日本のプロフェッショナル 日本の会計人|2023年11月号

畑中 孝介(はたなか たかゆき)氏
Profile

畑中 孝介(はたなか たかゆき)氏

ビジネス・ブレイングループ
代表CEO 税理士

1974年生まれ、北海道長万部町出身。横浜国立大学経営学部会計情報学科卒業。2001年12月税理士登録。大学2年からのアルバイトも含め会計事務所に22年間勤務したあと、2015年7月、独立開業をし、ビジネス・ブレイン畑中税理士事務所を設立。
著書は『令和5年度 すぐわかるよくわかる税制改正のポイント』(共著)、『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務』(吉村壮司氏と共著)を始め多数。

中堅企業の事業承継、コンサルティングにフォーカス。
好きな仕事だから、一生懸命やれるし成長し続けられる。

 税理士・畑中孝介氏が率いるビジネス・ブレイン畑中税理士事務所。クライアントは基本的に法人のみで、一部の士業等を除くと個人の顧客はいないという。なぜクライアントを法人だけに絞っているのだろうか。畑中氏が税理士をめざし独立開業を果たすまでの歩みとともに、中堅企業の事業承継、コンサルティングといった法人クライアントに絞った事業戦略、学生インターンを活用した人材採用などについて、話をうかがった。

「フェラーリに乗れる」を信じて税理士を志す

 現在、事業承継など中堅企業を対象としたコンサルティング分野で活躍するビジネス・ブレイン畑中税理士事務所 代表の畑中孝介氏。税理士をめざしたきっかけは、高校1年のときの担任教師が言った「うちの兄は税理士で、フェラーリに乗っているよ」という一言だった。税理士になればフェラーリに乗れる。高校生の畑中氏はそこから税理士をめざして突き進むことになる。

「進路も税理士受験を前提に考え、横浜国立大学経営学部会計情報学科を選択。大学受験が終わると時間ができたので、簿記の勉強を始めました。すると内容がおもしろくてスルスル勉強が進み、高校在学中に日商簿記検定2級に合格できたんです。これなら税理士試験も大丈夫だ、という感触を得ました」

 畑中氏が実際に税理士試験の勉強を始めたのは大学2年のとき。

「ゴルフ場でキャディをしていた母の伝手で会計事務所の所長を紹介してもらい、大学2年の冬からその方の事務所でアルバイトを始めました。並行して、学内講座で簿記や会計を学び、大学3年のときに税理士試験の簿記論と財務諸表論を受験したんです。しかし残念ながら2科目とも不合格。厳しい試験だと改めて実感しましたね」

 その結果を受け畑中氏は、TAC横浜校に通い始めた。

「合格をめざすなら、税理士試験に特化した講座を受ける必要があると感じて、受験指導校に通うことにしたのです。TACを選んだ理由は、横浜駅からすぐという立地と、キレイで勉強しやすそうな環境だったからです」

 TACに通い、税理士試験の勉強を続けた畑中氏。努力が実り、大学4年で簿記論と財務諸表論に合格した。

「大学卒業後は、在学中にアルバイトをしていた会計事務所で引き続き働きながらTACに通学。仕事と受験勉強に追われる中、消費税法と法人税法を受験して、なんとか消費税法に合格しました。その後は、科目免除をねらって大学院に通う選択をしました」

 こうして27歳のとき、畑中氏は税理士資格を取得した。

大学2年から22年間同じ会計事務所に在籍

 大学2年の冬から働いていた会計事務所だが、実は畑中氏は42歳で独立開業するまでの計22年間もの間、そこで勤務していた。

 22年。その間、転職や独立を考えたことはなかったのだろうか。

「資格を取得する前ですが、ちょうどITバブルの時期、事業会社で働いてみたいなと思ったことがあります。ただ、よく考えてみると事業会社の場合は、基本的に毎日同じ場所で働きますよね。一方、勤めていた会計事務所では、毎日違う会社へ訪問し仕事をします。自分にはいろいろな環境で働くこのスタイルのほうが性に合っていると思ったので、結局転職は実行に移さなかったんです。
 また独立に関しては、税理士をめざした段階から『いつかは』とは考えていました。でも資格を取得した翌年の28歳のときに、大企業向けの連結納税がスタートしたんです。一般の税理士が顧客対象としている中小企業ではなく、大企業相手に仕事ができるようになりました。こうした仕事がとてもおもしろくて、のめり込んでいたら独立するのを忘れていたというのが正直なところです。仮に独立開業したとして、1人ではこの仕事はできませんからね」

「40歳にして立つ」

 そんな畑中氏が独立開業を思い立ったのは40歳のとき。奇しくもその年は、会計事務所が設立40周年の年だった。

「学生アルバイトからスタートした自分も、気がついたら40歳で、所内でもベテランの域になっていました。職業人生を仮に60歳までだとすると、残りあと20年。そう考えたときに、今まで忘れていた『独立したい』という思いがふいに湧き上がってきました。10年後はもう50歳。そうなったら体力的にも独立は厳しくなる…。そんな風に思案して、独立するなら今しかないと決心がつきました」

 この頃には、会計事務所の同僚から、畑中氏が所長のあとを継ぐものだと思われていたという。確かにアルバイトを含めて20年の勤務歴がある有資格者なら、副所長的存在でもあったのだろう。比較的人材の流動性が高い会計業界では、希有な履歴だ。

「でも初心を思い出し、『自分の事務所を一から作ってみたい』という思いが強くなりました。このまま独立せずにいたら、多分後悔する。死ぬときに『あれをやっておけばよかった…』とは思いたくなかったんです」

 40歳から2年かけて引き継ぎを終え、畑中氏が独立開業をしたのは2015年7月。大企業の連結納税の申告を終わらせて、区切りをつけてからの退職だった。

事業承継とコンサルティングの二本柱で独立

 独立開業への思いを忘れるくらいにのめり込んだ大企業の連結納税。しかし、実績があるとはいえ、開業したての税理士が受注するのは簡単なことではない。では、どのような業務から手がけようとしていたのだろうか。

「独立する5年ほど前から、社員100~500名くらいの中堅企業のクライアントを自ら開拓し、事業承継に取り組んできました。ものすごくおもしろいし、やりがいもある仕事だと思っています。こうした業務は一般的に、トップクラスの会計事務所が高価格帯で請け負っている業務です。個人事務所で取り扱っているのはめずらしく、引き合いがあると考え、事業承継を1つの柱に据えました」

 もう1つの柱は、中堅企業向けのコンサルティング。「自分がやりたい仕事」と「顧客ニーズ」を踏まえ、この二本柱で行くことを決めていた。

「ありがたいことに、前の事務所から、自分で開拓した事業承継の仕事と、クライアント側からの要望があった8社を引き継がせてもらえました。開業時から収入源となる仕事があったのは助かりましたね。とはいえ、最初からオフィスを借りて従業員も雇っていましたから、やっと固定費を賄えてトントンになった感じです」

 畑中事務所の現在のクライアントは89社、その構成は中堅企業向けの事業承継とコンサルティングが4割、ベンチャー企業支援が3~4割、上場企業系の仕事も含むその他の業務が残り2割となっている。

「クライアントの社長に頼まれた場合を除き、所得税や相続税、資産税といった個人向けの仕事は基本的にやっていません。もし依頼が来た場合には、その分野を専門とする税理士に依頼しています。Webサイトにも、『相続税と所得税の仕事はやりません』と明記しています。そのため、クライアントは基本的に法人のみなんです」

 では、どのようにして法人のクライアントを増やしてきたのだろうか。

「士業やコンサルティング会社からの紹介ですね。Webサイト経由でクライアントになった会社は、1社だけです。
 紹介してくれるのは、弁護士、司法書士、社会保険労務士、公認会計士、税理士といった士業と、コンサルタントです。事業承継や事業再編など、ご自身で対応できない業務の場合、Big4や大手税理士法人に依頼すると高額になる。そこで私のことを思い出して紹介してくださるようです。医師で言うと“脳外科”のイメージですね。内科などの医師が、自分の手には負えないので、専門医に紹介するという感じです」

 また、畑中氏は多い年には年間50~60本のセミナーに登壇している。そのセミナー参加者から相談が入ることもあるという。
 業務の中では、ベンチャー企業支援の割合も大きいという。何がきっかけだったのだろうか。

「独立して2年目にある仲間内の勉強会に参加したとき、参加者の税理士から『順調に事業承継の仕事が伸びているようだけれど、その仕事だけやっていておもしろいの?』と聞かれたのです。そういえば勤務時代、ベンチャー企業を相手にするのが好きだったと思い出して、ベンチャー企業支援を始めました。顧問料ベースでいうと1社数万円程度でしたが、支援したベンチャー企業は順調に成長して、現在では顧問料が何倍にもなっている企業がほとんどです」

マーケティングを意識した打ち出し方

 独立開業後、順調にクライアントを増やしてきた畑中氏は、マーケティングの重要性を強調している。

「“中堅企業対象”とか“事業承継、組織再編が専門分野”と謳っているのも、マーケティングの一環です。経営学者のドラッカーが残した『あなたは何によって覚えられたいんですか』という言葉で表されているように、自分のポジショニングやマーケティングをきちんと行うことが大切です。
 その1つの例が『相続はできません』なんです。地方の事務所で、『相続はできません』と言ったら通用しないかもしれない。でも東京には、各種専門分野を確立した税理士や会計士が大勢いますので、こういったやり方でも大丈夫なんです。逆に『何でもできます』と言うと信用されない可能性もあります」

 現状、マーケティングに取り組んでいる税理士は少なく、およそ8割はマーケティングを意識していないのではないかと、畑中氏は分析する。

「地方だと状況が異なるかもしれませんが、東京や首都圏でこれから新しい事務所を作ろうという方は、きちんとマーケティングをすべきだと思います。単純化して言えば、私が『得意分野は事業承継です』と打ち出しているように、皆さんも自分の得意分野を打ち出せるかどうかが大事なのです。これからプロフェッショナルをめざす方は、これを明確にしておいたほうがいいと思います」

 畑中氏がマーケディングを意識するようになったのは30歳の頃。ちょうど上場企業の連結納税に取り組み始めたタイミングだ。畑中氏は、まず知名度を上げる目的で1冊の書籍を出版した。

「Webで“畑中孝介”と検索をすると、私の著作が表示されます。本を出しているとなると、信頼感が上がりますよね。信用度アップをねらって本を書いたのですが、ご縁があり結局何冊も出版することになりました。2022年には久々にマーケティングを意識して『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務』(吉村壮司氏と共著)を出版しています」

 SDGsが叫ばれ、経営の仕方がどんどん変わっていく中、コンサルティング事業を意識しての1冊だという。

「現在、この業界は大転換期だと思います。デジタルインボイス、電子帳簿保存法が進むと、仕訳も自動的に行われるようになって、経理自体の効率化はどんどん進むでしょう。マイナンバーカードが普及すると、個人の資産はすべて紐付けされて、資産税・相続税における資産の把握は、それだけで済んでしまうかもしれません。要するにどんどん“作業”は減ってしまうのです。
 そうなったときに、“作業”以外のどこで生きていくのかを明確に持っている必要があると思います。この思いは独立当初より、今のほうがより強く感じています」

リファラル採用と学生インターンの活用

 現在、ビジネス・ブレイン畑中税理士事務所は社員9名、うち税理士有資格者は畑中氏ともう1名。顧問として税務署の調査官経験がある税理士が1名。非常勤で公認会計士が1名在籍し、監査周辺の業務を担当してもらっているという。

 畑中氏は独立開業と同時にスタッフ1名を雇っている。なぜ「独立と同時」だったのだろうか。

「勤務していた会計事務所も今の事務所も、会計システムはTKCを使用しているのですが、研修などで大勢の税理士や公認会計士と知り合う機会があるんです。独立する際、そこで知り合ったTKCの先輩方に言われたアドバイスがあります。それは『事務所を借りる、スタッフを雇う、借入をする』です。そのアドバイスを私は忠実に実行しました」

 先輩の教えに従い、事務所を借りて従業員を雇ったのだ。

「最初に雇ったスタッフは、新卒の事務スタッフ。実はクライアントの社長から子どもの面倒を見てほしいと頼まれ、お預かりした方でした。それ以後も、採用したのは古巣の事務所に昔所属していた人や、クライアント企業の経理担当者など、基本的にリファラル採用です。実は公募で2名ほど中途を採用したこともあるのですが、1年以内に退職してしまい…。ミスマッチ防止のため、リファラル採用中心にシフトしました。現在は中途採用での公募は一切していません」

 公募をほとんど行わず、リファラル採用中心。人を集めるのに苦労しそうだが、どうやって人材の確保を行っているのだろうか。

「学生インターンを活用した採用を行っています。現在、長期の学生インターンが11名在籍。その中から来年4月と再来年4月に1名ずつ入社が決まっていて、すでにインターン生から社員になった2名もいます。
 長期のインターンは独立2年目から始めています。きっかけとなったのは、パートタイマーを募集しても、事務所の立地上、集めにくかったことです。そんなときに、長期のインターンの募集サイトを運営している方を偶然紹介してもらいまして。事務所の立地と事務所に通える路線を見たところ、大学が多いことに気づきました。インターン経由で社員になってくれればうれしいという思いもあり、募集サイトに登録。最初は2名に入ってもらい、そのあとも先輩から後輩へ紹介によって輪が広がり、次第に増えて現在の人数になりました。常時5名は在籍するように採用を続けた結果、3年前にようやく、1名が大学卒業後に社員として入社してくれました。そこからより本格的にインターン採用に取り組んでいます」

 パート募集がうまくいかなかったための苦肉の策での長期インターン採用だったが、事務所の雰囲気が明るくなり、自然と活気があふれるという効果もあったという。

「だいたい大学2年時までに入ってもらいます。今はどちらかというと公認会計士や税理士をめざしている学生を多めに採用していますね。約3年間、一緒に仕事をしていますので、卒業後に入社してもらってもミスマッチはほぼありません」

 大学生であるインターンが、クライアントに出向くこともあるのだろうか。

「うちの内定者に限り、クライアントの許可を得られた場合は同行してもらっています。生のコンサルティングの現場を見られるので、学生にとってメリットは大きいです。また、『そういう学生ならどんどん連れてきて』『若いうちからそういう経験するのは大事だよね』と、好意的に受け止めてくださるクライアントがほとんどです。実際に連れて行くと『君たちから見てうちの会社はどう見える?』と、若い世代から見た意見を求められたり、取材されたりしています(笑)」

「心」や「考え方」を伝え、育てる

 長期のインターンを活用する新しい取り組みを行っている畑中氏の事務所だが、事務所としての方向性はどう考えているのだろうか。

「今は規模の拡大は考えていません。事務所のWebサイトやFacebookでも新規クライアント受付停止の案内をしています。事務所やスタッフの規模拡大は追っていないんです。一方で、顧問料の単価は高くしていきたいです。今でも会計事務所の平均の1.5倍近くにはなっていると思いますが、さらなるアップをめざしています。そのために必要になるのはコンサルティングができる人材。コンサルティング業務では、対クライアントや対スタッフでの濃いコミュニケーションが求められます。そのため、まじめで勉強ができることよりも、コミュニケーションがきちんと取れることを重視します」

 コミュニケーションを重視していくと、必然的に人となりをよく知っている人に行きつく。これも長期インターンを重視する理由なのだ。

「会計業界はどこも人手不足です。そういう意味では人手がかかる仕事はなるべくせずに、中核の仕事をするようにしています。クライアントは、基本的なことはすべて社内で終わらせてくれますから、私たちに求められるのは、その上に立ってコンサルティングをすること、相談に乗ることです」

 進んでいるクライアントでは、締日の翌日14時にはデータが完成し、部門長に部門別の損益計算書が配信されるという。そしてその3日後に経営会議が行われ、前月の反省と次月の計画を部門長が報告する。

「私たちは経営会議が終わった翌日にうかがって、社長を含めた1時間の会議とコンサルティングを実施し、その後、担当者と帳簿などのチェックを行います。ほとんどのクライアントにクラウド会計システムが入っているので、前日までにすべてをチェックし、必要な書類や疑問点があればチャットツールで担当者とやり取りをして、訪問前に解決します。訪問している時間は純粋にコンサルティングを行う時間となるようにしているのです」

 独立に際して大事なこと――。先輩からもらった3つのアドバイスの他に、実はもう1つあるという。

「テクニックや会計、税務を教える研修は世の中にたくさんある。所長は『心』や『考え方』を教える研修をしなさい。それができるのは所長だけだから、というものです。現在は月に2回、1時間半をかけて若手職員向けに早朝読書会を実施しています。そこではまずGood& New(各メンバーが「良かったこと(Good)」と「新しい発見(New)」を発表し合うゲーム)を行ったあと、税法の基盤である憲法を輪読し、考え方や業界のあり方について話をする。加えて、『TKC基本講座』『京セラフィロソフィー』『稲盛和夫の実学――経営と会計』の3冊の書籍を教材にして、順番に読んでいます。これらの本には、税務や経営などの実務に関することだけでなく、倫理学や心理学、心のあり方やものの考え方などが学べる内容が載っています。みんなで内容を読み合わせていくことで、この仕事で求められる『心』や『考え方』も伝えているのです」

失敗を恐れずにいろいろなことに挑戦してほしい

 畑中氏が今後取り組んでいくのは、コンサルティングに注力できる環境作りだという。

「“作業”はChatGPTなどの生成AIのほうが、絶対に人間より得意です。だから、そこで勝負はしません。今後必然的に作業でお金をいただけなくなっていく中で、高付加価値のコンサルティングにシフトする必要があります。
 コンサルティングで大切なことは、お客様が中長期的に儲かることです。そして、それができる立ち位置に税理士や公認会計士はいる。だから私たちも、お客様に中長期的に伴走し、アドバイスしていきたいと思っているんです」

 自らと事務所の方向性を“コンサルティング”と定め、それを軸に採用や人材育成の方針、どこに業務内容をフォーカスしていくのかまでを、畑中氏は明確に決めている。

「方向性については、私は“決め”の問題だと思います。『ここにフォーカスする』と決めること。そして、好きなことをやることが大事です。私はたまたま事業承継の仕事やベンチャー支援の仕事が好きでした。結果的にうまくいっているのは、やはり好きでやっているからでしょうね。税理士の仕事が好きだから一生懸命やるし、生まれ変わっても税理士になると思います。ときどき妻に『そんなに働いていて、楽しいの?』と聞かれることもあるくらい、この仕事が好きなんですよね(笑)」

 生まれ変わっても税理士になるという畑中氏に、現在受験勉強中の読者に向けてアドバイスをいただいた。

「税理士は、お客様の財布の中身を見せてもらえるし、家族構成も教えてもらえる。ありとあらゆるデータをすべて教えてもらえる立場にあります。そしてそれらのデータを活用すれば、いろいろな角度からアドバイスができるようになります。私たちは企業の成長スピードや盛衰を握る重要なポジションにいるわけです。アドバイスができる存在になるには、自分自身が多分に経験値を増やさなければなりません。そう考えると、若いうちに失敗経験も含めて、様々な経験を積んだほうがいいのは間違いありません。とにかく失敗を恐れずに、いろいろなことに挑戦してください。
 また経験を補完できるのは読書だと思います。過去の人たちが経験したことを疑似体験できるのが読書です。経験を積む、あるいは読書で経験を補完しながら視野を広げて、いろいろなアドバイスができるようになってほしいですね。
 そして税理士という看板には、もの凄い威力があります。私の仕事のうち、いわゆる税務は2割程度で、メインはコンサルティングです。ただ基盤が税理士なので、クライアントから確実に信用を得られるし、いろいろなチャレンジができる。『税理士』という肩書きは、ものすごく力があるのです。
 クライアントへのアドバイスやサポートができて、成長戦略を一緒に描き、共に成長していける。コンサルティング事業をする税理士へのニーズは、おそらく今後もなくならないと思います。自由にいろいろなことにチャレンジできるこのポジションをめざして、ぜひがんばってください」


[『TACNEWS』日本の会計人|2023年11月号]

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