プロが教える!第9回 不動産編 空家問題の現状と解決策

  

◆空家の現状

まず、日本の空家数を(図表1)で示します。

空家820万戸の内訳を列挙すると(図表2)のようになります。

 賃貸用とは、賃貸用アパート・マンション等で空室のものです。その他の住宅とは、両親の死亡や入院、都会等への就職等で使用されていない住宅です。
 アパートの空家増加には、2015年1月から相続税が強化されたことに対抗し、建物を建て貸し出せばよい、借金をすれば資産の評価額がより下がるので税が大幅に安くなるという、先祖からの土地を手放したくないという心理・弱みにつけ込み、一部のハウスメーカーがアパート建設を推奨した結果です。

◆空家法スタート

 空家を減らすために、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、(図表3)のような手続きを経て、「勧告」を受けると、固定資産税の課税標準の特例から除外されることになりました。

 実は、私の実家が特定空家等に認定され、市役所職員の指導・助言に従い、一部解体及び補強工事をしました。もし、指導・助言に逆らったらどうなるでしょうか。勧告され、固定資産税が最大で6倍・都市計画税が3倍になる可能性があります。さらに、行政代執行で空家を解体されてしまうかもしれません。恐ろしいですね~。

◆空家の活用例

 空家の活用例としては、大きく分けて(1)自分で活用する、(2)賃貸する、(3)売却するという3つの方法が考えられます。
(1)自分で活用する
 空家を解体して、駐車場にする方法を取る人が多いですね(図表4)。

 また、アパート・マンション経営(図表5)は安定収入を得たり、貸家建付地として相続税も安くなります。不動産会社による一括借り上げ方式で安心をする人も多いですが、「期間内でも契約解除できる」旨が特約されていることが多いので、要注意です。

(2)賃貸する
 家賃収入が得られますが、リフォーム代金が安くても100~200万円、場合によっては1,000万円前後かかる可能性があります(図表6)。

 また、建物を売却して土地だけを賃貸する方法(図表7)や建物を解体して土地を賃貸する方法(図表8)があり、子孫に土地を残すことができますが、土地というものは、いったん人に貸してしまうと(借地契約を結ぶ)、更新が原則のため、なかなか戻ってきません。そのため、土地に関しては定期借地権(更新がない)として、契約するとよいでしょう。

(3)売却する

(図表9)のように、土地も建物も売却してしまうと、固定資産税や修繕費がかからなくなりますが、先祖伝来の不動産を簡単に手放していいのかという問題があります。
(図表10)は(図表9)と異なり、解体費用がかかりますが、比較的高く売却できますし、自治体によっては、解体費用の補助が出るところもあります。また、空家となった実家を売った場合、一定要件を満たせば、譲渡所得から3,000万円が控除される所得税法上の特例があります。

◆低廉な空家等の仲介手数料上限緩和へ

 宅建業法では、「宅建業者は、国土交通大臣の定める報酬額を超えて報酬を受け取ってはならない」とされていて、その上限額は(図表11)のとおりです。

 宅建業者が空家の売買を媒介等する場合、現地調査等の費用がかかるのに、成約しても報酬が安いため、空家の媒介等を避ける傾向があります。そこで、低廉な空家等(税抜価格が400万円以下の物件で、空家でない建物や宅地を含む)で現地調査等の費用を要するものは、一定要件のもとにその費用を従来の報酬額に加算できることになりました。
 たとえば、300万円の空家の売買を媒介にした場合、従来なら300万円×4%+2万円=14万円を売主及び買主からそれぞれ受領できる(合計で28万円)にすぎなかったのですが、売主からは18万円との差額分を現地調査等費用として上乗せできます。仮に費用が6万円かかった場合は、そのうち4万円を加算して18万円を売主から受領できます。買主からは14万円のみなので、合計で32万円となります。
 国土交通省では、クラウドファンディング等による不動産証券化を活用した空家等の再生を促進するため、専門家派遣等による支援をスタートし、地方創生に繋げることが重要と考えています。

[TACNEWS 2019年2月号|連載|プロが教える!]

Profile

相川 眞一 (あいかわ しんいち)

宅地建物取引士・マンション管理士・管理業務主任者。
大学1年時より資格の学校の講師を始め、TAC・大学・企業・官公庁等を合わせた講師生活は、今年で40周年を迎える(TACでは、宅建士まるかじり本科生を担当)。2016年4月に、大阪学院大学経済学部准教授に就任。専門は、不動産学・都市経済論。日本地方自治研究学会所属。不動産学の立場から、地方創生・防災・まちづくり・税制のあり方等を研究。2019年9月の同学会全国大会で、コーディネーターを務める。