LET'S GO TO THE NEXT STAGE 資格で開いた「未来」への扉 #44

  
Profile

鹿野 舞(かの まい)氏

弁護士法人えそら
代表弁護士

1987年、香川県丸亀市生まれ。東京都立川市育ち。担任教師の言葉をきっかけに小学校5年生にして弁護士をめざすことを決心。女子学院中学校・高等学校を卒業後、早稲田大学法学部へ進学。大学卒業後に上智大学法科大学院へ進学し、司法試験の勉強に本腰を入れ始める。2年間の猛勉強の末、司法試験に一発合格を果たす。合格後に入所した法律事務所では交通事故案件を多数経験。その後、当時の上司である馬場龍行氏らとともに独立。現在は「弁護士法人えそら」の共同代表として、「すべての中小企業と個人事業主に顧問弁護士サービスを提供する」ことを目標に掲げ、サブスクリプション型法律顧問サービス「えそらプラン」を提供している。 ●事務所HP ●事務所HP(企業法務)

【鹿野氏の経歴】

1998年 11歳 学校の先生の勧めで弁護士になることを決心。小学校卒業後は、女子学院中学校・高等学校に進学。ダンス部や文化祭実行委員の活動に注力する。
2005年 18歳 高校3年生で慌てて受験勉強を始めたものの希望の大学はすべて不合格に。卒業後1年間の勉強を経て、早稲田大学法学部に進学する。
2011年 24歳 本格的に司法試験の勉強をスタートするため、上智大学法科大学院に入学する。
2013年 26歳 2年間の努力が実り、司法試験に一発合格。都内の法律事務所に入所。
2018年 31歳 上司である馬場龍行らスタッフ数人とともに独立。新事務所を立ち上げる。
2020年 33歳 「弁護士法人えそら」を設立。中小企業や個人事業主に法律顧問サービスを浸透させるべく奮闘中。

すべての中小企業や個人事業主に法律顧問サービスを!
資格は夢を叶えるためのかけがえのない財産。

 小学生のとき、先生からの一言をきっかけに弁護士になることを決め、20代で司法試験に一発合格。現在は、中小企業や個人事業主向けの法律相談サービスを提供する「弁護士法人えそら」の代表として活躍中の鹿野舞氏に、弁護士となるまでの道のりから、事務所の特徴的なサービスである「えそらプラン」提供の経緯やこれからの展望まで、様々な角度からお話をうかがった。

先生の助言がきっかけで小学校5年生で弁護士を志す

 主に中小企業や個人事業主向けにリーガルサービスを提供している「弁護士法人えそら」。
馬場龍行氏と共同代表を務める鹿野舞氏が弁護士を志したのは、小学校5年生のときに担任教師から言われた「そんなによくしゃべるなら弁護士になりなよ」という一言がきっかけだった。学芸会の主役や学級委員長などを率先して引き受け、ハキハキとよくしゃべる鹿野氏を見て、論理的な思考能力やコミュニケーション能力に可能性を感じたのだろう。「小学生のときは勉強や運動も得意で、自信のある子だったと思います。先生の言葉を鵜吞みにして『将来私は弁護士になる!』と考えるようになりました」と鹿野は振り返る。
 小学校卒業後は、受験をして中高一貫校の女子校に入学した鹿野氏。
「どちらかというと勉強より、ダンス部や文化祭実行委員の活動に打ち込んでいました。でも弁護士になりたいという思いは、心の片隅にいつもあって。『HERO』や『離婚弁護士』などの法律家が活躍するテレビドラマに影響を受けて、『あんなカッコいい弁護士になりたい』と理想像も描くようになっていました。高校3年になってから『弁護士になるのだから法学部へ行かないと!』と急ごしらえで勉強し何校か受験したのですが、希望の大学はすべて不合格。卒業後1年間予備校に通って、早稲田大学の法学部に合格することができました」
 希望する法学部に入学できた鹿野氏だったが、まだ司法試験の勉強には本腰が入らなかった。
「大学3年の終わりになってようやく、司法試験を受けるためにはロースクールへ行かないといけないと焦り始めました」
 唯一合格した上智大学法科大学院に進学した鹿野氏は「ここから2年は、死ぬ気で勉強しよう」とスイッチを入れた。スマートフォンからSNS関連のアプリを削除し、それまでの友人との交流も遮断するほどの徹底ぶりだ。「長期戦になるのは避けたい。だから2年間は集中して勉強し、それでダメなら諦めようと思っていました」と鹿野氏は語る。

必死の勉強で引き寄せた「合格」法律事務所で修行の日々

 この固い決意が実を結び、見事一発合格を果たした鹿野氏。
「ダメだったら諦めると決めていたので、不合格になる可能性も考えて、試験後から9月の最終合格発表までの間は一般企業の就職活動をしていました。合格を知ったときは、2年間の努力が報われたようでホッとしましたね」
 資格取得後は、銀座の法律事務所で働くことが決まり、主に交通事故案件を多く扱った。入所からしばらくは先輩の後ろについて案件を担当し、弁護士としての基礎を身につけていった。約9ヵ月が経ち、そろそろひとりでクライアントの対応をしてみたいと思うようになった鹿野氏は上司に直談判。独り立ちを叶えたが、ひとりで様々な案件を担当する中で、別の悩みも抱えるようになった。
「“若い女性”ということで、クライアントから軽視されてしまうことがありました。それが嫌で、テレビドラマで見たような『カッコいい女性弁護士』をめざして、法律用語をあえてたくさん使ったり、スーツでカッチリ決めたり、しばらくはあれこれ試行錯誤していましたね。
 そんな私の様子を見てか、あるとき事務所の人から『別にスーツなんて着なくてもいいのに』と言われて。それからは、自分が着たい服を着て、髪型も自由に選ぶようになりました。カッコつけても仕方ない。そう思って肩の力を抜くようにしたら、自分らしさを取り戻せて楽になった気がしましたね。今となっては“若い女性”であることが軽視される原因だったのかどうかもわかりません。純粋に自信がなくて、そんな態度がクライアントに伝わってしまっていたのかもしれませんね」

同じ志を持つ上司とともに独立

 現在、事務所の共同代表を務める馬場氏と出会ったのは、この銀座の法律事務所での入所面接のときだった。
「馬場には、事務所の上司・先輩として仕事だけでなく様々なことを教えてもらいました。あとから聞いた話ですが、ひとりでクライアントの対応をしてみたいという私の思いをくみ取って、代表へ進言してくれたのも馬場だったそうです」
 その馬場氏が、事務所をやめて独立するという。最初はやめないでほしいと説得する役を買って出た鹿野氏だったが、自分の力を試したいという馬場氏の固い決意を知り、他の何人かの弁護士・事務局のスタッフとともに、事務所を離れ馬場氏についていくことにした。
 こうして馬場氏やほかの弁護士とともに共同代表として新事務所を立ち上げた鹿野氏。新事務所では前々からやりたいと考えていた一般民事の仕事も経験することができた。
 しかし、順調に様々な案件を経験していく一方で、事務所内では方向性の違いも生まれてきた。
「双方どちらが正しい、間違っているということではないですが、めざすゴールが違ってしまうと、目標設定や方針など事務所経営にかかわる様々な部分で行き違いが出てしまいます。
 元々『やりたいこと』をやるために独立という決断しているのに、このままでは良くないだろう。そう考えて、双方の夢を叶えるために同じ志を持った馬場と事務局数名とで、事務所を離れる決心をしました」
 こうして、鹿野氏と馬場氏は共同代表という体制で2020年に「弁護士法人えそら」を立ち上げた。事務所の名前には「人の想い(えそら)の力を信じる法律事務所にしたい」という願いを込めた。
「馬場は、鹿児島出身の九州男児で育ちも考え方も私とはまったく異なるタイプ。だからこそ私には思いつかないような発想を持っていて、相互に良い影響を与え合うことができ、良い関係が築けているのだと思います」

紛争を未然に解決する「サブスク型法律顧問サービス」

 そう語る鹿野氏が2021年9月に立ち上げたのが月額9,800円から利用できるサブスク型法律顧問サービス「えそらプラン」だ。気軽に弁護士に法律相談ができるようにSNS上での法律相談は無制限で利用でき、年に1回着手金が無料になるサービスも付帯している。問題が起こる前に、あるいは何か小さな問題が大きくなってしまわないうちに気軽に相談をしてもらい「紛争を未然に防ぐ」ことを目的としている。
「独立当初は企業法務に注力することは念頭に置いていませんでした。しかし、せっかく新しいことを始めるなら何かチャレンジをしたいなと思い、馬場とともに事務所の方向性を考える中で企業法務に注力していこうと決心しました。本来はすべての企業や個人事業主に顧問弁護士がついているべきだと思うのですが、とりわけ中小企業・個人事業主には顧問弁護士がついていないことがとても多いという現実があります。大企業よりもむしろ弱い立場である中小企業や個人事業主の方々にこそ顧問弁護士が必要なはずなのに、実際には、中小企業や個人事業主では、費用の問題から顧問弁護士を付けるのは難しいことが多いようです。
 そこで、そんな中小企業や個人事業主の方にも顧問弁護士サービスを提供したいという思いから『えそらプラン』を作りました。月額9,800円からというのは安すぎると思われる方もいらっしゃると思いますが、私は適正価格だと思っています」
 「将来の夢はすべての中小企業に顧問弁護士サービスを提供すること。そして、それをすべての個人事業主にも広げていきたいです」と語る鹿野氏。弁護士資格を手に、様々な経験を積みながら今のポジションにたどり着き、夢の実現に向けて邁進する鹿野氏から、将来のキャリアについて悩む方に向けてメッセージをいただいた。
「交通事故案件や一般民事事件を取り扱ってきた私が、企業法務という別の道に進み、中小企業や個人事業主向けのサービスに取り組むようになったのも、昔から常にいろいろな物事にアンテナを張り巡らせていたからこそできたことだと思います。ですから、具体的なキャリアプランや実現したい夢がまだ見つかっていない方は、まずはとにかく、いろいろなことにチャレンジしてみると良いと思います。
 また、現在資格取得に向けて勉強している方は、つらいと感じることもあると思いますが、ぜひ合格に向けてがんばっていただければと思います。資格で得た知識や、資格取得に向けて努力した時間は、夢を叶えるために必要な、自分の人生にとってかけがえのない財産になるはずです」

[『TACNEWS』 2022年8月号|連載|資格で開いた「未来への扉」]