プロが教える!第2回 第2回 お金編|出産・子育てにまつわるお金の話

  

ファイナンシャル・プランナー(FP)は、お金に関する幅広い知識に基づいて暮らしや家計についての相談に応え、相談者の夢や目標の実現をサポートする専門家です。
今回は、FPが扱うテーマの中から、出産・子育てにまつわるお金についてお話しします。

妊娠が判ったら

 子育てを社会全体で支えるために、出産・子育てに際して国や自治体、公的制度から受けられる支援がいくつもあります。まず、妊娠が判明すると産婦人科などで妊婦健康診査を受けることになります。通常妊娠が判ってから出産までの間に14回程度受診することとなりますが、妊婦健診は健康保険が適用されず全額自己負担となるため健診費用は高額となります。そこで、その費用については一部を自治体が助成してくれることとなっています。自治体ごとに助成上限額や対象となる検査が決まっていますので、かかる病院や健診内容によっては自己負担が大きくなる場合もありますが、多くの場合費用の大部分について助成を受けることができます。

出産前後に仕事を休むとき

 会社員の場合、産前6週間、産後8週間は仕事を休むことができます。産前は希望すれば働くこともできますが、産後は原則として自分が希望しても働くことはできません。
なお、産前6週間の起点は出産予定日で、産後は出産日の翌日から8週間です。この産前産後休暇の期間中給与が支給されない場合は、加入している健康保険から出産手当金をもらうことができます。金額は、およそ毎月の給与の3分の2です。会社から給与が支給される場合出産手当金は支給されませんが、給与のほうが出産手当金の額よりも少ないときはその差額が支給されます。また、産前産後休暇期間中に退職しても産後8週間まで出産手当金をもらうことができますが、産前6週間前までに退職した場合にはもらえません。なお、フリーランスや自営業などの場合は、産前産後期間中であっても仕事を休むかどうかは自分次第となります。また、出産手当金ももらえません。

出産にかかる病院代は?

 出産にあたって医療費の負担が不安だという人もいるかもしれませんが、病院や助産院にかかる費用の補助として出産育児一時金をもらうことができます。これは会社員でも会社員の配偶者である専業主婦でも自営業者や無職の人でももらえます。金額は子一人につき42万円となっており、一般的な出産費用は40万円~70万円程度ですので、出産費用の大部分をまかなうことができます。
直接医療機関に支払ってもらうこともできるため、まとまった金額を用意しなくても済むようになっています。

産休後の育休中も給付がある

 会社員の場合、前述のとおり産後8週間までは産前産後休暇を取り出産手当をもらうことができましたが、その期間が終わった後も引き続き育児休暇を取る人が多いでしょう。法律では、子どもが1歳になるまでの間は育児休業を取ることができると定めており、母親に限らず父親が取得することもできます。保育園に入れないなどの事情がある場合には子どもが2歳になるまで延長することも可能です。育児休業の期間中は、雇用保険から育児休業給付金をもらうことができ、金額は、はじめの6ヵ月はおよそ毎月の給与の3分の2、それ以降は2分の1です。一方、自営業者等の場合は、雇用保険に加入していないため育児休業給付金をもらうことはできません。

産休・育休中は社会保険料が免除に

 さらに産休・育休中の家計を支援する制度として、健康保険料や厚生年金保険料など社会保険料の免除制度があります。給与をもらっているときは社会保険料が天引きされていましたが、産前産後休暇や育児休業中は社会保険料が全額免除されます。免除となっている間も、休業前の水準で給与をもらっていたとみなして将来の年金額を計算してもらえるため、産休・育休の取得によって将来の年金額が減額されることはありません。
一方で、自営業者が加入している国民健康保険や国民年金にはこのような出産・育児を理由とした免除制度がありませんので、それまでと同様に保険料を支払う必要があります。ただし、国民健康保険や国民年金の保険料は前年の所得を基に計算されるため、出産・育児で仕事を休み収入が減ってしまった年の翌年は保険料が安くなります。また、次世代育成の観点から、2019年4月からは自営業者や無職の人も産前産後期間の国民年金保険料が免除されることが決まっています。この場合も将来の年金額が減少しないような仕組みとなっており、その財源として2019年4月より国民年金保険料が100円程度上がることとなっています。

中学卒業までは児童手当がもらえる

 子どもが中学を卒業するまでは児童手当(旧こども手当)をもらうことができます。金額は、3歳になるまでは月に1万5千円、3歳から中学生の間は月に1万円です。第3子以降の場合は3歳以降も1万5千円となる可能性があります。こちらは会社員であっても自営業者であっても同じくもらうことができます。

保育料支援

 育休を終えて職場に復帰するときには、多くの場合保育園を利用することとなりますが、幼稚園や保育園に支払う保育料についても自治体ごとに支援制度を用意しています。具体的な支援内容は自治体ごとに異なりますが、所得に応じて保育料が軽減されたり、第2子以降の保育料が半額や無料となったりします。

 このように、出産や子育てを支援する仕組みはいくつもあります。ここに挙げた以外にも子どもの医療費や学費を助成したり、不妊治療の費用を助成したりする制度もありますし、一人親家庭を支援する制度もあります。また、国や自治体が行う支援以外にも、勤務先が従業員やその配偶者の出産・子育てを支援する制度を導入している場合もあります。会社員には出産・子育てに関する支援が多く用意されていますが、自営業者などは利用できないものも少なくありません。そのため、フリーランスや自営業で仕事をしている人は、あらかじめ出産・子育てにかかる費用や休業中の収入を補うための準備をしておく必要があります。出産・子育てにあたって経済的な負担を不安に感じる方もいると思いますが、様々な支援制度について知っておくことで、安心してライフプランを立てることができるのではないでしょうか。

  

 次回(9月号)は、今話題のiDeCoやNISAを取り上げ、将来のために効率よくお金を貯める方法についてお話しします。
※当記事に記載の支援制度を利用するためには一定の要件等を満たす必要がある場合があります。詳細は、FP講座でわかりやすく学べます。

Profile

FP講座 松田 大(まつだ だい)

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、1級DCプランナー。
FP講座の責任者として日々試験対策講座の企画・運営に従事。できるだけ多くの人に少しでも早くお金の勉強を始めてもらうべく、マネー知識の必要性を声を「大」にして喧伝中。

  

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