特集 教員採用試験合格者に聞く、合格の秘訣

未来を担う子どもたちに、全力で向き合っていきたい

 狭き門と言われる教員採用試験。年に1度きりの大勝負である上に、受験経験者が多くライバルのレベルも高いため、合格するためには入念な準備が必要です。今回は、2019年度採用選考を見事勝ち抜いた4人の方々に、教員をめざした理由や合格までのプロセス、これからどのように活躍していきたいかなどをお聞きしました。


※当記事は2019年3月に取材しました。

左から
■永井 匠(ながい たくみ)さん
神奈川県出身、東洋大学 文学部卒業
(速修本科生/教室講座)
合格先:神奈川県 高等学校国語

■澤田 将智(さわだ まさとも)さん
埼玉県出身、慶應義塾大学 商学部卒業
(集中本科生/教室講座)
合格先:埼玉県 高等学校地理歴史

■中島 一球(なかしま かずま)さん
東京都出身、日本体育大学 体育学部卒業
(人物本科生/Web通信講座)
合格先:東京都 中高保健体育

■渡辺 朝美(わたなべ あさみ)さん
茨城県出身、女子栄養大学 栄養学部卒業
(入門本科生PLUS/個別DVD(ビデオブース)講座)
合格先:茨城県 栄養教諭

学校の楽しさ、勉強のおもしろさをもっと伝えたい

──教員をめざそうと思った動機や時期を教えてください。

澤田 小学生の時から、漠然とですが「勉強を教える仕事」に就きたいと思っていました。教員になると決めたのは高校に入ってからです。地理の先生の授業がおもしろく、暗記だけではない勉強の楽しみ方を学ぶことができました。それで、自分も同じ道に進みたいと考えるようになりました。

渡辺 大学でライフステージ別に栄養学を学んだことから、味覚や食習慣が形成される子ども時代から正しい食の知識を身につけることが重要だとわかりました。そこで、私自身大好きだった学校や給食を通じて栄養や食事のとり方について発信していきたいと思い、栄養教諭をめざしました。

永井 小学生の時、友だちに「永井は勉強を教えるのがうまいね」とほめられたことがうれしく、その頃から「先生」という仕事に興味を持ちました。教員を志望するようになったのは高校3年生の時です。大学受験に関して、教科担任の先生に手厚く相談に乗ってもらい「自分もこんな教員になりたい」と強く思いました。

中島 中学校の保健体育の楽しさが忘れられず、教員を志しました。恩師のように生徒一人ひとりをよく見て、全員で授業を作り上げていく教員になりたいと思い、大学卒業後は東京都の中学校で講師として働きながら、数年かけて教員採用試験に挑戦してきました。

大学2、3年生の頃から教員採用試験のために動き出した

──教員採用試験を受けようと決めたのはいつ頃ですか。受験をするにあたってTACを選んだ理由も教えてください。

永井 教員になる決意は、大学入学時にはすでに固まっていました。母校の恩師と同じ教壇に立ちたいと思ったので地元の神奈川県を受験すると決め、大学1年生の時には受験科目や出題のレベルなどひと通りのことは調べておきました。大学3年生が終わるまでに専門科目の国語の過去問を解き、教養科目を自分なりにさらっておいてから、最後の総仕上げとしてTACの短期集中コースに申し込みました。TACを選んだのは、自宅に届いたダイレクトメールのキャッチコピーに共感したからです。

澤田 本格的に動き出したのは、大学3年生の夏です。それまではゼミの勉強が忙しく、受験勉強を始められませんでした。また、在籍していたのが教育学部ではなく商学部だったため、自分で情報収集する負担を減らすために受験指導校を探し始めました。TACを選んだのはWebで講義を視聴することができるからです。通学時間が長かったので、Webフォローを使って復習の時間にあてられる点が魅力でした。それで、大学3年生の2月からTACで勉強を始めました。

中島 大学は体育大学に進学し、サッカー部に所属しました。教員採用試験に向けて勉強を始めたのは、大学3年生の夏から秋にかけてです。周囲に教員をめざす仲間が多く、互いに声を掛け合って勉強を始めました。最初に受験して以降、ずっとひとりで勉強してきたのですが、今回初めて受験指導校を利用しました。理由は、特例選考の種類や選考方法が見直され、1次試験における試験免除がなくなり、久しぶりに教養科目の勉強をし直す必要があったからです。たまたま購入した過去問題集がTACのものだったことをきっかけに無料セミナーに参加したところ、TACは私の苦手とする面接対策が充実していることがわかったので、利用することにしました。

渡辺 栄養教諭の受験を本格的に検討し始めたのは大学2年生の3月です。4年生の先輩が、受験指導校に通って栄養教諭にストレートで合格したと聞いたので、自分も受験指導校を探してみようと思いました。TACは、自分の好きな曜日や時間にブースを予約して講義を見ることができる点や、論文添削や面接練習を無制限で受けられる点、自習室が使える点など魅力的なポイントが多く、迷わず決めました。

──おすすめしたいTACの活用法があれば教えてください。

中島 自分がやりたい時に面接の練習ができるのはTACの強みだと思います。一般的には、1次試験が終わってから2次試験までの短い期間で面接対策をする受験指導校が多いと思うのですが、働いている場合はその時期に行けるとは限りません。その点、TACならいつからでも可能なので、2、3月から模擬面接をすることができ助かりました。

永井 わからないところはWebフォローで講義動画を繰り返し見て確認できる点がよかったです。私は一般教養の地理が特に苦手だったのですが、「わからないな」と思った瞬間、家でも電車の中でもWebで講義を見るようにしました。不安が一切なくなるまで見返して、最後には講義を丸ごと覚えてしまうくらいになり、自信をつけることができました。

渡辺 私がおすすめしたいのは、講義と論文の添削指導です。講義はおもしろくてどんどん引き込まれました。特に鴨田先生の教職教養は内容がスーッと頭に入ってきて、問題が自然と解けるようになっていたので驚きました。論文も30回以上書いて添削していただいたので自信が持てるようになりました。よかった部分はほめてくださり、ダメな部分はどうやって直せばいいのか具体的にアドバイスをもらえるので、論文答案を提出すればするほど「本番で勝てる論文の書き方」が身につきます。

澤田 講義の音声をダウンロードできる「音声DLフォロー」をよく利用しました。通学の満員電車の中でも、テキストを広げたりスマートフォンを出したりすることなく耳だけで勉強できるので便利でした。また、模擬面接をどこの校舎でも受けられるのはよかったです。直前期になると混んでしまって予約がとりづらくなりますが、トータル7回は受けられたと思います。普段は大宮校と新宿校をメインで使って、立川校にも足を運びました。最初の模擬面接は特に記憶に残っており、厳しい指導に打ちのめされましたが、それをきっかけに、本腰を入れて自己分析をすることができました。各自治体で教鞭を執った先生方がTACに在籍されているので、試験本番はもちろん、これからの教員生活にも役立つアドバイスをもらえるのがありがたいです。

範囲の広い教職教養は、TACの講義でポイントを押さえる

──勉強を進める中で、苦労したことや悩んだことを教えてください。

永井 苦手科目の克服に時間がかかったときは自分のことを不甲斐ないと思いました。しかし「絶対に一発で教員採用試験に合格する」と決めていたので、勉強自体を辛いと感じることはほとんどありませんでした。

渡辺 栄養教諭は募集人数が少なく倍率が高かったので「本当に合格することができるんだろうか」とはずっと不安に思っていました。でも絶対に栄養教諭になりたかったので、もし今回合格しなければ、就職浪人をして再チャレンジするつもりでした。

澤田 高校では日本史を履修していなかったので、一から勉強しなければいけなかったのに苦労しました。高校時代の友人らに頼み、教科書や資料集などをかき集めて勉強しました。教職教養も範囲が広すぎてどこからどう手をつければいいかわからなかったのですが、TACに通うことで効率よく勉強できました。また、大学4年生の6月頃は、就職活動をしていた大学の友人たちに民間企業の内定が出る時期なので、自分がまだ勉強をしていることに焦りを感じました。

中島 日中は働いているので、勉強時間を確保することに最も苦労しました。加えて、今回は第一子が産まれてから初めての受験で、時間のとれなさが例年の比ではありませんでした。自宅では落ち着いて勉強できないので、30分でも1時間でもTACの自習室やファストフード店に寄って勉強するなど、隙間時間を徹底的に活用しました。「今この時間しか勉強することができない」と思うと、緊迫感で集中することができた気がします。

──大学4年生の5~7月には教育実習があります。1次試験を7月に控えている中、学習はどのように進めていましたか。また、実習で印象深かったエピソードもあれば教えてください。

渡辺 栄養教諭と家庭科教諭の免許を同時に取得する予定だったので、教育実習期間が長くなることは早い段階から覚悟していました。そこで、TACに申し込んだ大学3年生の5月の時点で、教員採用試験までの勉強計画を立てておきました。実習は6月から7月第1週までかかり、実習期間中に1次試験を受けた自治体もあったのですが、なんとか乗り切ることができました。実習期間中は寝る前の1時間と土日のみ、苦手分野の見直しを行いました。実習が始まる前に問題集を何回も解いておき、間違った回数の多い問題から解きなおして自分のものにしていきました。

永井 採用試験に向けての勉強は教育実習が始まるまでに終わらせておき、実習中は生徒のためだけに100%時間を使いました。1ヵ月間まったく勉強しないことへの不安は少しありましたが、「直前に詰め込んだ分、頭の休憩だ」と割り切りました。実習終了後は、また1ヵ月くらいかけて内容を思い出していきました。

澤田 ゼミでの活動も忙しかったので、卒業論文の準備とTACの教材は、大学4年生の5月にはひと通り終わらせておきました。さらに、教育実習で行う授業の範囲を実習先の高校に問い合わせて確認してから、自分が高校時代に使っていた教材を開いて授業の練習を事前にしておきました。できることはすべてやっていったつもりでしたが、それでも失敗や学びがたくさんあり、充実した時間だったと思います。

中島 教育実習は今から7~8年前に高校へ行ったのですが、指導案を書くことに追われていました。柔道、ダンス、バレーボール、バスケットボールの4種目の指導案を、すべて授業の3日前に提出、さらに書き直しもあったので、人生で最も睡眠時間を削った日々でした。それまでは、授業ではとにかく生徒を楽しく活動させればよいと思っていて、こんなに細かく指導案を書く必要があるのか少し疑問でした。しかし実際に授業をしてみると、時間配分通りに進めることが難しく、生徒が集合する位置、どんな隊形を組ませるか、目線はどこに集めるかなど、一つひとつを決めておかなければクラス全体を動かすことはできないということがわかりました。事前に準備をすればするだけ授業がスムーズに進むことを実感し、指導案づくりのコツをつかむことができました。

出題パターンや傾向が変わっても、落ち着いて試験を受けられた

──教員採用試験を受けてみて、いかがでしたか。1次試験の感想から教えてください。

渡辺 最も早い日程の面接で、地域の特産品を使った食育の提案をするという課題があったのですが、事前のリサーチが足りずにうまく答えることができませんでした。第一志望ではなかったのですが、自分の認識の甘さを反省して本命の前に危機感を持つことができました。本命の茨城県の1次試験では、TACで勉強を十分できたという自負があったので平常心で受けることができたと思います。

永井 神奈川県の過去の試験問題を5年分解いて分析し、70%以上得点できれば1次試験は通過できるだろうと想定して臨みました。ところが、自己採点では70%いくかいかないか。落ちているかもしれない、と思いましたが、今回は試験の難易度が上がって合格最低点も低くなっており、結果的には68%の得点で合格することができました。

澤田 埼玉県は一般教養と教職教養の問題形式がこれまでとは変わり、選択式から条文穴埋め方式になっていました。ですがTACで充分な勉強をしていたので、動じることなく落ち着いて試験を受けることができました。

中島 東京都は教職教養が過去に受けた試験より難しく感じ、専門科目も出題傾向が変わっていましたが、TACで学んだ知識を使って対応することができたのでよかったです。

──それでは、2次試験はどうでしたか。

渡辺 論文は、TACで何度も添削してもらったおかげで時間内に規定の文字数通りに書き上げることができました。また、集団討論では既卒の積極的な受験生が多かったのですが「私もその意見に賛成です」と前の方の内容を支持しつつ、自分なりの要素を加えるようにして乗り切りました。このテクニックも、TACで教わっていたので助かりました。

永井 渡辺さんと同じように、集団討論では相手の意見を尊重しつつ前向きな議論に持っていくように心がけました。高校時代の恩師やTACの先生方にいただいたアドバイスが役立ちました。また、模擬授業は教育実習先の先生に事前にチェックしていただき、自分のアピールポイントを短時間で紹介できるよう組み立てたもので臨みました。

澤田 2次試験では、最初の休憩時間に同じグループの他の受験生の方が気さくに話しかけてくださったおかげで、メンバー同士の挨拶を交わすことができ、打ち解けた雰囲気で集団面接や討論に取り組むことができました。ただ次の休憩時間では私語が禁止でしたので、声掛けのタイミングは重要ですね。

中島 私の場合、2次試験よりもTACの集団討論練習のほうが緊張しました。最初は他の受講生の堂々とした態度や理路整然とした発言に圧倒され、何も発言できなかったくらいです。練習を重ねるごとに、他の方のうまい言い回しをストックできたので、本番でも活用することができました。東京都の試験は最初から私語が禁止で、張り詰めた空気で集団討論が始まったのですが、他の方に先駆けて発言をすることができました。個人面接も、TACの模擬面接で何度も指摘された目線や細かい所作に気をつけ、自信を持って面接官と話すことができたと思います。

──受験期間中はどのようにモチベーションを維持していましたか。

中島 長年、妻に合格を待ってもらっていたので、今回こそはと思いました。また、TACの受講料も「これだけのお金があれば、子どもにいろいろなことをしてやれるのに」と思うと、絶対に無駄にはできませんでした。

澤田 朝から大学の授業を受け、夜遅くまで図書館で勉強する毎日が続くとさすがに気が滅入ってきます。そこで「教員になっても生活サイクルはおそらく同じ。今乗り切ることができれば大丈夫だ」と前向きに考えるようにしていました。また、昼食は必ずゼミの仲間ととり、実習中に知り合った教員採用試験の受験仲間と励まし合ってモチベーションを上げていました。

永井 特に休憩時間や休息日は決めず、勉強に行き詰まったら思い切って机から離れるようにしていました。1時間寝る、ゲームをする、漫画を読む、1日友達とどこかに出かけるなど、その時やりたいことをやって気分転換し、意欲を取り戻していました。

渡辺 サッカー観戦でモチベーションを維持していました。私は地元チーム・鹿島アントラーズの大ファンなのですが、受験勉強中も週1回はスタジアムに通っていました。車での移動と観戦で1日潰れてしまうのですが、言い換えれば休息日がとれてよかったです。

──教員採用試験を受けるにあたって、「やっていてよかった」「やっておけばよかった」と思うことはありますか。

渡辺 学校が大好きなので小学校のインターンシップに参加、地元を盛り上げたかったので観光大使に挑戦、と興味のあることにチャレンジしておいてよかったです。志願書や面接で、自分の興味関心を伝える例として紹介することができました。また、時間のある大学時代に、家庭科教諭と栄養士の資格と運転免許も取得できてよかったです。

中島 もっと早くTACで受講しておけばよかったです。面接に失敗して不合格が続いていましたが、自分ではどう改善すればいいかわかっていませんでした。TACの模擬面接で動揺を顔に出さないトレーニングができたので、これまでとは段違いに落ち着いて面接を受けることができたと思います。内容に関しても、現場経験が長いからこそひとつの質問に対して複数の角度から回答する必要がある、とアドバイスいただき、知恵を絞って対策することができました。

永井 仲間との勉強会はやっておいてよかったことのひとつです。大学の教職課程仲間はたまたま全員バラバラの自治体を志望していたので、それぞれが自分の志望先の問題を出し、答えを解説する、ということをよくやっていました。人に教えることで、自分の理解がより深まることを実感しました。

澤田 教員採用試験を受けてみて思ったのは、どんな経験も教員になるためには無駄にならないということです。例えば、私は大学のゼミで人的資源管理について研究していたのですが、企業の人事部が取り扱うテーマに関連しているので、生徒の進路指導をする際に役立つはずです。教職課程に直接関係がなくても、全力で取り組んでよかったと思います。残念に思っているのは、大学1、2年生の頃に漫然と大学の授業を受けてしまったことです。できることならば先にTACで受講を始めて、教員採用試験の突破や学校現場ではどのような知識が必要なのかを確認してから、すべての授業に目的意識を持って向き合いたかったです。

子どもたちの心身の成長に、深く関わることのできる仕事

──これから、どのような教員として活躍していきたいですか。

渡辺 4月から、茨城県の特別支援学校を担当することになりました。ひとりで給食を食べるのが難しい子やアレルギーを抱えている子も多くいます。まずは、全員に安全に給食を提供するために力を尽くしたいです。その上で、食の楽しさ、大切さを伝えていけたらと思っています。

永井 神奈川県のクリエイティブスクールに赴任が決まっています。クリエイティブスクールとは、不登校や学力不振などで持っている力を発揮できなかった生徒に対し、きめ細やかな指導を行う公立高校です。生徒の不安や悩みがどこにあるのかを把握し、後ろからそっと支える存在になれたらと思います。

中島 東京都の中学生の体力や運動能力を向上させていきたいです。体力は、人間のあらゆる活動のベースになるもの。体力をつけることで、前向きに物事に取り組む姿勢やあきらめない気持ちも育っていくことを教えていきたいです。まずは、保健体育の授業で体を動かすことの楽しさを知ってもらうことから始めたいです。

澤田 埼玉県の高校で地理歴史を担当する予定です。受験勉強という枠を越え、人として生きていく上でも必要な知識を伝えていきたいです。また、いつか母校に戻って教えられる日を楽しみに、教員として成長していきたいです。

──最後に、教員をめざしている方々にメッセージをお願いします。

渡辺 教員は、子どもたちの心身の成長に深く関わることのできる素晴らしい仕事だと思います。体調管理に気をつけ、最後にはいい結果をつかんでほしいです。

澤田 狭き門ではありますが、計画を立てて勉強すれば合格することができるはずです。教員になるためには大学生活のすべてが役に立つと思います。日々の大学の授業も楽しんでみてください。

永井 自分の設定したゴールに向かって、よく学びよく遊びながら合格にたどり着いてください。

中島 全国的に倍率が下がっている今は合格へのハードルも低く、チャンスだと思います。数年後はどうなるがわからないので、このチャンスを逃さないでください。

──皆さんの今後のご活躍を楽しみにしています。本日はありがとうございました。

[TACNEWS 2019年7月号|特集]