読めばモチベーションUP?ビジネスや会計の気になる「あの本」を紹介 萌さんとカッキーの読書室 #11

仕事と資格マガジン『TACNEWS』から生まれた会計小説『女子大生会計士の事件簿』のメインキャラクター、公認会計士・藤原萌実(萌さん)と新人スタッフ・柿本一麻(カッキー)のふたりが、気になる本について激論を交わす…?!ゆったり、まったり、時に激しい、「楽しく、ためになる読書室」です。

小飼弾の超訳「お金」理論


『小飼弾の超訳「お金」理論』

 著者  :小飼 弾
 出版社 :光文社
 初版  :2021年

萌さん 突然だけど、“お金”って何だと思う?

カッキー えっ、本当に突然ですね。そんなこと、まともに考えたことは一度もないです。

萌さん あんたねぇ、1年目とはいえ会計士試験合格者でしょう? 世間一般から見たらカッキーもお金を扱うプロなんだから、“お金”に対するスタンスというか世界観は持っておいたほうがいいわよ。

カッキー 世界観って、大げさな…。

萌さん ほら、あんたにとっての“お金”とは何かを言いなさいよ。何でも良いわ。素直に感じたことを言えばいいか。

カッキー そうですねえ…。たくさんあると嬉しいです。何でも買えますし。

萌さん はぁーーーーーーっ。

カッキー そんなに大きなため息をつかないで下さい! 萌さんが何でも良いって、言ったんじゃないですか。

萌さん だって、まさかこんな小学生みたいな回答が返ってくるとは思ってなかったのよ。

カッキー 何かすみません…。

萌さん お金に対する考え方って、そりゃ昔からたくさんあるけど、例えば「お金とは、交換機能・価値保存機能・価値尺度機能です」という教科書的な回答とか、「お金とは、人生で自由を手に入れるためのチケットです」とか、私の後輩であるからには、それくらい答えて欲しかったわ。

カッキー なるほど。そういう答えがあるんですね。

萌さん そして、今回紹介する本『小飼弾の超訳「お金」理論』では、「お金の正体とは『共同幻想』です」と言い切ってるのよ。

カッキー それはまた極論というか何というか…。

萌さん まあ、幻想といえば幻想なのよね。昔と違って今のお金には『金(ゴールド)と交換できる』といった裏付けも何もないし。

カッキー えっ、昔はゴールドと交換できたんですか!?

萌さん も~、そこから説明しないといけないの~?1971年、米ドル紙幣と金の交換が停止された「ニクソン・ショック」って習わなかった?

カッキー いや~、ちょっと僕の記憶には…。

萌さん その辺の話も書いてあるから、とりあえず、この本を読みなさい!

【目次】

PART1 バランスシートから資本主義が生まれた

「借金も財産」という驚愕の事実
借金とは「仮想記憶」
教育への投資は、国にとって旨みが大きい

PART2 会社はいったい誰のモノ?

会社とは利益を生み出すための「仕組み」
従業員ではなく、株主になるべき
油断するとすぐに「奴隷制」が顔を出す

PART3 儲からない会社はつぶそう

非効率な会社がつぶれるのはよいこと
裁量労働制は「定額働かせ放題」
政府は反営利でなければならない

PART4 税金と賃金の仕組み

アベノミクスで得をしたのは誰か?
なぜ同じ1円なのに税金が違うのか?
派遣法改正はクソだった

PART5 お金を配ろう

富の分配に失敗すれば、虐殺が起こるかもしれない
「バナナはおやつですか?」問題を解く
お金は、自然法則の上で動く幻想


ほか
(目次から主な小見出しを抜粋)

カッキー 冒頭をちょっと読みましたけど、バランスシート(賃借対照表)の話から始まるんですね。

萌さん 私たち、会計をやっている人間にとっては、馴染みの内容よね。

カッキー はい。100万円ずつ持っていたAさんとBさんの話が最高でした。AさんがBさんに100万円を貸したら、バランスシートが膨らんで、AさんとBさんを足した経済規模が200万円から300万円になるなんて、僕はちょっと感動したんですよ!

萌さん あのさあ、言葉だけじゃ何が言いたいのか、さっぱり伝わらないわ。せめて図にしなさいよ。

カッキー あっ、はい。書きます、書きます。

萌さん 会計をやっている人にしかわからない図だけど、一目瞭然よね。

カッキー これ、凄いですよね!お金の貸し借りをするだけで、経済規模がでかくなるんですよ!

萌さん まあね。銀行がお金を貸すことで社会全体の通貨量が増える「信用創造」は、要はこういうことだから。詳しく説明すると、大変なんだけど。

カッキー お金を借りるために「信用」がいるって、こういう意味だったんですね。

萌さん あと、借金を返済するのはバランスシートを小さくする行為だから、お金を借りっぱなしにするほうがお得だ、というのもこの理屈がわかっていると、スッと頭に入ってくるわね。

カッキー 返済するよりも借りっぱなしのほうが、動かせるお金の規模が大きいままでいられる、ということですよね。だから、借入金が大きい企業ってたくさんあるんですね。特に大企業なら金利も安いですし。

萌さん でね、カッキー。一番お金を借りっぱなしにしているのが政府ってワケよ。

カッキー 日本の国の借金も凄く大きいですからねえ。

萌さん ちなみに、この本の著者の小飼弾さんは、中卒から独学でカリフォルニア大学バークレー校に入って、オン・ザ・エッヂ(後のライブドア)の取締役最高技術責任者になった人なの。職業は、投資家・プログラマー・ブロガー。

カッキー つまりは少し特殊な方っていうことですね。会計をずっと勉強してきたのに、これまでこんな視点を持ったことはなかったです。

萌さん 教科書通りに会計を学んでいると、どうしても会計をある一面でしか見られなくなっちゃうからね。会計ももっと多角的に見られるようにならないとね。あっ、別にTACの授業を批判しているワケじゃないからね!

カッキー ―――逆に、そのひと言が余計ですよ。

[『TACNEWS』2021年4月号│連載│萌さんとカッキーの読書室]

著者プロフィール

山田真哉(やまだしんや)

公認会計士・税理士。TAC梅田校出身。中央青山監査法人(当時)を経て、現在、芸能文化税理士法人会長。株式会社ブシロード等の社外監査役。著書に『女子大生会計士の事件簿』シリーズ、『世界一やさしい会計の本です』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』等。

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