日常生活にも役立つ「数字力」を鍛える10分間トレーニング ティーチャー鈴木の数的センスアップ塾 Vol.3

Point-考え方-

 この問題でポーカーを連想した人も多いと思います。実際のポーカーではカードが5枚配られて、手配のカードのうち2枚だけが同じ数字(片方にジョーカーを含んでもよい)の場合に「ワンペア」という役になるわけですが、今回はそれを簡素化した設定になっています。

 今や「確率」は数学の分野として確立されていますが、歴史的に「確率」が数学として扱われたのは17世紀、かの有名なパスカルとフェルマーという偉大な数学者が手紙の中で確率について論じ合ったというのが起源だと言われています(諸説あります)。
 確率はそのあと統計学に発展し、データ分析を行う際の礎となっています。現代に生きるビジネスパーソンにとって、統計やその源泉となる確率について知っておくのは重要と言えるでしょう。
 さて、本題に戻りましょう。
【ヒント①】で書いた通り、確率は、分母に「全体の出方が何通りあるか」、分子に「条件を満たす場合は何通りあるか」を当てはめることで計算できます。

  では最初に確率の分母を考えてみましょう。つまり、「53枚のトランプから2枚引く」場合のトランプの出方はぜんぶで何通りあるでしょうか。(【図1】を見ながら考えてみましょう!)

 まずは順番を考慮して、「1枚引く→続いてもう1枚(2枚目)を引く」ことを想定してみます。この場合、1枚目のトランプの出方が53通りあって、そのそれぞれについて、2枚目のトランプの出方が52通りあることになります(すでに1枚引いていますから、2枚目の引き方は残りのトランプから選ぶので52通りですね)。
 つまり、順番を考慮して1枚ずつ2枚引く場合のトランプの引き方は、53×52=2756通りあることになります。

 ところが、今は「同時に2枚引く」ので、順番は考慮しなくてOK。ですので、例えば「♥の3」→「♠の10」と、「♠の10」→「♥の3」は、「同時に2枚引く」とする場合は同じ引き方だと判別することになるわけです。このように、順番を考慮した場合の「先か後か」という2通りを、「同時に2枚引く」場合にはすべて1通りとして数えることになります。
 どのペアにもこのことが言えますので、先で出した2756通りを2で割ればいいことになりますね。というわけで、「53枚の中から2枚引く引き方」は、2756÷2=1378通り。これで確率の分母が計算できました!

 では続いて確率の分子、つまり「勝ち」となる場合は何通りあるかを考えます。(【図2】を見ながら考えてみましょう!)
 これは【ヒント②】で書いたとおり、2枚の中にジョーカーが入っているか入っていないか、それぞれの場合について分けて考えて、最後にそれらを足す、という方針でいきましょう。

 まずは、「2枚のうちの1枚がジョーカーだった場合」を考えましょう。今回のルールでは、2枚のうち1枚がジョーカーであれば「勝ち」になるのでしたね。そして1枚がジョーカーの場合、もう1枚のトランプの出方は何通りあるかというと、これは残りの52枚のうちのどれが出てもいいので52通りとわかります!

 では次に「2枚のトランプが、ジョーカーを含まず同じ数字になる場合」、これが何通りあるかを考えます。
 ジョーカーを除いたトランプは、数字とマークというふたつの切り口で考えていきましょう。まずは、どの数字でそろうかですが、これはトランプの数字は全部で13(A、2〜10、J、Q、K)あるので、そのまま13通りですね。
 次に、その数字がどのマークでそろうのかを考えましょう。4種類(♥、♦、♠、♣)のうち、どの2つを選ぶかという組み合わせが何通りあるかを考えればいいわけです。今回は4種類から2枚引くだけなので、すべての組み合わせを書き出すのはさほど難しくありません。♥♦、♥♠、♥♣、♦♠、♦♣、♠♣の全部で6通りあることがわかります。
 以上より、そろう数字は13通り、マークの組み合わせは6通りあるので、「ジョーカー以外の52枚から引かれた2枚のトランプが同じ数字になる」場合は、全部で13×6=78通りというわけです!

 これで「勝ち」となる組み合わせをもれなく調べることができました!ジョーカーを含む場合が52通り、ジョーカーを含まない場合が78通りなので、これらを足した130通りが分子です。
 以上より、求める確率は、130/1378=5/53とわかります!

Answer

 おなじみのトランプゲームを題材に、確率の考え方を紹介しました。日常生活では%のほうが馴染みがあると思います。5/53を%で表すと約9.4%。感覚よりずいぶん低く感じるかもしれませんね。今回のルールでは、「ワンペア」は結構難しいようです。ちなみに実際5/53のポーカーで「ワンペア」となる確率は約42%となります。興味のある方は、ぜひ計算にチャレンジしてみてください!

身近なカードゲームが題材だと、数学も楽しめるかもしれませんね!
次回は12月号(11/1発刊)予定です。お楽しみに!

[『TACNEWS』 2021年10月号|連載|ティーチャー鈴木の数的センスアップ塾]  


Profile

筆者 鈴木 伸介(すずき しんすけ)

TAC統計検定®・ビジネス数学検定 ・中小企業診断士講座講師
ハーモニービジョン株式会社代表取締役

各種数学セミナーで講師活動を行いながら、社会人向け数学教室「おとなのENJOY!数学クラブ」「おとな数学オンライン」を主宰、ビジネスパーソンの数学リテラシー向上に尽力している。

保有資格:中小企業診断士・統計調査士・ ビジネス数学検定1級AAA
著 書 : 『もう一度解いてみる入試数学』(すばる舎)