プロが教える!第4回 お金編 話題のiDeCoとNISAをきっかけに投資を学ぶ

  

ファイナンシャル・プランナー(FP)は、お金に関する幅広い知識に基づいて暮らしや家計についての相談に応え、相談者の夢や目標の実現をサポートする専門家です。今回は、FPが扱うテーマの中から、話題のiDeCo(イデコ)とNISA(ニーサ)についてお話しします。

◆iDeCoの税メリットは強力!

将来のための資金を効率よく貯めるために活用したいiDeCoとNISA。昨年よりiDeCoの加入対象者が拡大したり、今年から新たに「つみたてNISA」がスタートするなど話題の制度です。国を挙げて普及を推進しており、認知度も高くなってきています。どちらも税制面の優遇が受けられ、たいへんおトクな制度ですが、その特徴を確認しておきましょう。
 iDeCoとは、個人型確定拠出年金のことで、老後資金づくりのために自分で掛金を拠出し、自ら運用方法を選択する制度です。一定の年齢以降、運用成果に応じて給付を受けることができます。iDeCoには3つの税メリットが用意されていて、最大のメリットは、掛金が全額所得控除となることです。所得税や住民税を算出するための計算過程で所得金額から差し引くことができるため、その分税金が安くなります。詳細は割愛しますが、例えば所得税率10%の人※が年間20万円を掛金として積み立てた場合、所得税と住民税あわせて約4万円節税できます。30歳から60歳まで30年間積み立てると、拠出額600万円に対して約120万円税金が安くなり、たいへんおトクです。
※独身の会社員の場合、年収約440万~640万の人。
 2つめの税メリットは、運用時の利益が非課税となることです。通常、株や投資信託等で運用して利益が出た場合は、約20%の税金がかかりますが、iDeCoなら全額非課税です。株の値上がり分や配当金等に一切税金がかからないため、効率よく資金を増やすことができます。さらに、3つめの税メリットとして、受け取り時の税金も優遇されており、受け取り方(年金か一時金か)にもよりますが、税金がかからないか、少なくて済む制度となっています。
 いいことずくめのiDeCoですが、デメリットとしては、一定の年齢(原則60歳)まで引き出せないこと、運用対象となる金融商品が限定されること、利用する金融機関に応じた口座管理手数料がかかること、などがあります。また、自分で選択した運用方法によっては、思ったとおりに運用益が出ない可能性も考慮しておく必要があるでしょう。税制面の優遇が強力なだけに、年間で拠出できる金額に上限があることもデメリットと言えるでしょう。

◆資金の流動性を残したいならNISA

一方、NISAも家計の資産形成を推進するために用意され、株や投資信託等で運用して得られた利益が非課税となる制度です。以前からある「(一般)NISA」「ジュニアNISA」に加えて今年から始まった「つみたてNISA」の3種類があり、それぞれに年間の利用限度額や非課税期間が決められています(NISAの場合、年間最大120万円、最長5年間)。運用益が非課税となる点はiDeCoと同じですが、NISAやジュニアNISAではiDeCoよりも選べる金融商品が多く、株式の個別銘柄への投資も可能です※。ただし、掛金を拠出するだけで節税となるiDeCoとは異なり、あくまで運用益が出た場合にのみそのメリットを享受することができ、損失が出た場合でも、NISA以外の口座の運用益と相殺(損益通算)することはできず、損失を翌年に繰り越すこともできません。
※利用する金融機関によって投資できる商品は異なります。
 NISAおよびジュニアNISAは最長5年間の投資期間となっており、長期の資産形成には物足りませんでしたが、今年スタートした「つみたてNISA」は、少額からの長期・積立・分散投資のために作られた制度で、最長20年間の投資が可能です(年間最大40万円)。投資対象となる商品は、金融庁が要件を定めた長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託に限られていますので、運用に自信のない人でもリスクを抑えた投資が行えるようになっています。
 iDeCoと比べると税メリットはさほど大きくありませんが、60歳まで資金が引き出せないiDeCoとは違い、急に資金が必要になったときでも売却して引き出せる(資金の流動性が維持できる)という点がNISAのメリットです。

◆投資は怖くない?

さて、iDeCoにしてもNISAにしても、自分自身で資金の運用方法を選択しなければならないため、失敗を恐れたり、「投資」に対して漠然とした不安を感じてしまい、これらの制度の利用をためらっている人もいるかもしれません。そのメリットを最大限に活用するためには、制度の知識だけではなく投資の知識を身につけて、自分自身が許容できるリスクに応じて運用を行っていく必要があります。
 例えば、老後の資金を貯めるにあたって、絶対に元本を減らしたくない、という人であれば、iDeCoで元本確保型の商品を選択し、税メリットだけを享受するという方法もあるでしょう。子どもの教育資金を貯めたいという場合、NISAやつみたてNISAを活用してインデックスファンドや債券比率の高いファンドに積み立て投資するという選択肢もありますし、非課税のメリットを最大限に活かしてリターンを最大化したいという場合は、NISA口座で将来大きな値上がりが期待できそうな個別銘柄に投資するという方法もあります。
 いずれにしても、運用方法ごとの「リスク」をしっかりと把握し、納得したうえで投資することが大切です。そのためには、投資におけるリスクの意味を知り、様々な金融商品の特徴やリスクの大きさ、価格に影響を及ぼす経済や市場のことなどについて理解する必要があります。FPでは、iDeCoの最大のメリットである所得控除など税の仕組みの他にも、投資におけるリスクの捉え方、シャープ・レシオや標準偏差などリスクに関する指標の見方など、金融商品を運用する際に役立つ知識がたくさん学べます。しっかりと知識を身につければ、投資も意外と怖くないということがわかると思いますよ。

※当記事に記載の制度を利用するにあたっては一定の条件等があります。

Profile

FP講座 松田 大

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、1級DCプランナー。
FP講座の責任者として日々、試験対策講座の企画・運営に従事。できるだけ多くの人に少しでも早くお金の勉強を始めてもらうべく、マネー知識の必要性を声を「大」にして喧伝中。

  

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