特集 企業内で活躍する 女性不動産鑑定士

不動産業界では希少価値の「不動産鑑定士+語学力」。
あらゆる不動産サービスで、このスキルをフル活用できます。

 シービーアールイー株式会社(CBRE)は、全世界に9万人超の不動産の専門家を抱える事業用不動産サービスの大手企業だ。その一角を成すCBRE日本法人は、不動産賃貸仲介・売買仲介だけでなく、各種アドバイザリーサービスやファシリティマネジメントも包括する5部門18部署で、法人向け不動産に関するあらゆるサービスラインを提供している。
 総勢1,000名を超えるCBRE日本法人では、約500名の宅地建物取引士、34名の不動産鑑定士、30名の一級建築士が活躍する。その中で鑑定部門とコンサルティング部門を統括しているのが、不動産鑑定士・水谷賀子氏だ。「不動産に関わるあらゆる知識を網羅的に習得できる不動産鑑定士は、社内のあらゆる現場の第一線で活躍できる」と語る水谷氏に、企業内鑑定士の活躍の様子やCBREという職場の「働きやすさ」について、さらに採用責任者のソニア・メイヤー氏に「CBREの求める人物像」などについてうかがった。

左から
■シービーアールイー株式会社(CBRE)
バリュエーション・アドバイザリー&コンサルティング・サービス本部
本部長 エグゼクティブディレクター
不動産鑑定士 MAI(米国不動産鑑定士) MRICS(英国王勅許不動産鑑定士)
水谷 賀子氏

■シービーアールイー株式会社(CBRE)
人事部 ディレクター
ソニア・メイヤー氏

金融から転じて不動産に興味

──水谷さんが不動産鑑定士(以下、鑑定士)をめざされた経緯をお聞かせください。

水谷 私は最初から鑑定士をめざしていたのではなく、キャリアの途中で鑑定士に巡り合いました。大学卒業後に勤務した金融機関で、融資資金がどのような用途に使われるのかを調べたときに、発展途上国の橋の建設など、お金がモノに変わっているということを知って、概念的な「お金」の世界から、実際に見たり触ったりできる「不動産」の世界に興味を持ったのがひとつのきっかけでした。
 そこで不動産業界をめざして転職し、UBSグローバル・アセット・マネジメント株式会社(現:UBSアセット・マネジメント株式会社、以下、UBS)とフィッチ・レーティングス(現:フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社)を経て、2006年にシービー・リチャードエリス株式会社(現:CBRE)に入社しました。不動産業界に入ったあと、業界の必須資格である宅地建物取引士(以下、宅建士)を取得した先にあったのが鑑定士で、総括的な不動産の知識が習得できると考えてチャレンジを決めました。UBS時代に働きながら2年かけて合格し、CBREに入社してから鑑定士になりました。

──受験中、鑑定士の知識は仕事に活かせましたか。

水谷 鑑定業務ではありませんでしたが、当時、資産運用の営業をしていたので、不動産に興味があるお客様に鑑定士の知識を駆使して価値の把握の仕方などをご説明して喜んでいただいたことが、受験のモチベーションになりま した。
 不動産のことがわかれば、金融とのハイブリッドなステージでの活躍につながるかもしれない。そんな将来に対する可能性を感じたので、勉強を続けることができました。

──仕事にうまく知識を活用しながら勉強できたのですね。鑑定事務所に入らず一般企業に入られたのはなぜですか。

水谷 フィッチ・レーティングスでは商業不動産担保証券格付けアナリストとして大量の不動産の査定を経験しています。鑑定士でなくてもできる業務ですが、鑑定士の知識があればより効率的にできるというメリットがありました。そのときに同じ部署に何名か鑑定士がいて、「鑑定士って、こういうところでも働いているんだ」と、鑑定事務所以外の活躍の場があるのを知ったことが大きいです。

アメリカとイギリスの鑑定士資格も取得

──CBREに入られた理由を教えてください。

水谷 現在、バリュエーション・アドバイザリー&コンサルティング・サービス本部という部門のエグゼクティブディレクターとして鑑定部門とコンサルティング部門を統括しています。鑑定部門はCBREという不動産サービス会社内における独立した部門です。
 鑑定士として鑑定事務所で働くかCBREで働くかを比較したとき、まずCBREは外資系企業なので、語学力が活かせるのではないかと考えました。そして金融業からの転職でしたので、将来的により幅広く鑑定の知識を使えるような会社に勤めたいと考えて、CBREに決めました。特に不動産業界では英語が必ずしも浸透していないと聞きましたので、より自分の特性を活かせるのではないかという思いもありました。今でも「鑑定士+英語」という組合せは多くないと思っています。 今、日本でこれだけ外資系企業が進出して外国人投資家が投資をしている中で、英語で説明ができ、かつ鑑定士という国家資格のお墨付きがある人間というのは、信頼を得られますし、自分自身のバリューアップにつながると考えました。

──水谷さんは海外の鑑定士資格もお持ちだそうですね。

水谷 MAI(米国不動産鑑定士)とMRICS(英国王勅許不動産鑑定士)を持っています。日本の鑑定士資格を取ったことで日本の鑑定評価についてはわかったのですが、さらに海外ではどのように評価が行われるのかを知れば、海外のお客様とも共通認識をもって話ができるはずです。かつ、日本に投資する外国人は自国の基準で投資価値を判断するので、アメリカやイギリスではどのような価格の捉え方をして査定しているのかがわかれば、お客様からの質問にも対応しやすくなると考えて取得しました。

──海外の鑑定士試験は難しくありませんでしたか。そして取得によってどのようなメリットを感じましたか。

水谷 日本の鑑定理論の勉強をしていれば、基本的に内容は理解できます。というのはグローバルな鑑定評価基準というのはどこの国でもコンセプトは同じだからです。それを実務でどう扱っているかが違うだけなので「こんなふうに考えるんだな」ということがわかって、難しいというよりおもしろく勉強できました。日本にいてもWebで受講し個別テストを受けて、最終試験の受験が可能になります。アメリカの資格を取得後、一定の経歴があれば、審査を経てイギリスの資格を取得することも可能です。
 アメリカとイギリスの鑑定士資格を持ったことで、どのようなことができる人間なのかを相手に知ってもらえることは大きなメリットです。例えば、お客様が米国投資家という場合も、米国鑑定士資格保持者が評価しているチームということで安心感を持っていただくことができます。

全社的に活躍する鑑定士たち

──CBREの鑑定部門について教えてください。

水谷 現在、私が統括している鑑定部門とコンサルティング部門は合わせて約70名です。その中で鑑定部門は23名で、鑑定士18名、試験合格者2名、勉強中3名です。全社では鑑定士が34名おりますが、半数以上が鑑定部門に所属しています。社内の鑑定士は賃貸仲介や売買仲介部門にも在籍していますし、コンサルティング部門の営業としても活躍しています。不動産サービス会社でこれほど大人数の鑑定士を抱えているところは少ないと思います。

──鑑定士は鑑定部門だけでなく全社的に活かせる資格なのですね。

水谷 その通りです。鑑定士試験の学習範囲は不動産に関わるほぼすべての知識が網羅されていて、評価のみならず、法律、会計、経済、行政法規など、不動産業界で働いていくにあたって知っておくべき知識はすべて勉強できます。ですから鑑定部門のように鑑定評価書を出すことを最終的なアウトプットとしている部署はもちろん、もう少し川上でアドバイスをする部署でも活躍しています。鑑定士がリーダーの部署もありますし、法人営業部にも鑑定士がいます。鑑定士試験の勉強で得た知識を鑑定部門だけでなく、社内のいろいろな部署で活かしたい、幅広い業務に携わりたいという人間もいるので、そこは社内でフレキシブルに異動できるように対応しています。

──鑑定部門の強みはどこにありますか。

水谷 鑑定部門では日々鑑定評価をしていますが、社内には賃貸、売買、建築、多くの物件の維持管理などをする様々な部署があります。当社の鑑定部門にいる人間は、日々の職場環境において、鑑定以外の不動産情報に触れる機会が圧倒的に多いと思います。そこが当社の鑑定部門の強みと言っていいでしょう。

──コンサルティング部門の業務についても教えていただけますか。

水谷 コンサルティング部門が担っているのは、CBREの売買仲介、賃貸仲介、プロパティマネジメントなど実際の取引が行われる前段階でアドバイスをする業務です。例えば、企業会計のリース取引会計が変更になる中で、保有と賃貸のどちらがいいかの問い合わせを受けて「一長一短ありますが、こうするべきでは」と提案し、実際物件を売るとなったときは売買仲介部門につなぐことも可能です。最近ではビルの老朽化による建替えのような開発系コンサルティングも多く、オーナーに「建て替えたら、これぐらいの価値で賃料はいくら取れます」という提案をする中で、実際の取引につなげていくのが役割です。

幅広くキャリアパスを構築できる組織

──メイヤーさんは人事部ディレクターとして採用を担当しているのですか。

メイヤー はい。採用のほかにも、当社のブランドが日本国内でまだ確立されていないため、幅広く企業ブランディングを行うことが私の仕事です。またグローバルカンパニーとして国内だけでなく海外とも連携しながら、案件やプロジェクトを推進している点も伝えています。

──採用において、CBREをどのように紹介していますか。

メイヤー CBREの最大の強みは、不動産のサイクルの中のすべての段階においてサービスできるワンストップを実現している点です。この会社に入ると、幅広くキャリアパスを構築できるのが魅力だと思います。
 現在、社員だけで約1,100名在籍していて、男女比は65:35と、不動産業界の中では女性比率が高いのも特徴のひとつです。
 そして特筆すべきなのは、私たちの成長率が非常に高く、急成長している点です。私が入社してからも業績は順調に伸び続けており、それに伴い人員もどんどん増えています。
 急成長の背景には、既存のビジネスを成長させることはもちろん、新しい領域にも事業を拡大していることがあります。CBREは今まさにビジネスが変革の中にあって、採用でも大勢の人を採用しなければなりません。2018年は年間約240名を採用し、そのうち10%が新卒、90%が中途採用でした。

──2019年は何名採用される予定ですか。

メイヤー 上半期ですでに約100名を採用しているので、年間計画では昨年を上回ると思います。

──鑑定士は全社で34名ということですが、その他の有資格者はいかがですか。

メイヤー 建築士が一級・二級合わせて40名ほど在籍し、そのうち30名は一級建築士です。開発系やオフィスの移転事業を手がけているので大半の建築士がプロジェクトマネジメント部門に集中していますが、プロパティマネジメント部門や賃貸仲介部門にもそれなりの人数の建築士がいます。
 また、不動産事業を展開しているので全社的に約500名の宅建士がいます。中途採用においても部門によって宅建士は必須資格です。新卒にもできる限り早く取るように勧めており、入社年の10月の受験をめざしてもらいます。初年度に合格する確率は年々異なりますが、2年目以降も再挑戦するように推奨しています。当社には5部門18部署ありますが、売買仲介や賃貸仲介部門は宅建士の資格は必須ですので、その部門の営業職の社員はほぼ全員取得しています。
 管理部門では、司法書士2名、行政書士6名、社会保険労務士7名、USCPAが3名、日商簿記検定1級・2級は合わせて65名います。施設管理部門では衛生管理士が30名在籍しています。

──資格取得の際の費用補助はありますか。

メイヤー 業務上、必要不可欠であれば、各部門長の判断で費用補助が出るしくみになっています。例えば、鑑定部門に所属している場合、宅建士を取る際には補助は出ませんが、鑑定士受験をして合格すればかかった費用は会社がすべて負担します。また、売買仲介や賃貸仲介といった宅建士必須の部門では、宅建士に合格すれば補助が出ます。

──CBREが考える「求める人物像」とはどのような人でしょう。

メイヤー まず大前提として「不動産に興味がある方」です。加えて、ここまで幅広いサービスを提供している会社なので、入社後は幅広く社内でのネットワークを広げてもらい、いろいろな部門とのコラボレーションを積極的に推進してビジネスにつなげていける、横との連携を大切にできる人材を求めています。そのためにユニークな社内イベントを企画したり、研修やネットワーキングを行ったりしています。

──CBREが考える「求める人物像」とはどのような人でしょう。

メイヤー まず大前提として「不動産に興味がある方」です。加えて、ここまで幅広いサービスを提供している会社なので、入社後は幅広く社内でのネットワークを広げてもらい、いろいろな部門とのコラボレーションを積極的に推進してビジネスにつなげていける、横との連携を大切にできる人材を求めています。そのためにユニークな社内イベントを企画したり、研修やネットワーキングを行ったりしています。

水谷  私たちは不動産サービス会社なので、何か決まったサービスや決まったしくみを売っているわけではありませんし、資産を保有することが主要な業務ではありません。つまり、その都度不動産から何かビジネスを生み出していかなければならないので、不動産が好きで常にプロアクティブに自分の仕事を考えられる人が、どの部署でも求められます。鑑定部門は比較的型にはまった仕事と思われがちですが、どんどん新しいタイプの物件が出てきているので、それに対してどう考えれば評価ができるのか、また、様々なお客様に対してどのようにわかりやすくアウトプット(鑑定評価書等)を作っていくか、そんな発想を持っている方が、長く活躍できますね。

──コミュニケーションのための社内イベントとして代表的なものをご紹介ください。

メイヤー 毎月第1・3水曜日はハッピーアワーといって、カフェでドリンクや軽食を楽しめるイベントがあります。その都度トピックを考えて発表していて、例えば、リサーチによるマーケットトレンドの発表や部門の紹介など、各部門が発信できる場になっています。その他にも横のつながりを広げるために、社内の他部署とビジネスマッチングをする「他部コン」というイベントがあります。他にも多様性を推進する「ウーマンズネットワーク」という集まりもあって、社内でパネリストを呼んで「育児について」や「介護について」、「受験する子どもを抱えた人の情報交換」など、毎回、男性社員も加わって、情報共有と知見共有を行っています。

「鑑定士+英語」が世界を広げる

──CBREは外資系企業ですが、入社時に語学力は求められますか。

メイヤー 5部門18部署の中には、英語が全く必要ない部署もあります。ただグローバルカンパニーなので、自分のポジションが上がっていくにつれてレポーティングがアジア地域に広がったり、同じポジションの他のマーケットのメンバーと情報共有したりする場面が出てくるので、やはり英語ができたほうがキャリア形成の機会が広がるということはあります。ただ、最初から英語が必要なのは限られた部門ですので、英語に興味があって、今後上達させたいという強い思いがあればOKです。

水谷 扱っている商品が日本の不動産ですので、日本語を勉強している外国人も多いです。
 鑑定部門も国内顧客と外資系顧客にチームが別れているので、外資系チームなら英語ができたほうがベターです。といっても、メールなど文章でのコミュニケーションができればまず大丈夫なので、入社してから英語を学んでいるメンバーも大勢います。
 ただ、鑑定士の実務修習を当社で行いたいというメンバーは、英語に対して興味がある人が多いかもしれません。英語と複数のビジネスラインに興味を持っているということですね。
将来的には売買仲介や賃貸仲介、法人営業といった別の部署にも携わりたいと思いつつ、鑑定評価も勉強したいという人が結構います。鑑定部門に入ったあとに他の不動産ビジネスを体験したいという場合に、わざわざ転職しなくても社内異動でそれを体験できるところが当社の魅力のひとつですが、さらに、英語でいろいろな国をつなげることができる。これがCBREの魅力で、当社に入社する目的にもなっているようです。

──水谷さんの語学力はどこで磨かれたのですか。

水谷 もともと帰国子女で、小学5年から中学3年まで海外に行っていました。その後は不動産業界に入って英語を使える人材が極めて少ないと感じたときから、真剣に英語を使えるように努力するようになりました。といっても英会話スクールに通ったりしたわけではなくて、CBREの中で英語に触れる機会を通じて習得しました。

──社員の方はどのようにして語学力を磨いているのですか。

水谷  今の20~30代で当社に来るメンバーは、まったく海外経験がなくても「やってみたい」という気持ちが強いようです。当社には、例えば英語を勉強してTOEIC® L&R TESTのスコアが上がると勉強したコースの講習料を会社が負担してくれる制度など、語学力向上のサポートがあるので、鑑定部門にいる若いメンバーもその制度を活用しています。鑑定士の資格を持ち、さらに英語ができると、間違いなく世界が広がります。現場で習得していく心意気で見よう見まねでやれば、若い人ならあっという間に伸びますね。また、当社では日本語と英語の両方でリサーチペーパーを出していることが多いので、その英文を読んで日々勉強するというやり方もあります。鑑定士に限らず、若いメンバーは積極的にそうした媒体を使って勉強しています。

ABW(アクティビティベースドワークプレイス)という「働きやすさ」

──CBREの「働きやすさ」について教えてください。

メイヤー CBREのオフィス環境の最大の特徴は、ABW(アクティビティベースドワークプレイス)にあります。固定席のないフリーアドレスという意味では従来にもあったと思いますが、メンバーが各自でその日その日にそれぞれの仕事の目的や内容に合わせて様々なタイプのワーキングスペースを選べる、という点では大きく異なっています。CBREでは2014年4月にABWを東京本社に導入しました。その後の新入社員を対象にした調査では、「CBREのオフィス環境は入社を決めた理由のひとつである」と回答した社員の割合は増加傾向にあり、「オフィス環境」は採用において大きなプラスに働いていることがわかります。
 私自身入社してみて、この会社の通気性のよさには感心しています。自分のやるべき仕事がわかっている社員、自分の裁量できちんとアウトプットをすることに慣れている人にとっては非常に働きやすいと思います。一方、新入社員にとっては、上司には隣にいてもらい、一から自分の仕事を確認していてほしいといった側面もあるので、そこはOJTのときから先輩をつけるなど、各部署でフォローの仕方を模索しています。
 このようなフレキシブルな環境なので、社員もさぼろうと思えばいくらでもさぼってしまえます(笑)。誰かに教えてもらえるのを待っているのではなく、積極的に自分から仕事の確認をしに行くようなメンタリティが大切ですね。

鑑定士は、女性の視点を活かせる仕事

──水谷さんのような女性管理職は社内に多いですか。

水谷 ビジネスラインの統括をしているのは、女性では私の他にもう1名います。それほど多くないのは、リーマン・ショックで不動産業界に激震が走った時代だったこともあり、他社も含めて私たちの下の世代の採用ができなかったことがあるのではないでしょうか。マーケットの中でもその世代の経験者が少なく、10名中1名女性がいればいいほうでした。そうした意味で、新卒からミレニアル世代も含めた若手社員に期待しています。

──鑑定業界は圧倒的に女性が少ない業界と言われています。女性が鑑定士資格を取るメリットをご紹介いただけますか。

水谷 鑑定士に限らず不動産業界は女性が圧倒的に少ないので、「女性」ということでお客様に覚えてもらいやすいのが一番大きなメリットです。また鑑定評価においても、事業用不動産においても、住宅系分野においても、女性らしい細やかな視点を入れたほうが、既存の考え方から飛躍した新しい発想が出てくるケースが多いですね。鑑定部門でもリテールやホテルの評価を多く手がけているのは女性で、よい意味で女性の視点が活かせています。ワークプレイスストラテジーの部署でも北アジアを統括しているのは日本人女性で、いかにフロアを働きやすい環境にしていくか、女性のユニバーサルな視点が活かされています。
 こうしたことからも、鑑定士は多くの女性にもぜひチャレンジしてほしい資格です。不動産業界はともするとタフな営業のイメージが強すぎて、女性が活躍できる業界とは思いにくいかもしれません。でも鑑定士は、第三者としてアドバイスすることが最終的に求められるスキルなので、女性が得意とする細やかな視点を活かせる分野だと思います。お客様のニーズを受け止めて、それをどう実現すればいいのか、どのような考えでお客様にその評価をお届けすればいいのかを突き詰め、その後、鑑定評価に落とし込んでレポーティングするという仕事は、圧倒的に女性が得意と言っていいでしょう。しかも、ライフステージの変化によるキャリアプランへの影響が大きい女性にとって、鑑定士は在宅勤務でもできるという強みがあります。自宅から現地調査に行ってレポーティングは自宅で仕上げるといったように、自分のスケジュールに合わせた働き方ができるので、女性にとってやりやすい職業だと思います。
 また男性にとっても、鑑定士の知識は、どの部署であっても、不動産業界のどこへ行っても活かせるので、キャリアパスの非常によいベースとなるでしょう。

──最後に、企業内鑑定士として活躍する水谷さんからメッセージをお願いします。

水谷 CBREには、鑑定評価ができて不動産の基礎知識を持った鑑定士が幅広い部署で活躍しています。そうしたメンバーの姿を見て、若手メンバーは「自分もこういうところで、鑑定士の資格を活かして活躍できるんだ」と感じるようです。鑑定士の受験生が減ってきていると聞きますが、資格をどう活用できるかを知ってもらえれば、鑑定士の世界の魅力についてもっともっと理解していただけるのではないでしょうか。ぜひ、みなさんにも私たちのような企業内鑑定士をめざして、がんばっていただきたいと思います。

[TACNEWS 2019年10月号|特集]

会社概要(2019年4月1日現在)

社   名:シービーアールイー株式会社(CBRE)
本社所在地:東京都千代田区丸の内二丁目1番1号 明治安田生命ビル18F
営業拠点 :札幌・仙台・東京・横浜・名古屋・金沢・大阪・広島・福岡
      その他CBREグループ世界400拠点以上
      ※系列会社および提携先除く
事業内容 :国内及び外資系企業を対象とした事業用総合不動産サービス