人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第53回 株式会社サニーサイドアップグループ

Profile

稲員 諒翔氏(写真左)

コーポレート本部
総務人事部 人財開発グループ

上原 麻衣氏(写真右)

コーポレート本部
総務人事部 人財開発グループ


サニーサイドアップグループが最初に話題を呼んだのは、1993年のJリーグ発足後、当時サッカー選手だった前園真聖氏や中田英寿氏とマネジメント契約を結んだことだった。その後も「たのしいさわぎをおこしたい」をスローガンに掲げ、たくさんの楽しいさわぎを世界に送り出してきた。このスタンスは採用活動にも大いに活かされている。
「サニーサイドアップグループらしい」採用とは、どのようなものか。コーポレート本部総務人事部人財開発グループの稲員諒翔氏と上原麻衣氏に、採用方針や育成計画、そして福利厚生や社員制度にスポットを当ててお話をうかがった。

「たのしいさわぎをおこしたい」

──最初に、サニーサイドアップグループについてご紹介ください。

上原 サニーサイドアップグループは、PRコミュニケーショングループです。大枠で「PR」と言っていますが、PR、プロモーション、デジタルプロモーション、スポーツマーケティング、グローバルコミュニケーションという幅広い領域で「人の心と世の中を動かす」ことが私たちのミッションです。
 1985年、世の中でまだ「PR」という言葉が耳慣れないものだった頃、小さなワンルームマンションの一室でサニーサイドアップは生まれました。1990年代にはスポーツ選手のマネジメントビジネスをスタート。サッカー選手とのマネジメント契約で、一躍サニーサイドアップグループの名が知られるようになったのはその頃です。2000年代にはオールデイダイニング「bills」の日本初上陸を担当してレストラン事業に進出し、今ではグローバル展開するようになりました。
 このようにサニーサイドアップグループは、「たのしいさわぎをおこしたい」をスローガンに事業を広げています。人の心が動けば、行動が変わり、やがて世の中全体が変わっていく。そんなPRの力を私たちは知っています。まだ知られずに埋もれているものを、なくてはならない存在に変える。大切なことに気づいてもらい「今すぐ行動を起こしたい」という空気をつくる。それが「伝える」を仕事にする私たちの使命だと考えています。

──直近では、どのようなことに注力されていますか。

上原 私たちはポストコロナの円安や物価高を商機と捉えて、インバウンド消費や海外事業の日本進出をしかけようとしています。そこで今注目しているのは「国内外のダイバーシティ推進事業/SDGs推進事業」「日本IP(キャラクター・漫画・アニメーションなど)の海外展開」「海外ブランド・店舗の日本進出」「海外企業のコンシューマー向けサービスの日本でのローンチ」「日本で開催する海外スポーツ・エンターテイメント事業」「インバウンド旅行者向けのPR」「国内インフルエンサーの海外展開/インフルエンサーマーケティングの海外展開」といったプロジェクトです。
 そのため新卒採用では、通常コースだけでなくグローバルチャレンジコースを設定しました。通常コースは語学レベルを問いませんが、グローバルチャレンジコースは、ビジネス会話レベルの英語力を持ち、日本語での日常会話がスムーズに行える方を目安としています。学生時代の経験を活かしてグローバルにチャレンジしたい方は大歓迎です。

2024年卒採用は25名程度を予定

──新卒採用とキャリア採用はどのように実施していますか。

稲員 2023年4月入社の新卒は、サニーサイドアップで23名、持株会社のサニーサイドアップグループで1名、子会社のステディスタディで1名の合計25名を採用しました。2024年4月採用も25名程度を目安に採用を進めています。

──キャリア採用は年間を通して募集していますか。

稲員 そうですね。期初の事業計画に則った人数の採用を進め、増員が必要な場合は追加で募集します。

──どのような人財を求めているのでしょうか。

上原 新卒採用では、ポテンシャルを前提に多種多様な人財に入ってほしいと考えています。基本的なポテンシャルとして、好奇心旺盛で行動力があって、チームでコミュニケーションが取れることをポイントに見ています。

稲員 キャリア採用の場合、さらにPR業界や広告業界でのご経験といったスキル面も見ています。なお、PR発想を軸にして、まだあまり知られていないものや人を世の中に広げてみたいという方は、経験者・未経験者問わず積極的に採用しています。

──新卒採用の内定までの流れを教えてください。

上原 エントリーシートによる一次選考後、適性検査を経て、グループで行う二次選考、個人で行う最終面接というフローになっています。海外在住でない限り、最終面接だけは全員来社していただいて対面で実施しています。

──面接2回目が最終面接というのは早いですね。そこで不採用になることもありますか。

上原 最終面接では、社長、人事部長、役員が面接官を務めます。面接回数が少ないので、最終面接で判断することも多いですね。

──応募者にはどのような業界を志望している学生が多いですか。

上原 広告業界やエンターテイメント系の業界を併願する学生が多いですね。広告業界やコミュニケーション業界を見てから、「やりたいのはPRの仕事だ」と思われる方もいるようです。

──内定者に向けて、何かフォローは行っていましたか。

稲員 eラーニングのしくみを用意して、ビジネス文章力を身につけていただくプログラムにチャレンジしてもらっています。

上原 学習系のフォロー以外に、親睦を深める時間も設けています。役員たちも集まって歓迎イベントを行ったり、オンラインでの懇親会を開いたりしていますね。
 その他、毎年期初となる7月に行う期首発表会に参加してもらったり、10月の内定式に向けて内定者のみなさんで力を合わせプロジェクトに取り組んでもらったりもしていますし、希望者にはアルバイトにも参加してもらっています。アルバイトでは現場のメンバーと一緒になって色々な業務を経験してもらうので、一番実務に近い研修になっています。

上原 麻衣氏
新卒でレディースアパレルメーカー入社。販売員、人事を経験したのち、2022年3月、サニーサイドアップグループ入社。コーポレート本部総務人事部人財開発グループで主に新卒採用担当として活躍している。

最終面接前には先輩訪問も実施

──2023年4月の入社式はどのように実施しましたか。

上原 オフィスで対面で行いました。サニーサイドアップグループの入社式では、毎年名前入り万年筆と松下幸之助さんの著書『社員心得帖』をセットにしてお渡ししています。配属先となる会社の役員も参加し賑やかな式となりました。入社式のあとはみんなでパークハイアットホテルのニューヨークグリルでちょっと高いランチを食べて、社会人としての門出を祝います。

──その後は新入社員研修に入るのですか。

上原 入社式のあとは2週間、新入社員研修を実施します。ビジネスマナーや社内ルール、現場社員との交流、役員のお宅訪問など、イベントも盛りだくさんです。

稲員 新入社員研修が終わると現場配属となり、配属先でのOJTに入ります。加えて、オンラインでプランニングの基礎を学ぶ講座や、若手メンバーだけが集まって語り合うプログラムも実施しています。そのプログラムでは、1年目がスタンダードコース、2年目がプロフェッショナルコースと呼ばれる複数年の階段式カリキュラムを別途用意しています。
 今期からは階層別研修にも力を入れていて、若手、リーダー、部長と階層を分けたトレーニングも展開しています。

──現在、2024年4月入社に向けて採用活動を進めていると思いますが、選考プロセスの中でミスマッチを防ぐための対策などはしていますか。

上原 2024年入社から取り入れたのは、最終面接前に必ず先輩社員との面談の機会を作ることです。初めての試みなのでまだ結果はわかりませんが、リアルな体験談を聞けるため、入社後のイメージが膨らむのではないかと期待しています。
 学生の方々からは、「サニーサイドアップグループって、多種多様ないろいろな方が働いているんですね」「就職活動のアドバイスをもらえました」などの声をいただきましたので、その面談ではざっくばらんな話をしているようです。

「たのしく働き、たのしく生きる」独自の福利厚生「32の制度」

──福利厚生や社内制度でサニーサイドアップグループらしいユニークなものがあれば紹介してください。

稲員 サニーサイドアップグループでは、メンバー一人ひとりが楽しく充実した生活を送れるように、そして働きやすい環境を醸成しより豊かな人生を送ることができるように、2011年に独自の福利厚生制度「32(サニー)の制度」を作りました。月間平均1万歩歩くと報奨金3,200円を支給する「幸せは歩いてこない」制度、健康診断で総合「A」判定のメンバーに32,000円の健康ボーナスを進呈する「目指せ!A身体」制度、公式睡眠タイムの取得を認定する「シエスタ」制度といったユニークな福利厚生制度をはじめ、社会のトレンドやメンバーの声を交えてアップデートし続けています。2022年9月からは、適度な睡眠時間の確保でウェルビーイングな働き方をサポートする「寝る子は育つ」制度を新設しました。この制度は、メンバー全員の日々の睡眠時間をスマホアプリで計測し、1日平均7時間以上の睡眠をとったメンバーに毎月報奨金3,200円を支給するというものです。
 グローバル人財の育成につながる制度としては「英語“とか”ペラペラ」制度があります。語学レッスンや学習アプリなどの継続的な語学学習や、英語以外にも複数の語学を習得したメンバーを応援する制度です。ビジネスもボーダレス化が進んでいるので、積極的にバイリンガルやトリリンガルをめざしてほしい、という思いが込められています。始まったばかりの制度ですが、私も語学学習アプリを入れて申請をしました。

上原 勉強系の資格だけでなく、「たのしいさわぎをおこしたい」メンバーが集まっているので、トリッキーな資格取得者もにわかに増えています。ひとつの例ですが、サウナブームの先駆けに「サウナ・スパ健康アドバイザー」を取得したメンバーがいました。するとクライアント企業から「ちょうどサウナの企画を考えていて、専門家を探していたのでぜひ一緒にプロジェクトを進めたい」というオファーが来て、資格をきっかけに活躍の幅が広がったという話もありました。思いもかけない何かがつながる瞬間って、たのしいですよね。そんな化学反応が起きやすいところもサニーサイドアップグループらしさなのかもしれません。
 また「Dear WOMAN」制度という、様々なライフプランの選択肢を広げたい、働き方や生き方について考えるきっかけをつくりたいという想いで始まった制度もあります。2022年3月には「AMH検査(卵巣予備能検査)」費用補助、同年7月に「精液検査」費用補助なども追加していて、一部の制度では男性社員も適用できるように範囲を広げています。

──多くの制度がありますね。そうした費用まで会社が補助するという例は、なかなかないと思います。

上原 シリコンバレーのニュースをきっかけに導入した「卵子凍結」費用補助は2015年から始まりましたが、こうした動きは当時珍しく、国内の民間企業ではおそらく初めての事例でした。そうしたことを先駆けて実際に取り入れ、社会にとって意味のあることを体現していくマインドが根付いているのがサニーサイドアップグループです。

──仕事はもちろん、自分の人生もきちんと考えようというワークライフバランスの実現まで会社がサポートしているところがいいですね。

上原 ありがとうございます。他にも「たのしいさわぎ創造支援」制度という、「エンタメ体験」にかかった費用を月額上限2,000円まで会社が負担する制度もあります。目で見て体で感じたことは、仕事においても次のたのしいさわぎを創り出すヒントにつながるはずとの想いから生まれた、設立当初から続く歴史ある制度です。映画やライブはもちろん、リアル脱出ゲームやグランピング、キャンプ等の最旬レジャーも対象なので、かなりの利用者がいます。

稲員 諒翔氏
新卒でメーカーに就職し営業を担当したのち、人材育成コンサルティングファームに転職して人材育成制度構築等に従事。2021年7月、サニーサイドアップグループ入社。各種制度構築、研修講師およびコンテンツ開発、キャリア採用担当として活躍している。

「スキルアップ支援」制度で必要な資格の取得を支援

──資格に関しては、エントリーシートや履歴書に取得した資格の記載があった場合、どのように評価していますか。

上原 新卒採用では必須資格や要件は特に定めていませんので、なければなくても大丈夫です。ただ多くのグローバル人財を求めているので、TOEIC® L&R TESTのスコアはプラス要素にはなると思いますね。
 また先ほどご紹介したサウナ系資格の例のように、何かに興味があって、その興味を突き詰めるために資格を取得していることが見えると、面接でも興味を持ってお聞きしています。

稲員 キャリア採用では、保有資格についてかなり注目しています。仕事をしながらどのようにして自分を高めてきたのか、履歴書の内容が応募者のブランディングになるのできっちり見ています。

──人事部であれば社会保険労務士、というように、仕事で役立ちそう・必要になりそうな資格の取得はどのように支援していますか。

上原 「スキルアップ支援」制度が適用されます。部署によって、簿記、薬事系資格、防災士などリクエストはかなりあります。あらかじめ資格のラインナップが決まっているというよりも、必要に応じてその都度上司と相談しながら申請して、補助が出る流れです。上限は月額3万円ですが、上長の承認を得られれば超えた場合でも補助が出るケースもあります。私自身も支援制度を使って、メンタルヘルス・マネジメント®検定を受けました。

──柔軟なサポートがあるのですね。最後に、資格取得やキャリアアップをめざしている読者にメッセージをお願いします。

上原 自分の方向性を定め、そのプロセスで必要なスキルとして資格取得をめざすという方は多いと思います。一方サニーサイドアップグループのように、決め打ちではなく自分の守備範囲を広げるものとして資格が役立つようなケースもあります。クライアントの悩みに寄り添うためや、自分の視野を広げたり、新しい分野にチャレンジしたりするための手段のひとつとして資格を考えるのも、おもしろいのではないかと思います。

稲員 私は最初に勤めた会社にいた頃、中小企業診断士の勉強をしたことがありましたが、その頃を振り返ると資格取得そのものがゴールになってしまっていたと思います。なぜ勉強するのか、資格を取得したあとどうなりたいかを考えることは大切です。私から送る言葉があるとしたら、「資格を取った先にどんな自分の姿を描きたいのか、そのイメージをしっかりと持った上でスタートすると、資格の魅力がより輝く」ということです。ぜひがんばってください。

[『TACNEWS』2023年7月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

▲ オフィス中央に構えるセントラルキッチン

会社概要

社名     株式会社サニーサイドアップグループ
設立     1985年7月1日
代表者    代表取締役 次原 悦子
       代表取締役 渡邊 徳人
本社所在地  東京都渋谷区千駄ヶ谷4-23-5
       JPR千駄ヶ谷ビル

事業内容

PR、マーケティング・コミュニケーション

従業員数

55名(グループ連結従業員数:492名)
※2022年6月末日現在

URL

https://ssug.co.jp/