タックスファンタスティック Tax Fantastic!! 第15回テーマ 消費税の軽減税率、タピオカはどうなる?

簿記美 襟糸先輩、これから「タピる」んですけど一緒にどうですか?

襟 糸 むむむ、「タピる」?どーした簿記美ちゃん、失恋でもして遠くに行きたくなったのかい?

簿記美 違いますよ、「旅する」の略語じゃありません、そもそも旅するのになんで襟糸先輩を誘わないといけないんですか?「タピる」は今流行の「タピオカミルクティー飲む」って意味です。そんなんじゃ先輩、モテませんよ!先輩こそ失恋して本気の傷心旅行しちゃいますよ!

襟 糸 ぼ、簿記美ちゃん、僕に恨みがあるの?そこまで言わなくても…。タピろうタピろう、一緒にタピろうじゃないの!

簿記美 いえ、もう結構です。なんか冷めました。税太さん、タピりましょ!お店のインテリアもよくて、インスタ映え間違いなしなんです。

税 太 申し訳ないけど僕はこれからお客さん先に行くんだよね。よければテイクアウトしてきてくれる?

簿記美 残念ですけど、OKでーす!代表はどうします?

田久巣 じゃあ僕も買ってきてもらおうかな。さて、ここで簿記美ちゃんに問題だ。今は10月だよね。タピオカミルクティーは税抜で1個500円。1個イートイン、2個テイクアウト。さて全部でいくらでしょう?

簿記美 簡単です!私は外食扱いで消費税10%で550円、代表と税太さんは持ち帰りなので軽減税率8%が適用されて540円×2個で1,080円。合計1,630円です。私、今年から消費税勉強してますから。

田久巣 さすが簿記美ちゃん、軽減税率を勉強しているね。じゃあ別の質問。このタピオカミルクティーを販売している飲食店として、消費税増税はいいこと?わるいこと?

簿記美 え?えーっと、イートインだと消費税分が10円高くなってしまうので、お客さまはテイクアウトを選択すると思います。お店としては税込での売上は減りますが、消費税分は預っているだけで、結局は税務署に納めないといけないので、実質的な売上は変化なし。代表、そういうことでしょうか?

襟 糸 チッチッチッ、簿記美ちゃん。ちゃんと仕入のことや資金繰りも考慮しないと。タピオカミルクティーの原料を仕入れるときにお店が払う消費税は、タピオカや牛乳などの食糧については8%だけど、カップとかストローとかの場合は10%だよね。ところが売上の内訳を考えると、テイクアウトの割合が多くなると予想されるから、お店としては、仕入で多く払って売上で少なく回収することになって、資金繰りに影響する可能性がある。しかも仕入も売上も税率8%と10%を分けて管理しないといけない。それは手間。結局損だと思うな。軽減税率に対して僕は「けげん(怪訝)」です!

簿記美 先輩、秋も始まったばかりですけど、最後のひと言、さむーい…。

田久巣 まぁまぁ。税太君はどうだい?

税 太 僕はいいことのように思います。今まではインスタ映えする店内で飲みたくて長蛇の列。これからは安いテイクアウトが増えて混雑が解消するかもしれません。テイクアウトのほうが回転も良いかと。そもそもイートイン席の必要性が低くなる。そのスペースを違う商品を売ったり他の店に貸すこともできます。

簿記美 さすが税太さん、軽減税率に対して「けいけん(敬虔)」ですね!

【今回のポイント】

消費税増税の影響、それも軽減税率の対象となるタピオカミルクティーを売るお店にはどういう影響があるのかというテーマだったが、誰が正しいという話ではない。言っていることはみんな正しいと言ってもいいだろう。大事なのは、こういう「正解がない話題」というのが結構税務の現場では出てくるということだ。試験では正解が1つでも、実際は複数。じゃあこういう問いをお客様からされたときにうまく答えるには何が必要なのだろうか?簿記美ちゃんに「さむーい」と言われないことを願うが、大事なのは「けいけん(経験)」だろうね。


[TACNEWS 2019年11月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員パートナー、株式会社レガシィ常務取締役。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社で システムエンジニアとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人に入り、会計監査・内部統制監査・IPO準備監査に従事。また事業再生、M&A支援等のコンサルティング業務も行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ。現在は相続・事業承継対 策コンサルティングを担当。また情報戦略本部長としてプラットフォームの構築も担当し、2019年7月「Mochi-ya」をリリース。https://www.mochi-ya.ne.jp
主な著書:『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版、共著)

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