日常生活にも役立つ「数字力」を鍛える10分間トレーニング ティーチャー鈴木の数的センスアップ塾 Vol.6

Point-考え方-

 【ヒント】で紹介した順番で、それぞれのチームについて、勝ち点の期待値を計算していきます。今回のケースは、対戦相手・天気・試合結果という複数の要素が絡み、状況がやや複雑ですので、まずは期待値を求めるのに必要な、「起こりうるすべての状況」(例:「晴れ」の日に「勝つ」、「雨」の日に「引き分ける」など)を洗い出していきましょう。ただし、「負け」となる場合は勝ち点がゼロ、つまり期待値もゼロとなるため、今回は省略して考えます。

 2021年10月号(Vol.3)のおさらいですが、モレやダブりなく状況を洗い出すためには、樹形図を用いるのが効果的でしたね。Aチームを例に取って、書き上げてみましょう。【図1】

 さて、準備が整ったところで、具体的な計算に入っていきます。
 まず、それぞれの状況(①~⑧)が起こりうる確率を計算します。例えば、Bチームとの対戦で「晴れ」の場合に「勝つ」確率は、「晴れ」の確率80%と「晴れのときに勝つ」確率40%をかけ合わせれば算出できます。よって、①では0.8×0.4=0.32ですね。同様に②~⑧の場合でも計算していきましょう。

 次に、先ほど計算したこれらの確率に勝ち点(「勝ち」の場合は3、「引き分け」の場合は1)を掛け合わせることで、各状況での期待値を計算します。例えば①の場合は、0.32×3点=0.96ですね。同様に②~⑧も計算してみてください。

 最後に、各状況での期待値を合算します。
 計算結果は下記の通りです。【図2】

 同様の手順で、Bチーム、Cチームでも期待値を求めてみてください。
 算出した3チームの期待値(Aチーム:2.7、Bチーム:2.52、Cチーム:2.8)を比べると、もっとも期待値が大きいCチームが優勝すると予測できますね!

Answer


 いかがでしたか?今回は2021年10月号(Vol.3)でも取り上げた確率をベースにした「期待値」をテーマに、サッカーの優勝チームを予想する問題を出題してみました。期待値の考え方はビジネスでも応用でき、起こりうる場合のそれぞれの確率と、それぞれの結果になったときに得られる数値(売上、利益、損失など)を見積もることで、ある程度のシミュレーションをしておくことができます。皆さんも、ご自身の業務の中で、ぜひ「期待値」的なアプローチをしてみてはいかがでしょうか?

期待値をマスターしてワンランク上のビジネスパーソンをめざしましょう!
次回は6月号(5/2発刊)掲載予定です。お楽しみに!

[『TACNEWS』 2022年4月号|連載|ティーチャー鈴木の数的センスアップ塾]  


Profile

筆者 鈴木 伸介(すずき しんすけ)

TAC統計検定®・ビジネス数学検定・中小企業診断士講座講師
ハーモニービジョン株式会社代表取締役

各種数学セミナーで講師活動を行いながら、社会人向け数学教室「おとなのENJOY!数学クラブ」「おとな数学オンライン」を主宰、ビジネスパーソンの数学リテラシー向上に尽力している。

保有資格:中小企業診断士・統計調査士・ビジネス数学検定1級AAA
著 書 :『もう一度解いてみる入試数学』(すばる舎)