タックスファンタスティック Tax Fantastic!!第13回テーマ 税理士は公認会計士とどう違うのか?

監 子 あのさぁ、襟糸君、唐突だけど、襟糸君はどうして税理士になろうと思ったの?

襟 糸 おっと、ほんとに唐突だなぁ。うーん、真面目に答えたほうがいいやつかい?

監 子 モチのロンよ!

襟 糸 そこに税理士受験の本の山があったからさ、じゃダメかい?

監 子 さむっ!聞いた私がバカだったわ。税太君は?

税 太 僕は会計や税金の専門家になってお客様に感謝される仕事をしたかったからです。

監 子 さすが、税太君。私こそ感謝よ!でも私みたいに公認会計士だってよかったわけじゃない?何で税理士なの?試験制度の問題?

税 太 それは1つありますね。妻子ある身だったんで、仕事を辞めて勉強するわけにはいきませんでしたから、働きながら資格を取るなら1科目ずつでも受験できて、合格した科目は生涯有効な税理士っていう理由はありましたね。でももう1つ、どちらかというと顧客に近いところで仕事して感謝されたいっていうのもありました。

監 子 うーん、後者のほうは私にとっては耳が痛い話。特に会計監査の仕事をしていると顧客の不正を疑って仕事していると誤解されて時々悲しくなるのよね。

田久巣 なんだ、監子君、会計監査の仕事をやめて顧客により近いところで仕事ができる税務の世界にいきたいのかい?それなら襟糸君の部門に移ってみるかい?

襟 糸 ふん、監子君は会計士だから会計のことしか知らないんだろう?税務の素人が来てもお荷物なんだけどなぁ。

監 子 まぁ、ひどいわね。会計士のこと本当にわかってる?2006年からの新試験制度になってからは租税法(法人、所得、消費)は必修科目になったのよ。修了考査の勉強では税務が一番重要だって言うくらいよ。組織再編税制の非適格合併の税務処理も、連結納税の加入時における繰越欠損金の制限だって、必死で勉強するんだから。

襟 糸 とはいってもなぁ。税務をなめられちゃ困る。会計士は一つの案件を一人では何も完結できないけど、税理士は一人で全てやりきらないといけないんだ。

監 子 それを言うなら税理士さんは会計士が勉強する経営学や会社法の知識をきちんと勉強されてますか?税理士さんの顧問されている中小企業でも会社法は適用されているわよ。経営学を知らないとコンサルもできないんじゃない?

田久巣 まぁまぁ、二人とも。僕は会計士の仕事も税理士の仕事も両方経験しているから言わせてもらうと、そんなに壁はなく、俯瞰してみれば仕事の内容も大きく変わらないと思うよ。というかやれる仕事の幅は二つとも非常に広い。でもそれぞれがしてきた仕事は違うわけだから変に張り合わずにお互いを尊重しながら協力すべきだと思うなぁ。

監 子 代表、ごめんなさい。そもそも襟糸君に冒頭の質問をしたのは税理士に憧れているからなんです。お客様に心から感謝されたり頼りにされたりしたいって思っているのかも。

襟 糸 監子君、こっちこそ変に言い返して悪かった。謝る。会計士は上場大手企業相手に大人数でチームを組んで仕事したり、社長とビジネスを語ったりしている姿が格好いいと思っていたからつい…。でも税理士受験の本の山があったから税理士を目指したのは本当なんだ。

監 子 どういうこと?

襟 糸 本の山⇒たくさんの本⇒タックスの本⇒タックス・ファンタスティック!

監 子 やっぱり、さむっ!(笑)

【今回のポイント】

税理士と会計士はみなさんご存知の通りそれぞれ会計と税務の専門家だ。会計士資格を取得すると手続きをすれば税理士の資格も取得できることから両方保有する人も多いし似ている。しかし顧客が感じるイメージは違うのかもしれない。会計士の顧客は会計監査を必要とする上場企業など。財務諸表に重要な誤りがないかを監査を通してお墨付きをもらうのだ。外からでは本来知りえない企業のビジネスモデルや組織構造を知れるので非常に面白いが、ありがとうと本気で言われる機会はどうしても少ない。対して税理士の顧客は税務申告を必要とする個人や法人だ。自分が処理すると膨大な時間がかかるが慣れている税理士がやってくれれば時間の節約だし、支払わなくてはならない税金の額を合法的な範囲で減らす方法をアドバイスしてくれるのでお金の節約にもなる。規模的には、確かに大企業もあるにはあるがごく一部であり、中小規模がメイン。でもうまくことがすすめば顧客には非常に感謝されるのだ。ただ、会計士だって税務もできるし税理士だって監査に貢献もできる。AIの活躍を恐れるよりも、まずは税理士と会計士がタッグを組んで仕事をするのが先決だと思うなぁ。


[TACNEWS 2019年9月号|連載|タックスファンタスティック]

Profile

筆者 天野 大輔(あまの だいすけ)

1979年生まれ。公認会計士・税理士。税理士法人レガシィ代表社員パートナー、株式会社レガシィ常務取締役。慶應義塾大学卒業、同大学院修了(フランス文学を研究)。情報システム会社でシステムエンジニアとして勤務。その後公認会計士試験に合格、監査法人に入り、会計監査・内部統制監査・IPO準備監査に従事。また事業再生、M&A支援等のコンサルティング業務も行う。その後日本で最大級の相続税申告数実績のある税理士法人レガシィへ。現在は相続・事業承継対策コンサルティングを担当。また情報戦略本部長としてプラットフォームの構築も担当し、2019年7月「Mochi-ya」をリリース。https://www.mochi-ya.ne.jp
主な著書:『改訂版 はじめての相続・遺言100問100答』(2017年、明日香出版、共著)