人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第55回 フロンティア・マネジメント株式会社

Profile

笹沼 大樹氏

経営管理部 シニア・ディレクター

大学卒業後、外資系の自動車メーカー、ラグジュアリーブランドで人事担当としてキャリアを積み、2019年、フロンティア・マネジメント株式会社入社。採用を中心に人事担当として活躍中。


フロンティア・マネジメントは、経営コンサルティング、M&Aアドバイザリー、経営執行支援、事業再生など多面的なサービスからクライアントに最適なソリューションを提供できることを強みとしているコンサルティングファームだ。若手社員の積極的なチャレンジを支援するフロンティア・マネジメントの人材観や採用方針、特徴的な人事制度について、経営管理部シニア・ディレクターの笹沼大樹氏にうかがった。

多種多様なサービスを提供するコンサルティングファーム

──最初に、フロンティア・マネジメントについてご紹介ください。

笹沼 フロンティア・マネジメントは、経営コンサルティング、M&Aアドバイザリー、経営執行支援、再生支援さらにはポストM&A(PMI)、海外事業(進出)・クロスボーダーM&A、ガバナンス・リスク・コンプライアンスなど、多様なサービスを提供しています。2022年には投資子会社であるフロンティア・キャピタル株式会社を設立し、人事コンサルティングのセレブレイン株式会社と業務資本提携を結び、更なるサービスの拡大に取り組んでいます。
 多様なソリューションを持つことで、クライアントに対して最適解や一気通貫のサポートを提供しています。また、これらの包括的なサービス提供により、広範なクライアントのニーズに合った提案を行うことが可能です。
 各専門分野に精通した専門家を社内に擁しているため、案件ごとに適切なメンバーでチームを組成し、専門家が互いに緊密に連携することで、各分野にまたがる専門的知見を総合的に動員でき、高品質かつスピーディな経営課題の解決をワンストップでサポートしています。
 クライアントは首都圏のみならず、全国の大手・中堅企業、中小企業へと広がっています。そのため社会貢献や地方再生を軸に就職活動をする学生の皆さんにとっても、地方再生と地域経済活性化、さらに日本経済の活性化を通じた社会貢献を実感できる会社としての魅力があるのではないかと考えています。

2024年は倍の新卒採用を計画

──採用にはどのような特徴がありますか。

笹沼 第一に、経営コンサルタント、事業再生コンサルタント、プロ経営者、M&Aバンカーなど、入社後には多彩なキャリアの選択肢が用意されています。また案件の多くが企業経営者を支えるパートナーとして経営者に深くコミットする案件なので、若いうちから経営者の視点を養えます。30歳前後のメンバーがクライアント企業の執行役員を務めたケースもあって、若いうちからチャレンジして活躍できる事例が豊富です。政府系案件や地銀ネットワークを通じた地方案件も豊富なので、社会貢献や地方活性化にも関われます。

──新卒採用と中途採用では、どちらに注力していますか。

笹沼 採用人数で見れば、年間100人以上を採用している中途採用のほうがメインになります。ただ、以前は毎年10名弱だった新卒採用が2023年4月には17名、さらに2024年はその倍の人数に増やす計画で動いており、新卒の重要性が年々増している状況です。

──求める人物像をお聞かせください。

笹沼 新卒採用と中途採用で共通しているのは「多様性」です。専門性、国籍、性別、趣味や性格まで、バラエティ豊かな人材を求めています。一方で実際にどのような人が多いかと言えば、新卒も中途も、大手ビッグファームや外資系ビッグファームで内定をもらってから当社に来ている人が多い傾向があります。シニアの顔ぶれを見ても、国内外の有力企業でのキャリアを持って入社してきたメンバーが多く在籍しています。大きな組織で歯車になるよりも「自分の腕で勝負してみたい」というマインドがある、ワイルドで行動力のある人材が多いと考えています。
 このような社風なので、「好奇心旺盛な方」「チャレンジ精神あふれる方」「プロフェッショナルをめざしたい方」を「求める人物像」として定義しています。

──新卒採用の選考フローをご紹介ください。

笹沼 あくまで2023年の例ですが、エントリー後、セミナー・座談会に参加していただき、SPIと3回の面接を経て内定に至ります。一次面接はマネージャークラス、二次面接は部長クラス、最終面接では必ず代表がお会いすることになっています。面接はすべてオンラインです。

──2023年の倍の人数を計画されている2024年採用ですが、進捗はいかがですか。

笹沼 当社で過去に経験のない規模の新卒採用活動でしたので不安もありましたが、なんとか計画していた通りの人数を確保できそうですので、ほっとしています。

──新卒内定者に対して、フォローなどは実施していますか。

笹沼 例年、課題図書を出しています。また企業会計の基礎知識は非常に重要なので、入社前に日商簿記2級の勉強をしていただきます。面接時には「入社前に勉強しておくべきことはありますか」と質問いただくこともよくありますが、「これから始まる長い社会人人生の中で、入社前の少しの時間でアドバンテージを持っても、それほど役に立ちません。むしろ、学生時代にしかできないことを優先してください」と答える面接官が多いようです。

──入社後の新入社員研修はどのように実施していますか。

笹沼 研修期間は約1ヵ月で、会社概要、社会人マナー研修のほかに、ExcelやPowerPointなどのPCスキルを学びます。コンサルティングファームで求められるPCスキルは事業会社で求められる水準よりも数ランク上です。そのため、PCスキル研修だけで数日間をかけています。
 その他、特徴的な研修としては、業界知見講座があります。これは産業調査部に所属する各業界の知見を持ったスペシャリストに講師を務めてもらい、小売業、鉄鋼業など、各業界の話を聞く講座です。
 そして研修期間の終盤には、企業研究を実施します。1人1社の課題企業が与えられ、1週間かけて調査を行い、最後に代表取締役の2人をはじめ、研修に関わったすべての先輩社員を前に発表するというものです。コンサルティングファームならではの研修と言えますね。
 こうして約1ヵ月間の研修を経て、4月末に正式配属が決定します。配属部署は、コーポレート戦略部門(企業戦略支援及びソリューション支援)、マネジメント・コンサルティング部門(経営改革支援及び再生支援等)、M&Aアドバイザリー部門(M&Aアドバイザリー)、経営執行支援部門(CXO派権などの常駐支援)の4部門です。本人の配属希望も重要なファクターなので、各部の採用計画と本人の希望をすり合わせながら決定していきます。

──新入社員研修後の教育研修はどうなっていますか。

笹沼 希望するすべての若手社員に対して、研修動画を視聴できるサービスを提供しています。また、コンサルティングファームという性格上、部署によって教育研修へのニーズや伸ばすべき専門スキルに差異があります。そのため全員が一堂に会して同じスキルを学ぶというよりも、各部署に設けられている教育研修チームが主体となって、部署単位で必要とする教育研修を実施しています。他にも、新人からベテランまで取り組めるキャリアアップのための研修や学びの機会は多数用意しています。

中途社員には現役コンサルタントが直接指導

──中途採用に関しては、毎年の事業計画に合わせた人員計画に則った採用を行うのですか。

笹沼 もちろん採用は事業計画あってのことなのですが、計画している目標値までまだまだギャップがあるので、とにかく「集めて、選んで、アピールして」の繰り返しです。「人員計画達成」と大喜びして一息つくことはほぼないので、中途採用は年間を通して継続している状況です。
 中途採用者の前職は事業会社、金融業界、同業のコンサルティングファーム、監査法人など実にまんべんなく広がっていて、20代後半から30代がボリュームゾーンになっています。

──中途採用では何か特別な選考はありますか。

笹沼 オンラインでの部門紹介や1日選考会のようなイベントは各種実施しています。ただ選考プロセス自体は一般的で、書類選考と平均3回の面接を経て内定です。ポジションによっては募集要件に必要なスキルや資格が加味される場合もありますが、コンサルティング、アドバイザリー業務全般で必須の資格がある部署はありません。

──中途採用者の場合、前職の経験やスキルを活かしてチャレンジされる方が多いと思いますが、入社後の教育研修はどのように実施していますか。

笹沼 当社は小さい部署で50名、大きい部署で100名を超える組織になっており、それぞれが教育研修チームを設置しています。このチームのメンバーは人事専門部署ではなく、コンサルティングの現場で活躍する現役コンサルタントです。彼らがコンサルティング業務と並行して、OJTをどのように組織的に行っていくか、それ以前の基礎教育をどのように実施するかなどを考え、勉強会やスクール形式の講座を用意しているのです。現役コンサルタントから直接学べる貴重な機会ですので、入社1年未満は全員必須で参加というルールを設けて実施しています。

自分のキャリアは自分でデザインする

──社内制度や福利厚生面でフロンティア・マネジメントらしい特徴的なものをご紹介ください。

笹沼 「部署間異動支援制度」というフリーエージェント制度があります。希望する部署があれば自ら挙手し、異動希望先との間で話がつけば、現在いる部署は拒否できないしくみです。自分自身でキャリアをデザインしていける制度ということで、社内でアピールしています。
 海外進出も積極的で、現在、シンガポール、ニューヨーク、上海に拠点を持ち、今後さらに増える可能性があります。まだ人数は少ないのですが、ニューヨーク、シンガポール、パリで働いているメンバーは、みな自分から海外に行きたいと手を挙げた人たちです。そうしたチャンスがあるのも当社の魅力だと思います。

──自分のキャリアは自分でデザインする。徹底して実現しているのはすばらしいですね。

笹沼 ありがとうございます。「この案件に入りたい」といった目の前の短期的な要望は叶えられないこともありますが、「こんな専門性を築きたい」「海外経験をしたい」といった中・長期的なキャリアビジョンは、しっかり話を聞いて積極的に叶えようという視点で会社全体が動いています。
 人事考課にもつながりますが、基本的に年功序列的考えはありません。若くても業績が評価される人間はどんどん昇級していくし、ゆっくり地道にという人もいて、いろいろなパターンがあります。どれが良いという話ではなく、そうした多様な人たちが一緒に手を組んで仕事を進めているのがフロンティア・マネジメントです。年2回実施される人事考課の評価項目は、定性的な部分から定量的な売上の部分まで、非常に細かく多岐にわたっています。各部門の責任者が何日もかけて評価を決めるのですが、そこにかなりのエネルギーを割いているのも当社ならではと言えますね。

──福利厚生などでは何か特徴的な制度はありますか。

笹沼 ひとつは、持株会があることです。上場しているコンサルティングファームが少ない中で、当社は東証プライム市場に上場しています。また、選択制確定拠出年金制度や、会員制の福利厚生プランもあります。他にも、全社員参加のオフサイトミーティングを年2回開催しており、部署を越えたコミュニケーションを図れるよう工夫しています。
 こうした取り組みが、社員のモチベーションを高く保ち、働きやすい環境を作り出していると考えています。今後も、社員がより高いパフォーマンスを発揮できるような制度やカルチャーを積極的に作っていく予定です。

どの部署でもニーズの高い公認会計士

──専門職が集い企業経営に関わるコンサルティングファームでは、資格をお持ちの方も多いと思います。みなさん、どのような資格をお持ちですか。

笹沼 代表取締役の大西は弁護士で、同じく代表取締役の松岡は証券アナリスト出身です。社内には弁護士5名、公認会計士・税理士23名をはじめとした多数の有資格者が在籍し、バックグラウンドとしても金融機関出身者40名、事業会社出身者59名(2022年12月現在)が活躍しています。
 ビジネス、金融、会計、税務、法律などの専門家が集結して、各企業の経営課題に対して最適な専門家チームを結成し、総合的な視点で課題解決する。創業時のミッションを果たすために、相当数の資格者が在籍しているのは特筆すべき点です。特に公認会計士は以前からすべての部門で高いニーズがあります。

──有資格者に絞った採用は行っていますか。

笹沼 以前、公認会計士を対象としたオンライン会社説明会をしたことがあります。会社紹介、実際の業務の説明、なぜ公認会計士が当社で活躍できるのかをお話しし、質疑応答の時間などを設けてその後のエントリーを促すものです。有資格者に絞った採用活動は、ここ最近では公認会計士だけです。それぐらい、公認会計士に対するニーズが高いと言えます。

──求職者の応募書類に何らかの資格名が記されている場合は、どのように判断していますか。

笹沼 当社は全体的に資格を持っている方からの応募が多いので、公認会計士レベルの資格でないと、採用に直結する評価にはならないことが多いです。新卒に関しては、資格そのものが裏付ける知識に過剰に期待することはないかもしれませんが、資格取得に踏み切った行動力や学習経験は、大いに評価しています。

──社員の資格取得を支援する制度などはありますか。

笹沼 能力開発支援制度があります。業務上の必要性がある、あるいは有効な資格であれば、上席の承認を経て取得費用の一部や書籍購入費などを会社が負担するという制度です。
 また弁護士や公認会計士の有資格者に対しては、年会費も会社で負担しています。

──最後に、資格取得やキャリアアップをめざしている方々に向けてメッセージをお願いします。

笹沼 資格を取得するとその後のキャリアの選択肢が広がるので、若いうちに取得するのは素晴らしいことだと思います。「受験期間のぶんだけ、遠回りになるのではないか」と迷われる方もいるかもしれませんが、そこで費やす1年、2年は必ず大きなリターンが期待できますので、がんばってください。
 合格後、当社に関心を持った方はカジュアルなミーティングから実際の選考までいろいろなリクエストに対応しますので、ぜひご連絡ください。公認会計士試験合格者は監査法人に進む方がほとんどだと思いますが、コンサルティングやアドバイザリー業務という「未来の話」を作っていく仕事にも興味を持っていただけたらと思います。監査法人で公認会計士として監査実務を経験したあとの選択肢にも入れていただきたいですね。将来CFOをめざしている公認会計士の方なら、当社でコンサルティングやアドバイザリー業務を先に経験すると、より実践的なCFOになれると思います。皆さんのチャレンジをお待ちしています。

[『TACNEWS』2023年9月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

会社概要

社名     フロンティア・マネジメント株式会社
設立     2007年1月4日
代表者    代表取締役 共同社長執行役
       大西正一郎 松岡真宏
本社所在地  東京都港区六本木3-2-1
       住友不動産六本木グランドタワー41階

事業内容

経営コンサルティング事業、M&Aアドバイザリー事業、
再生支援事業、制度関連助言業務、教育研修事業、資金支援業務         

従業員数

341名(グループ連結)(2023年3月末日現在)

URL

https://www.frontier-mgmt.com/

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