特集 平成30年度不動産鑑定士試験
最年少合格者にインタビュー

左から
■TAC不動産鑑定士講座
髙橋 信也(たかはし しんや)先生  TAC不動産鑑定士講座 講師、不動産鑑定士、宅地建物取引士。 2003年、不動産鑑定士登録。TAC不動産鑑定士講座においては専門科目である鑑定理論の統括講師を務めている。豊富な実務経験にもとづいた講義が特徴の人気講師。

■中央大学商学部2年
小澤 堅成(おざわ けんせい)さん

1998年12月生まれ、東京都出身。中学受験で中央大学付属中学に入学、内部推薦で中央大学付属高校に入学。現在は中央大学商学部金融学科在学中。
大学1年時より不動産鑑定士試験の学習を始め、平成30年度不動産鑑定士試験において最年少合格を果たす。

「覚えて忘れる」を繰り返して知識を自分のものに。
不動産鑑定士の資格を強みに街をつくる仕事がしてみたいです。

 平成30年度不動産鑑定士試験において、TAC不動産鑑定士講座の受講生が最年少合格を勝ち取りました。中央大学商学部2年生の小澤堅成さんです。大学卒業後は資格を活かして不動産業界で活躍したいという小澤さんに、不動産鑑定士試験をめざした経緯や受験時代のエピソード、今後の進路などについて、TAC不動産鑑定士講座の髙橋信也先生とお話をうかがいました。

※当記事は2018年12月に取材しました。

中学・高校で唯一やらなかったことが「勉強」

──本日は平成30年度不動産鑑定士試験を最年少の19歳で合格した小澤堅成さんと、TAC不動産鑑定士講座の髙橋信也先生をお呼びしています。

髙橋 小澤さん、この度は本当におめでとうございます。よくがんばりましたね。

小澤 ありがとうございます。「鑑定理論」の講義では髙橋先生に大変お世話になりました。TACで勉強を始めてから、初めて質問したのが髙橋先生です。

髙橋 そうだったんですね。不動産鑑定士講座の受講生は30代以上の方が多いので、当時18歳と聞いて驚きました。でも、質問の内容はしっかりポイントを押さえていて、若いけれどずいぶんしっかりしているなと思っていましたよ。

──TACにはいつから通い始めたのでしょうか。不動産鑑定士をめざそうと思ったきっかけも教えてください。

小澤 大学1年生の5月末から通いました。私は、中央大学附属中学校に中学受験で入学し、中央大学附属高校を経て、内部進学で中央大学商学部に入っています。大学受験もなく、中学・高校の6年間は勉強をほとんどしてこなかったので、高校卒業間近に何か資格の勉強を始めようと思いました。もともとまちづくりに興味があり、不動産業界で働いてみたいと思っていたのですが、不動産に関連する資格の中で最も難しいのが不動産鑑定士(以下、鑑定士)だと知って挑戦することにしました。

髙橋 不動産関連の資格だと、宅建士(宅地建物取引士)からスタートする人が多いですが、初めから鑑定士を目標にしたのですね。

小澤 まずは宅建士と思ったのですが、勉強を始めてみると「もっと上に行きたい」と思いました。そこで、TAC渋谷校に通って本格的に鑑定士試験の勉強を始めることにしました。

髙橋 校舎に通うか、自宅で勉強するかで迷いませんでしたか。

小澤 自宅で受講すれば、好きな時に勉強ができて、負担は少ないだろうと最初は思いました。しかし、いろいろと調べるうちに、片手間の努力では合格できない試験だとわかりました。通信メディアはリアルタイムで質問ができないので、わからないことをそのままにしてしまう気がしました。そのせいで合格が遠のいては意味がないので、自宅からは遠いけれどがんばって教室に通おう、教室に行くからには質問をしよう、と決めました。

──大学入学直後に受験を決意されていますが、サークル活動などはしたいと思いませんでしたか。

小澤 中学・高校の6年間でめいっぱいやりたいことをやったので、大学に入ってから遊びたいとは特に思いませんでした。それよりも、大学時代は将来やりたい仕事につく準備期間にするつもりでした。就職活動に関しては、1年生でまだインターンも始まっていない時期でしたので、鑑定士の資格を持っていれば有利になると思いました。

髙橋 大学に入るまではどのように過ごしていたのですか。

小澤 中学から高校まで野球部に所属し、高校時代は主将を経験しました。また、高校の文化祭で映画製作をした際には監督を務め、学年最優秀賞を獲得しました。合唱コンクールでは指揮者を務め、3年連続学年優勝。3年次には全学年を含めた中での全校優勝と指揮者賞を獲得しました。友達づきあいも趣味の野球観戦も思い切り楽しみました。

──皆さんの中心となって物事を進めることが多かったんですね。その経験は受験勉強に役立ちましたか。

小澤 やるからには必ず勝ちたい、一番になりたいと思いますし、それに向けて実行するタイプだと思います。部活や学校行事で目標を決め、逆算して計画を立てていくことには慣れていたので、鑑定士試験も1年で合格すると決めて達成できました。1年目のTACの受講料は親が払ってくれましたが、2年目以降は自分で払うことになっていたので、それを避けたいというのもありました(笑)。

鑑定士試験の勉強一色だった受験生時代

──大学生活と受験勉強はどのように両立されていましたか。平均的な1日のスケジュールを教えてください。

小澤 曜日によって異なりますが、大学では1日3時間~4.5時間ほど授業がありました。自宅から大学までは電車で1時間半かかるので、電車の中でも鑑定士試験の勉強をするように心がけていました。行きの電車の中では前日に覚えた鑑定評価基準を思い出すなど、暗記ものをやっていました。また、大学で授業を受けている時間以外は大学内の図書館で勉強をしていました。TACで講義のない日は、夜まで大学の図書館またはTACの自習室で勉強していました。講義のある日は、教室で好きな席が確保できるように開始1時間前には校舎へ向かっていました。一番前だとチョークの粉が飛んでくるので、いつも教卓前の2列目の席で受講していましたね。

髙橋 それでいつもあの席だったのですね(笑)。そういえば小澤さんは、特に受講仲間は作らずにいつも1人で黙々と勉強をしていた印象があります。

小澤 勉強に100%エネルギーを注ぎ、自分のペースで食事や休憩を取りたかったので、1人で行動するようにしていました。とはいえまったく誰とも会話しなかったわけではありません。大学には附属高校からの友人が多いので、すれ違った時に立ち話で10~20分くらい話すのがリフレッシュになりましたね。

髙橋 鑑定士試験の勉強を中心に生活を組み立てていたのですね。大学生活と鑑定士試験の勉強とでバッティングして困ったことはありましたか。

小澤 大学の勉強は単位を取るために必要な分だけに留め、その他の時間はほぼ受験勉強に費やすことにしていました。ただ、TACの全国公開模試第2回の会計学と大学の中間試験が同じ日だったため、模試の受験ができずに順位がわからなかったことがありました。第1回の模試はトータルで40位くらいだったと思います。

髙橋 TACでは多くの講師が全国公開模試で50位以内に入ることを目標にするように話をしているので、受験初年度で40位は、ポイントを押さえて勉強していた証拠ですね。

鑑定理論を得意科目にして苦手科目をカバー

──科目ごとのおすすめの勉強法や、受験勉強を通して心がけてきたことがあれば教えてください。

小澤 鑑定士試験で最も重要な科目が鑑定理論です。鑑定理論は論文と演習の両方があるので、得意科目にしようと思っていました。髙橋先生の鑑定理論は、難しい部分も必ず理由づけて話してもらえるので、プロセスから頭に入ってきて分かりやすかったです。

髙橋 ありがとうございます。鑑定理論はどうやって勉強していましたか。全体のうちどれくらいのボリュームで勉強時間を取っていたのかも知りたいです。

小澤 不動産鑑定評価基準(以下、基準)を理解しないことには何もできませんので、「食事・睡眠・基準」と、基準の暗記を生活の一部にしていました。勉強の割合は、最初のうちは7~8割が鑑定理論で、慣れてきたら半分くらいにしていました。

髙橋 他の科目はどのように勉強していたかもお聞きしたいですね。苦手科目はありましたか。

小澤 行政法規が苦手でした。細かすぎる上に理論立っていなくて、定められているものをそのまま覚えないといけないからです。行政法規は短答式試験のみなので、過去問を繰り返して必要な部分を最低限押さえておけばいいと思いました。短答式試験の本試験では鑑定理論が9割取れていたのでその分でカバーできました。

髙橋 経済学はどうでしたか。教養科目の中で特に苦手意識を感じる受験生が多い科目のようですが。

小澤 試験範囲が広すぎるので最初は「全部やらないといけないのかな?」と思いました。ところが、答練(答案練習)の結果を見ると自分の点数が悪い回は、ほとんどの人の点数が悪いことに気づいたんです。問題によって「できる・できない」がハッキリ分かれる科目なので、TACの答練で出題されなかった問題はきっとみんなできないと割り切って答練をしっかり見直しました。本試験でも、見たことのないような問題が出たのですが、結局みんなできていなかったので、無理にやらなくて正解だったと思います。

髙橋 会計学は数年前から計算問題が出るようになりました。問題ありませんでしたか。

小澤 あまりよくわからなかったので、会計原則を覚えて基本的な手続きの流れをイメージするようにしていました。最初は手応えがなかったのですが、勉強していくうちに理解が進んでいて、気づいたら計算ができるようになっていました。

髙橋 民法はどうでしょう。

小澤 民法は、基本テキストの論証例と事例をコピーしてノートに貼り、事例分析と共にまとめた専用ノートを1冊作りました。これでストーリーとして覚えられたので、効率がよかったと思います。どの科目もそうなのですが、TACのカリキュラム通りにやるのが近道です。きついなと思ったけど、言われたことをやっておけばTACなら合格できると思います。

「覚えて忘れる」をひたすら繰り返す

──勉強をするにあたって大切にしていたことは何ですか。

小澤 「何度も繰り返す」ということです。覚えたことを忘れて、また覚えて忘れて……と繰り返していくうちに、いつの間にか覚えています。もっと効率よく記憶する方法はないか調べたこともありますが、やっぱりこれしかない。遠回りに感じるけれど、一番の近道ですね。

髙橋 繰り返すというのは、本当に大事なことです。厳しい言い方ですが、受験をする以上は知識がないとどうにもなりません。だから覚えるしかないし、そのためには繰り返すしかない。最初は絶対に忘れてしまうけれど、諦めずに続けていけばきちんと定着していきます。

小澤 私は今、試験に合格するために必要となる部分の基準については何も見なくても書けます。自分で基本テキストを作れるんじゃないかと思うくらいです。中学受験以降、机に向かう経験がほとんどなかったので、勉強の方法を見つけることには苦労しました。インターネットで効率のよい勉強法を検索して試してみても、自分に合うとは限らなかったですし。

──暗記に苦労している受講生の方は多いと思います。髙橋先生はどんな方法をおすすめされていますか。

髙橋 渋谷校の講義でもこの話をしたのですが、まずは「絶対に覚えるぞ」という気合いが必要です(笑)。ぼんやり見ていても覚えられません。その上での方法としては、黙読する・音読する・聞く・書く、の4つがあります。一番おすすめなのは音読、つまり声に出して読んでいくことですね。その際、「概念だけざっくりと言えるようになる」というゴール設定をしておくことが重要です。量が多いので、細かい「てにをは」部分を気にしてしまうと先に進めなくなってしまうからです。先へ先へと進んで、戻ると最初に覚えたことは忘れていますが気にせず繰り返す。これで最終的に記憶が定着します。基準全体をある程度押さえるまで、早い人では数ヵ月から半年、長ければ1年と、人によってかかる時間はまちまちですが、この努力は人を裏切りません。

小澤 その例で言うと、私は音読タイプでした。TAC渋谷校の裏に公園があるので、講義の前はそこへ行き、1人でブツブツと口に出していました。周りの人たちはびっくりしていたと思います(笑)。ただ、音読も直前期にやると時間がかかってしまいます。だいぶ頭に定着してきたなと思った時点で黙読に切り替えていました。頭の中で覚えたものを再生することもやっていましたね。書いて覚えようとした時期もあったのですが、量が多くて諦めました。1回書けば確実に覚えられるというのならいいけれど、いずれ忘れてしまうのであれば書く時間がもったいないですよね。

髙橋 論文式試験では時間内に答案を書ききらないといけないので、そのトレーニングとして書くことは大事です。でも、暗記のためにすべて書くのは量が多いので効率が悪いですね。

──小澤さんは勉強をする上で困ったことはありませんでしたか。

小澤 インプット量が少ないうちから論文を書かなければならないのが精神的に辛かったです。講義でもアウトプットしながら覚えるように言われていて、そうしなければいけないというのはわかっていました。でも、いざ書いてみると、あまりにもできないのでやっていて悲しくて。それで、3月くらいまで問題演習は答練の見直し程度にしてひたすら基準のインプットを繰り返し、それからアウトプットの量を増やすようにしていました。

髙橋 初学者の方はどうしてもインプットにとらわれて、アウトプットに重点を置く時期を逃してしまいがちです。しかし、短答式試験はインプットがあれば受かるけれども、論文式試験は書く試験なので、アウトプットの量が大切です。小澤さんは3月からギアを入れ替え、アウトプットを重視して勉強したことがよかったと思います。

テキストを見ながらでも答練に参加

──アウトプットの量を増やすために重要なことは何でしょうか。

髙橋 答練が大切ですよね。小澤さんは、TACの答練は全部出席しましたか。

小澤 はい。

髙橋 素晴らしい!ぜひここは太字にしてほしいです(笑)。受講生の方の中には、「自分の勉強が追いついてないから答練は欠席します」という人がいますが、それは避けてほしいこと。答練の場で、テキストを見ながらでもいいから、頭を使って考えて書く努力や苦労を味わってほしいです。力を伸ばすために絶対に必要な経験です。

小澤 10月に始まる応用答練からは、再受験をする上級コースの方々と一緒に学習を進めることになるのですが、答練の結果が発表されたときは点数の差にショックを受けました。自分はテキストを見ながら書いてもこの点数なのに、受験経験者の人たちは何も見ないで書いて高得点を取っていましたから。でも、差があるのは仕方のないこと。ネガティブに捉えるのではなく、「この差を埋めてやる!」と発奮材料にしました。答練は、専門家の先生に自分の現状を見てもらえるまたとない機会です。自分ではわかっていると思い込んでいても実はできていない部分を指摘してもらえるのは、本当にありがたいこと。受けないのはもったいないです。

髙橋 TAC渋谷校は受験生が多いので、たくさんの答案が並ぶ中で自分の立ち位置がわかりやすいと思います。また、鑑定理論の講義では、常に論文式試験を意識し、基準を「体系的」かつ「具体的に」理解するよう話をしていますが、受験生自らが実際に論文問題を解くことで、「何をどう書くか」のコツがつかめてきます。だから、それを定着させて本番で合格答案を書くためにも、答練から逃げちゃダメなんです。逃げた時点で合格が遠のくと言っても過言ではありません。

小澤 論文は「基準のどのパーツをつかって構成するか」を考えるゲームだと思って取り組んでいました。答練は、自分の知識が抜けているところや弱いところを「書いて」見つける場です。書くスピードを意識する場でもありました。

髙橋 「論文式試験」という言葉の響きから、その場でいろいろ理論を練って書かなければいけないのでは、と躊躇している人も多いと思います。でもイメージは、小澤さんのおっしゃる通りパズルです。頭の中に基礎となる理論と知識があって、それらをどう組み合わせて、どんなバランスで解答を作っていくかにかかっているんですよね。

──受験勉強の間、どのようにモチベーションを維持していましたか。

小澤 合格すれば今年の試験で最年少合格記録となることは間違いないとわかっていたので、目標のひとつにしていました。また、親友が弁護士をめざして勉強しており、がんばろうと言い合えたことはモチベーションを維持できた大きな要因です。それから、「将来なりたい自分」のイメージをたくさん持つようにしていました。「鑑定士資格を武器に憧れの会社に内定した自分」「まちづくりに関わっている自分」「好きな車に乗っている自分」という感じです。

髙橋 鑑定士試験に大学2年生のうちに合格していれば、就職活動ですぐアピールできるので大きな強みになりますね。「現在めざしています」というのと「すでに合格しています」というのでは、採用する側の反応がまったく違うはずです。信託銀行や大手デベロッパーを受けるなら特に有利だと思います。それから、モチベーションを維持するために合格後のイメージを持つことは大切です。鑑定士はあまりメディアに出てこない職業なので、勉強を始めたのはいいけれど合格したあとどうしたらいいかわからないという人もいます。そういう場合は、息抜きがてら業界研究をしてみてほしいです。インターネットで大手不動産鑑定事務所や日本不動産鑑定士協会連合会のホームページを開いて、鑑定士は今どんなことをやっているのか見てみるといいですね。

──勉強時間を作るために工夫したことや、息抜き方法も教えてください。

小澤 SNSは、見ていると気づいたら時間が過ぎていることが多いので、アプリごと消していました。また私は、年間30試合ほど野球を現地観戦していたのですが、野球を観に行きたくなる気持ちを抑えるために日々の試合結果も見ないようにしていました。息抜き方法ですが、家に帰ったら勉強のことは考えないようにし、毎日1時間、大好きなテレビドラマの『相棒』を観ながら夕食をとっていました。また、司法試験の勉強をしている親友と数ヵ月に一度、食事や日帰りの温泉旅行に行ったりしたこともいい気分転換になりました。

実務修習でも最年少合格をめざしたい

──合格してからは何をしていますか。

小澤 TOEIC® L&R TESTのスコア700~800を狙って英語の勉強に力を入れています。また、受験勉強中は休んでいたブライダル会場でのアルバイトに復帰しました。時給の良さにひかれて始めたのですが、接客には「正解」というものがないのがおもしろいなと思っています。その場の状況やお客様のニーズによってサービスを組み立てていくのが楽しいですね。

──大学生のうちにチャレンジしたいことはありますか。

小澤 実務修習を大学生のうちに経験しておきたいです。費用が高いので、アルバイトもがんばります。実務修習修了考査の最年少合格者が23歳。私が来年修了考査を合格することができれば21歳か22歳で実務修習の最年少合格記録を更新できそうなので、めざしたいですね。

──将来の夢を教えてください。

小澤 大手不動産会社に就職して、都市開発やまちづくりに関わりたいです。私は、「ここにこんな施設を作ったらおもしろそうだな」と想像するのが好きです。例えば、御茶ノ水駅は大学、企業、住宅地があり、利用する人も多いですが、これといった商業施設はありません。「ビルを建てたら便利かもしれない。どんなテナントが入ったら盛り上がるかな」など、考え出すと止まりません。人がもっと幸せに暮らせるまちづくりを仕事にできたらと思っています。

髙橋 不動産鑑定士の資格や知識には、多様な使い道があります。不動産業界はもちろんのこと、金融・コンサルティングや、官公庁など様々なフィールドで活躍している先輩がたくさんいます。小澤さんには資格をひとつの素養として、大手デベロッパーでまちづくりを経験してほしいです。仕事で知識が役立った時に、「鑑定士資格をとってよかった」と思ってもらえればうれしいですね。

──最後に、不動産鑑定士試験の勉強をしている方たちに向けて、メッセージをお願いします。

小澤 合格の喜びで苦しさが帳消しになりましたが、受験生活を振り返ると精神的に辛い時期がありました。昼食のあとに眠くなるのが嫌で食事を抜いていたら、食べられなくなって体調を崩したこともあります。健康あっての勉強なので、睡眠と食事は絶対に削らないでください。「健康なしには合格なし」です。

髙橋 小澤さんが感じた辛さは、合格した人が等しく感じる辛さだと思います。決して簡単な試験ではないので、直前期は本当にきつかったと思います。乗り越えてこられたことに拍手を送りたいですし、現在勉強中のみなさんもぜひ後に続いてほしいです。

小澤 もうひとつ付け加えるなら、「考えながら勉強すること」が大切だと思いました。大リーグ・カブスに所属するダルビッシュ有投手の言葉に「練習は嘘をつかないって言葉があるけど、頭を使って練習しないと普通に嘘つくよ」というのがあるのですが、その通りだと思います。インプットだけでもアウトプットだけでも合格できないし、その人に合った勉強法はその人にしかわかりません。インプットからアウトプットへのシフトチェンジの時期、自分の現在の到達度、本試験までの残り時間など、人によって違う状況を踏まえつつ、「自分は今、何をすべきなのか」を考えながら勉強を進めていくのがいいと思います。

──本日は貴重なお話をありがとうございました。

[TACNEWS 2019年3月号|特集]