LET'S GO TO THE NEXT STAGE 資格で開いた「未来」への扉 #10

Profile

安彦 鷹哉(あびこ たかや)氏

大手監査法人
米国公認会計士(USCPA)

1994年1月生まれ。福島県出身。福島県立福島高等学校卒業。明治大学商学部商学科卒業。2016年7月、米国公認会計士(USCPA)試験に合格。2017年4月、大手監査法人に入社し、消費財、産業財を中心に国内外の幅広い業種、企業で監査業務に携わる。2019年1月、実務経験や倫理試験を満たし、米国公認会計士(USCPA)資格の登録を完了。

【安彦氏の経歴】

2013年 19歳 米国公認会計士(USCPA)の勉強を始め、「将来の強みにしたい」と専門知識の習得に励む。
2014年 20歳 1年間休学し、語学留学へ。海外で働く夢を叶えるために、語学力を磨く。
2016年 22歳 7月、米国公認会計士(USCPA)試験に合格。第一志望の監査法人から内定を得る。
2017年 23歳 4月、大手監査法人に入社。監査業務に携わる。
2019年 25歳 1月、米国公認会計士(USCPA)に登録(ワシントン州)。

海外で働く夢を叶えたいと、米国公認会計士の資格に挑戦。
日本と世界をつなぐ「架け橋」となる存在をめざす。

国際的な会計知識、英語力の証明となる米国公認会計士資格(USCPA)。安彦鷹哉さんは大学在学中、「将来は海外で働きたい」という夢を叶えるために、この資格に挑戦し、合格を手にしました。現在は大手監査法人で監査業務に携わるかたわら、その先の目標も見据えています。資格取得への思い、これからの目標をうかがいます。

幼少期の海外経験から夢に向かって本腰を入れた勉強へ

幼少期にインドネシアで過ごした経験から、安彦鷹哉さんは「海外で働いてみたい」という思いを、大学時代から抱いていました。「そのためには強みが必要だ」と考えのもと、公認会計士の育成を行うために大学で開かれる「経理研究所」の講座で、ビジネスの基礎となる会計や簿記を学び始めます。その時に、米国公認会計士の存在を知りました。「夢を叶えるにはぴったりな資格だと思いました」と話します。

米国公認会計士の試験は、日本での受験が可能です。そして合格後、実務経験の要件などを満たして申請すると、晴れて資格を取得できます。それにより、国際会計基準のベースでもある、米国の会計基準に精通したプロフェッショナルとして認められるのです。専門知識を有する強みは、キャリアアップにも有利に。たとえば、顧客のビジネスに関する課題解決に取り組むコンサルティングファームなど、活躍の場が広がります。

安彦さんが本腰を入れて勉強に取り組むのは、1年間の留学から帰国した、大学3年生時から。留学先のアメリカ・ミネソタ州では語学力に磨きをかけ、試験問題にある英語の微妙なニュアンスをくみ取る力もつきました。大手監査法人に勤務する現在も、語学力が武器となっています。

試験に挑むにあたり、将来の資格取得も視野に入れて、卒業後に監査法人で働くことをめざします。そのためには、4科目ある試験を、約1年で突破しなくてはなりませんでした。

「勉強にあてられる時間が限られていたので、4科目を一気に攻略しようと取り組みました。その結果、1点、2点に泣き、3回、4回と受験することになった科目もありました。試験では75点が合格ラインなのですが、74点と75点の間には大きな差があるようです。本質的な理解をしていなければ、合格点に到達できない。私なりに工夫したことは、正解の選択肢だけではなく、間違いの選択肢にも着目したこと。なぜ誤りなのか考え抜き、深く理解するよう心がけました」

「精神的にはきつかった」そうですが、信念を貫いてみごとに合格。第一志望だった大手監査法人の内定をつかんだのです。

「日本企業の海外進出を応援したい」

日本に拠点を置く監査法人に入所した安彦さんは現在、国内外の企業の「財務諸表監査」に取り組んでいます。産業財や消費財を扱うメーカーを中心に、約10社を受け持ちます。

新人時代は、監査の仕事を通じて「勉強で身につけた知識が、実務によって確認されることが多く、面白いと感じました」と話す一方で、戸惑うこともありました。「たとえば、クライアントが使用している資料の見方です。実際に開示される数字の根拠資料を拝見し、会計基準にも照らしながらその数字の確からしさを検証するのですが、新人の頃は経験が少ないため資料の読み方に見当がつかずに非常に苦労しました。どうしたらこの数字にひもづくのか、と。自分の中で噛み砕きながら理解していくことが大事だと思いました」

新人ならではのこうした苦労は、会計士なら誰もが通る道です。「わからないことがあれば、必ず会計基準にあたって理解する。そして次に生かす。その繰り返しですね」と安彦さん。かたや、語学力を生かした仕事は、腕のみせどころ。海外に本社を持つ日本子会社を対象に実施する海外本社へのレポーティング業務では、英語で書かれた財務諸表を読みこなしています。

そんな安彦さんのもとに今年1月、うれしい知らせが届きました。必要な業務経験を満たすとともに倫理試験などをパスしてライセンス発行申請をしたところ、ついに米国公認会計士の資格を取得できたのです。「ずっと目指してきたことなので、ようやくひとつのマイルストーンを突破したな、と気持ちが昂る思いでした」。今後、長年あたためてきた夢に向かって、一歩前進したいと考えています。

「日本と海外をつなぐ『架け橋』となるような仕事に挑戦したいのです。たとえば、会計や経営のコンサルタントとして、アジア圏に進出したいと考えている日本企業を応援したい。具体的にはこれからですが、海外進出にあたり直面する課題に対し、自分が持つ専門的な知識を駆使して、クライアントとなる企業がその地で活躍していけるよう、お手伝いできればと思います」

安彦さんにとって、資格はどんな存在ですか――。

「思い描いていた『海外で働きたい』という夢に向かうためには、なくてはならないものでした。私というプレゼンス(存在)を表してくれるものです。資格があったからこそ、夢を後押ししてくれた気がします。海外志向を持つ若い人にとっては、その可能性を飛躍的に高めてくれるのが、米国公認会計士の資格だと思います」

[TACNEWS 2019年6月号|連載|資格で開いた「未来への扉」]