人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第42回 ブックオフグループホールディングス株式会社

Profile

野村 進一氏

グループ人財開発部長

新卒で建築会社に入社するもすぐに退職し、数年間のアルバイト生活を送る。2000年、ブックオフコーポレーション株式会社入社。店舗店長と本部を行き来し、2008年に人財部に配属となり、以降は人事系業務に従事。2019年、グループ人財開発部長となり、主に新卒採用、研修制度、育成支援を担う。産業カウンセラーとキャリアカウンセラーの有資格者。


2020年、創業30周年を迎えた年に、ブックオフはそれまでに経験したことのない厳しい状況にさらされた。コロナ禍による休業要請により、大型・都市型店舗を中心に休業を余儀なくされたのだ。巣ごもり需要やインターネット販売などで収益回復を果たすことができたのは、店舗運営で培われたチームと人を大切にする文化が根付いているブックオフの底力に他ならない。「人を大切にする」ブックオフでは、どのような人材観を持って人を育てているのか。採用や育成について、グループ人財開発部長の野村進一氏にうかがった。

デジタル化を推進、消費者の生活様式の変化に対応

──最初に、ブッオフについてご紹介ください。

​野村 ブックオフは1990年に生まれた、本を中核とするリユースのリーディングカンパニーです。「多くの人に楽しく豊かな生活を提供する」をミッションに掲げ、子どもから大人まで、男女を問わず読む「本」のリユースを通じて、多くの人に「楽しみ」を提供してきました。全国に約800のブックオフ店舗を展開するだけでなく、ブックオフオンラインやヤフオク!などECサイトを通じて、本のリユース市場で54%以上のシェアを獲得し、業界No.1となっています(中古ビジネスデータブック2020)。
 また2018年のホールディングス化にともない、地域支社の店舗運営に関する権限を強化し、現場担当者が主体的に判断・チャレンジしやすい環境も整えました。本の他にゲームや洋服、家電、ブランド品、スポーツ用品、おもちゃ、楽器、食器など、多種多様な商材のリユースにもチャレンジしています。
 けれども2020年4月、それまで経験したことのない困難が訪れました。新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令から、2年以上に及んでいるコロナ禍です。コロナ禍は、店舗への休業要請で多大な影響を与え、売上が大きく落ち込みました。奇しくも2020年はブックオフ30周年の年でしたが、経営計画の見直しを余儀なくされたのです。
 そんな厳しい状況にも関わらず、巣ごもり需要で本の販売が好調に推移したり、強化してきたトレーディングカードやホビー系商材の売上が大きく伸びたりといった好転もありました。加えて、2021年5月末にアプリ会員が300万名に達し、ECサイトや店舗受取サービスなど堅調に推移したことも追い風になって、売上を伸ばすことができました。
 こうした昨今のデジタル化推進により、ECサイト経由の売上が大きく伸びたことを受けて、今後は継続的なシステム投資を行い、ECサイトや店舗システム基盤の刷新など、システムに多くの費用と人材を投資していく計画でいます。アプリ会員についても現在の300万名から、2023年5月期までに倍の600万名まで伸ばすためのマーケティング投資をしていきます。

──今後の展開はどのようにお考えですか。

​野村 次の10年を見据えて、グループ事業に「国内ブックオフ事業」「富裕層向け事業」「海外事業」の3つの柱を設定して、デジタル化を加速しつつ消費者の生活様式の変化に対応していきます。
 海外事業での出店計画では、アメリカ、マレーシアの店舗運営に今後さらに注力していきます。特にマレーシアは、これまでも日本国内で買取した商材の中で、国内用としては販売が難しいものを輸出していました。これが「日本の使用品なら安心だ」と、非常に喜んで使っていただけているので、現地マネージャーによる店舗運営で今後は20店舗を目標に展開する方針です。マレーシアでの再流通によって、ゴミを減らしモノの寿命を延ばすことは、SDGsの目標「つくる責任、つかう責任」の達成に大きく貢献すると考えています。こうしたマレーシアでの国内と海外の連携という展開も見据えつつ、中断していたアメリカでの新規出店も再開していきます。

全国5つのエリアごとに採用選考を実施

──「求める人物像」を教えてください。

​野村 現在、在籍する社員は約1,200名います。そのうち店舗勤務者が860名、EC販売・買取を扱う倉庫業務担当チームと価格など商品データを扱うチームが合わせて300名、他に財務、経理、総務、広報、マーケティング、販促を担当するバックオフィス系に各部署3~6名が在籍しています。ただしメインとなるのは、実際に店舗で働く1万2千名余りのパートアルバイトスタッフです。
 このように店舗メインの職場なので、最も大切なのはチームワークとコミュニケーションになります。ひとりでがんばるのではなくて、チーム全員でチャレンジする。その中で一人ひとりが成長していくことをめざしています。ですから仲間とのコミュニケーションを大切にできる、人の気持ちに寄り添える、新しいことにチャレンジできる、成長意欲のある方を求めています。
 新卒の方は店舗配属が前提で、店舗責任者である店長候補として採用されますから、パートアルバイトスタッフをまとめる育成担当者としてリーダーシップが求められます。入社後1年も経たないうちに採用する側として自らパートアルバイトスタッフを採用し、「一緒に働こうね」と声をかけ、一から教えていくことになりますので、お客様はもちろん、スタッフたちとの「接し方」も重要になってきます。ですから「人と接する機会の中で、どのような心の触れ合いをしてきたのか」「どのような出来事があって、そのときどう働きかけたのか」といったエピソードをストーリーとして語れる方、突き詰めると「人を好きな方」を求めています。

──採用についてお聞かせください。

​野村 新卒採用と中途採用のいずれも実施していますが、全体としては新卒採用が多い傾向にあります。
 また当社では、新卒と同時に店舗アルバイトスタッフから社員になる方も新卒と一緒に同期として4月に入社式を行います。2022年4月入社は、新卒者20名、店舗アルバイトから登用した社員20名、合計40名が新たに入社しました。2023年に関しては、これより若干多めに採用したいと考えています。

──新卒採用の選考フローを教えてください。

​野村 ブックオフは全国に5つ支社があり、5つのエリアごとの採用を行っています。したがって最終面接では5支社の支社長、役職でいえば執行役員が面接官を務めることになります。エリアごとの採用なので、エントリー段階で希望のエリアと携わりたい商材をお聞きし、地域の中で選考を完結させます。そのため大きな異動はありませんが、キャリアアップのために全国、あるいは海外に行きたいと宣言してもらえれば、変更して他地域にチャンスを広げることも可能です。
 選考フローに関しては、エントリー後、説明会に参加していただいた方のグループ面接からスタートします。通過した方には個人面接、最終面接のトータル3回の選考を行っています。人物重視の採用方針のため、基本的に適性検査は実施していませんし、書類だけで採否の判断をすることもありません。2022年実施の選考は、コロナ禍でグループ面接はすべてオンラインでの実施になりました。しかし個人面談は支社に来てもらって実施することにこだわりました。リアルに人と会う仕事なので、実際に「対面で会う」というステップを飛ばすわけにはいかないからです。画面越しではわからないその人の雰囲気を大切にしたいと考えて選考しています。

新卒社員は入社後、1年半~2年で店長へ

──入社までの間、内定者フォローはどうされていますか。

​野村 内定者向けに座談会や懇親会の場を設けています。あるいはまとまった人数で大型複合店舗を見学し、その後、先輩社員を含めた懇親会を開くこともあります。店舗中心の事業なので、内定者の3割が入社前に店舗でのアルバイトを経験してから入社しているのも当社の特徴ですね。
 スキル面では、入社前に特定の資格や免許の取得をする必要はありませんし、課題も出しません。入社後に必要となるスキルについては、入社したあとから身につけていただく方針ですので、学生時代は学生生活を満喫していただきたいと思っています。

──新卒新入社員はどのような流れで実務を身につけていくのか、お聞かせください。

​野村 2022年4月の入社式はリアルで実施し、その翌日から2泊3日の新入社員研修を実施しています。研修では、社会人としての心構えやマナー、ブックオフの経営理念やミッション、ビジョンについて、また「買取、加工、補充、販売」というリユースの4つのステップについて学びます。
 これが終わると各店舗に配属され、育成担当者とのOJTに入ります。店舗では、まず入りたてのパートアルバイトスタッフと同じように、担当商材や店での仕事を覚えていきます。早い方は半年もすると店長業務を覚え始めて、1年が経つ頃にはパートアルバイトスタッフの採用面接に関わるようになります。こうして、約1年半から2年で店長に育っていきます。

──新入社員研修の後、同期が一堂に会する機会はありますか。

​野村 5年目と10年目という節目の年に、研修を実施しています。これはいわゆる研修というより、「お互い、がんばってきたね」という親睦の意味合いを込めた同期会的な集まりです。ただこの研修も、コロナ禍によって2020年以降、実施が延期になっています。

──中途採用はどのように実施していますか。

​野村 中途採用の求める人物像も、新卒採用と同じように「コミュニケーション力」「自発的・ポジティブ」「成長志向」「行動力・やり抜く力」がキーワードになってきます。さらにこのマインドに加えて、中途採用として必要とされるスキルの習得が求められます。
 中途採用は店舗スタッフ、総合買取、Webマーケティング、SEなどの本部スタッフの他、店舗外の経理や総務といったバックオフィス系の、実務経験を必要とされる部署で実施しています。人員補充が必要なタイミングで、年間10~20名を採用しています。

手厚い人事制度と充実した福利厚生

──特徴的な人事制度があれば教えてください。

​野村 人事制度で一番特徴的なのは「育成担当者制度」でしょう。内定が決まると、すぐに新入社員ひとりずつに育成担当者を決めて、一人ひとりに向き合い、最大限成長できるように促す役割を担います。育成担当者は、新入社員の配属先を決めることまで責任を負う、重要な立場です。そのため育成担当者側にも、人を育てる心得を学ぶための研修を用意しています。
 また先ほどお話しした同期会のような親睦を深めるための研修はもちろんですが、現場のOJTや業務を支援する研修は以前からずっと行っています。最近では上位職向けの研修も充実し、年に1回社外から講師を招いて実施しています。

──福利厚生面でユニークなものがあれば教えてください。

​野村 全国800店以上ある店舗の近くには、必ず社宅があります。その敷金、礼金、引っ越しに関わる費用はすべて会社が負担しますし、家賃も1万5千円から借りられます。独身者には家具付き社宅を用意することもできるので、自己負担をできるだけ抑えることができます。住宅手当が手厚いのが当社の福利厚生の特長です。
 子育てに関する休暇制度では、産前・産後休暇や育児休暇はもちろん、男性のみが利用できる「配偶者出産休暇」も設定していて、男性社員はこれを積極的に活用しています。また、私自身も1年間、短時間勤務制度を利用して週2日の時短勤務をしていました。
 その他、子どもの教育手当支給制度が手厚いのも特徴です。中でも、中学生以上の子どもがいる社員に月額2万5千円を支給する「子女教育手当」は人気の制度です。国の子ども手当や扶養手当が終わった時期から始まる制度があったらうれしいはず、という発想で設置しているので、これからも継続していく予定です。小さなお子さんをお持ちの社員のための制度はよく聞きますが、これは珍しい制度だと思います。

「人が好き」「商材が好き」。そんな方がやりがいを感じられる職場

──新卒採用では、学生時代に取得した資格についてどのように評価していますか。

​野村 新卒の場合は店舗配属になるので、資格の有無による採否の判断はしていません。ただ入社後、スキルアップを目的に、資格試験にチャレンジする社員はいます。ブランド品の真贋力を測る検定試験については研修も実施していて、受験費用の補助や合格の際の資格手当も支給しています。加えて経理系やIT系の資格も、その業務に関わるために勉強したいという社員を対象に費用補助でサポートしています。

──男女比について教えてください。

​野村 社員約1,200名のうち男性が75%、女性が25%です。数字だけ見ると男性が圧倒的に多い職場のように見えますが、1万名以上いる店舗で働くパートアルバイトスタッフは女性が多いので、トータルすると女性のほうが多くなっています。
 また、今デジタルトランスフォーメーション(DX)が世の中で叫ばれていますが、内製化を進めるためにもECサイトやIT系の人材は、男女問わず採用に力を入れています。

──最後に、キャリアアップや資格取得をめざしている方にメッセージをお願いします。

​野村 ブックオフの店舗においては、資格の有無は問いません。言い換えるとブックオフは、資格を持っていなくても「人との接点」への意識が強い方ならウェルカムです。ただ入社してから、その時の状況に応じて「もう少しこの勉強をしてみたい」と思ったのであれば応援します。実際に私も、店長として現場を束ねるようになったあとでいろいろ思うところがあって業務に関連する資格の必要性を感じるようになり、資格を取得しました。私と同じような思いから資格を取得した仲間が社内には数名いますし、現場での様々な経験こそ「専門知識を勉強しよう」というきっかけが生まれる瞬間だと思います。実務に活きる資格を取ることはとても大事です。自分が携わる実務に活きる資格の勉強なら合格のモチベーションにもなりますから、皆さんにもそうしたサイクルを描きつつ、資格の勉強をすることをお勧めしたいと思います。
 最後に、ブックオフは本だけでない、幅広いリユース商材を扱っています。ここ数年の新入社員には、「小さい頃からお店によく行っていました」という方が増えています。1995年~2005年頃、ブックオフが日本全国主要都市に大量出店していた時代、ちょうど小学生だった方たちです。「ブックオフが地元にある環境で育った方たちが、大学生になっているんだなあ」と、感慨深い思いに浸りながら採用にあたっています。
 人が好き、商材が好き。そんな方にとってやりがいの感じられる、成長できる職場ですので、興味のある方はぜひご応募ください。

[『TACNEWS 』2022年7月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

BOOKOFF 八王子堀之内店

会社概要

社名     ブックオフグループホールディングス株式会社
設立     2018年10月1日(創業 1990年5月)
代表者    代表取締役社長 堀内 康隆
本社所在地  神奈川県相模原市南区古淵2-14-20

事業内容

書籍、パッケージメディア、アパレル等の総合リユース事業を運営するブックオフコーポレーション株式会社をはじめとするグループ会社の経営管理及びそれに付帯する業務

従業員数

社員:1,460名(連結)
パートアルバイトスタッフ:12,218名(連結)(2021年5月31日現在)

コーポレートサイト  https://www.bookoffgroup.co.jp/
サービスサイト    https://www.bookoff.co.jp/