読めばモチベーションUP?ビジネスや会計の気になる「あの本」を紹介 萌さんとカッキーの読書室 #16

仕事と資格マガジン『TACNEWS』から生まれた会計小説『女子大生会計士の事件簿』のメインキャラクター、公認会計士・藤原萌実(萌さん)と新人スタッフ・柿本一麻(カッキー)のふたりが、気になる本について激論を交わす…?!ゆったり、まったり、時に激しい、「楽しく、ためになる読書室」です。

『売上最小化、利益最大化の法則』


『売上最小化、利益最大化の法則』

 著者  :木下 勝寿
 出版社 :ダイヤモンド社
 初版  :2021年

カッキー 萌さん聞いてください。実は友達が副業でネットショップを始めることになったんですよぉ。

萌さん 最近はBASEやSTORESといった無料のサービスを使って、誰でもネットショップが開けるようになったもんね。

カッキー ええ。彼もアパレルショップをやるらしいんですけど、会計士らしいアドバイスを求められちゃいまして……。

萌さん してあげればいいじゃないの。

カッキー でも、僕は服とかに詳しくないですし、そもそも会計士らしい助言って何でしょうか。手形取引ですか?原価計算ですか?

萌さん いやー、ないわー。そもそも手形を使っている業界は限られているし……ネット業界ではまずないわね。原価計算も、工場経営をするわけじゃないんだから、材料費の集計や労務費の配賦は意味ないし。

カッキー じゃあ、どうしたら良いんですか!

萌さん 利益を教えたら良いのよ。

カッキー 売上-費用=利益、の利益ですか?そんな話はわざわざ会計士に訊かなくても良くないですか?

萌さん 甘いわね、カッキー。ビジネスを成功させる上で欠かせない数字よ。今回紹介するこの本を読めばよくわかると思うわ。アンタが利益に対してどれだけ浅い認識だったのかを。

【目次】

第1章 売上ゼロでも生き残れる「無収入寿命」という考え方
不況とは無縁の経営を行う3つの方法
資本金1万円、PC1台でスタート
「無収入寿命0か月」と無一文からの再出発

第2章 売上OSが利益OSに変わる! 売上最小化、利益最大化の法則
売上と利益をセットで管理する思考法
売上10倍は「リスク10倍」を意味する
メルマガ発行数は3倍なのに、売上は1.3倍のワケ

第3章 会社の弱点が一発でわかる「5段階利益管理」
「隠れコスト」が見える化され、利益体質になる「5段階利益管理」
商品別に利益を確認する
利益の分類はどうするか

第4章 小さい市場で圧勝する商品戦略
ビジネスモデルを「特産品」から「健康食品」に変えた理由
「生活者の観点での品質」を評価する750項目
サブスクリプション(定期購入)を促す秘策

第5章 利益率29%を実現する販売戦略
「上限CPO」と「時系列LTV」をマネジメントする発想法
営業すればするほど顧客は増える?
最適「上限CPO」の算出法と9割の社長がハマる罠

第6章 ファンの心をつかんで離さない「演歌の戦略」
目立つプロモーションはメリットゼロ
必要な人だけに広告を届ける
「マーケティングファネル」の発想法
毎日30分、ファンにバースデーコメントを書くGLAYの戦略

第7章 未経験者でも利益を上げ続ける人材戦略
パンクで痛感したオペレーションの大切さ
優秀な人材の見極め方
「給料が1万2000円高い」より「ランチ無料」が響く人

第8章 売上1000億・利益300億円を実現する戦略
AIを活用したデジタルプロダクトマーケティング
企業の成長段階に応じた利益戦略
人生を変えた「NTTのテレホンカード」事件

(目次より一部を抜粋)

カッキー 北の達人コーポレーションという東証一部上場企業の社長さんが書いた本なんですね。

萌さん 一代で会社を大きくして、利益率はなんと29%。

カッキー ゲームで大当たりしたベンチャー企業並みの数字ですね。で、何の会社なんですか?

萌さん 健康食品や化粧品をネットで販売している会社よ。

カッキー じゃあ、ネットショップと似たような感じですね。

萌さん 北の達人は自分たちで商品も開発して消費者に直接届けるDtoC(Direct to Consumer)の会社だから少し違うかもしれないけど、考え方自体は参考になるわよ。例えば、CPOとか。

カッキー えーっと、社長とか執行責任者のことでしたっけ?

萌さん それはCEOやCOOね。CPOはCost Per Order、広告の費用対効果をはかる指標よ。たとえば、100万円の広告費で100件の新規購入があったら、「広告費100万円÷100件=CPO 1万円」、つまり、1件受注するために1万円かかる、ということ。ネット企業ではよく使われる、新規顧客獲得にかかる単価のことよ。

カッキー 萌さんが何を言いたいかわかりましたよ! つまり、広告費を増やすと同時に新規購入件数も増やしていけば、CPOの水準を維持したまま利益を増やすことができる、ってことですね。

萌さん ブッ、ブーッ! 従来の考え方だと正解だけど、今では不正解ね。その方法だと「人口上限」という壁にぶつかるわ。

カッキー 何ですか、その壁とやらは?

萌さん どんな商品も全国民が買いたいわけじゃないから、どこかのタイミングで頭打ちになるということよ。

カッキー じゃあ、どうすれば良いんですか!

萌さん 「売上はそのままで、広告費を下げて利益を10倍にする」のよ。

カッキー 誰ですか、あなたは一休さんですか。

萌さん たとえば広告費1億円をかけて、売上1.1億円、利益1千万円だったとするじゃない(図表34)。そこで、広告費を1/10の1千万円にしたらどうなる?

カッキー 売上が激減しますよね。

萌さん そこを売上が減らないように頑張るのよ。

カッキー 根性論ですか!

萌さん でも、売上が減らなければ、売上1.1億円から広告費1千万円を引いて、利益1億円になるわよ。ほらっ、利益が1千万円から1億円への10倍になった!(図表36)

カッキー みなさーん、ここに詐欺師がいますよー。

萌さん さっきからうるさいわね。ネットの世界、いや、今後の広告の世界はこの考え方が必要だってことよ。

カッキー ネットのおかげで、広告を必要な人にだけ届けられる、ということですか。みんなに届けるんじゃなく。

萌さん Google広告でもYahoo広告でも細かく広告範囲を設定することができるからね。ターゲットを絞って、そして繰り返しテストをして最適な広告費を保つのよ。そして、CPOには上限を設ける。

カッキー 広告費を使いすぎて利益を減らさないためですか。

萌さん そうよ。自信がある商品だと、人は広告をどんどんかけたくなるものだからね。

カッキー あっ、そういえば、『売上最小化、利益最大化の法則』というタイトルの意味は……。

萌さん 広告費に限らず、商品毎に利益を細かく分析して、利益が最大になるような商品だけを売っていけば儲かる、という話よ。超単純化したらね。

カッキー 単純化し過ぎな気もしますが。

萌さん 【目次】を見てもらったらわかると思うわ。いろんな手段を講じる必要があるんだけど、すべての終着点は“利益”を最大化すること。私たち会計人も“利益”を計算するだけじゃなくて、“利益”の作り方も学んでいないと、人にロクなアドバイスができないわよ。

カッキー わかりました。じゃあこれで勉強して、会計士らしいカッコいいアドバイスをします!

萌さん そうね、でも何か不安だから、この本自体も渡すのよ……。

[『TACNEWS』2021年10月号│連載│萌さんとカッキーの読書室]

著者プロフィール

山田真哉(やまだしんや)

公認会計士・税理士。TAC梅田校出身。中央青山監査法人(当時)を経て、現在、芸能文化税理士法人会長。株式会社ブシロード等の社外監査役。著書に『女子大生会計士の事件簿』シリーズ、『世界一やさしい会計の本です』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』等。

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