読めばモチベーションUP?ビジネスや会計の気になる「あの本」を紹介 萌さんとカッキーの読書室 #4

仕事と資格マガジン『TACNEWS』から生まれた会計小説『女子大生会計士の事件簿』のメインキャラクター、公認会計士・藤原萌実(萌さん)と新人スタッフ・柿本一麻(カッキー)のふたりが、気になる本について激論を交わす…?!ゆったり、まったり、時に激しい、「楽しく、ためになる読書室」です。

 『PIXAR〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』


『PIXAR〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』

 著者  :ローレンス・レビー
 出版社 :文響社
 初版  :2019年

カッキー 書評コーナー『萌さんとカッキーの読書室』の時間です。今回はどんなジャンルの話でしょう?

萌さん 今回はみんな大好き、あのCGアニメーションの映画制作会社PIXAR( ピクサー)の話よ。
カッキーは、アニメ映画とか好きなんじゃない?

カッキー そうでもないですよ。僕がピクサー作品で見たのは『トイ・ストーリー』とか『バグズ・ライフ』。あと、『モンスターズ・インク』と『ファインディング・ニモ』。そういや、『Mr.インクレディブル』や『カーズも……。

萌さん 結構、見ているじゃない。そんなカッキーでも、ピクサーの裏側でどんなお金の話があったか知らないでしょう?

カッキー 制作現場がどうやってCGを作っているのか、といった裏側は見たことがありますが、お金の話は聞いたことがないです。イメージ的には、最初からディズニーがたくさんお金をつぎ込んだイメージがありますね。そもそもピクサーはディズニーの子会社ですよね? 東京ディズニーランドにも『トイ・ストーリー』のアトラクションがありますし。

萌さん いまはディズニーの子会社よ。でもその前はピクサー単体で上場していたし、もっと前はスティーブ・ジョブズがオーナー兼CEO(最高経営責任者)の会社だったの。

カッキー スティーブ・ジョブズって、あの黒いタートルネックを着てiPhoneを持ってプレゼンをしていた人ですよね!

萌さん まあ、間違ってはないけど。Appleの創業者でCEO、iMacやiPod・iPhoneを産みだした天才よ。2011年に56歳で亡くなられたけどね。

カッキー そんな天才がピクサーのCEOだったんですか。ジョブズが、ピクサーの名作を生み出していったんですね!

萌さん それが、そうとも言い切れないのよねぇ……。

カッキー どういうことです?

萌さん 話は、ピクサー最初の長編映画『トイ・ストーリー』の完成前になるんだけど、早く株式公開(IPO)をして資金調達をしたいジョブズと、映画を作っている現場の制作陣とが対立していたの。ジョブズはピクサーにもの凄い金額をつぎ込んでいたんだけど、口うるさかったから、現場はジョブズを嫌っていたんだって。そんな中で、ジョブズからの『株式公開させろ』という指令を受けてCFO(最高財務責任者)として転職してきたのが、この本の著者のローレンス・レビーというわけ。

カッキー ちょっと待ってください。ピクサーのIPOは、『トイ・ストーリー』の大成功の前の話だったんですか!?

萌さん そうよ。『トイ・ストーリー』が当たるかどうか、そもそも今では当たり前のCGアニメーションが世の中に受け入れられるかどうかもわからない時代にIPOの準備をして、『トイ・ストーリー』の公開数日後に上場したの。

カッキー ものすごいタイミングですね……。映画の成功なんてギャンブルみたいなものなのに。

萌さん そんな、将来は見えないけど、CGアニメーションの技術だけは凄かった会社がどうやってIPOを果たしたのかが、この物語の2/3ぐらいを占めているわね。

【第1部】 夢の始まり

 第1章 運命を変えた1本の電話
 第3章 ピクサー派、スティーブ派
 第4章 ディズニーとの契約は悲惨だった
 第5章 芸術的なことをコンピューターにやらせる

【第2部】 熱狂的な成功

 第8章 『トイ・ストーリー』の高すぎる目標
 第9章 いつ株式を公開するか
 第12章 映画がヒットするかというリスク
 第15章 ディズニー以外、できなかったこと

【第3部】 高く飛びすぎた

 第18章 一発屋にならないために
 第20章 ピクサーをブランドにしなければならない
 第23章 ピクサーからアップルへ
 第24章 ディズニーにゆだねる

【第4部】 新世界へ

 第25章 企業戦士から哲学者へ
 第27章 ピクサーの「中道」

(目次から主な小見出しを抜粋)

カッキー 目次を見ただけで、いろいろあったことがわかりますね……。

萌さん IPOを実現するために必須である投資銀行(日本における証券会社)がなかなか見つからなかったり、ディズニーとの不平等な契約を粘り強い交渉で対等な条件にしたりと、苦労の連続だったからね。

カッキー 映画を見ている観客には、伺い知ることのできない裏側ですね。

萌さん なぜピクサー最初の長編映画『トイ・ストーリー』の主人公がオモチャだったのかも、お金が関係しているのよ。

カッキー どういうことですか!?

萌さん オモチャはプラスチックでできているから表面は均一で微妙なムラがない。でも、人間の肌はムラがあるし、服も動くたびにシワができる。室内のシーンが大半なのも、外と比べて幾何学的で描きやすいし、光の処理も簡単だからなのよ。

カッキー つまり、オモチャたちの話で、舞台が室内であれば、技術にかかるお金や時間も少なくてすむ、ということですか!名作の裏側にはそんな制約もあったんですね……。

[『TACNEWS』2019年10月号│連載│萌さんとカッキーの読書室]

著者プロフィール

山田真哉(やまだしんや)

公認会計士・税理士。TAC梅田校出身。中央青山監査法人(当時)を経て、現在、芸能文化税理士法人会長。株式会社ブシロード等の社外監査役。著書に『女子大生会計士の事件簿』シリーズ、『世界一やさしい会計の本です』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』等。

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