特集 令和2年不動産鑑定士試験 現役大学生合格者インタビュー

大学の授業と試験科目がリンクするように工夫し、
合格後の姿を思い描いて試験を突破!

難関国家資格のひとつとして名前が上がる不動産鑑定士。近年、学生のうちからこの不動産鑑定士試験にチャレンジする受験生が増えてきています。2020年も、TAC不動産鑑定士講座で学び、合格を手にした現役大学生合格者が誕生しました。今回は、今年度の最年少合格者を含む現役大学生4名に、なぜ学生時代から不動産鑑定士試験にチャレンジしたのか、合格後にどのような道に進むのか、試験突破に向けどのような点を工夫したかなどについて、TAC不動産鑑定士講座の渡邊先生とともにお話をうかがいました。

※当記事は2021年3月に取材しました。


左から
戴 小龍(だい しょうりゅう)さん
1996年生まれ。 明海大学不動産学部不動産学科4年在学中(中国人留学生)。2020年、短答式試験合格、2020年、論文式試験合格。
TAC受講コース:2020年合格目標1.5年本科生(宅建受験経験者割)

前川 絵里沙(まえかわ えりさ)さん
1998年生まれ。 中央大学総合政策学部政策科学科4年在学中。2019年、短答式試験合格、2020年、論文式試験合格。
TAC受講コース:2020年合格目標 1.5年L本科生Plus

渡邊 順也(わたなべ じゅんや)先生
TAC不動産鑑定士講座 鑑定理論・行政法規担当

名古屋 瑠花(なごや るか)さん
1997年生まれ。 明海大学不動産学部不動産学科4年在学中。2019年、短答式試験合格、2020年、論文式試験合格。
TAC受講コース: 2020年合格目標1.5年本科生(宅建受験経験者割)

大島 智優(おおしま ちひろ)さん
2000年生まれ。 早稲田大学法学部2年在学中。2019年、短答式試験合格、2020年、論文式試験合格(最年少合格者)。
TAC受講コース:2020年合格目標 1.5年L本科生Plus

鑑定士をめざし 学生時代から学習スタート

――不動産鑑定士(以下、鑑定士)試験の合格、おめでとうございます。鑑定士受験生はまだまだ社会人が圧倒的に多いと思いますが、皆さんはなぜ学生時代に受験しようと思ったのですか。

大島 父が鑑定士で、TACで講師を務めていたこともあったので、元々興味がありました。高校3年の10月、早稲田大学法学部に推薦入学が決まると、父に「ちょっと勉強してみないか」と勧められ、鑑定士試験の勉強をスタートしました。正直なところ、当時は鑑定士になってどんなことがやりたいかというビジョンはありませんでしたが、大学進学の次の目標として、鑑定士試験の合格をめざすことにしました。今となっては、鑑定士という道を示してくれた父には感謝の限りです。

前川 私は大学2年の夏に、自分の将来の職業についてきちんと考えてみようと思って、いろいろな業界を調べたのですが、なかなか自分に向いていると思える仕事が見つかりませんでした。ただ、10年後の自分を思い描いたときに、結婚や出産をしても仕事を続けていきたいということだけは定まっていたので、「手に職をつけよう」と考えたのです。そこで文系三大難関国家資格と言われる弁護士、公認会計士、鑑定士の3つの中から選ぶことに決めました。ちょうどその頃、大学で都市計画を勉強していて不動産業界に興味を持ち始めていたので、鑑定士が自分のやりたいことに一番近いと考えました。

名古屋 高校生の頃、進路で悩んでいたときに不動産業を営んでいる父に勧められて、明海大学不動産学部への進学を決めました。建築学、経済学、会計学、民法といった幅広い分野の知識を学ぶことができ、高い専門性を身につけられるところに魅力を感じました。高校までの授業とは違った内容で、ゼロから新しいことを学べることも楽しみでした。
 鑑定士受験のきっかけは、大学2年の夏休みに参加した不動産学部主催のインターンシップです。研修先となった不動産鑑定事務所で、鑑定評価がどのように役立っているのかを学び、不動産の経済価値を評価できる鑑定士の仕事に魅力を感じました。
 先に大学の授業で宅地建物取引士(以下、宅建士)の勉強をしていたので、宅建士試験の知識と大学の授業が鑑定士受験に活かせることもメリットでした。

渡邊先生 戴さんは、名古屋さんと同じ明海大学不動産学部に在籍していますね。中国人留学生としてなぜ不動産学部を選び、鑑定士をめざそうと思ったのですか。

 私は、専門性が高い勉強がしたいと考えていました。その中で見つけたのが明海大学不動産学部で、「ここで学びたい」と思いました。大学2年のときに宅建士試験に合格したのですが、宅建業は私のやりたいことではなかったので、他にも何か不動産に関わる資格はないかと探して見つけたのが鑑定士です。宅建士試験で学んだ内容は鑑定士試験の法律知識にもつながるので、チャレンジしようと思いました。

渡邊先生 中国にも鑑定士にあたる資格がありますが、なぜ日本の鑑定士をめざそうと思ったのですか。

 中国の鑑定士は、日本のようなステイタスのある資格ではありません。中国には地価公示や地価調査の制度がないので公共の仕事がなく、鑑定士の仕事と言えば、不動産証券化しかありません。ですから私は日本の鑑定士資格を活かして、日本で就職したいと考えています。

学ぶなら合格者7割を輩出するTAC

──受験に際してTACを選んだ理由を聞かせてください。

前川 一番の理由は圧倒的な実績です。合格者占有率70%ということは、100人合格者がいたらそのうち70人がTACで学んでいるということです。その人たちと自分のレベルを比較するためにもTACで勉強すべきだと考えて、大学2年の10月から通い始めました。全国公開模試の結果や答案練習(答練)のランキングで自分の立ち位置が毎回わかるので、合格レベルまであとどれぐらいの力が必要かを常に把握できていました。

大島 父が以前講師をしていた受験指導校だということが一番大きな理由ですが、合格者の70%がTAC生であることも選んだ理由です。

 私もやはり合格者数が多いことが一番の理由です。受験生の多いTACの全国公開模試は、一番信頼できる合否の判定基準になると思いました。それに、実力のある人たちと一緒に勉強すれば自分のレベルがはっきりと判断できますし、Webフォロー制度の便利な機能や、短答式試験と論文式試験それぞれに、弱点を補強してくれる『特効ゼミ』というオプションの直前対策講座があるのもよいと思いました。

名古屋 私も合格者数の多さで決めました。TACは毎年多くの受験生が利用しているので、この中で勉強しようと思い、大学2年からTACに入りました。

 

大学の授業と鑑定士科目をリンク

──鑑定士試験と大学の授業で関連していた科目はありましたか。

名古屋 明海大学不動産学部では教養科目の経済学、会計学、民法が必修になっています。3年生からは鑑定評価の授業も選択できるので、関連性は高かったです。

 私も同じで、重要科目の基礎は大学の授業で勉強したので、基礎を理解した上で鑑定士試験の勉強ができました。大学の授業で学んだことは大変プラスになりました。

前川 在籍している中央大学総合政策学部には民法、会計学、経済学の授業がありますので、鑑定士試験を意識して、計画的に教養科目の履修で選択しました。

大島 鑑定士試験の勉強を始めた頃はまだ高校生だったので、当時の学校での勉強と鑑定士試験の勉強はまったく違いました。そもそも高校生は授業でボールペンを使いません。論文式試験は文字を書く量がすごく多かったので、まずボールペンで大量の文章を書くのに慣れるのがとても大変でした。

渡邊先生 確かに論文式試験がある鑑定士試験では、時間内にボールペンで答案用紙に手書きで解答することにも慣れなくてはいけないですね。

──皆さんの受験回数と合格年を教えてください。

大島 高校3年の10月からTACに通い始めて、翌2019年、大学1年のときに短答式試験に合格し、その年の論文式試験は会場の雰囲気を見るために最終日だけ行ってみました。そして2020年の論文式試験に合格し、その年の最年少合格者になりました。

前川 2019年に短答式試験に合格して論文式試験は受けず、2020年に論文式試験に合格しました。

 私は2020年に短答式試験と論文式試験の両方に合格しました。

名古屋 私は2019年に短答式試験に合格し、2020年に論文式試験に合格しています。

渡邊先生 皆さん現役大学生で短答式試験、論文式試験に一発合格する快挙を成し遂げたのですね。鑑定士試験の勉強と大学の授業やサークル、アルバイトなど、学生生活との両立は大変だったのではないですか。

大島 大学入学前から勉強を始めたので、大学入学早々ですが、2019年は楽しいキャンパスライフはほぼ捨ててました(笑)。サークルには入らなかったし、アルバイトも短答式試験が終わったあとに少しやっただけです。合格するまでは鑑定士試験の勉強と大学の授業に集中しましたね。その中で、できるだけ大学の授業と鑑定士試験の科目がリンクするように工夫しました。

前川 私は入学するときから、大学生活の後半は将来職業に就くための活動に集中しようと決めていたので、大学2年の秋までに、サークル、アルバイト、大学の勉強と、やるべきことはやり尽くして、その後はほぼ鑑定士試験に専念できるように準備してきました。
 とはいっても勉強を始めた大学2年の秋は、大学のテストや課題に追われて、TACの講義を何とか消化するので精一杯でした。それでもどちらかを疎かにすることはできなかったので、通学時間や放課後に時間を見つけてはTACの教材で復習していました。とにかく通学時間はスマホの電源を切って必ず勉強していましたね。

名古屋 私の場合は、鑑定士の勉強を始めた頃はアルバイトもしていたのですが、週1回くらいにシフトを減らしていました。明海大学には「反転学習×アクティブ・ラーニングで不動産鑑定士」という名前のサークルがあって、受験勉強を始めてからはそちらにも参加しました。サークルには、私と戴さんの他にも令和元年の試験に合格した不動産学部4年生が1名いて、計3名の合格者を輩出しています。

 受験中、私はそのサークルに参加しながらTACに通っていました。大学2年の終わりから鑑定士試験の勉強を始めて、鑑定士試験の勉強に関係ないことはこの2年間ほとんどしていません。
 両立するために工夫したことは、大学の授業は鑑定士試験より簡単なので授業時間内に集中してすべての内容を理解するようにして、できるだけ家では鑑定士の勉強に集中するということ。通学時間と大学の休み時間は暗記に専念しました。

勉強力を上げながら日本語力もアップ

──ただでさえ難関と言われる鑑定士試験。留学生の戴さんは日本語というハードルもあり、大変だったのではないですか。

 外国人が日本の国家試験を受けるのはとても大変ですから、そこは日本人の何倍も努力が必要です。日本語を書くことがすごく大変で、最初の答練では自分が「よく理解できている」と思っていた内容を書いたのに、先生から「何が書いてあるのかわからない」と言われました。日本語の勉強も大変なので、日本人よりもたくさん時間をかけて勉強しました。

渡邊先生 鑑定士の勉強を始めたときはどれくらい日本語ができたのですか。

 TACに入るときは全然できませんでした。鑑定評価基準や文章例を暗記しながら、日本語を勉強しました。その中で自然に日本語もできてきた感じです。

渡邊先生 受験勉強をする中で日本語力も上げていったのですね。私の受講生の中にも何名か中国の方がいたのですが、答案の文章を見ると、皆さん日本語に苦労されているようでした。戴さんのように、留学生が論文式試験に一発合格するというのは本当にすごいことです。

 中国語は日本語と文法がまったく違います。主語、目的語、動詞などの順番が日本語とは違うので混乱してしまいました。私はそれを回避するために、過去問や答練の解答例をそのまま暗記しました。

渡邊先生 論文式試験では何千字もの文章を書かなければならない科目がいくつもあるのに、その解答例をほぼ暗記したのですね。膨大な時間がかかったのではないですか。

 はい。鑑定士試験では論文を書かないといけないので勉強時間が長くかかりますから、アルバイトをするのは絶対無理です。だから、知り合いで鑑定士試験を受ける中国人はいないです。日本の資格試験を受ける中国人は、ほとんどが論文式試験のない司法書士や行政書士を選んでいます。

心がけていたのは「決して不安にならないこと」

──受験期間中はつらいこともあったと思いますが、皆さんはどのようにモチベーションを維持していましたか。

名古屋 勉強がうまく進まなくなったときは、いったんお休みしたり周りの人に話を聞いてもらったりして、「また勉強しよう」という気持ちになるまでリフレッシュしてから戻るようにしていました。

前川 鑑定士の仕事に関する本を読んで、どんな仕事をするのかイメージしていました。また、鑑定事務所に入ることを目標にしていたので、鑑定事務所のWebサイトを見たりして、「こうなれたらいいなあ」と合格後の自分の姿を想像してモチベーションを維持していました。

 私は旅するのが好きなので、勉強に息詰まったときは何も勉強のことを考えないで、チケットを買ってカメラを持って、ひとりで遠くの知らない町に出かけました。そこで気分を切り替えて、また勉強に力を投入しました。

大島 合格体験記を書くことを目標のひとつにしていました。あとは、合格したらやりたいことを箇条書きにして、メモしておきました。受験勉強中、やりたくてもできないことが出てきたら、「合格したらこの漫画を読みたい」「この映画を観たい」「船舶免許を取りたい」「旅行に行きたい」と、やりたくなったことを書いておくのです。書き出すと少しだけ気が晴れて、切り替えられました。

渡邊先生 モチベーションを維持することは本当に大事ですね。鑑定士試験は勉強時間の確保も大事ですが、皆さんは1日あたりどれくらい勉強していましたか。

大島 論文式試験直前期はコロナ禍のため大学が休みだったので、ほぼ受験専念の状態でした。その頃は12時間ぐらいは机に向かっていましたが、集中できていたのは9時間くらいでしたね。学生生活と並行していたときは、平日でTACの講義を入れて5~6時間勉強していました。

前川 私は大学2年生のときは週に5日、朝9時から午後4時まで大学の授業があって、まとまった勉強時間が確保できなかったので、実家から片道2時間という通学時間を利用して勉強しました。直前期の半年間は大学の単位も取り終わっていたので、1日14時間くらい勉強していました。

 2020年の短答式試験のときは1日6~8時間くらい。直前期の1~3月は春休みで、その後はコロナの影響で学校に行かなくなったので、1日10時間勉強していました。

名古屋 私は結構バラバラで、勉強を始めた頃は1日3~5時間くらいでしたが、2020年は大学もほとんど授業がなかったので、直前期の3ヵ月間は1日10時間くらい勉強していました。

渡邊先生 今回はコロナ禍での試験ということもあって、例年に比べて勉強時間は確保しやすかったのかもしれませんね。時間以外に、短期合格をめざして工夫していたことや心がけていたことはありましたか。

大島 暗記よりも理解に重点を置いたことと、難しい問題は捨てて、基本的な問題の精度を上げていく勉強方法を意識していました。重要度を示すABCランクでいうと、「Aランクの問題は頻出だから何度も繰り返し解こう」「とりあえずABランクが解ければいい」「Cランクまでできる人は少ないだろうから読む程度にしよう」と、自分なりに判断していました。

前川 私が心がけていたのは、絶対に不安にならないということです。私は宅建士や簿記の勉強もしたことがなかったので、どの科目の勉強もほとんど知識ゼロの状態でスタートしました。わからないことだらけで、当初は答練の点数も低かったです。一方、この試験は複数年受験されている方や不動産業界で働いていらっしゃる受験生が多いので、初学者の自分と比べて知識が豊富な方が多いのが特徴です。でも、その差を考えて不安になっていたら時間がもったいないので、不安になる時間があるならそのぶん努力しようと、2年間心がけていました。絶対に合格したいという気持ちを最初から最後まで持ち続け、人の10倍は努力する気持ちで毎日勉強を続けました。
 また、TACから配付された教材を完璧に理解できれば必ず合格できると信じていたので、『基本テキスト』に自分なりに解説を記入しすべての情報を集約するようにして、復習が楽になるように工夫しました。何度も同じテキストを見ていると記憶が定着するので、各教科で確認するテキストをどれか1冊にまとめる方法はよかったと思います。

名古屋 私の場合、他の科目よりも配点の高い鑑定理論は得点源にするための「攻めの科目」、そして民法・経済学・会計学は常に平均レベルを確実にキープする「守りの科目」ととらえて取り組んでいました。

 日本語も勉強しなければいけないので勉強時間をたくさん作ろうとしましたが、完璧な勉強時間ではありませんでした。初めて受けた全国公開模試では100位以下で絶望しました。そこで反省して、TACの花輪先生が教えてくれた勉強法から留学生でも合格できる方法を作り出しました。頭では理解していても日本語ではうまく表現できなかったので、鑑定理論は鑑定評価基準を完璧に暗記しました。あとは『特効ゼミ』の問題集で鑑定評価基準以外の内容を暗記しました。おかげで一気に成績が伸びて、2回目の全国公開模試では52位になれました。
 論文式試験の勉強は、1週間に1回、本試験と同じ2時間で問題を解いていました。解答例を作って、解答するときに書かなければいけない内容はすべて暗記して、過去問や問題集の論点のまとめの内容もすべて暗記しました。

苦手科目は暗記、あるいは理解度を上げて克服

──苦手科目はどのように克服しましたか。

名古屋 苦手科目は経済学でした。難しい問題にはあまり手を出さずに基本を固めて、重要な点を落とさないように心がけました。

 苦手だったのは民法で、1つの問題を3~4回、暗記に近いかたちで時間をかけて解答するようにしました。4回目には解答例の8割に到達するぐらいになりました。

前川 苦手科目は会計学です。勉強していてもつかみ所がなくて自分が本当に理解できているのかわからない科目だなと感じていましたし、なかなか成績も上がりませんでした。攻略法として、オプションで会計学の『計算マスター』を受講しました。計算問題をたくさん解いていたら、背景にある「言っていること」がわかってきて、結果的に基本テキストの理解も深まりました。最終的には成績も上がってきて、人並みの成績を取れるようになりました。

大島 私も会計学が苦手でした。会計学はそれぞれ独立している項目が多く、関連づけて覚えることが難しかったため暗記に苦労し、苦手意識があって最後まで手をつけられませんでした。そこで、とにかく答練の解答例や総まとめ講義に載っている問題を暗記していきました。

渡邊先生 前川さんは計算問題を繰り返し解くことで理解度を上げ、大島さんは理解するのが難しい箇所はとにかく丸ごと覚えてしまう。2人の苦手科目は同じでも、克服方法が全然違いますね。

──大島さんは4月から大学3年生、他のみなさんは3月で大学を卒業ですが、今後の進路についてはいかがですか。

大島 鑑定士試験に合格して、この3月から父の鑑定事務所で実務実習に入りました。並行して、大学の後半は学生生活を楽しもうかなと思っています。そのあとは、大手デベロッパー系に就職するか、ロースクールに入るかの2択を考えています。まだ確定していませんが、大学3年の夏には就職活動に入るので、その前には決めるつもりです。ロースクールに進むなら、弁護士と鑑定士のダブルライセンスで不動産系に強いスペシャリストをめざします。

前川 私は4月から鑑定事務所に就職します。大学で勉強してきた都市計画をメインに、自分のやりたいことができる事務所を最初に受け、内定をいただくことができました。すでに3月1日から2年コースで実務修習も始まっています。

渡邊先生 皆さんのように現役学生で鑑定士試験に合格した方なら、どこの鑑定事務所からも引く手あまたでしょうね。

名古屋 私も4月から鑑定事務所に就職します。就職活動にあたって、最初は鑑定士業界だけでなく広く不動産業界全体で見ていたのですが、合格発表のあと、やはり鑑定士としての経験を積みたいと思い、鑑定事務所に決めました。実務修習は、実務を1年間経験したあと、2年目に行う予定です。

 私は4月から大学院に進み、引き続き明海大学の不動産学研究科で勉強します。そのあとは鑑定士資格を活かして日本の不動産業界で働きたいと思っています。

鑑定士試験は「がんばっている人が報われる試験」

──現役合格した先輩として、鑑定士受験を考えている大学生にメッセージをお願いします。

大島  短答式試験の勉強をしているときから論文式の勉強を見据えていくことが、合格への一番の近道です。

前川 鑑定士試験はがんばっている人が報われる試験なので、できるだけいろいろな方に受けていただきたいです。TACに通っていたときから、女性の受験生が少ないなと感じていたので、より多くの女性に挑戦してほしいですね。また社会人に比べて時間のある学生の方は、まとまった勉強時間が確保できる最後の期間ですから、興味があったらぜひ挑戦してみてください。

 鑑定士はどんなに不利な状況になっても、努力すれば必ず合格できる試験です。がんばってください。

名古屋 学生生活の中で、自分で興味を持ったことに挑戦するのはとても大切なことだと思います。もしも、その中で鑑定士に興味を持たれた方がいれば、ぜひチャレンジしてほしいです。

渡邊先生 講師になって10年強、当初は学生の受講生がなかなか増えませんでした。学生がすごく増えたなと感じるようになったのは、皆さんが受講し始める少し前頃からです。学生時代にこのレベルの試験を突破して社会に飛び出せたら、すごい社会人になるだろうなと、心から期待しています。
 前川さんが「結婚・出産を経ても仕事を続けたい」という理由でめざしたように、鑑定士資格は女性にとっても最強の資格だと思います。余暇時間がたっぷりありながらかなり稼げるので、鑑定士資格を活かして活躍する女性が今とても増えてきました。
 学生時代に鑑定士試験に合格すると、幅広い選択肢を持つことになります。大島さんのように就職とロースクールの2択だって可能になるのです。そして20代なら、社会に出たあとでもキャリアはいくらだって自由に描けます。現役大学生で鑑定士試験に合格しているというのは、向かうところ敵なしの状況です。皆さんの成功が、後ろにいる後輩につながっていくと信じています。がんばってください。

[TACNEWS 2021年6月号|特集]