人事担当者に聞く「今、欲しい人財」 第34回 トランスコスモス式会社

Profile

上野 智久氏(左)

サービス推進総括 人財開発統括部
採用プロジェクト推進部 事業連携推進課

藤田 萌氏(右)

サービス推進総括 人財開発統括部
新卒採用部 首都圏採用課


30の国と地域で、コンタクトセンター事業、デジタルマーケティング事業、BPO事業を展開するトランスコスモス株式会社は、新卒採用において「完全職種別採用」を実施している。応募者に寄り添う面接を通じて、その人に最適な職種を提案するという独自の採用スタイルについて、人財開発統括部の上野智久氏と藤田萌氏にうかがった。

お客様の目的に応じたサービスを提供

──トランスコスモス株式会社について教えてください。

上野 トランスコスモスは、コンタクトセンターサービス、デジタルマーケティングサービス、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスなどを30の国と地域で展開し、グローバルで166拠点、6万3,000名強の組織となっています。
 業務内容は、デジタルマーケティング・EC・コンタクトセンターを合わせて「DEC」と呼ぶ「DEC統合マーケティングサービス」。従来の電話サポートに加え、メール、チャット、LINEやWebサイトなどのマルチチャネル対応に音声認識やbot・AIなどの最新技術を融合した次世代コンタクトセンターの運用管理。さらには顧客の声からトレンドを分析し、企業のマーケティングにも貢献する「コンタクトセンターサービス」。インターネットプロモーションからWebサイト構築・運用まですべてをワンストップで支援する「デジタルマーケティングサービス」。お客様企業のEC事業戦略やブランド戦略に合わせて、仕入れからオペレーション、販売までを、日本・欧米・中国・韓国・台湾・ASEAN・インド・中南米など世界48の国と地域にECワンストップサービスを提供する「グローバルECワンストップサービス」。そしてお客様企業のコスト最適化を図るとともに事業基盤を強化し、企業競争力を支援する「BPOサービス」を展開しています。
 こうしたサービスを通じて、お客様企業の売上拡大やコスト最適化、グローバル対応など、目的に応じたサービスを提供しています。
 中でもBPO分野では、米大手ITアドバイザリ会社であるGartner Inc.が発刊した「Market Share: IT Services, Worldwide 2020」において、世界で第13位のシェアであると発表されました。

全国5拠点に分散して入社式を実施

──2021年4月のコロナ禍での入社式の様子を教えてください。

上野 2021年は約430名の新卒新入社員を迎え、リアルでの入社式を行いました。入社式は人生におけるひとつの節目ですからぜひリアルで実施したいという思いと、新入社員の安心・安全を第一に考えて、全国5拠点13会場に分散し感染症対策を徹底、さらには参加者全員がPCR検査を行った上での実施となりました。進行は会場ごとに行い、社長や会長などのメッセージはオンデマンドで配信しました。
 従来は本社がある東京・渋谷近くに大型の会場を借りて、多いときには600名の新入社員が全国から一堂に会し、役員も全員参加する一大イベントとして行っていましたね。

──新入社員研修はどのように実施されましたか。

上野 新入社員全員に共通する研修はeラーニングとオンライン研修で実施しました。当社は完全職種別採用ですので、入社式翌日からは各事業部に配属となり、配属先ごとの研修になります。オンラインとオフラインを組み合せて実施する部署もあれば、どちらかが中心になる部署もありますし、研修期間も1ヵ月から約半年まで部署によって異なっています。研修が終わった時点で、職種に合わせた部署への正式配属となります。

──2022年4月入社の新卒社員の採用状況はいかがですか。

藤田 2022年は600名強の採用をめざしていて、まだ道半ばの状況ですが、現時点では順調に推移しています。日本全国、さらには海外も含めて、当社に共感してくださる方たちを採用して、全国各地の拠点に配属していきます。約半数の300名は首都圏での配属を予定しています。

──かなりの人数の採用ですね。採用拠点は全国にあるのでしょうか。

藤田 2018年から、北海道、東北、首都圏、中部、関西、九州・沖縄の地域に分けて、各拠点で採用活動を行っています。それ以前は東京と関西の2拠点で全国の採用をカバーしていて、私は当時関西拠点の新卒採用担当として、熊本、福岡、愛知などにも出向いて説明会や面接を実施していました。

──コロナ禍によって、採用活動もオンラインになったのでしょうか。

藤田 そうですね。オンラインになったことにより、エリアの垣根がなくなりましたので、リアルではお会いしにくかった地域の方たちと会えるようになりました。これはメリットだと思います。

上野 オランダに留学している方とのオンライン面接も行いました。こちらが日中でも、向こうはまだ真夜中だったりしましたね。

藤田 私もカナダで勉強されている学生の方とオンライン面接をしました。当社は日本国内では一般的な知名度があまり高くないのですが、グローバル展開をしていますので、留学生から見るとグローバルでの露出が高い日本企業という認識があるようです。


上野 智久
新卒で不動産ディベロッパーに入り、営業、企画、管理に携わる。その後、人財業界を経て、2017年1月にトランスコスモス入社。新卒採用担当として母集団形成から採用、内定者フォローを担当。2021年より採用活動における社内連携の強化を担当。

応募者に最適な職種を探す面接

──完全職種別採用ということですが、その理由を教えてください。

上野 現在は、営業職、グローバル職、デジタルマーケティング職、エンジニア職、ビジネスプロセスマネジメント職の5系統、全17職種での募集をしていますが、募集する職種は地域によって多少異なりますし、毎年見直しをかけています。
 当社は極めて幅広い分野で事業を展開していますので、総合職として採用したあとに各部門へ配属するやり方では、新入社員自身のやりたいことと配属部門のミスマッチが起きかねません。それを防ぐために完全職種別採用としています。
 中には最初から「この職種に」と絞り込んで応募される方もいらっしゃいますが、ほとんどの方は選考を進める中で希望する職種を決めていきます。

──具体的な選考プロセスについて教えてください。

上野 当社の基本的な採用プロセスは、エントリーシート提出後、人事担当者による1次面接と2次面接を経て、最後に希望職種に該当する事業部門の責任者との面接で内定となります。ただ、職種や部門によっては課題が加わるなど、一部ではプロセスの微調整があります。
 希望する職種については、1次面接と2次面接の中で決まっていくことがほとんどです。

──すると人事担当者との面接がポイントですね。

上野 そうですね。当社の人事面接は、人生相談のように応募者一人ひとりの特性を見て、その方が当社で一番輝けるポジションを探し出すという内容です。一方的な面接ではなく、お互いに深く話し込む面接ですね。社内には活躍できるポジションがたくさんあるので、ひとつの基準だけで判断するのはもったいない。その人がどのような人で、どのような強みがあって、社内のどのポジションに最も適しているのかを探し出すために様々なことをお聞きしますし、その内容を踏まえてこちらから職種を提案することも非常に多いです。

──人生相談のような面接なのですね。

上野 新卒採用でご紹介する事業内容は、デジタルマーケティング事業、EC事業、カスタマーサポート事業、BPO事業などですが、学生の皆さんは一番身近に思えるデジタルマーケティング事業に目が行って、そこを志望する傾向があります。ただ、面接の中で「当初の志望とは違うけれど、この部門でも活躍できそうですよ」と提案をすると、「今まではイメージしにくかったけれど、おもしろそうですね」といったやりとりになることも多いです。こうしたやりとりを、職種が確定するまで行います。

藤田 ご本人が納得してくれることが大切なので、学生時代を含め、これまでの様々な経験や学んできたこと、ときにはペットの名前や由来まで、本当に幅広くお話をうかがいます。その中から、ご本人が気づいていない当社で輝ける場所を提案していきます。

上野 入社を決めてくれた方に当社の採用について聞くと、自分の本心を聞いてくれた、自分の強みを引き出してくれた、つながりを大切にしている会社だと思った、といった感想が挙がりますから、とてもうれしく思っています。

──面接を通じて、応募者自身が気づいていなかった可能性を引き出すのですね。

上野 はい。気づかなかった部分ということで少しお話しすると、実は私は建築学科出身です。建築が好きで建築学科に入りましたが、周囲の本気度に圧倒されて、設計なんて無理だと思い、不動産ディベロッパーの営業職に就きました。その後ジョブチェンジを経て当社に入ったのですが、入社後に、建築の知識が活かせる建設設計エンジニアという仕事があることを知りました。具体的には、建設業界や社会インフラ業界に向けに、建築・土木設計や施工に関わる一連の業務をトータルで支援するとともに、デジタル活用による業務プロセスの効率化を行っています。建築の知識を、ゼネコンや住宅メーカーだけでなく、業務サポートという仕事に活かすという方法もあることを学生のときに知っていたら、建築の道を捨てなかったかもしれないと思いましたね。当社は事業が幅広いがゆえに、スキルを活かせる場や方法も多種多様にあるので、私のように選考を通じて自分の可能性に気づく方も多いのではないかと思います。

藤田 機械設計エンジニアという職種でも似た話を聞きます。当社のものづくりプラス業務改革という要素はあまり知られていない部分ではありますが、この職種では、自動車、航空機、家電などの業界向けに、製品設計として技術支援のサービス提供と、BPOベンダーとしてのノウハウをかけ合わせ、最適な業務プロセス・しくみを組織として組み込むことで、技術を提供するだけでなく、製品開発事業の最適化・効率化をご提案する業務を担っています。大学で機械などを専攻された方はメーカーを志望されるケースが多いと思いますが、業界のしくみを変えたいというモチベーションがある方には当社の機械設計エンジニアは向いていると思いますね。

──事業が多岐にわたっているからこそですね。内定者フォローではどのようなことを行いますか。

藤田 コロナ禍ではどうしてもオンラインになってしまいますが、内定者同士や職種・配属部門の先輩との交流などを予定しています。多様性のある色々な参加者がいて本当におもしろいですし、全国から参加してもらうため、服装が半そでだったり着こんでたりと地域による気候の差も感じられて、イベントの中でも会社の規模感を改めて実感しています。

上野 リアルでのイベントには、内定者が一堂に会することで規模感を知ってもらえたり、会社でのワークショップやその後の懇親会で同期の結びつきができて安心して入社できる、そんな効果がありました。ただ、オンラインでも同期の結びつきや励みにつながる取り組みをしていきたいです。


藤田 萌
2013年、新卒としてトランスコスモス入社。関西本部で新卒採用を担当。関西以外での経験を積むべく2018年11月に本社に異動し、首都圏の新卒採用を担当。

内定辞退者には3年間有効なパスを発行

──人事制度や福利厚生でユニークな制度がありましたら教えてください。

上野 内定辞退者に対して、その内定を3年間有効とするパスを発行しています。発行には一部要件もありますが、当社ではなく他社に入社したあと、違うなと感じたらいつでもこちらに来てください、との思いを込めて発行しています。実際に毎年何名かは改めてよろしくお願いします、と入社しています。
 また、一度当社を退社した方で、外に出てみたけれどできればトランスコスモスに戻りたい、という方も大歓迎しています。こちらも毎年何名も再入社していますし、中には再入社したあと役員になっている人もいます。

──人との縁を大切にしているのですね。その他の制度もありますか。

藤田 社員向けのECサイトを利用できます。当社は高名な取引企業がたくさんあるので、そうしたお客様からトランスコスモス割として特別にご提供いただいた商品、製品、サービスを購入できる社員向けのECサイトです。中には美術館の無料入場券やテーマパークの割引チケットなどもありますので、かなりお得に利用できます。

──奨励金の対象となる取得推奨資格も400以上あるとお聞きしました。

上野 対象となる資格は職種ごとに異なりますが、TOEIC®L&R TESTや簿記検定などをはじめ、社員のスキルアップを応援するために多くの資格を奨励金制度の対象にしています。

藤田 たくさんの推奨資格がありますので、実際に自己研鑽で取得をめざす人が大勢います。当社は半年に一度上司との面談の機会がありますが、その場で「この資格を取得します」と宣言した上でめざす人もいますね。

上野 自分自身が取り組んでいる業務やサービスを伸ばしていくために資格を取得したり、仕事を通じて得た知識を活かして資格を取得する人が大勢いますね。

──新卒の応募者が何らかの資格を持っている場合は、どのように評価しますか。

上野 単に資格があることだけでプラスになることはありません。IT系企業の場合はIT系の資格が有効と言われることもありますが、当社は7割が文系出身者で、入社後に必要な知識は身につけられるようになっていますので、採用段階での基準にはしていません。ただ、資格の種類にもよりますが、ある程度のレベル以上の資格を持っている場合は、相応の評価対象にはなります。

藤田 資格をお持ちの方との面接では、その方により適した職種を探すヒントを見つけるために、なぜその資格を取得したのか、取得までにかけた時間はどれくらいか、どのような勉強の仕方をしたのか、モチベーションの維持方法などについて、詳しくお聞きしたいですね。

──最後に、資格取得やキャリアアップをめざす読者に向けてメッセージをお願いします。

上野 当社には活躍できるフィールドがたくさんありますので、学んだことを活かせるポジションが必ず見つかります。そして入社後にはその学んできたことを活かし、違う自分を発見できる会社でもあります。

藤田 資格を取得している方というのは、ご自身のキャリアや仕事に対する意識が高い方が多いと感じています。資格を持っていると、「この会社に入りたい」ではなく、「この仕事に就きたい」という選び方ができるのではないでしょうか。今後、ジョブ型雇用になっていくと言われる中で、早い時期に資格を取得していると、選択の幅が広がりますので、なぜその資格を取得したいのかという初心を忘れずにがんばっていただきたいと思います。

[『TACNEWS 』2021年9月号|連載|人事担当者に聞く「今、欲しい人財」]

会社概要

社名  トランスコスモス株式会社 (商号:トランス・コスモス株式会社)
設立  1985年6月18日
代表者 代表取締役社長兼COO 奥田昌孝
本社所在地 東京都渋谷区渋谷3-25-18

事業内容

コンタクトセンター事業、デジタルマーケティング事業、BPO事業

従業員数

グループ:6万3,675名(国内:4万2,905名、海外:2万770名) 2021年3月末現在

URL: https://www.trans-cosmos.co.jp