人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第38回 株式会社ミクシィ

Profile

佐藤 貴亮氏

株式会社ミクシィ
人事本部 人材採用部
中途・新卒採用グループ マネージャー

新卒でデジタルマーケティング代理店に入社。同じ業界で転職し、人事教育全般、事業開発などに従事し事業責任者として活躍。2020年9月、株式会社ミクシィ入社。人材採用部にて採用全般に関わる。

株式会社ミクシィが最初に日本を席巻したのはSNS『mixi』だった。2013年には『モンスターストライク』の提供を開始し、スマホゲーム分野で圧倒的な地位を獲得。そして今、新たにスポーツ事業に注力するなど、常にチャレンジャーとして走り続けるミクシィは、「コミュニケーション」を軸にしたカルチャーで独特な社内風土を育んでいる。人事本部人材採用部の佐藤貴亮氏に、コミュニケーションを大切にする「ミクシィの採用」についてうかがった。

SNS、モンスターストライクから、スポーツへ

──最初に、株式会社ミクシィについてご紹介ください。

​佐藤 ミクシィは、「エンタメ×テクノロジーの力で世界のコミュニケーションを豊かに」を中期経営方針として掲げ、人に思わず話したくなってしまうような驚きのあるコミュニケーションサービスの創出をめざしています。
 スタートは、現取締役ファウンダーの笠原健治が1997年に東京大学在学中に起業した求人情報サイト『Find Job!』の運営会社でした。2004年2月に始めたソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)『mixi(ミクシィ)』が当社が世に広く認知された大きな事業で、これがそのまま現社名になっています。その後いくつものサービスを提供しながら、2013年にスマホゲームアプリ『モンスターストライク(モンスト)』をローンチ、爆発的ヒットを記録しました。今の若い世代はミクシィをモンストの会社だと思っている方が多いでしょう。
 人材サイト、SNS、スマホゲームと、創業以来様々なサービスを展開してきたミクシィは、現在スマホゲームを含むデジタルエンターテインメント事業と、公営競技関連市場を含めたスポーツ事業で成長しようとしています。

──2022年のトピックをお聞かせください。

​​佐藤 ミクシィは、ライフスタイル、デジタルエンターテインメント、スポーツの3つの事業を展開しており、現在はモンストに続く収益の柱を創出すべく、様々な新規事業創造に取り組んでいます。
 中でも力を入れているのがスポーツです。スポーツはひとりで観るのも楽しいのですが、家族や仲間と一緒ならより楽しめます。ミクシィのミッションは「フォー・コミュニケーション」。多くの人に、仲間と一緒に楽しんでもらえるサービスをつくりたいと考えています。スポーツはこのミッションに則した事業であり、ビジネスとして大きく広げていくことができると考え、注力しています。プロバスケットボール・B.LEAGUE所属の千葉ジェッツふなばしを子会社化したり、JリーグのFC東京に株主として参画したりと、プロスポーツチームの経営にも挑戦しています。また公営競技である競輪やオートレースをスマホで誰でも簡単に楽しめるアプリ『TIPSTAR(ティップスター)』をローンチしました。2022年はスポーツに一層注力し、新しいチャレンジをしていきたいと考えています。

求めるのは「自立自走できる人」

──ミクシィではどのような方が働いているのですか。

佐藤 ミクシィのミッションである「フォー・コミュニケーション」に情熱を持った人が集まっています。当社のアイデンティティをひと言で表現すると「コミュニケーション創出カンパニー」です。私たちの追求している「コミュニケーション」という題材は、人が生きていく上で欠かせないものです。そのコミュニケーションの向上こそ、創業以来私たちが大切にしている考えであり、私たちが提供する価値なのです。SNS『mixi』もスマホゲームアプリ『モンスターストライク』も、いずれも近しい人とのコミュニケーションを活性化させることでヒットしたサービスです。逆に言えば、個人で楽しむゲームや個人で遊ぶツールは、ミクシィの関わる分野ではありません。今後もコミュニケーションを生み出し続ける会社であることが、当社のアイデンティティであると考えています。

──どのような人材を求めているのでしょうか。

佐藤 新しい価値を生み出すためにチャレンジできる人を求めています。柔軟に取り組み学ぶ姿勢、成し遂げたい強い思い、独自の工夫を加えて周囲を巻き込む行動力のある方と一緒に働きたい。言い換えれば、新卒採用でも中途採用でも「自立自走できる人」が、求められる素養の大前提になっています。

──ミクシィにはどのような職種がありますか。

佐藤 ビジネスプランナー職、エンジニア職、デザイナー職の3つがメインで、それ以外にコーポレート・事務/CSなど多様な職種があります。ただしサービスづくりに必要なときは、職種の壁を越えて、エンジニアが企画に対して意見を出したり、デザイナーがエンジニアリングの知識を持って一緒に仕様を考えたりと、柔軟に対応しています。

年間で100~200名の中途採用を実施

──採用計画についてお聞かせください。

佐藤 新卒採用はこれまで毎年平均20~30名、中途採用は年間で100~200名と、圧倒的に中途採用比率が高い会社です。新規事業を次々と立ち上げていくので、それを成功させるための即戦力が必要になるからです。

──中途採用に関しては年間100~200名採用ということですが、どのような採用計画で行うのでしょうか。

佐藤 それぞれの事業部門で、事業計画上必要な人員を決定しています。人事が各事業部門に対してアプローチして、要件を確認して採用を進めていきます。一括でエンジニア50人を採用してそこから各部門に振り分けるといったようなやり方ではなく、あくまでも各事業部門に必要な人材の要件を確認し、それにマッチした人材を採用する方針です。

──採用プロセスを教えてください。

佐藤 職種によって異なりますが、基本的にはエントリーののち書類選考、面接2~3回を経て内定という流れになっています。応募から内定までの期間は2週間から1ヵ月程度です。また、デザイナー職などではポートフォリオの提出をお願いする場合があります。

──新卒採用については、厳選した人材を採用しているのですか。

佐藤 新卒採用に関しては、2022年4月はエンジニア職13名、デザイナー職5名、ビジネス職4名が入社予定です(2021年11月現在)。実際には新卒採用も年々変わっています。エンジニア職については毎年インターンシップで実際に開発に関わってもらい、即戦力となり得る非常に高いレベルの方を採用しています。ビジネス職に関しては、2023年卒は約15名という前年度比3倍の採用計画になりました。実は2022年卒のビジネス職採用は、自立型で、自分で起業していたり、しっかりと主張を持っていたりするようなハイレイヤー層を想定して少数精鋭で採用しました。2023年卒に関しては、新規事業を立ち上げていく中で会社をこれから牽引していける人材を育成していきたいと考え、私たちのカルチャーに共感し、しっかりとマッチする方で、学ぶ意欲のある方という方針に切り替えて採用人数を増やしました。

──会社の方向性に合わせて柔軟に採用活動を行うのですね。

佐藤 そうですね。当社には10月入社の新卒採用もありますし、採用活動の解禁日に合わせて一括採用しているわけではありません。ダイレクトリクルーティング(企業が自社にマッチする求職者を直接探してアプローチする採用方法)の場合は接点を持ったタイミングによっても入社時期が異なってきますし、人によって採用プロセスが変わってもきます。特にエンジニア職とデザイナー職は、新卒でも入社時期が違いますし、インターンシップやアルバイトでかなり早期からメンバーに加わって仕事をしている人が多い傾向にあります。決まったプロセスに一本化するのではなく、その年の事業計画に合わせて柔軟に変えながら選考を進め、個々人に合わせた採用プロセスを実施していますね。

応募者とも密にコミュニケーション

──新卒採用での特徴について教えてください。

​佐藤 求職者とは応募の段階から密にコミュニケーションを取っているのが大きな特徴です。一次面接を通過した方には新卒採用担当者がついて、「次の面接ではこういう話をしましょう」「次の面接官とはこんなエピソードを話したらもっとアピールできると思いますよ」など、学生と一緒になって選考を進めていきます。それぞれの求職者にフィードバックをして、内定まで進んだ方には引き続き内定後の内定者研修もフォローし、入社まで継続的にコミュニケーションを取っていきます。
 また、こうした本選考の流れに乗るプロセスだけでなく、夏にインターンシップに参加した学生がいれば、その時期からコミュニケーションを取って「そろそろ本選考に応募しませんか?」という話もしています。

──入社前からそこまで丁寧にコミュニケーションを取っている企業は珍しいですね。

​佐藤 そうかもしれません。そこは、コミュニケーションを大切にしている私たちミクシィの文化ですね。他にも新卒は一括で集合型の説明会を行うよりも、イベントやダイレクトリクルーティングを活用し、学生と1対1でお話しできる機会を多く設けるようにしています。あえて1対1にしているのは、学生によって理解度に差もありますし、一方的な説明だけではミクシィ全体について伝えきれないからです。それを補完する意味でも、採用担当側のフォローは大事だと捉えています。

──新卒採用では、内定者フォローはどのように実施していますか。

​佐藤 社内には人事部門の他に人材育成部門があり、内定後はそのチームが内定者に対しての研修やフォローを行っています。内定者時代から採用とスキルアップの両面で手厚いフォローが長期にわたって行われ、入社前の不安を解消できる点は、他社にはない大きなメリットであり特徴だと思います。
 また2021年卒は、エンジニア職の内定者を対象に、行動支援金という入社前にスキルを高めるための支援制度を設けました。開発テーマを決めて、その開発に必要なサーバー費などの費用サポートを受けられる制度で、そこで得られた成果は後日発表の場も設けています。2022年卒に関しては、この行動支援金をエンジニア職以外にも適用する方向で考えています。

──新卒者の新入社員研修について教えてください。

​佐藤 全員が集まって実施する新入社員研修を4月に2~3週間で実施しています。大学の卒業時期の関係で10月入社の方もいるので、今後は2段階の研修になる可能性もあります。IT業界はOJTによって研修に入る傾向が強いと思いますが、ミクシィでも新入社員研修後は配属先の部門別研修やOJTを行い、基本的には現場で机を並べて働きながら学んでもらいます。
 新入社員研修については、事業部側と人事・育成チーム側が連携して研修をしていこうという方向に変わってきています。そのスパンも2021年卒は1年間でしたが、今後は3年のスパンで事業部と人事部門でもきちんとフォローし、目標とするキャリアをめざせる研修を実施していく予定です。

──新卒の配属はいつ頃決まりますか。

​佐藤 2022年卒については、ゴールデンウィーク明けには配属したいと考えています。また2023年卒からは、選考の段階から配属部署の想定をして選考を進めています。内定が決まった段階で自分がどの事業部で活躍できるのかイメージできるので、入社前から必要なスキルを高めていくことができるメリットがあると考えています。

あらゆる福利厚生が揃った職場環境

──コロナ禍での採用選考と社内のワークスタイルの変化についてお聞かせください。

佐藤 採用選考は基本的にオンライン中心で実施しています。すべてオンラインで完結している場合もありますが、事業部によっては最後は対面で実施したいという部署もあるので、臨機応変にオンラインと対面を使い分けています。
 社内の通常業務も同様ですね。オフィスワークとリモートワークのそれぞれの持ち味を活かしながらうまく融合させる働き方を「マーブルワークスタイル」と呼んでいて、その実践をめざしています。

──入社後の社内評価とキャリアパスはどのように決まっていくのでしょうか。

佐藤 半年に一度、振り返り面談を実施して評価を決定しています。目標に対する達成度を評価する「コミットメント」と、個々人の能力やスキル、成長度合いを評価する「コンピテンシー」の2つの指標があります。上長と相談しながら、自身を成長させる適切な目標設定をしてもらっています。
 また、ミクシィには「なりたい姿に向かって自律的に成長してほしい」という思いがあるので、明確なキャリアパスはありません。10人いれば10通りのキャリアパスが存在します。

──社員同士のコミュニケーションはどのように行っていますか。

佐藤 毎週1回オンラインでの全体朝会があるほか、Slackには職種、レイヤー、部署別のチャンネルや趣味に関するチャンネルなどが様々あり、縦横の連携はかなり密に取っています。また当社らしい文化として、上司と部下、もしくは同僚同士などが週に1回ペースで行う「1on1」があります。仕事の進捗だけでなく気軽な雑談もするなど、日常的にコミュニケーションを取れる文化として昔からずっと根付いていますね。

──福利厚生についてご紹介ください。

佐藤 当社のオフィスには手厚い福利厚生施設があります。そんなオフィスを実際に見ていただきたくて、最終面接やオファー面談を対面にしたいという思いもあります。
 おそらく大手企業が導入している福利厚生は網羅的に用意されていると思います。社員食堂はもちろん、格安で使えるマッサージルームや社内カフェ、社内コンビニ、ドリンクバー、会社から3km圏内に住めば住宅手当が3万円支給される制度もあります。出産・育児サポートでは産前産後休暇や育児休暇、育児短時間勤務制度、子ども看護休暇は当然ながら、病児保育やベビーシッター会社、ファミリーサポートなどの保育サービスを利用した際の利用料についても、半額が補助されます。

──社内制度でユニークなものはありますか。

佐藤 MCC(ミクシィ・キャリア・チャレンジ)という制度があります。事業戦略に基づく重点領域や人員不足のポジションの募集要件を社内に公開し、上司の許可がなくても選抜にチャレンジして新たなミッションに挑める社内公募制度です。スキルアップのために新たな仕事にチャレンジしたいという希望を転職せずとも叶えられるこの制度は、年齢や職種を問わず広く活用されており、長らくずっと続いています。また社員総会のほかにエンジニア総会、デザイナー総会を四半期に1度実施しており、横のつながりを作るための機会も多くあります。
 業務の成果につながる個々の自己成長、スキルアップを支援するために、外部セミナーへの参加費用補助のほか、英会話、資格取得、プログラミング学習といった様々なサービスを特別優待で利用できますし、書籍は税込5,500円までなら全額、iTunes/GooglePlayカードは購入金額の50%(上限6万円)の費用補助を受けられるという制度もあります。

──スキルアップのために資格取得をめざす場合、サポート制度はありますか。

佐藤 オフィシャルなサポート制度は特に用意していませんが、先ほどの書籍購入制度を利用してスキルアップのために資格取得の勉強をしている人はいます。
 応募者が入社前に取得した資格については、資格があるからといって優先的に採用することはありませんが、面接の中でしっかりとスキルの確認を行っています。

──最後に、資格取得やキャリアアップをめざしている読者に向けてメッセージをお願いします。

佐藤 ミクシィといえばSNS『mixi』とスマホゲームアプリ『モンスターストライク』のイメージが強いと思いますが、今、新しい領域にどんどんチャレンジしています。コミュニケーションを大切にする文化のある会社ですので、興味を持っていただけたら、ぜひ応募してみてください。

[『TACNEWS 』2022年2月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

会社概要

社名  株式会社ミクシィ
設立  1999年6月3日
代表者 代表取締役社長 木村 弘毅
本社所在地 東京都渋谷区渋谷2-24-12 渋谷スクランブルスクエア36F

事業内容

スポーツ、ライフスタイル、デジタルエンターテインメント

従業員数

1,168名(連結・正社員のみ/2021年3月末現在)

URL: https://mixi.co.jp

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