学生・地域のイノベーターがお互いに越境しながら社会を変える事業創造を行なっていきます。本プログラムを通して、新しい視点や気づきを得て、社風や都築電気そのものを変えていくきっかけになってほしいと考えています。
 またここ数年、コンサルティング会社に一定期間の出向を経験する社員も増えてきました。都築電気から飛び出して、外部での経験を都築電気に還元する取り組みとなります。

資格支援制度は情報処理系を中心に51資格を指定

──資格取得支援制度について教えてください。

大塚 資格取得支援制度としては、情報処理系を中心に現在51資格が指定されています。情報処理系では、ITサービスマネージャ、データベーススペシャリスト、ネットワークスペシャリスト、プロジェクトマネージャ、システムアーキテクト、ITストラテジストなど。電気設備系では1級電気通信工事施工管理技士、1級電気工事施工管理技士、電気通信主任技術者、電気工事士などといった現場監督に必要な資格もあります。各社が実施しているベンダー資格で当社のビジネスで使用するものも指定されていますし、その他には衛生管理者などもあります。
 指定資格であればテキスト代から受験費用まで会社が負担しますし、合格すれば資格ごとに設定された資格手当が支給されます。毎年会社として必要なスキルが変わるので、指定資格は毎年見直しています。

──業務として必須の資格はありますか。

大塚 管理職登用には指定している必須資格があり、無資格の人は管理職登用試験を受けられません。営業職・技術職・業務職それぞれの知識を客観的に証明できる資格が設定されており、どれか1つ以上の保有が必要となっています。自身の専門性の証明や、今後学び続ける姿勢の証明としてこのようなしくみを取り入れています。

──応募者が学生時代に取得した資格を履歴書に書いてきた場合、どのように判断されますか。

大塚 取得資格について、「この資格があるだけで合格となる」という会社は少ないと思います。ですが、例えばITパスポートを文系の学生が取得し、「IT業界に大いに興味があります」と面接で伝えた場合は、口先だけの発言だけではなく、業界に対する興味が資格に表れているので、発言の裏付けになると感じることができます。取得している資格が難関資格であればあるほど、意欲やスキルの裏付けになり、当社で活躍するイメージが湧きやすく、その人の働きぶりを想像しやすくなることが資格を持っているメリットかと思います。

──福利厚生で、都築電気ならではの制度があればご紹介いただけますか。

大塚 福利厚生のカフェテリアプランに毎年3万円分のポイントを用意しています。用途は育児、介護、スポーツといった家庭や健康のため、あるいはスキルアップなど、何かしら生活が豊かになるために使えます。私も、今期全社的に推奨しているDX検定の勉強用eラーニング講座をカフェテリアポイントで購入しました。

──最後に資格取得やキャリアアップをめざしている読者にメッセージをお願いします。

藤森 キャリア採用では、特定の資格がその人のスキルを明確にするものになってきます。ご自身のキャリアにプラスアルファとしてアピールできる1つの武器として、ぜひその資格を活用していただきたいと思います。 大塚 私自身、資格は非常に重要な要素だと捉えています。なぜその資格を取得したのかという原動力と背景をきちんと自分の中で言語化し、どう世の中に還元していくのか、どう活躍していくかをイメージして就職活動に臨んでください。皆さまの就職活動が実りあるものになることを心から願っています。

[『TACNEWS』人事担当者に聞く「今、欲しい人財」|2024年4月 ]

会社概要

社名     都築電気株式会社
創業     1932年5月1日 都築商店として創業
設立     1941年3月26日 都築電話工業株式会社として設立
代表者    代表取締役社長 江森 勲
本社所在地  東京都港区新橋6丁目19番15号(東京美術倶楽部ビル)

事業内容

ネットワークシステムおよび情報システムの設計、開発、施工、保守

従業員数

1,295名(2023年3月)

URL

https://www.tsuzuki.co.jp/

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