人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第50回 リコージャパン株式会社

Profile

荒谷 幸輝 氏(写真左)

人事センター採用グループ

2009年、新卒でリコージャパンの石川支社に入社。営業を経て2018年、人財本部人事部採用センターに異動、主に新卒採用を担当。

久鍋 佑未 氏(写真右)

人事センター採用グループ

2011年、中途採用でリコージャパンへ入社し、人事部門で労務管理を担当。2016年、人財本部人事部採用センターに異動となり、現在は主にキャリア採用を担当。


リコージャパン株式会社は、世界展開を図るリコーグループの一員として、日本国内47都道府県に48の支社を構え、約350の事業所を展開する販売会社である。グループ全体でOA機器メーカーからデジタルサービス企業へと変貌しつつあり、リコージャパンも軸足をデジタルサービスにシフトしている。約1万9千名の社員のうち1,300名ものSE職が活躍しているのもその現れのひとつだ。デジタルサービスにシフトするリコージャパンでは、今どのような人財が必要なのか。新卒採用担当の荒谷幸輝氏とキャリア採用担当の久鍋佑未氏に、リコージャパンの人財採用と社内制度などについてうかがった。

三愛精神のもと、DX化を通して社会に貢献

──リコーグループ(以下、リコー)はOA機器メーカーとして有名ですが、リコージャパンはその中でどのような役割を担っていますか。

荒谷 「リコーといえばコピー機を売っている会社ですね」と思われることも多いのですが、現在、グループ全体で「機器製造会社」から「デジタルサービスを提供する会社」へと生まれ変わろうとしています。
 その中でリコージャパンは、日本国内の販売を含む顧客接点を担当しています。47都道府県に約350の事業所を置いているため、日本中のお客様に直接足を運んでご提案できる強みがあります。さらに、お客様のニーズに合わせて自社の商材だけでなく他社の商材も提案できるマルチベンダーである点や、販売からアフターメンテナンスまで、お客様の課題を一気通貫でサポート・解決できる体制が整っている点は、リコージャパンの最も大きな特長です。
 以前はOA機器によるオフィスオートメーションが私たちの提供する価値でしたが、現在はデジタルサービスにシフトし、「はたらく人の創造力を支え、ワークプレイスを変えるデジタルサービスを提供すること。そしてお客様の“はたらく”に歓びを。」という目的のもと事業を行っています。売上構成的にも、デジタルサービス事業が過半数を超え、同時にITソリューションプロバイダとして、SIerとしての認知も進んできています。

──リコージャパンのミッションを教えてください。

久鍋 リコージャパンのミッションは「世の中の役に立つ新しい価値を生み出し、生活の質の向上と持続可能な社会づくりに責任を果たす」です。これはリコーグループの企業理念「リコーウェイ」の中の創業の精神「三愛精神」から派生したものであり、このミッションのもと「信頼と魅力のグローバルカンパニー」をめざして、全社員共通の価値観を持って臨んでいます。
 リコージャパンとしては、中小企業のDX化を通して社会課題を解決することが創業の理念から続く私たちの役割だととらえていて、「働き方改革やデジタル導入に取り組みたくても、自分たちだけではできない」と悩む全国の中堅中小企業に対し、地域の金融機関の協力のもと支援を行ったり、その延長線上として地方自治体の支援も行ったりしています。こうした活動すべてに、「お客様のその先のお客様にまで届く価値を創出する(Customer's Customer Success)」というビジネスコンセプトがあります。

「好きな街で、好きなだけ。」社員の9割が地元で働く

──採用はどのような方針で進めていますか。

久鍋 採用人数としては、2022年4月入社の新卒は376名、2023年4月入社の新卒内定者は411名、2022年度のキャリア採用は約100名です。キャリア採用に関してはDX化に伴うデジタル人財が不足しているため、即戦力となる人財を外部から採用したいという思いで力を入れています。
 社内の年齢構成が崩れてしまわないよう、新卒採用は毎年定期的に行いつつ、当社が進めようとしているDX化に必要な人財についてはキャリア採用で積極的に補うという方針です。

──「求める人物像」はありますか。

久鍋 スキルアップや自己成長に必要なことに自ら意欲的に取り組み、仕事に関しても自分で判断して進められる自律型人財を求めています。その意味では、新卒・キャリアともに基本的な「求める人物像」は共通しています。新卒は自律型というキーワードに加えて、リコージャパンの考え方や価値観に共感し、将来にわたって継承していける方を求めています。

──新卒の選考に関して、工夫していることはありますか。

荒谷 流れとしては、エントリー後に適性検査を行い、1次面接、2次面接ののち内定という選考スケジュールです。また入社後のミスマッチを限りなく抑えるために、選考過程のどこかで事業所見学会も実施しています。特にここ数年はコロナ禍の影響により選考のほぼすべてをオンラインで終えることが多いので、企業理解や仕事の理解がなかなか進まないケースもあります。そこで最寄りの支社を見てもらったり、オンライン社内見学会を開いて社員との座談会を開いたりすることで、双方のミスマッチ防止を図っているのです。
 他にも、リコージャパンは採用コンセプトに「好きな街で、好きなだけ。」を謳っていて、エントリーの段階で働きたい土地を都道府県別に第3希望まで選べるようになっています。これが採用の大きな特徴ですね。実際、社員の9割が自身の地元で働いていて、基本的に都道府県を跨いでの転勤はありません。転勤する場合は本人の同意を前提にしています。

久鍋 希望の地域を選べるのは地域限定職だからではなく、総合職として、希望の地域で働けるしくみになっています。地域による差は若干あるものの、基本的に働く場所が限定されているからという理由で処遇が落ちることもありません。
 転勤が発生する事例としては、一般職からマネージャー職に上がるタイミングで、いろいろな地域や他事業を経験したいと希望するケースです。マネージャー職以上になると昇格を見据えた上での転勤を希望する人が出てきます。

──希望するエリアで働けるのは大きな魅力ですね。インターンシップについてはどのように実施していますか。

荒谷 夏からオンラインで全国の大学3年生向けに各回定員300名で実施しています。1day仕事体験として、日程をあけた4ステップでシリーズ化しているのが特徴です。学生の方々の就職活動時期まで定期的に会える機会を設けて、リコージャパンについての理解と、学生の方自身の自己理解を深めていただけるコンテンツにしています。キャリア支援の要素も取り入れている点が好評で、2021年の参加者は1,800名、2期目の2022年はすでに2,000名を超える方に参加いただく予定です(2022年10月取材時点)。

階層別教育、職種別教育、自己啓発支援の手厚い人財育成制度

──2022年4月の入社式や新入社員研修は、どのように実施されましたか。

久鍋 入社式は48の支社ごとにブロックでの集合開催とし、本社をメイン会場にして50拠点を中継で繋ぎ、社長挨拶などは各支社に配信して行いました。
 新入社員研修については、コロナ禍以前はすべて集合で実施していたのですが、2022年は例年行われるリコーグループ全体の共通研修と、その後のリコージャパン単体での共通研修をオンラインで実施しました。ここまでの1ヵ月間の研修は座学で、その後1ヵ月間の職種別研修と10ヵ月の現場実習を経て、入社1年後に配属になります。職種別研修は、職種によっては集合型で実施していて、例えば保守を担当するカスタマーエンジニアは研修施設に集まり実機を触りながら研修を行っています。1年間は実習期間とはいえ、営業職は実際に数字を追いかけて営業活動をするので、本人たちにすれば実務となんら変わらないようです。

荒谷 この実習期間中はアドバイザー制度を設けていて、バディと呼ばれる先輩社員が1名ずつつくので、困ったことがあればすぐに聞けるようになっています。

──新卒社員が再び集まるような集合研修はありますか。

荒谷 1年目フォローのあとも、2年目、3年目と集合型の階層別研修が続きます。1年目は会社への定着度合いをフォローするニュアンスが強いのですが、3年目になると仕事で壁にぶつかったり悩みが出てきたりするタイミングなので、全職種共通で2日間、キャリアについて考える内容の研修を実施します。そこではキャリアコンサルタントが全員と1対1でキャリア面談を行います。
 またこの共通教育とは別に、配属後の職種別教育も定期的に実施し、かなり手厚く仕事内容のフォローをしています。

──2023年4月入社の新卒内定者に対して、内定式後にフォローする懇親会や課題などはありますか。

荒谷 全国の内定者向けに内定者懇親会をオンラインで実施しました。また、各都道府県の内定者に対して各支社で対面の懇親会を開いたり、入社時に必要な書類提出のサポートをしたりしています。営業職に関しては、入社後にITパスポート資格が必要になるので、資格取得に向け、教材も配付しています。

1,300名のSEが活躍するリコージャパン

──リコージャパンのキャリア採用向けWebサイトには多くの職種が載っています。キャリア採用はどのような方針で進めていますか。

久鍋 その年の事業戦略によってどのような人財を採用するかが変わってきますし、部門から補充したい人財や職種の要望を聞いた上で求人を出しているので、時期と年度によって内容は変わります。
 キャリア採用の入口としては、紹介型のエージェントから登録者を紹介いただくケースが一番多いですね。もちろん社員からのリファラル採用や直接応募もあります。来期は自社のWebサイトからの直接応募を強化していきたいと考えています。
 当社は「販売会社」というイメージが強く、SEの転職先としてはなかなか名前が出てこないようですが、実は従業員約1万9千名のうち、1,300名はSEが占めています。システム開発専門の企業ができるくらいの人員規模でSEが活躍している点は、ぜひ知っていただきたいですね。
 特に当社のSEは基本的に上流工程を担うので、終日パソコンに向かうというよりも、プロジェクトを取りまとめたり、営業担当者に同行してお客様へ提案を行ったりと、社内よりも社外にいる時間が長いほどです。上流工程を経験してみたいSEの方にとっては、やりがいのある仕事だと思います。
 採用担当としては、どのような方法であれ、その時に出会えた最高の方を採用できるように取り組んでいます。

──キャリア採用の選考フローで新卒と異なる点はありますか。

久鍋 流れは新卒と同じですが、書類選考の段階で必要なスキルや能力をお持ちの方がいた場合は、まず一度面接でお会いして直接話をうかがうようにしています。キャリア採用の場合は募集の段階でどの部門のどのポジションに入りたいかを限定しているので、1次面接は該当部門の上司、2次面接は部門のトップや人事部が入って最終面接を行います。

──キャリア採用では、入社後の研修はどのように行っていますか。

久鍋 新卒採用と同じようなリコーグループの全体研修が半年に1度あるので、ご自身の入社のタイミングに近い時期の研修に参加いただいています。キャリア採用の方は基本的に即戦力が前提なので、社内の制度やシステムについてはOJTで部門ごとに学んでいただきます。そしてキャリアを積んだのち、マネージャーになるタイミングで受けるマネージャー研修や専門教育については、全社の研修体制の流れに合流していただきます。

働きやすく充実した社内制度

──社内制度や福利厚生で特徴的な制度があれば教えてください。

久鍋 直行直帰を認めていて、1人1台ノートパソコンを支給しているので、情報漏洩に気をつければどこでも仕事ができる環境が整っています。育児や介護のための時短勤務制度も設けていますし、有給休暇も数年前から1時間単位で使えるようになりましたので、保育園への送迎や通院などもしやすいと好評です。
 多様な人財に活躍してもらいたいので、社内にはダイバーシティやワークライフマネジメントに大きく貢献する様々な制度が整っています。子育てしやすい会社として「プラチナくるみん」の認定を受けているほか、女性活躍推進の「えるぼし」でも最高位を取得し、ホワイト企業を認定する「健康経営優良法人ホワイト500」も5年連続いただいています。退職金やその他の福利厚生面でも一般的なものはすべて揃っていますし、最近では男性の育児休暇取得推進にも力を入れていて、働きやすさに不安を感じる社員はおそらくいないだろうと思います。

社員全員がプロフェッショナル。自律型人財が集まる会社

──先ほど営業職はITパスポート資格が必要だとうかがいましたが、その他にも入社の際に必要な資格はありますか。

荒谷 新卒の営業職は、ITパスポートを入社1年目に取得してもらいます。その他、カスタマーエンジニアやSEに関しては、電気工事に関する資格や基本情報技術者などの国家資格を取得してもらっています。
 入社前学習については各職種の必須資格の学習に向けて会社からテキストを配付し、受験費用は全額会社で負担しています。

久鍋 当社では「知識・技能・成果」の3要素によって個々の社員のプロフェッショナルレベルを認定する「プロフェッショナル認定制度」を設けています。この制度は社員一人ひとりの「スキルの見える化」と「自律的成長の支援」を進めることを目的としています。会社としてマイクロラーニングや研修といった学びの機会を提供していますが、さらに自律型の人財として自らを高めていってほしいという考えから作られた制度です。職種別のスキルセットを定義することにより、社員自らがどのようにレベルを上げていくか考えながらチャレンジできるよう、サポートを行っています。
 公的資格などの取得に向けた勉強もできる体制が整っているので、スキルアップや自己成長意欲が高い方にとって、とても良い環境だと思います。

──最後に、資格取得やキャリアアップをめざしている方に向けてメッセージをお願いします。

久鍋 資格を持つことは、社内での活躍はもちろん、ご自身の今後のキャリアに大いに役立つと思います。資格を取得するための努力やプロセスは自己成長につながります。ぜひ前向きにがんばっていただきたいと思います。

荒谷 資格試験の合否に関わらず、資格取得に向けた努力は、人生の中で大きな糧として生きてくるでしょう。そしてその努力ができる人は、当社の求める「自律的に自己を高め、努力できる人材」そのものです。ぜひ、向上心を持って成長されていくことを願っています。

[『TACNEWS』2023年3月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

会社概要

社名     リコージャパン株式会社
設立     1959年5月2日
代表者    代表取締役 社長執行役員 CEO 木村 和広
本社所在地  東京都港区芝3-8-2 芝公園ファーストビル

事業内容

さまざまな業種におけるお客様の経営課題や業務課題の解決を支援する各種ソリューションの提供

従業員数

18,697名(2022年4月1日現在)

URL

https://www.ricoh.co.jp/sales/about/