人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第37回 株式会社メンバーズ

Profile

菅沼 駿祐氏(左)

ピープル&カルチャー室
リクルーティンググループ 新卒採用担当 

2019年、新卒でメンバーズ入社。入社後から新卒採用業務に従事。プロデューサーコースの新卒採用を担当し、現在プロデューサーコース採用チームリーダー、今期インターンシップのメイン担当を担う。

西畑 初梅氏(右)

ピープル&カルチャー室
ラーニングサクセスグループ 育成担当

2019年、新卒でメンバーズ入社。入社当時から育成をメインに担当。主に新入社員研修と社内のデジタルクリエイター育成研修「Co-Creation Digital Lab.」の企画運営に従事し、新卒育成リーダーを担う。


デジタルビジネス支援を行う株式会社メンバーズは 「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」をミッションに掲げ、持続可能な社会の実現をめざしている。このミッションのもと掲げられた「VISION2030」では、2030年に自社でデザイン思考を持ち、ビジネスの推進や制度設計を通じて社会課題の解決を図ろうとするソーシャルクリエイターを1万人採用・育成するだけでなく、社外に自社のノウハウやナレッジ、教育プログラム等を提供することでソーシャルクリエイター10万人の育成・輩出をめざしている。メンバーズが今どのような人材戦略をもって採用や育成にあたっているのか、新卒採用担当の菅沼駿祐氏と育成担当の西畑初梅氏に詳しくうかがった。

社会課題解決のためのデジタルビジネスを考える

──最初に株式会社メンバーズについてご紹介ください。

​菅沼 メンバーズは企業のデジタルマーケティングに対して、Webサイト、ソーシャル、モバイル、アプリなど広範囲にわたってデジタル戦略策定・設計から立ち上げ(デザイン・制作・構築)、企業のDX推進支援を行っています。ユニークなのは、1社のクライアントに対してテーラーメイドで運用伴走する点です。デジタル経済社会でDXの領域にも裾野を広げるフェーズを迎え、DXを机上の空論にしないために、クライアントと一体となって実現までしっかりとプロデュースしていきます。メンバーズは「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」というミッションに本気で向き合っているからこそ、DXをミッション達成のための手段ととらえ事業を行っています。
 また、2020年4月からはカンパニー制度を導入しました。グループ会社を統合しカンパニーとして新しくスタートし、メンバーズという1つの傘のもとで、カンパニー同士がミッション実現に向け、改めて共通認識を持っていこうという考えです。最近はカンパニー間の人材流動化が活発になり、カンパニーを移動することで自分のキャリアを広げる社員が増えています。

──2022年に向けて、何か新しい取り組みはありますか。

​菅沼 DX化が一番大きいですね。伝えたいのは私たちが、クライアント1社1社の成長をサポートするのはもちろんですが、「社会課題解決に貢献していきたい」という思いで日々仕事に取り組んでいる点です。DXという領域も、脱炭素社会を実現するため、そしてミッション達成のための手段ととらえて全社で推進しています。生産性向上、コスト削減、ビジネスとしての成長もあると思いますが、ビジネス成果と炭素排出量を切り離すデカップリングを進めつつ、持続的にビジネスを成長させるためには、どうしてもDXが欠かせないと考えています。
 デジタル戦略にとどまらず、今後もお客様のデジタルビジネスを一緒に考え、デジタルを介してお客様のビジネス全体を網羅的に見ていくことで、事業領域拡大をめざしていきます。

2030年に社員1万人規模へ

──採用戦略について教えてください。

​菅沼 「ミッションを実現する仲間を採用する、輩出する」という方針のもと、現在新卒採用には非常に大きなウェイトを置いています。
 2021年4月には新卒者364名が入社しました。2022年4月入社予定の内定者は481名、2023年は628名の採用を想定しています。
 新卒採用が倍増しているのは、ミッションにひもづいたVISION2030(2030年にめざす姿)、「日本中のクリエイターの力で、気候変動・人口減少を中心とした社会課題解決へ貢献し、持続可能社会への変革をリードする」を掲げているからです。2030年時点でメンバーズ社員数が1万人規模になり、社会的にも今以上に影響力を発揮できるようになることをめざしています。2021年6月末時点の社員数は約1,800名なので、ビジョンから逆算して人数設計すると2024年には1,000名単位の採用となり、そこからは社員の半数が入社3年目以下になっていきます。

──求める人物像について教えてください。

​菅沼 社長の剣持は会社説明会で「ミッションに共感できなければ、選考を受けないでください」と言い切ってしまうほど、徹底してミッションへの共感を重視しています。求める人物像の大前提として、まずこのミッションに共感し、ともに実現に向けて取り組める方、さらにはデジタルマーケティングに好奇心や興味など内発的なモチベーションを持って取り組め、自分自身でスキルアップしていける方を求めています。
 またビジョンでは、社員1万人の採用・育成に加えて、社員一人ひとりが学生や同業他社、顧客を含めた日本中のあらゆる人々に自社のノウハウやナレッジ、教育プログラムなどを提供し、ソーシャルクリエイター10万人(社員1万人を含む)を育成・輩出することを目標としています。

2022年は481名入社予定、倍増する新卒採用

──現在の新卒採用の進捗状況について教えてください。

​菅沼 2022年卒向けの採用活動は後半に差しかかり、最終人数も見えてきている段階ですので、インターンも含め2023年採用に向けての動きがメインになりつつあります。ただコロナ禍のため、2021年4月から採用活動は完全にオンラインになり、2022年卒は一度も来社しないままで内定となる予定の方が大半です。そこで、選考中のみならず内定されたあとも入社後の姿をイメージいただけるように、定期的にイベントを開催し、オンライン下の選考であってもミスマッチを防ぐ取り組みを行っています。

──選考ステップについて教えてください。

​菅沼 採用コースには、私が担当しているプロデューサーコースの他にテクニカルプランナーコース、エンジニアコース、デザイナーコースの4種類があります。毎年選考フローは変わりますが、2022年新卒では書類選考、適性検査、面接を経て内定に至り、職種によってポートフォリオによる作品提出を求める場合もあります。
 特徴的なのは、各コース共通で最終面接の前のタイミングで志望動機を出していただく点です。ミッションを大切にしている会社なので、最初の書類選考では志望動機を聞かずに、最終面接を受ける前の想いが深まっているタイミングで、改めて志望動機を言語化していただきます。

──2022年卒の内定者フォローはどのように実施していますか。

西畑 いち早くプロのデジタルクリエイターとして活躍してもらうために、なるべく早期から接点を持つことにしました。具体的には内定が決まった段階から順次面接を実施し、内定者のスキルや指向性、希望を確認した上で、2021年9~10月に活躍できそうなカンパニーに仮配属しています。決定後はカンパニーごとの研修や顔合わせのような交流会の実施を考えています。オフィスに来ることがないまま内定した学生がほとんどなので、学生自身、ものすごくコミュニケーションの機会を欲していたり、会社の雰囲気を知りたいという声が多く、社員と話す機会を設けたり、内定者同志の懇親会を毎月開催したりしています。  私たちにとっても今までで一番早い時期での仮配属決定となったので、不安はありますが、早く決めたぶん、仮配属先に特化して集中的にスキルアップできますし、受け入れ側の準備もしやすいと考えています。

──入社前の内定者研修や課題はありますか。

西畑 あくまで学業優先ということをお伝えした上で、プログラミング学習ができるeラーニングツールに各自のペースで取り組んでいただいています。プログラミング未経験のプロデューサーコースの内定者でも基礎から学べるように、レベル別のコースを設けていますが、卒業論文や卒業研究もありますし学生時代の過ごし方はそれぞれなので、あくまで学習目安のみを設定しています。

スキルアップ、キャリアアップ双方で人材育成

──2021年4月入社の方の新入社員研修から本配属までの流れをお聞かせください。

西畑 最初の約1ヵ月間は全員集合型研修を実施しました。といっても全員が同時に出社するのは厳しいので、オンラインとオフラインを併用し、6~7人のチームに分けて週1~2回のローテーションで出社し、主にビジネスマナーと会社のミッション・ビジョン、基礎的スキルを中心に勉強してもらいました。
 特に今回意識したのは、リモートワーク下での働き方だからこそ、より主体性が強く求められる状況にあるという点です。そこで、学びたい領域や自分のキャリアを自分で考える、決めるという姿勢で取り組んでもらいました。1日も早く活躍してもらえるように、いくつかの課題を提示した上でチームごとにメンバー自身でスケジュールを管理し、所定の課題にチームで臨むようにカリキュラムを準備しました。
 新入社員研修後は現場配属になり、スキル研修を実施したり、1対1で先輩が付くメンター制度でOJTに入ったりと、カンパニーごとに違いが出てきます。その後もいろいろな課題が出てくるので、必要なところは単発で研修を入れたり、メンターを導入したり、人事部としても継続的に見ています。

──その後の全社での研修制度はどのようになっていますか。

西畑 今お話しした研修とは別に、全社共通の研修があります。メンバーズの教育制度のユニークなポイントは「学びたい領域やキャリアを自分で考える、決める」という思想です。この思想は研修でも一貫していて、「Co-Creation Digital Lab.」(以下、CCDLab.)と呼ばれる自分で講座を選んで学びにいく研修スタイルや、社内で明文化されている職制を「めざす職制」として宣言して、必要なスキルを身につけていくキャリア制度に反映されています。
 CCDLab.は変化の激しいWeb業界において高いパフォーマンスを創出し続けるデジタルクリエイターを育成するために、社員のキャリア開発の一環として自主性ある学びの共創をめざしたものです。4年前からスキルフェロー制度を導入し、デジタルマーケティング業界の各分野の第一線で活躍する講師を迎え、ディレクション、フロントエンド、デザインなど幅広い分野の社内講座を開催しています。また、同じ志の仲間と講座を企画し参加することで、教えることを通してより理解を深めたり、ナレッジを共有したりし合うことで、クリエイター同士のコミュニティ化を支援する「学びあいたい講座」や、スキルアップを目的に、業務内外の活動において楽しく学ぶコミュニティとして、業務ではできないことを気軽に実験する場「ラボ活動制度」などがあります。

──ユニークな名称がつけられているのですね。

西畑 そうですね。「学びあいたい講座」は、以前は「学びたい講座」という名称でした。それを社員の学びたい思いを吸い上げ、社員のスキルアップに見合ったものと判断した上で講師や講座内容は自分たちで考えてもらい、その後も主体的な学びや講座を続けてもらえるようなしくみにしました。
 こうしたスキルアップを主な目的とした制度の他にも、キャリアアップに関する制度として、上司・同僚・部下から多面的な評価をもらって自分の今後のありたい姿や行動を考える「360度研修」や、新入社員・マネジメント・リーダーなどの階層やレイヤーに合わせた研修を定期的に実施しています。今期からは、今後のメンバーズを担うリーダー育成・輩出をするための「次世代リーダー塾」も始まりました。VISION2030達成には新規事業の創出と拡大が必要になってくるので、次世代の経営人材の育成も積極的に進めています。

「自分で決める」充実した制度

──社内制度や福利厚生でメンバーズらしいものを紹介してください。

菅沼 特徴的なものとして「カンパニー社長公募制度」があります。公募は年3~4回実施され、2020年度はこの制度で2つのカンパニーが立ち上がりました。自分でゼロから起業するのは非常にハードルが高いですが、メンバーズのカンパニー社長として自分のキャリアを創っていきたい、経営に関わりたいという人にチャンスを与える制度です。新入社員でも挙手できて、入社3年目のカンパニー社長も誕生しました。社長の剣持は、たとえ失敗したとしても、起業というチャレンジを経験した貴重な人材が残ると話しています。

──その他にはどのような制度がありますか。

菅沼 委員会活動が盛んです。中でも「MEMBERS WAY委員会」では新卒1年目からベテランまでの希望者で構成され、社員からの提言をまとめて経営層とディスカッションしています。「MEMBERS WAY委員会」で採択された案が実現するケースはとても多く、生産性アップを目的に社内の携帯がガラケーからスマートフォンに移行したり、年間9連休取得できる「バカンス制度」が導入されたりしました。また、2020年入社の若手から「社会課題解決型というミッションに共感して入社したのに、なかなか関わる機会がない」という意見が出て、社会課題解決型提案をサポーターとして入れる「CSVサポーター制度」が実現しました。
 他にもファミリーデーの開催や、健康経営を推進するウェルビーイング委員会、レク委員会、VISION2030に基づく社員の行動宣言として「1S1A(1Share+1Action)」を推進する委員会が活発に活動していて、社員一人ひとりが会社を創っていく全員参加型経営が根づいています。1S1Aは「社会課題解決思考型のクリエイティブ人材」を10万人規模で育成・輩出するために、社員が自分たちの学んだことを積極的に外にアウトプットしていく活動で、社外に向けたクリエーター教育活動や学びの情報発信などに、積極的に多くの社員が取り組んでいます。

キャリアへの道をより明確化する資格取得を奨励

──新卒採用では、求職者が学生時代に取得した資格をどのように評価していますか。

菅沼 持っている資格それ自体を直接評価することはしません。ただ、資格を取得するということは、何らかの知識をつけたいという思いをアウトプットする行動であるはずなので、そのプロセスとモチベーションは選考でも評価しています。
 社内でも資格取得はかなり推奨していて、私も入社した年にExcel、統計、ビジネスキャリア、人材開発関連で、社内で定められたバックオフィス系資格を4つ取得しました。
 先ほども話に上がった、社内で明文化されている職制を「めざす職制」として自分で宣言し、必要なスキルを身につけていく「共通職制」というキャリア制度があるので、キャリアの道をより明確にするためのひとつの手段として資格取得を支援しています。

──どのような資格を推奨していますか。

西畑 エンジニアリング、デザイン、プランニングなど、7領域を合わせて50以上の資格を推奨しています。「自分がめざしたいキャリアがあるから、この領域のこの資格を取ります」と主体性を持って自分で選び取るものなので、選択肢の幅を広げるためにも多くの資格をリストアップしています。
 カンパニーによって一部ルールが異なりますが、評価制度と連動した資格は認定資格として受験料を支給、その他推奨資格は報奨金を支給するなどの制度があります。例えばTOEIC® L&R TESTは推奨資格なので、既定のスコア以上取得できれば報奨金を支給しますし、ITパスポートや統計検定®などは、認定資格として受験料を支給します。新卒1年目で取得する方も多いですね。

──資格取得やキャリアアップをめざしている方にメッセージをお願いします。

菅沼 資格を取得する目的のひとつに、ミッションの体現も含まれていると思います。目的に対して、自分はどう関わりたいのか、そのために何を身につけないといけないのか。この理想と現状のギャップを埋めていくための手段として、資格取得は素晴らしいものだと思います。

西畑 当社では学び続ける姿勢をとても大切にしています。入社したらそこで終わりではなく、社会人になってからも継続して自主的に学び続ける。その土台づくりのひとつが資格取得だと思います。ぜひ、その先の目的達成のために役立てていただきたいです。

[『TACNEWS 』2021年12月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]


会社概要

社名  株式会社メンバーズ
設立  1995年6月26日
代表者  代表取締役 兼 社長執行役員 剣持 忠
本社所在地 東京都中央区晴海1丁目8番10号
晴海アイランド トリトンスクエアオフィスタワーX 37階

事業内容

デジタルマーケティング事業

従業員数

1,824名(2021年6月末時点)

URL: https://www.members.co.jp